Market Flash 久しぶりの金利上昇 2016年11月14日(月) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】 ・11月ミシガン大学消費者信頼感指数は91.6と10月から3.4pt改善、市場予想(87.9)を上回った。現況 (103.2→105.9)が小幅に改善したほか、より重要な期待(76.8→82.5)が著しく改善。この指標は足も とまでの2年程度、90を中心に上下する展開が続いている。なお、予想インフレ率は1年先が+2.7%、5 年先が+2.7%と共に10月から0.3%pt上昇。ガソリン価格反発が影響したとみられる。 120 (%) ミシガン大学消費者信頼感指数 現況 110 60 100 40 90 20 80 0 -20 総合 70 期待 60 -40 -60 50 10 11 12 13 (備考Thomson Reutersにより作成 ガソリン価格 80 14 15 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 16 (備考)Thomson Reutersにより作成 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株、S&P500は反落もNYダウは続伸。トランプポジション構築は一巡したが、それでも金融株 が底堅く推移し、これまでの金利上昇で売り込まれてきた高配当株にも買い戻しが入り、NYダウはプラ ス圏で引け。WTI原油は43.41㌦(▲1.25㌦)で引け。USD高が嫌気されたほか、ベーカー・ヒューズ公 表のリグ稼動数増加が需給懸念を誘発。 ・前日のG10 通貨は原油価格下落を受けてNZD、AUD、CADが何れも弱かった反面、JPYの弱さが一服。 USD/JPYは106後半で一進一退となった。他方、EURの弱さは続きEUR/USDは1.08前半へと水準を切り下げた。 新興国通貨も軟調な地合が続きZAR、IDR、KRW等が1%超の下落。JPM新興国通貨インデックスは約8ヶ月 ぶり低水準となった。 ・11日の米債市場はベテランズテーにつき休場。米10年金利は2.150%(+9.3bp)で変わらず。欧州債市場 (10年)は総じて軟調。ドイツ(0.308%、+3.4bp)、イタリア(2.020%、+12.3bp)、スペイン (1.474%、+8.4bp)、ポルトガル(3.484%、+8.4bp)が何れも金利上昇。イタリアは入札が好調な結 果となったものの、国民投票を控えていることもあって2015年7月以来の高水準を記録。周縁3ヶ国加重 平均の対独スプレッドはワイドニング。 【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】 ・日本株はUSD/JPY上昇、予想比好調なGDP統計を受けて高寄り後、上げ幅拡大(10:30)。 ・実質GDP成長率(7-9月期)は前期比年率+2.2%と3四半期連続のプラス成長を確認。市場予想(+ 0.8%)を大幅に上回った。個人消費(+0.2%)、設備投資(+0.1%)が精彩を欠いた反面、輸出(寄与 度+1.8%)が好調で全体の数値を大きく押し上げ、住宅投資(+9.6%)の強さも目立った。全体の成長 率から在庫寄与度(▲0.3%)を除いた最終需要は+2.5%、4四半期平均でも+1.1%と安定成長。このよ 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 うに日本経済は循環的な回復局面にあり、こうした傾向は10-12月期も継続する可能性が高い。 日 GDP寄与度(年率) (寄与度、%) (%) 5 4 3 2 1 0 -1 -2 -3 -4 -5 2010 10 5 0 -5 -10 -15 設備投資 住宅投資 在庫寄与 政府支出 純輸出 個人消費 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 (備考)Thomson Reutersにより作成 <#リスク要因 #米金利上昇 GDP成長率(最終需要) 2011 2012 2013 2014 2015 2016 (備考)Thomson Reutersにより作成 4四半期平均 #新興国通貨> ・米10年金利が節目の2%をあっさりと上回抜けトレンドラインを上方ブレイクしたほか、欧州金利も総じ て上昇基調にある。トランプ共和党の誕生をきっかけに先進国ソブリン債は久方ぶりの金利上昇局面に突 入した模様。米10年金利は大統領選前後に予想インフレ率、実質金利がそれぞれ20bp程度上昇。これは景 気回復期待と予想インフレ率上昇の併存を意味しており、一義的には“良い金利上昇”と理解できる。 ・もっとも、こうした下で米金利上昇に脆弱なアセットが打撃を被り、それが波乱を巻き起こす展開は注意。 従前より筆者は、金融市場のリスク要因に欧米金利の急上昇を挙げてきたが、予想外に早い段階でそれが 実現しつつあるため警戒を強めている。この間、WTI原油は43.4㌦へと水準を切り下げ、新興国通貨が 総じて売り込まれている点はリスク要因として認識しておくべきだろう。実際、メキシコMXN(▲8.7%) の弱さは例外としてもBRL(▲4.9%)、ZAR(▲5.3)を筆頭に大半の新興国通貨が急落し、新興国通貨イ ンデックスは約8ヶ月ぶりの低水準にある。トランプ共和党が掲げる保護主義が、新興国の対米輸出に打 撃との連想も働いているとみられ、新興国の苦境が意識されそうだ。エマージング製造業PMIは7月以 降、節目の50を回復して金融市場に楽観をもたらしてきたが、今後は反転下落が懸念される。同様の観点 から米金利上昇に脆弱なハイ・イールド債、欧州周縁国ソブリン、人民元、REIT、高配当株の下落に注意。 3.5 米10年金利 (%) エマージング通貨 80 78 3 76 74 2.5 72 70 2 68 66 1.5 64 62 1 13/01 13/07 14/01 14/07 15/01 15/07 16/01 JPモルガンエマージング通貨インデックス 60 16/07 15/01 15/07 16/01 (備考)Thomson Reutersにより作成 (備考)Thomson Reutersにより作成 16/07 グローバル製造業PMI 60 先進国 55 50 新興国 45 40 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (備考)Markitにより作成 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2
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