平成 28 年度 部会研究委員会 1 ○ 研究主題 ○ ○ 研究期間 研究目的 研究報告 「生活者としての実践力を育む家庭科 ~これから求められる資質・能力を踏まえた消費者教育の実践~」 平成 28 年4月~平成 29 年3月 学習指導要領の目標である「家庭や地域を創造する能力と実践的な態度を 育てる」をねらいとし、これから求められる資質・能力を踏まえた生活者と しての実践力を育む学習方法の工夫・改善のあり方について、消費者教育の 視点から研究し、その授業実践例を紹介する研究誌を作成する。 はじめに これから求められる資質・能力を踏まえた消費者教育について、大学や国民生活センターでの研 修を重ねるとともに、各学校の実態に合わせた学習方法について研究委員会で検討し、指導助言を 頂きながら、研究を進めた。 2 研究内容 実践1 持続可能な社会を目指したライフスタイルの確立 ~実践!エシカルアクション~ 「 消 費 者 市 民 」と し て の あ り 方 を 理 解 し 、そ れ を 自 ら の 生 活 に 生 か す こ と の で き る 能 力 や 、公 正 で 持 続 可 能 な 社 会 を 築 く た め に 行 動 し 発 信 で き る 力 を 育 む こ と を 目 的 と し た 。 現 代 の 大 量 消 費 社 会 が 生 み 出 す 世 界 規 模 の 諸 問 題 を 理 解 さ せ 、「 エ シ カ ル 」 を キ ー ワ ー ドとして自分自身の生活の中の改善点や新たな取組みについて考えさせた。授業では 「ジグソー法」 「ホワイトボード活用」 「 発 表 」な ど 生 徒 同 士 が 意 見 を 述 べ 合 い ま と め て い く 場 面 を 多 く 取 り 入 れ た 。ま た 、発 表 活 動 を 取 り 入 れ 、情 報 を 発 信 す る こ と で 、生 徒 は学習に対する理解をより深めることができた。 実践2 食品表示をよく見て商品を選ぼう ~身近な商品を活用した授業~ ペットボトル飲料を用いて、食品表示について理解を深 める学習を行った。あらかじめラベルをはがした ペットボ トル飲料を提示し、食品表示の役割について考えた後、グ ループごとにラベルから「原材料」や「アレルゲン」「栄 養成分表示」など、食品表示法で義務づけられている内容 を確認させた。 活動を通して、生徒は表示から多くの情報が得られるこ とに気づいた。また、よりよい商品選択のためには表示を よく見て選ぶことが大切であることを実感していた。 実践3 家庭の経済計画について考える ~あなたが教育資金アドバイザーに!!~ 生徒の多くが卒業後に進学し、地元を離れて生活するが、 大学卒業までにかかる費用について考える機会は少ない。進 路実現のための長期的な視点を持った家計管理が将来必要で あり、今回の取り組みでは、教育費や教育資金確保の種類に ついて学習し、実現可能な経済生活を送る方法を班毎に計画 実際の資料を見ながら資金計画を立てる させた。「教育資金アドバイザー」という立場で考えることで多くの生徒は、自分の進路選択に対し真 剣に考えたり、将来親となった際の長期的な資金計画の重要性について再認識したりすることができた。 実践4 ネット社会における消費者市民をめざして~インターネット通販トラブルから考えよう~ これからの消費者教育において、消費者市民社会の形成に参画する消費者の育成が求められている。 また、スマートフォン等の普及による情報化社会の進展とともに増加する若者のインターネット通販ト ラブルの増加が問題となっている。そのため、インターネット通販トラブルを題材に、ネット画面から 被害を未然に防ぐためのポイントを考えさせたり、批判的思考による意思決定で4種類の T シャツから 商品選択をさせたり、個人の視点だけでなく消費者市民の視点からトラブルへの適切な対応について考 えさせたりした。また、グループ活動を中心とした学習により、理解を深めさせることができた。 実践5 高齢者の生活支援演習 ~消費者被害から守るための啓発活動~ 今 ま で 学 習 し た こ と を 生 か し 、地 域 の 高 齢 者 が 抱 え て い る 課 題 を 解 決 し 、高 校 生 が 主 体的に実践できる授業をしたいと考えた。そこで、高齢者消費者被害の実態をまとめ、 そ の 背 景 を 踏 ま え た 高 齢 者 へ の 啓 発 活 動 を 考 え さ せ た 。活 動 の 中 で 、生 徒 は 、地 域 の 高 齢 者 に 何 が で き る か を 真 剣 に 考 え る 姿 勢 が 見 ら れ た 。そ の 後 、手 作 り の リ ー ス 標 語 を も っ て 老 人 福 祉 施 設 に 訪 問 し 、消 費 者 被 害 防 止 の 啓 発 活 動 を 行 っ た 。利 用 者 の 方 か ら「 気 を つ け る ね 。」と い っ た 多 く の 言 葉 を い た だ き 、活 動 が 実 を 結 ん だ こ と を 実 感 さ せ る こ とができた。 3 研究の成果と課題 消費者市民社会を目指した消費者教育や、近年被害の多い消費者トラブルについて、 「これから求 められる資質・能力」を踏まえ、 「自立した生活者」 「課題を解決する力」 「生活を創造しようとする 実践的な態度」など新しい視点による授業実践研究を行うことができた。また、グループ学習によ る協働的な学習者中心の授業により、生徒の思考力・判断力・表現力を高めることができた。その ためには、課題解決に向けた題材設定や、十分な教材準備、学び合いを方向付ける問いかけや発問 の工夫が大切であることが再認識された。 授業者中心の授業から学習者中心の学び合いの授業の工夫と改善に向けて、今度も多岐にわたる テーマで授業実践研究を行ったり、学習方法とリンクした評価の改善や工夫のある「指導と評価の 一体化」について検討したりすることが、今後の課題である。 ※各研究委員が使用したワークシート等のお問い合わせは、県立教育センター家庭科担当指導主 事まで御連絡ください
© Copyright 2024 ExpyDoc