こどもの皮膚感染症のおはなし

 こどもがかかる皮膚感染症の原因には,細菌,ウイルス,
真菌の 3 種類があります。
細菌による感染症の中では,とびひが一番多く,続いて
きゅうきん せい ねっしょう よう
ひ ふ
せつ,あせものより,毛のう炎,ブドウ球菌性熱傷様皮膚
しょうこうぐん
症候群などがみられます。
細 菌
ウイルス
真 菌
でんせんせい のう か しん
とびひ(伝染性膿痂疹)
とびひは,かゆみを伴う水ぶくれができます。水ぶくれは
2 ∼ 3 日で急速に大きくなり,大豆からクルミくらいの
大きさになります。水ぶくれは破れやすく,中から汁が出て
ジクジクただれた状態になります。この水ぶくれの汁が離れ
た場所の皮膚について次々と感染していくので“とびひ”
といわれています。夏に多くみられ,アトピー性皮膚炎の
お子さんはかかりやすいといわれています。
1
小さな傷や虫さされあとを爪でひっかいたところから,
主に化膿菌である黄色ブドウ球菌が侵入して起こり,全身
にできます。幼児期に多くみられます。
物質
抗生
治療には,抗生物質の内服や軟膏が使用されます。抗生
物質は,病気の原因となっている細菌を退治する大変重要
なお薬です。治療すると,ジクジクとただれていたところが,
乾いてかさぶたができ,はがれ落ちた後は,跡が残りません。
伝染力が強く,他のお子さんに移りやすいので,接触さ
せないように注意しましょう。
2
めんちょう
面疔(せつ)
めんちょう
顔面にできた化膿したおできのことを面疔といいます。
ほとんどの場合,化膿菌である黄色ブドウ球菌が毛穴に入
り起こります。毛穴の周りに化膿性の炎症が起き,激しい
痛みがあり,患部が熱をもつこともあります。
治療には,抗生物質の内服と軟膏が使用されます。
激しい痛みがあります。
3
きゅうきんせい ねっしょうよう ひ ふ しょうこうぐん
フォーエス
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)
きゅうきん せい ねっしょう よう
ひ ふ
しょうこうぐん
フォーエス
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)は,やけどをし
たときのように皮膚がはがれる病気です。のどや鼻の粘膜など
に黄色ブドウ球菌が感染して増え,その菌が出す毒素(皮膚
がはがれる毒素)が血流にのって全身の皮膚に到達し,皮膚
が赤くなったり,水ぶくれややけどのように皮膚がずるずるは
がれてきます。この病気にかかるのは,ほとんどが乳幼児です。
症状としては,目,鼻,口の周りなどの顔や,首,わき,
太もものつけねなどの皮膚が赤くなることから始まり,次第に
全身の皮膚がやけどのようにシート状にむけます。また一見正
常にみえる部分の皮膚をこするとずるっと破れたりすることが
あります。また,水ぶくれができたり,熱が出ることもあります。
原則として入院します。点滴で水分の補給をしながら,抗生
物質の内服または点滴注射を行います。皮膚の治療はやけど
の場合と同じように行います。回復期には,皮膚は乾燥して,
皮がぼろぼろとはがれます。手と足では薄い膜のようにはがれ
ます。1 週間程度で軽快し始め,3 ∼ 4 週間できれいに治り
ます。
1 年を通じて発症しますが,9 月から 11 月頃に多くみら
れます。
4
に ゅうじ た は つ せ い かん せ ん のうよう
あせものより(乳児多発性汗腺膿瘍)
乳幼児に多くみられる“あせも”は,汗で皮膚の表面が
ふやけたり,汗の出る管(孔)が汚れなどで詰まるとできる,
かゆい赤いブツブツです。そのあせもをかきむしると,化膿
菌である黄色ブドウ球菌などの感染が起き,“あせものより”
に ゅ う じ た は つ せ い かんせん のう よう
(乳児多発性汗腺膿瘍)になります。頭や顔に,小豆大の
硬いしこりができ,だんだん大きくなって赤くなり,盛り
あがってきます。1ヵ所だけでなく,一度に何ヵ所もできたり,
次々にできたりすることが多いのが特徴です。
痛みがあり,リンパ節がはれることもあります。アトピー
性皮膚炎のお子さんは,かかりやすいといわれています。
治療には抗生物質を内服します。
5
あせものよりは,痛みを伴う
固いしこりができます。
かんこう
かんこう しゅういえん
汗孔にブドウ球菌が感染し,汗孔周囲炎を発症します。さら
かんかん
かんせん
かんせんのうよう
に汗管,エクリン汗腺へ感染が進行すると汗腺膿瘍となります。
菌侵入
かんこう
汗孔
かんこう しゅうい え ん
汗孔周囲炎
表皮
かんせん のうよう
汗腺膿瘍
かんかん
汗管
真皮
かんせん
エクリン汗腺
6
とびひ
水ぶくれの汁が皮膚の他の部位につくと,感染が拡がるの
で,かゆくても水ぶくれを破かないように注意します。また
兄弟や他のお子さんにも移りやすいので,治るまでは,接触
しないようにしましょう。
レンサ球菌が原因の場合は,皮膚の症状が治った後に腎炎
やリウマチ熱などになる可能性がありますので,治った後も
10 日間くらいは,抗生物質を飲み続ける必要があります。
めん ちょう
面 疔
めんちょう
面疔のできたところを指でさわらないようにしましょう。
きゅうきんせい ねっしょうよう ひ ふ しょうこうぐん
フォーエス
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)
脱水症状となることがあるので,水分の補給に努めるこ
とが大切です。
あせものより
洗髪,シャワーで清潔を心がけましょう。
7
お薬を飲み忘れない
ことと,
清潔を保つことが
基本です。
抗生物質
8
とびひ
虫さされや傷あとなどを,汚れた指や爪で,かきむしら
ないようにすることが大切です。そのためにはこまめに爪
を切り,手洗いをし,清潔を心がけましょう。
また,入浴,肌着の交換をこまめに行い,皮膚を清潔に
しておきましょう。
めん ちょう
面 疔
多量の汗や,皮膚が汚れていたり,かきむしったりするこ
とが原因となることがありますので,顔を汚れた手指や爪でさ
わったりしないようにしましょう。また,清潔を心がけましょう。
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きゅうきんせい ねっしょうよう ひ ふ しょうこうぐん
フォーエス
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)
かからないようにする予防法は特にはありませんが,発熱が
あり,突然に顔・首・わき・太もものつけねなどに水ぶくれ
ができたり,赤くなって痛がるようであれば,この病気
が疑われますので,ただちに病院へ行くようにしてください。
あせものより
まず,あせもを予防するため汗をかかないように涼しく
してあげましょう。シャワーを浴びたり,冷たいタオルで
汗をふきとるのもよいでしょう。また吸湿性のよい木綿類
の衣類を着用するのも効果的です。
刺激性の強い発汗抑制剤はさけましょう。
またあせもができても,かきむしらないように注意が必要です。
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