Ⅲ 研究の成果と課題 (1) 成 果 ○ 全校体制で組織的に研究を推進することによって、教師の道徳教育に対する意識が高揚し、 道徳の時間の展開にも様々な工夫が見られるようになった。職員室での話題も、道徳教育に 関するものが多くなり、指導力の向上にもつながっている。 ○ これまでの国語との違いに悩むような心情追究のみの授業、教師対児童のやりとりが中心 の分かりきったことを言わせる授業から、児童同士が考えたくなるようなテーマ性のある授 業をめざすための指導方法の工夫・改善について考えられるようになった。 ○ ねらいにせまるためのよりよい指導方法を検討し、道徳的価値の自覚を深めるための授業 展開を工夫することができた。資料のもつテーマを中心として、場面ごとの発問から資料の 主題にせまるテーマ発問を考えることで、児童の問題意識や話合いの方向性が明確になった。 児童も、資料だけの感想にとどまらず、自分事として大きく捉え、自分自身を振り返って見 つめることができるようになってきた。 ○ 自分の意見をもってから、ペアでの話合い、3人・4人のグループでの話合い、それから 学級全体での話合いという段階を経ることによって、全員が自分の考えを表現し伝え合うこ とができるようになった。また友達の意見を聞くことで自分とは違う考え方があることが分 かり、「どれがいい」ではなく、「どちらもいい」という考え方の幅が広がり、お互いのよさ を認識しながら話し合うことができた。 ○ 児童の実態や保護者・教師の願いから道徳教育の重点内容項目を決定し、道徳教育全体計 画を見直したり、別葉Ⅰ・Ⅱを作成したりしたことによって、すべての教育活動の中で関連 づけて道徳性をはぐくむ意識が高まった。特に、全校生での学校行事において、児童が道徳 的な側面からのめあてをもって臨み、行事後に振り返りをすることによって学校全体として の道徳性の向上に効果があった。 ○ 学校における道徳教育の取組を、様々な形で保護者に伝えることにより、学校と保護者や 地域が連携して子どもたちの道徳性を育成していくことの大切さが認識され、道徳教育への 関心や意識が高まった。 ○ 児童の意識調査の結果から、道徳性の向上が見られた。特に、「道徳の時間の勉強がため になる」「自分にはよいところがあると思う」の項目で伸びが見られたことは、教師が検討 を重ねて工夫改善してきたことが児童の意識の中に変化をもたらした結果として、教師の自 信と励みとなった。 (2)課 題 ○ 児童一人一人が、ねらいにせまって考え、道徳的価値の自覚を深めることができたかどう かの評価は、とても難しい。発言やワークシートへの記入により見とれる部分もあるが、話 すことや書くことが苦手な児童に対しての評価の方法も検討していかなければならない。ま た、ワークシートの形式や他教科のようなノートの導入・活用などについても引き続き検討 していきたい。 ○ 発問を吟味し、できるだけ児童の活発な話合いの時間をとりたいとは考えているものの、 やはり教師が話している時間がまだ長い。児童の話合いを中心した「議論する道徳」への変 容のために、更に指導方法について研修を重ねていきたい。 ○ 資料分析の仕方、板書の仕方は、様々な方法がある。資料を教師がどのように捉え、どこ でどんな価値に迫りたいかを検討し、押しつけではなく児童の問題意識にそって自然に考え られるような展開を工夫していきたい。また、視覚的に捉えやすい構造的な板書の仕方につ いても考えていきたい。 ○ 副読本と「わたしたちの道徳」の資料が中心の年間指導計画なので、資料の選択と開発を して、更に充実した指導計画にしていきたい。また、指導時期についても、別葉を生かして 適切な時期に適切な資料が配置できるよう、改善していきたい。 -1- -2-
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