119 2,8-DHA 結晶尿の 1 例 キサンチンオキシダーゼ阻害薬投与の効果について ◎永田 勝宏 1)、田中 佳 1)、松本 正美 1)、柳田 善為 1)、中川 静代 1)、橋本 綾 1)、新田 恭子 2)、 飯沼 由嗣 3) 金沢医科大学病院中央臨床検査部 1)、金沢医科大学糖尿病内分泌内科学 2)、金沢医科大学臨床感染症学 3) 【はじめに】2,8-ジヒドロキシアデニン結晶 本症例では尿路結石症を認めていないが、一 (以下 2,8-DHA)は、先天性代謝異常に関与 般的に 2,8-DHA 結石が発見される段階では、 する酵素のアデニンフォスホリボシルトラン 結石による尿路閉塞をきたして腎不全を呈し スフェラーゼ(APRT)欠損症の尿中で認めら ていることが多いため、早期に発見、早期に れる異常結晶であり、尿路結石症や腎不全の 治療を受けることが強く望まれる。今回、臨 原因となる。我々は尿沈渣中に 2,8-DHA 結晶 床への積極的なアプローチにより APRT 欠損 を検出し、キサンチンオキシダーゼ阻害薬の 症と診断され、キサンチンオキシダーゼ阻害 投与により結晶が消失した症例を経験したの 薬投与による治療介入へとつながった。2,8- で報告する。 DHA 結晶は完全消失し、eGFR は低下してい 【症例】60 歳代男性。2004 年に高血糖、尿糖 るものの治療介入後は半年間横ばいで、腎機 を指摘されたが、医療機関は未受診であった。 能が維持されている。2,8-DHA 結晶は治療に 2012 年 8 月当院整形外科の術前検査で、随時 より改善が見込めるため臨床的意義が高く、 血糖 353mg/dL、尿糖 4+、尿蛋白 3+であった その出現を常に念頭においた注意深い観察が ため、内分泌・代謝科を受診し糖尿病と診断 必要であり、かつ臨床への積極的な情報提供 された。以後糖尿病性腎症による慢性腎不全 が重要であることを再認識した。 にて通院中であったが、2014 年 8 月尿沈渣検 【まとめ】尿沈渣検査から 2,8-DHA 結晶の出 査で 2,8-DHA 結晶を初めて検出し(30~49/ 現を疑い、APRT 欠損症と診断され、キサンチ WF)、その後毎回検尿で検出されるようにな ンオキシダーゼ阻害薬のフェブキソスタット った(図)。 投与が開始となり、2,8-DHA 結晶の完全消失 【治療経過】患者が遺伝子診断で APRT 欠損 が確認できた。治療開始後の半年間、腎機能 症と診断されたときには eGFR 10~20mL 低下は抑制されていることも確認されており、 /min まで低下しており、重度の腎機能障害を 尿沈渣検査が臨床に大きく貢献した症例であ 呈していた。キサンチンオキシダーゼ阻害薬 った。 のアロプリノールを投与すると、副作用の危 連絡先 076-286-3511(内 4245) 険が高まると判断され、フェブキソスタット 5mg が 2015 年 11 月より開始された。2015 年 eGFR (mL/min) 60 11 月より投与開始した。投与一か月後の顕微 鏡検査で 2,8- DHA 結晶の明らかな結晶の減少 (1~2 /WF)を認めた。2016 年 1 月より 40 10mg に増量され、2 月には 2,8-DHA 結晶が完 30 全に消失、以後半年に渡り結晶は確認されて 遺伝子診断 20 いない。 【考察】APRT 欠損症において尿沈渣における 2,8-DHA 結晶鑑別の役割は極めて重要である。 eGFR 50 10 薬剤による急性 腎障害を疑う 2,8-DHA初検出 (2014.8) 0 2013 2014 2015 フェブキソスタット 投与 (2015.11) 2016(年)
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