「労働時間管理」をめぐる役員の責任 と求められる対応 女性、高齢者

平成 28 年 11 月号
ベ イ ヒ ル ズ 社 労 士 事 務 所 便 り
〒221-0052 横浜市神奈川区栄町 1-1 KDX 横浜ビル 6 階
TEL : 045-450-6701 (9:00~17:00) FAX : 045-450-6706
【今月の一言】
神奈川・東京の紅葉の見頃は 11 月の中旬以降と
のことですが、銀杏が落ちているのを見ると秋の始
まりを感じます。幼少時代に銀杏拾いに行ったこと
を思い出しますが、やはり匂いは強烈ですね。
それでは今月もベイヒルズ社労士事務所便りを
お届けいたします。
「労働時間管理」をめぐる役員の責任
と求められる対応
◆過労死の責任を問う全国初の「株主代表訴訟」が
提起
銀行の行員だった男性が過労からうつ病を発症
し、投身自殺をした事件で、男性の妻が銀行を訴え、
熊本地裁は、銀行が注意義務を怠り、行き過ぎた長
時間労働をさせたと認定し、
慰謝料など 1 億 2,886
万円の支払いを命じました(2014 年 10 月)。同
事件では、労働基準監督署が発症直前の時間外労働
時間が 207 時間に及んでいたと認定していました。
そして今年 9 月、この妻が、銀行の株主としての
立場で、当時の役員ら 11 人に対し、過労死を防ぐ
体制づくりを怠り銀行に損害を与えたとして、約 2
億 6,400 万円の損害金の支払いを求める株主代表
訴訟を提起しました。
◆株主代表訴訟で追及される役員の責任とは?
役員は、会社に対し忠実義務を負っており(会社
法 355 条等)、違反すると任務懈怠責任(会社法
423 条 1 項)を負います。
株主代表訴訟では、役員の任務懈怠により会社が
損害を被ったとして責任追及がなされますが、過労
死や過労自殺について任務懈怠責任を問う株主代
表訴訟は初めてとのことです。
◆過労死・過労自殺で役員個人の責任を認めるケー
スが相次ぐ
従業員の過労自殺について役員個人の責任を認
めた事件として有名なのが、2011 年 5 月の大庄
(日本海庄や)
事件における大阪高裁判決です。
同事件は、役員の第三者に対する損害賠償責任
を定める会社法 429 条 1 項の規定が、過労死・
過労自殺の事案でも適用されることを明らかに
しました。
2015 年 12 月に和解が成立したワタミ過労
自殺訴訟でも、原告側によれば、和解条項で、
創業者について「最も重大な損害賠償責任を負
う」ことを確認しています。
経営者による長時間労働の放置は、厳しい責
任追及の対象となり得ると言えるでしょう。
◆自社の「働き方改革」を検討してみませんか?
NTT データ経営研究所/ NTT コムオンライ
ン・マーケティング・ソリューションの調査に
よると、長時間労働の抑制に取り組む企業の割
合が 2015 年の「22.2%」から 2016 年の
「32.1%」に増加し、既に多くの経営者が長時
間労働の是正に向けて動き出しています。
女性、高齢者、外国人…「全員参加
型社会」に関する従業員の意識
◆ダイバーシティ推進の時代
人材不足が叫ばれる現在、
労働力の確保の観点
などから、女性や高齢者、外国人を積極的に採
用・活用していこうという流れにあります。
ダイバーシティを進めていくうえで、企業とし
ては実際に働く社員はどのように感じているの
かが気になるところだと思います。
そういった意味では、独立行政法人労働政策研
究・研修機構が昨年 11 月から 12 月にかけて
行った「第7回勤労生活に関する調査」の結果
が参考になるのではないかと思われます(調査
概要:全国 20 歳以上の男女 4,000 人が対象。
有効回答数 2,118 人)。
◆「上司が女性でも抵抗感なし」が大多数
まず、
「女性の職場進出がもっと進むこと」に
ついては、86.4%の人が抵抗感を感じておらず
(「抵抗を感じない」
「あまり抵抗を感じない」
の合計)、男女別でも差が見られませんでした。
また、
「女性が会社の社長になること」
(抵抗感
がない:88.1%)、
「女性の管理職がもっと増え
ること」(同:87.5%)、
「女性の上司が男性の
部下を使うこと」(同:83.1%)、
「大事な商談
の担当者(契約相手)が女性であること」(同)
87.2%)という結果になっています。
そして「男性が育児休業をとること」について
は 70.6%の人が「抵抗感がない」としていま
すが、男女別でみると差が出ています(男性の
抵抗感:32.5%、女性の抵抗感:22.1%)。
人労働者を採用・活用していくことについ
て、従業員の意識は高い(ハードルは低い)
と言えるのではないでしょうか。
11 月税務と労務の手続提出期
限[提出先・納付先]
10 日
○ 源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の
納付[郵便局または銀行]
○ 雇用保険被保険者資格取得届の提出<
前月以降に採用した労働者がいる場合
>[公共職業安定所]
○ 労働保険一括有期事業開始届の提出<
前月以降に一括有期事業を開始してい
る場合>[労働基準監督署]
◆「いくつになっても働きたい」が大多数
年金がもらえるようになった高齢者の就労に
関して、
「健康であれば年齢に関係なく働ける社
会にしたほうがよい」と回答(「非常にそう思う」
「ややそう思う」の合計)した割合が 92.1%
と大多数を占めました。
本人が高齢になり、
年金が支給されるようにな
っても働き続けたいかとの質問については、
「働
く意欲あり」とする割合が 75.8%(「働きたい」
「どちらかといえば働きたい」の合計)となり、
「働く意欲なし」とする割合の 21.8%(「働き
たくない」
「どちらかといえば働きたくない」の
合計)を大きく上回る結果となっています。
◆外国人受け入れの抵抗感は低い
「職場で外国人の同僚と一緒に働くこと」につ
いては 75.3%の人が「抵抗感がない」(「抵抗
感を感じない」
「あまり抵抗を感じない」
の合計)
としています。また、
「外国人が日本人よりも良
い仕事に就くこと」については抵抗感がない人
が 71.0%という結果となっています。
この調査結果を見る限り、女性、高齢者、外国
15 日
○ 所得税の予定納税額の減額承認申請
書の提出[税務署]
30 日
○ 個人事業税の納付<第2期分>[郵便
局または銀行]
○ 所得税の予定納税額の納付<第2期分
>[郵便局または銀行]
○ 健保・厚年保険料の納付[郵便局また
は銀行]
○ 日雇健保印紙保険料受払報告書の提出
[年金事務所]
○ 労働保険印紙保険料納付・納付計器使
用状況報告書の提出[公共職業安定所]
○ 外国人雇用状況の届出(雇用保険の被
保険者でない場合)<雇入れ・離職の
翌月末日>[公共職業安定所]