2016 年度後期 マクロ経済学 2 第 8 回 マルサスモデル Macro 2 第 8 回 Page1 今回の講義 ● ● 前回 – 技術進歩・労働力人口の成長を考慮した場合のソローモデルの分析 – 両者を考慮しない場合と比べて結果がどのように影響を受けるか – モデルと現実の経済成長の比較 – 経済成長を促進する政策 – 人口と所得水準の歴史的変化 – 産業化以前の人口と所得水準の決定:マルサスモデル (Malthusian model) – マルサスモデルにおける技術進歩と人口抑制政策の影響 今回 Macro 2 第 8 回 Page2 人口と所得水準の歴史的変化 世界の人口の推移 (Weil, Economic Growth) 産業化が始まるまでの 人口成長率は極めて低 かった *紀元前 10000 年から 0 年まで:年平均 0.04 % * 0 年から西暦 1800 年ま で:年平均 0.09 % * 19 世紀:年平均 0.6 % * 20 世紀前半:年平均 0.9 % * 20 世紀後半:年平均 1.8 % Macro 2 第 8 回 Page3 人口と所得水準の歴史的変化 (2) 西欧における 1 人当たり産出量 ( 所得 ) の成長率と人口成長率 の推移 (Weil, Economic Growth) 産業化以前は所得 水準の成長率も極 めて低かった Macro 2 第 8 回 Page4 マルサスモデル (Malthusian model) ● ● 産業化以前の経済における所得 (1 人当たり産出量 ) と人口の決定を描写したモデル イギリスの経済学者 Thomas Malthus による『人口論』 (1798 年 ) がベース 労働力に依存した伝統的な農業が中心の経済 人口が内生変数 生産関数 ( 学生用は式なし ) *伝統的な人力に依存した農業を想定した生産関数、資本ストックはなし 土地 ( 基本的に固定 ) *生産関数はこれまでどおりの性質を満たす * Y/L は L の減少関数。下のように右下がりになるが形状については一般的には不 明。 *近代以前の経済なので技術の向上は非常に遅く、 A は一定とみなしてよい。 ● 人口成長率は労働投入量 ( 人口 ) 当たり所得の増加関数 ( 人口成長率は負にもなりう る) *所得水準が低すぎると、飢饉などで人口が減少。高いと出生率が上がり、死亡率が下がり人口 増加。 するモデルも? Macro 2 第 8 回 Page5 人口 (L) マルサスモデル (2) ● 0 1人あたり所得 ( y) グラフによるモデルの分析 ( 学生用はすべて のグラフなし ) *当初の人口が A にある時、上の生産関数から描か れたグラフより 1 人当たり所得が決まる。土地と比 べて人口が少なく、所得が比較的高いので、人口成 長率は下のグラフより正。よって人口が増加し、上 のグラフより 1 人当たり所得は低下。しかしまだ所 得は高めなので人口成長率は低下するものの正。さ らに人口が増加し、所得が低下。このような動きが 繰り返され、最終的には経済へ定常状態 Lss に 人口成長率 *同様にして当初の人口が B にあると、土地と比べ 人口が多く所得水準が比較的低いので、人口は減 少、所得は上昇していき、やはり最終的には定常状 態 Lss に。 0 *定常状態では所得水準と人口が共に一定。近代以 前の人口成長が極めて低く、 ( 長期的には ) ほぼ一 定の所得水準を近似。 ( 短期的には厄病や戦乱によ り大きく変動 ) 1人あたり所得 ( y) Macro 2 第 8 回 Page6 マルサスモデルにおける技術進歩の影響 人口 (L) 技術進歩 ( あるいは土地の増加 ) の影響 ( 学生 ● 用はシフト後のグラフなし ) 短期の影響 *当初経済は定常状態 Lss に あったものとする。ここで技術進歩が起こると A が上昇するので、上のグラフが右シフト。 1 人当たり所得が上昇。 ● L ss 中長期の影響 * 1 人当たり所得の上昇に よって人口成長率が正になり、人口が増加。人 口増により 1 人当たり所得は低下し、人口成長 率が低下するが、引き続き正。この動きが繰り 返され、最終的には人口は新しい定常状態で一 定に。このときの 1 人当たり所得は元の同じ水 準で変わらず。 ● 0 1人あたり所得( y) 人口成長率 *マルサスの罠:技術進歩や土地の拡大 は長期的には人口を増加させるのみで所 得水準には影響せず。 0 y ss 一人あたり所得( y) Macro 2 第 8 回 Page7 マルサスモデルにおける人口抑制策の影響 人口 (L) ● 人口抑制策 ( 晩婚、避妊、中絶など ) の影響 ( 学生用はシフト後のグラフなし ) ● 短期の影響 *当初経済は定常状態 Lss にあっ たものとする。人口抑制策がとられると、下のグラ フが下シフト。人口成長率が低下し負に。 L ss ● 中長期の影響 *上グラフより人口減少で一人 当たり所得が上昇。所得上昇で人口減少率は減少す るが引き続き負。この動きが繰り返され、最終的に は人口は新しい定常状態で一定。 1 人当たり所得は 元よりも高い水準に。 0 1人あたり所得( y) 人口成長率 *マルサスモデルによれば所得水準を恒常的に改善 する唯一の手段は人口抑制策。 ● 産業化以降はマルサスモデルは現実経済と合 わず *所得水準・人口とも成長率が大きく上昇 *両者の関係は最初は正であったが、戦後は負に 0 y ss 一人あたり所得 ( y) Macro 2 第 8 回 Page8
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