1 海外安全対策情報 1 治安・社会情勢 (1)殺人件数は,昨年5月以降17ヶ月連続で,前年同月数を上回る傾向が続いている。また, 2011年より国内殺人件数は減少傾向を続けていたが,2015年総件数が前年数から転じ て増加となり,現在の増加の推移から,2016年はさらに前年数を上回ることが予想される。 連邦政府による治安対策は,犯罪組織主要人物の相次ぐ逮捕・殺害等,一定の成果をあげて いる一方,依然として犯罪組織間での対立や縄張り争い等により,白昼路上での銃撃事件や治 安当局への襲撃事件が発生している。 犯罪組織は,治安当局の対応を遅延させるため,バスやトラック等大型車両等で路上にバリ ケードを作ることがあり,一時的に路上で身動きできなくなった市民が銃撃戦の場に巻き込ま れることがある。 (2)強盗,窃盗等の一般犯罪被害は,首都メキシコ市を含め昼夜を問わず引き続き発生している。 公共輸送機関である地下鉄,ミクロブス(ペセロ等の扉のついていない乗り合いバス)内でも 犯罪が多発しており,流しのタクシー(リブレ)の運転手や,運転手と結託した共犯者らによ る強盗事件も発生していることから,それらの公共交通機関の利用は避けるべきである。 また,携帯電話アプリを使用して手配したタクシー乗務員による強盗事件等も報道されてい ることから,その使用には十分に注意をし,運転手の氏名・車両番号を確認する必要がある。 市街地において交通渋滞が著しい箇所や赤信号停車時の車両を狙った強盗事件も頻発してい ることから,車両の運転時には渋滞を避けるなどの対処が必要となる。 (3)ゲレロ州アカプルコ市では、引き続き殺人が昨年を上回るペースで発生しており、また、C NTE(教育労働者全国協議会)は、一部地域において断続的にデモや道路封鎖を行っており、 引き続き注意を要する。 2 一般犯罪・凶悪犯罪の傾向 (1)全国一般犯罪 内務省(SEGOB)が発表した第2四半期(7~9月)の犯罪発生件数報告によれば,総 犯罪発生件数は404,410件と前期(本年4~6月)と比較し2.5%増加した。犯罪種 別の内訳は以下のとおり。 ア 窃盗 103,260件(前期比 6.7%増) イ 殺人 5,784件(前期比 16.8%増) ウ 強盗 40,972件(前期比 2.5%減) エ 強姦 3,398件(前期比 1.4%減) オ 誘拐 275件(前期比 1.1%増) (2)メキシコ市一般犯罪 メキシコ市においては,第2四半期(7~9月)の総犯罪発生件数は45,756件と,前 期(本年4~6月)と比較して0.4%増加した。犯罪種別の内訳は以下のとおり。 ア 窃盗 16,640件(前期比 13.4%減) 2 イ 殺人 239件(前期比 3.4%増) ウ 強盗 4,638件(前期比 9.4%減) エ 強姦 188件(前期比 5.0%増) オ 誘拐 13件(前期比 増減なし) (3)邦人被害事案 邦人被害一覧(2016年)参照 3 テロ・爆弾事件発生状況 (1)邦人被害事案 届け出なし。 (2)邦 人 以 外の 被 害事 案 なし。 4 誘拐・脅迫・恐喝事件発生状況 内務省が発表した犯罪発生件数報告によると,誘拐届出件数は2013年に過去最高であり, その後減少傾向にある。しかし,依然として職場や自宅のみならず,ホテル客室への電話による 脅迫事件が発生している。 (1)邦人被害事案 ア 恐喝 7月7日午後10時頃,在留邦人及び出張者5名が,グアナファト州レオン市において, 外食後,社有車にて帰宅途中にライフルを持った警察官に停止を求められた。武器を積んだ 車があるとの通報があり,車内および手荷物検査,同乗者全員のボディチェックをされた。 危険物等は見つからなかったが罰金として 500 ペソ要求され,同乗していた通訳者を連行す るとの発言が警察側からあったので,現金を支払ったことで解放された。 イ 恐喝 9月3日午前8時30分頃,在留邦人男性が,メキシコ州ナウカルパン市の自宅を出てケ レタロ方面に向けて走行中,後方からパトカーに,停車するよう指示をうけた。警察官から 免許証等を確認され,その後「ケレタロ州ナンバーの車両は,本日走行できない」と言われ た。知り合いに電話で確認しようとしたが,警察官に制止され,7,400ペソで解放する と言われた。もっていないと話したが,ダッシュボード等を物色され,現金3,920ペソ を支払ったところで解放された。警察官は,ベージュ基調色のパトカーに紺色の制服を着用 していた。 (2 ) 邦 人 以 外の 被 害事 案 ア 恐喝 メキシコ州イスカリ市とトラルネパントラ市で恐喝を行ったとして,同州の州警察官2名 が訴えられた。具体的には、被害者である旅行者は,車両で走行中にパトカーに停車を命じ られ,走行許可のシールを貼っていないことを理由に12,000ペソを要求された。運転 手がそれに抵抗したところ,4,600ペソまで値下げしたという。その後,警察官は旅行 3 者を近くのショッピングセンターのATMまで誘導し,そこで現金を引き出すよう旅行者に 命じたが,旅行者が隙を見て当局に通報し,それに気づいた警察官等は逃走した。その後, 本件犯行を犯した警察官等は懲戒免職となった(7月13日報道)。 イ 誘拐 7月19日,チアパス州サンクリストバルデラスカサスの高級ホテルに滞在していた報道 関係者が就寝中,部屋の電話が鳴り,孫娘とともに別のホテルに移動するよう脅迫された。 移動先のホテルで3日間軟禁されたが,その間に犯人等によりフランスに在住する親族にコ ンタクトを取られ,親族は多額の身代金を払った。 ウ 恐喝・誘拐 チアパス州の国境付近で,窃盗や恐喝,誘拐等を行っていたとして連邦警察官6名が逮捕 された。調査によると,連邦警察官は誘拐を敢行し,親族から身代金を得た他,被害者の車 両を強奪した。その他,犯人の警察官のうちの1名は,グアテマラ人を恐喝し,130万ペ ソを奪った事件にも関与している模様(8月10日報道)。 エ 誘拐 ベラクルス州コアツァコアルコス市で,同市の弁護士協会会長が,8月30日夜,自宅に 居たところを押し入ってきた武装グループにより誘拐された。その後,犯人等は被害者の家 族に,100万ペソを身代金として要求していたものの,家族はそれを払えなかったため, 被害者はは拷問を受けた上で殺害されて発見された。 オ 恐喝 メキシコ州ネサワルコヨトル市で,犯罪組織ファミリア・ミチョアカーナのメンバーを名 乗って恐喝を繰り返していたとして犯人3名が逮捕された。 犯人等は,同市にある複数の 市場で,露天商を相手に,いわゆるみかじめ料を要求していたとされる(9月9日報道)。 カ 誘拐 9月13日,スペインサッカー連盟会長の姪が,メキシコ市サンタ・フェ地区の勤務先を 出た後で誘拐された。親族らは翌日に犯人等に身代金を支払ったとされるが,9月15日, メキシコ州において被害者は遺体で発見された。 5 日本企業の安全に関わる諸問題 2015年に起きた邦人を被害とする強盗事件は合計16件(うち8件がけん銃使用 ,4件が 刃物使用)となっており,2014年発生の10件から大幅に増加した。中でも,強盗傷害に至 ったケースが3件発生した。強盗犯の手を振り払ったところ,刃物で頭部を切りつけられて重傷 を負ったケースの他,大声をあげる等して抵抗したため,暴行を受け負傷したもの,他には奪わ れた被害品を取り返そうとしたため暴行を受けたケースがある。 2016年は,第2四半期までに,12件の邦人を被害とする強盗事件が発生しており,その うち強盗致傷に至ったケースは3件発生している。強盗に遭い刃物を向けられた際に,相手の要 求するところが分からない状態で戸惑っていたところ,相手から顔面殴打されて怪我を負ったケ ースの他,乗車したタクシーで出された飲料を飲んだところ,おそらく睡眠剤入りであったため か急に昏睡状態となり,所持品を奪われた上に遠方の路上に放置されたというケースもある。 4 強盗事件等に遭った場合は,抵抗する・大声をあげる・逃げる等,犯人を刺激するような行動 はくれぐれも避ける必要がある。また,これらの強盗被害の多くが日没後に発生しており,日没 後の屋外における行動については,細心の注意を要する。 一方で,犯罪組織による殺人事件等凶悪犯罪の被害者は,大半が敵対する組織や治安当局であ り,日本企業や在留邦人が直接の攻撃対象として被害が発生しているわけではない。しかし,犯 罪組織の対立抗争が激化した地域では,それに伴い治安が著しく悪化する場合もあり,犯罪組織 間の抗争がレストラン等の公共の場で行われ,邦人が巻き込まれるといった被害に遭う可能性も ある。 その他,メキシコ国内では依然として富裕層や外国人居住者を対象とした誘拐事件が発生して いる。出勤・退勤時を含む外出時の行動のパターン化を避ける他,個人情報の厳重な管理を行い, 滞在先ホテルや住居の選定についてはセキュリティーレベルを充分に考慮し,夜間の一人での外 出を避ける等の対策が求められる。 以上
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