Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
出荷が増え、在庫が減り、受注が増えると、やっぱり株価は上がる
2016年11月30日(水)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【欧米経済指標他】
・11月CB消費者信頼感指数は107.1と10月(100.8)から著しく改善。市場予想(101.5)を大幅に上回り、
景気後退後の最高を更新。内訳は現況(123.1→130.3)、期待(86.0→91.7)がともに大幅改善。雇用環
境の改善、ガソリン安、株高によって消費者はますます楽観的になっており、個人消費の加速を示唆して
いる。雇用統計の先行指標として有効な雇用判断(雇用機会が「十分」から「不十分」を差し引いたもの)
は+5.2と景気後退後のピークに比肩。11月雇用統計の堅調な結果を示唆している。
CB消費者信頼感指数
140
CB消費者信頼感指数(雇用判断)
20
10
現況
120
総合
0
100
雇用機会が「十分」との
回答から「不十分」との
回答を差し引いたもの
-10
80
-20
期待
60
-30
40
-40
-50
20
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
07
(備考)Thomson Reutersにより作成
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は小幅ながら反発。原油価格の下落が重荷になるも、米指標改善が好感された。WTI原油
は45.23㌦(▲1.85㌦)で引け。OPEC総会の減産合意が疑問視された。
・前日のG10 通貨はJPYが最弱となり、それにCAD、USDが続いた。反対に欧州通貨が全般的に強く、EUR/USD
は1.06を回復。GBPの買い戻しも継続し、GBP/USDは1.25近傍へと水準を切り上げた。USD/JPYは米国時間早
朝に113を回復した後、米金利低下に歩調を合わせ112半ばへと水準を切り下げた。新興国通貨は強弱まち
まちとなり、JPMエマージング通貨インデックスは横ばいで引け。
・前日の米10年金利は2.291%(▲2.1bp)で引け。米指標は堅調だったが、原油価格下落が意識された。欧
州債市場(10年)はコア軟調、周縁国堅調。ドイツ(0.221%、+1.6bp)が金利上昇となった反面、イタ
リア(1.944%、▲12.4bp)、スペイン(1.510%、▲5.2bp)が金利低下。ポルトガル(3.616%、+1.5bp)
は金利上昇が一服した。周縁3ヶ国加重平均の対独スプレッドはタイトニング。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は、USD/JPY上昇が頭打ちとなるなか、米株上昇に追随し小幅高で推移(10:00)。
・10月鉱工業生産指数は前月比+0.1%と市場予想(±0.0%)を僅かに上回った。3ヶ月連続の増産で、年
前半の停滞から挽回している。実際、3ヶ月前比年率の伸びは+9.5%に到達しており、基調的な強さが窺
える。関連項目をみても、出荷(+2.2%)が強く伸び、在庫(▲2.1%)と在庫率(▲0.9%)が減少する
などバランスも良い。出荷・在庫バランスは+2.8%と、在庫調整の完了を示唆する領域で推移。先行きに
目を向けると生産予測指数が11月+4.5%、12月▲0.6%と均してみれば増産基調にある。これを基に経済
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
産業省が独自に試算した11月の生産は+1.7%と強い伸びが見込まれている。また速報性に優れた日経製造
業PMIによると11月の(PMI構成項目の)生産指数は52.2と4ヶ月連続で50超が維持された。今四半
期も増産となる可能性が高まっている。
120
日本 PMI生産・製造業生産
鉱工業生産指数
(%)
70
60
65
110
在庫率指数
50
45
40
90
生産指数
0
-20
製造業生産
(3ヶ月前比年率、右)
-40
35
30
80
10
11
12
13
14
(備考)Thomson Reutersにより作成
15
-60
08
09
10
11
12
13
14
(備考)Thomson Reuters、Markitにより作成
16
40
20
55
100
50
PMI生産
60
15
16
出荷・在庫バランス
30
10
-10
-30
-50
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成 出荷・在庫の前年比の差分
<#OPEC #合意見送り?
#PMI新規輸出受注>
・本日はOPEC総会が注目される。最新の報道から判断するとイランが減産に難色を示していることから
合意が難しいとの見方が広がっており、市場もそれを徐々に織り込んでいる模様。とはいえ、いざ「減産
合意見送り」が現実のものとなれば原油安が進む可能性が高いだろう。その場合、米エネルギー株下落を
通じた先進国株安が懸念されるほか、広範なコモディティ価格下落を通じた資源・新興国通貨の下落が想
定される。リスクイベントとして認識しておきたい。
・一方、減産合意が見送られて原油安が進んだとしても、その影響は一時的なものとなろう。この2年程度
で経験したようにWTI原油が40㌦を下回る状況では米シェールオイルの稼動リグ数が急激に減少するほ
か、OPECが減産協議を模索することで需給懸念が抑制される。また、原油安が深刻な打撃を与える状況で
はFEDがハト派バイアスを強めることでコモディティ全般に追い風が吹く。諸点に鑑みると、一方的に
原油安が進行するとは考えにくく、WTI原油は暫くの間40-50㌦のレンジ相場が見込まれる。日本株、
USD/JPYの見通しに大きは修正を迫るような事態を招くとは考えにくい。
160
140
WTI・稼動リグ数
(㌦/バレル)
120
1900
稼動リグ数
(右) 1600
120
80
80
100
1000
80
40
60
700
WTI
20
75
100
1300
60
(DXY) 70
DXY(右)
85
90
95
40
400
100
WTI
105
10
11
12
13
14
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成 DXY:ドルインデックス
100
20
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(備考)Thomson Reutersにより作成
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
2
・そうしたなか、日本株に目を向けると、先行指標(或いは一致指標)として有効なPMI新規受注が2ヶ
月連続で50を回復していることが注目される。PMIの強さは円安によって誇張されている感が否めない
ものの、ここ数週間の株価上昇が、単なるトランプ共和党政権の“良いとこ取り”ではなく、在庫調整の
進展とそれに伴う受注増加といったファンダメンタルズの裏づけを伴っていたことを示唆している。
PMI新規受注・実質輸出
60
(前年比、%)
80
PMI新規輸出受注・実質輸出
60
TOPIX(右) 60
55
(前年比、%)
80
TOPIX(右) 60
40
55
40
20
50
20
0
50
0
-20
45
-20
-40
PMI新規受注
40
45
-40
PMI新規輸出受注
-60
-80
40
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(備考)Thomson Reuters、Markitにより作成 3ヶ月平均
-60
-80
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(備考)Thomson Reuters、Markitにより作成 3ヶ月平均
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
3