トランプノミクス、財政拡張+利上げは理論上ドル高

リサーチ TODAY
2016 年 11 月 17 日
トランプノミクス、財政拡張+利上げは理論上ドル高政策
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
下記の図表は日米の長期金利差とドル円相場の推移である。トランプ新大統領の財政支出の拡大政策
への期待から米国10年長期金利が急上昇しており、日米の10年長期金利差は約3年ぶりの水準まで拡大し
ている。また、この日米金利差の拡大とともにドル円相場も、下記の図表のように円安ドル高地合いになって
おり、足元では1ドル109円台に戻った。今年10月の日銀短観で示された想定為替レートは107円程度である
ので、現在の為替水準ならば年初来続いた円高による株式市場の悪循環が断ち切れる可能性もある。
■図表:日米長期金利差とドル円相場
(円/ドル)
(%)
125
2.2
ドル円相場
120
米日10年国債金利差(米-日)(右目盛)
2.1
2.0
115
1.9
110
1.8
105
1.7
100
95
16/1
1.6
16/2
16/3
16/4
16/5
16/6
16/7
16/8
16/9
16/10
1.5
16/11
(年/月)
(資料)Bloomberg よりみずほ総合研究所作成
このようなドル高は極めて理論に沿ったものだ。下記の図表はマクロ経済学の標準的理論、いわゆるマ
ンデル・フレミング理論による為替への影響をまとめたものだ。現在のポリシーミックスは、今後12月に米国
で利上げが予想され(金融引締め)、財政の拡大が期待されることで典型的な自国通貨高(ドル高)となる。
■図表:マンデル・フレミング理論の影響
GDP
金融引締め
↓(低下)
財政政策拡大
-
為替(自国通貨)
↑(自国通貨高)
↑(自国通貨高)
(資料)みずほ総合研究所
ただし、一方向のドル高への制約もある。次ページの図表はドルの名目実効為替レート推移である。米
国で昨年後半に生じた景気減速はドル高が輸出や設備投資にマイナスに働いたことによるものだった。そ
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2016 年 11 月 17 日
の結果、米国財務省が年初からFRBと連携しドル安誘導を行ったことで、年後半の景気が回復した。一方
で10月以降、FRBの利上げ期待から先進国通貨を中心に為替はドル高に戻りつつある。新興国通貨に対
してはドル高の進行が緩やかだったが、ここにきて新興国通貨に対しても上昇の兆しが生じている。
■図表:ドルの名目実効為替レート推移
(2015年末=100)
105
ドル名目実効為替レート
ドル名目実効為替レート(主として先進国通貨)
ドル名目実効為替レート(主として新興国通貨)
100
95
90
15/1
15/4
15/7
15/10
16/1
16/4
16/10 (年/月)
16/7
(資料)Bloomberg よりみずほ総合研究所作成
今年の新興国市場の安定は、ドル安に転じたことがきっかけであったため、ドル高への転換により、下図
のように、米国の「裏庭」の中南米では、米国大統領選の直後から変動が生じており、他の新興国にもそれ
が拡大しつつある。ドルの水準は、新興国への不安と米国の保護主義的な色合いが見られるなかで、ドル
高がどこまで許容されるかで決まる。明示的な水準を示すのは容易でないが、米国の財政拡大をベースと
して株高が進むという金融財政政策フレームワークの転換があるとすれば、一定のドル高は許容されるの
ではないか。従って、今後も保護主義的バイアスでドル高がけん制されるとの懸念を残しつつ、ベースとす
る水準がドル円相場では100円近傍から110円台前半まで修正される可能性があるだろう。すなわち、米国
主導の為替の転換を示す「達磨さんが転んだ」は微調整といえるだろう。
■図表:世界の株価と通貨の変動(11月4日から11月10日の変化)
6
(株価の変化、%)
株高・通貨安
5
(%)
米国 (為替+2.1 , 株価+5.1)
南アフリカ
4
ロシア
(%)
3
トルコ
日本
2
1
韓国
NZ
インドネシア
台湾
香港
インド
ブラジル
▲1
▲4
(%)▲ 6
中国
マレーシア
ドル高・株高
クウェート
タイ
ハンガリー
(%)
0
▲3
ペルー
シンガポール
ポーランド
ルーマニア
▲2
豪州
ユーロ圏
(%)
先進国
中東欧
中東
アフリカ
中南米
アジア
フィリピン
(%)
コロンビア
メキシコ (為替▲7.5 , 株価▲3.1)
▲5
アルゼンチン
▲4
▲3
▲2
▲1
0
1
2
(為替レートの変化、%)
(注)為替レートの変化率はドルに対する各国通貨の増減価率。ただし、米国については名目実効ドルレートの変化率。
(資料)Bloomberg よりみずほ総合研究所作成
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