4350 メディカルシステムネットワーク

(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
4350 メディカルシステムネットワーク
~調剤薬局のネットワーク事業で業界 No.1、独自の地域ケアシステムを展開~
2016 年 11 月 17 日
東証 1 部
ポイント
・今 2017 年 3 月期は、診療報酬改定(薬価改定と調剤報酬改定)の影響が想定を上回り、
その他事業の赤字拡大もあって、減益幅が拡大しよう。上期は大幅減益、下期に増益復帰
というパターンであるが、通期では経常利益で前年度比 40%減となろう。来期は今下期
のペースが続くので、経常利益 35 億円(同+52%)と急回復しよう。中期 3 か年計画の経
常利益目標 38 億円にはやや届かないが、これから実施する組織再編の効果によって、当
期純利益は計画を上回ってこよう。
・当社は医薬品の卸と調剤薬局を結ぶネットワークで業界 No.1、医薬品の取扱高でも業
界トップクラスである。発注システム、在庫管理システム、レセプトデータ管理システム
など、自社開発によるネットワークシステムの提供で、自社店舗の売上高では業界 7 位に
とどまるが、ネットワーク加盟店舗数と医薬品の仕入高で独自の強みを発揮する。
・中期 3 カ年計画では、地域医療を支える企業を目指し、医薬品ネットワークの拡大と
「未病・予防-医療-介護」を支える地域薬局機能の充実を目指している。医薬品ネット
ワークの加盟店を 9 月末現在の 1597 件から 2200 件への拡大を目指すが、その先の展望
も開けつつある。調剤薬局向けの「不動在庫消化サービス」(期限切れ前に不用な医薬品
を相互活用)が認知度を高め、新たな連携を梃子に加盟店を大幅に増やすことができよ
う。自前の薬局は、同 374 店を 500 店に伸ばす計画である。
・
「ひまわり看護ステーション」を買収して、訪問看護事業に参入した。地域薬局の薬剤
師が訪問看護師と連携することで、在宅ケアのサービス向上とかかりつけ機能の発揮に結
びつけることができる。そのスタートである。また、長野の独立系システム開発会社「ズ
ー」と業務提携して、薬剤師用タブレットアプリの活用を支援しながら、ネットワーク加
盟件数の加速を目指す。これは効果が見込めそうである。
・組織再編の中では、サービス付き高齢者向け住宅、医療介護施設向け給食、治験施設支
援など、周辺事業の収益性をいかに改善するかが課題である。2 年毎の診療報酬改定で業
績は上下するものの、中期的には経常利益 50 億円が十分想定できるので、今後 ROE も向
上してこよう。つれて、株式市場における評価も大きく好転するものと期待される。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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目
次
1. 特色
調剤薬局に独自のネットワークシステムを築く
2. 強み
自社開発のシステムでサービス向上と効率化を推進
3. 中期経営方針
4. 当面の業績
5. 企業評価
調剤薬局のネットワークで圧倒的トップを目指す
薬価改定の影響を乗り越え、来期は大幅増益へ
ズー、芙蓉総合リースなど新たな連携効果に注目
企業レーティング B
株価(16 年 11 月 16 日) 380 円
PBR 1.15 倍
ROE 6.4%
時価総額 114 億円(29.9 百万株)
PER 17.3 倍
配当利回り 2.6%
(百万円、円)
決算期
売上高
2009.9
36786
2010.9
営業利益
経常利益
当期純利益
EPS
配当
1440
1266
431
19.5
3.75
41131
1528
1329
473
20.4
4.50
2011.9
46508
2262
2139
1001
38.6
6.25
2012.3
25410
1357
1314
518
20.0
3.75
2013.3
54827
2046
1912
756
29.1
8.0
2014.3
66181
2091
2019
668
27.7
8.0
2015.3
75548
2641
2540
885
37.1
8.0
2016.3
87715
3783
3860
1720
60.1
9.5
2017.3(予)
90000
2300
2300
650
22.0
10.0
2018.3(予)
98300
3600
3500
1700
57.4
11.0
(16.9 ベース)
総資産 50325 百万円
純資産 10188 百万円
自己資本比率 19.5%
BPS 331.8 円
(注)2012.3 期は決算期変更で 6 ヵ月決算。ROE、PER、配当利回りは今期予想ベース。09.9
期で 1:200、12 年 4 月、12 年 6 月に各々1:2 の株式分割を実施。それ以前の EPS、
配当は修正ベース。
担当アナリスト
