解答例 現在、若者が仕事を求めて地方から大都市圏へと流出することにより、地方の過疎化や 高齢化が深刻な状況に陥っている。こうした危機的な状況を改善するためには、若者の都 市部への流出を食い止めること、そして若者を地方に呼び込むことが求められる。だが、 それは田舎暮らしの良さや教育・福祉の手厚さを訴えるだけでは不十分だろう。地方の危 機を根本的に救うためには、地方で積極的に仕事を創出していくことが必要不可欠である。 もちろん、現在の地方に仕事がないわけではない。しかし、都市部に比べれば業種に限 りがあるのも事実だ。若者が魅力を感じ積極的に従事したいと思う仕事を増やさなければ、 若者の流出を防ぐことはできないだろう。 それゆえ私は、地方における若者の起業支援を充実させるべきだと考える。ITの分野 をはじめ、最新の技術や発想に敏感な若者の中には、既存の資源を有効活用する方法を考 案できる人も少なくないだろう。実際、記事で紹介されている「地域おこし協力隊」の中 には、間伐材を利用した木質バイオマスで起業を試みた人や、人口減少で生じた空き物件 を多目的な交流施設へと仕立て上げた人もいる。また、インターネットを活用して、地元 の産物や工芸品を世界の市場に売り出すことも可能である。このような様々な発想を受け とめ、独自の起業を支援し、魅力とやりがいのある雇用を生み出していくことが、若者を 確保するためには不可欠である。 地方はともすれば、田舎暮らしの牧歌的で「静的なイメージ」のみを抱かれがちである。 しかし、豊かな自然環境や濃密な人間関係に憧れる若者だけではなく、より幅広く若者を 受け入れるためには、人々が活発に働いている「動的なイメージ」をも喚起していく必要 があるだろう。そのような静と動を合わせ持つ新しい地方像を打ち出し、多様な若者を受 け入れる下地を整えることが、地方活性化のための有効な方策だと考える。
© Copyright 2024 ExpyDoc