2,8-DHA 結晶尿の 1 例

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2,8-DHA 結晶尿の 1 例
キサンチンオキシダーゼ阻害薬投与の効果について
◎永田 勝宏 1)、田中 佳 1)、松本 正美 1)、柳田 善為 1)、中川 静代 1)、橋本 綾 1)、新田 恭子 2)、
飯沼 由嗣 3)
金沢医科大学病院中央臨床検査部 1)、金沢医科大学糖尿病内分泌内科学 2)、金沢医科大学臨床感染症学
3)
【はじめに】2,8-ジヒドロキシアデニン結晶
本症例では尿路結石症を認めていないが、一
(以下 2,8-DHA)は、先天性代謝異常に関与
般的に 2,8-DHA 結石が発見される段階では、
する酵素のアデニンフォスホリボシルトラン
結石による尿路閉塞をきたして腎不全を呈し
スフェラーゼ(APRT)欠損症の尿中で認めら
ていることが多いため、早期に発見、早期に
れる異常結晶であり、尿路結石症や腎不全の
治療を受けることが強く望まれる。今回、臨
原因となる。我々は尿沈渣中に 2,8-DHA 結晶
床への積極的なアプローチにより APRT 欠損
を検出し、キサンチンオキシダーゼ阻害薬の
症と診断され、キサンチンオキシダーゼ阻害
投与により結晶が消失した症例を経験したの
薬投与による治療介入へとつながった。2,8-
で報告する。
DHA 結晶は完全消失し、eGFR は低下してい
【症例】60 歳代男性。2004 年に高血糖、尿糖
るものの治療介入後は半年間横ばいで、腎機
を指摘されたが、医療機関は未受診であった。
能が維持されている。2,8-DHA 結晶は治療に
2012 年 8 月当院整形外科の術前検査で、随時
より改善が見込めるため臨床的意義が高く、
血糖 353mg/dL、尿糖 4+、尿蛋白 3+であった
その出現を常に念頭においた注意深い観察が
ため、内分泌・代謝科を受診し糖尿病と診断
必要であり、かつ臨床への積極的な情報提供
された。以後糖尿病性腎症による慢性腎不全
が重要であることを再認識した。
にて通院中であったが、2014 年 8 月尿沈渣検
【まとめ】尿沈渣検査から 2,8-DHA 結晶の出
査で 2,8-DHA 結晶を初めて検出し(30~49/
現を疑い、APRT 欠損症と診断され、キサンチ
WF)、その後毎回検尿で検出されるようにな
ンオキシダーゼ阻害薬のフェブキソスタット
った(図)。
投与が開始となり、2,8-DHA 結晶の完全消失
【治療経過】患者が遺伝子診断で APRT 欠損
が確認できた。治療開始後の半年間、腎機能
症と診断されたときには eGFR 10~20mL
低下は抑制されていることも確認されており、
/min まで低下しており、重度の腎機能障害を
尿沈渣検査が臨床に大きく貢献した症例であ
呈していた。キサンチンオキシダーゼ阻害薬
った。
のアロプリノールを投与すると、副作用の危
連絡先 076-286-3511(内 4245)
険が高まると判断され、フェブキソスタット
5mg が 2015 年 11 月より開始された。2015 年
eGFR (mL/min)
60
11 月より投与開始した。投与一か月後の顕微
鏡検査で 2,8- DHA 結晶の明らかな結晶の減少
(1~2 /WF)を認めた。2016 年 1 月より
40
10mg に増量され、2 月には 2,8-DHA 結晶が完
30
全に消失、以後半年に渡り結晶は確認されて
遺伝子診断
20
いない。
【考察】APRT 欠損症において尿沈渣における
2,8-DHA 結晶鑑別の役割は極めて重要である。
eGFR
50
10
薬剤による急性
腎障害を疑う
2,8-DHA初検出
(2014.8)
0
2013
2014
2015
フェブキソスタット
投与 (2015.11)
2016(年)