開廃業の動向 山梨学院大学 堀越芳昭 1 • 総務省統計局「事業所・企業統計調査」により、 まず始めに全産業の開廃業率を見ることにする。 企業数及び既存企業の事務所の増設・閉鎖も考 慮した事業所数を基に算出した開業率と廃業率 の動向によれば、昭和61年以降に開業率と廃業 率が逆転し、最新の調査時点では開業率は増加 しているものの、廃業率の増加の方が顕著であっ たため、開廃業率の差は拡大した(第221-1図、2 図)。さらに、企業を個人企業と会社(法人企業)に 分けて見ると、個人企業数による開廃業率の推 移は、企業数による開廃業率の推移と大差ない 動きとなっているのに対し、会社数による開業率 と廃業率は平成8年以降の最新の調査時点に なって逆転しており、特に廃業率の上昇が顕著と なっていることが分かる(第221-3図、4図)。 2 • 次に、事業所ベースの業種別(大分類)にお ける開廃業率を見ると、開業率と廃業率の 両方に寄与している業種は「小売業」「飲食 店」「サービス業」であるが、廃業率に寄与 している業種は「建設業」「製造業」「卸売 業」である(第221-5図)。また、他業種に比 べ現在の開業率が高い業種において、約 20年前と現在の開業率を比較すると、「飲 食店」の減少が際立っており、「サービス 業」や「製造業」「卸売業」も低下している(第 221-6図)。 3 • また、開廃業率の国際比較を行う際に統 計の内容等が統一されていないことに留 意する必要があるが、アメリカ中小企業庁 「アメリカ中小企業白書」によれば、アメリカ の開業率は過去10年12~14%台、廃業率 も11~12%台と、日本に比べ高水準で推 移している(付表221-2)。欧州連合「ヨー ロッパ中小企業白書1997」によれば、日本 の開業率は他国に比べ、低い水準で推移 している(付表221-3)。 4 第221-1図 企業数による開廃業率の推移(非一次産業、年平均) 5 第221-2図 事業所数による開廃業率の推移(非一次産業、年平均) 6 第221-3図 個人企業数による開廃業率の推移(非一次産業、年平均) 7 第221-4図 会社数による開廃業率の推移(非一次産業、年平均) 8 9 第221-5図 業種別(大分類)の開廃業率と寄与度 10 付表221-2 アメリカの開廃業率の推移 11 付表221-3 統一的定義による開業率 1988~1994年(企業数に対する%) 12
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