鈴木行生
(日本ベル投資研究所 主席アナリスト)
企業レーティングの定義:当該企業の、①経営者の経営力、②事業の成長力・持続力、③業績下方修正の可
能性、という点から定性評価している。A:良好である、B:一定の努力を要する、C:相当の改善を要する、
D:極めて厳しい局面にある、という 4 段階で示す。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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1.特色
調剤薬局に独自のネットワークシステムを築く
薬局と医薬品の卸を結ぶ情報システム
当社は、病気になった患者が医者に診てもらったあと処方箋をもらい、近くの薬局に行っ
て薬を受け取る時の調剤薬局のネットワークビジネスが事業の柱である。調剤薬局では、必
要な薬を医薬品の卸問屋から仕入れる。この時の受発注システムや薬局内の薬にかかわる
情報システムを得意とする。そのための情報システム開発を自社で行い、サービスを提供し
ている。
田尻社長は北海道の小樽で育ち、起業した時の三銃士も皆、小樽の仲間である。田尻氏は
かつて医薬品卸の会社で仕事をしていた。薬局や病院への営業は昼休みと夕方しか先方に
会えない。この仕事のやり方を、ネットを活用して抜本的に変えたいと考えていた。小学校
からの同級生であった秋野氏(副社長)は、実家が医薬品の卸をやっていたが、自ら薬局を立
ち上げていた。沖中氏(会長)は医薬品の卸に勤めていたが、その中でシステム開発を手掛け、
その後システムフォーというシステム会社を立ち上げていた。この 3 人が話し合って、三銃
士のごとく当社を起業したのである。
マネジメントとコーポレートガバナンス
2015 年 6 月に、三銃士の一人、沖中副社長が会長に就任した。田尻社長(68 歳)より 4
歳年上なので会長となり、もう一人の秋野専務が副社長になった。また、次世代を担うマネ
ジメントとして、田中常務、坂下常務がいずれも専務に就任した。
独立社外取締役では、JR 北海道のトップを務めた小池明夫氏と、金融機関出身の一色浩
三氏(日本政策投資銀行元理事)が入った。社外取締役が 2 名入って、リスクマネジメント
のあり方など取締役会での議論が活発になっている。
北海道から全国に展開、サプライチェーンマネジメントの効率化を目指す
田尻社長は 17 年前、当時の流通の仕組みではコストがかかりもったいない、情報の提供
や物流の効率化で付加価値を作る必要がある、と考えた。90 年代にインターネットが普及
してきたので、このサプライチェーンマネジメントを担う情報システムを作ろうと決断し
た。日本の流通コストは 7~8%、米国は 3%以下である。
仕組みとしては、スーパー、コンビニの POS レジのようにできると考えた。仕入れ、在庫
に関わる受発注システムの自動化である。医薬品の価格は 2 年に 1 度の薬価改定で決まる
が、卸と調剤薬局がバランスのとれた合理化で互いに収益を確保することを構想した。
メディカルシステムネットワーク(MSNW)は 1999 年 9 月に創業した。2002 年 3 月に、創業
2 年半で大証ヘラクレスに上場し、2008 年東証 2 部、会社設立 11 年目の 2010 年 6 月に東
証 1 部に上場した。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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北海道から本州を目指す時に、三井物産と組むことにした。三井物産は当社本体に 8%ほ
ど出資した。さらに医薬品ネットワーク事業に関して、エムエムネット(MM ネット:当社
51%、三井物産 49%)を合弁で作り、三井物産から代表取締役副社長が経営に入った。全
国の地銀を通して調剤薬局を紹介してもらうなどして、ネットワークの拡充に力を入れた。
この MM ネットは当初の目的を達成したので、2013 年 7 月に三井物産との合弁は解消し、MM
ネットの事業も本体に吸収した。
メディカルシステムネットワーク(MSNW)の事業領域
SMO事業
(病院向け治
験サービス)
医薬品メーカー
医薬品卸
約110社
業界売上10.8兆円
約110社
業界売上9兆円
新薬メーカー
9.8兆円
給食事業
(病院・福祉施
設内受託業務)
サービス付き
高齢者向け
住宅
病院・医院
11万施設
医薬品
ネットワーク
事業
メディカルモール
事業
調剤薬局
後発品(ジェネリック)
メーカー
患
者
国民医療費
40兆円
5.7万店舗
業界売上7.1兆円
主要30社0.9兆円
地域医療を支える
「未病・予防-医療-介護」機能を
充実した薬局ネットワークの拡大
調剤薬局
事業
訪問看護
事業
なの花ブランドは業界 7 位
ネットワークとは別に、当社が自前で展開する薬局のブランドは「なの花薬局」で統一化
を進めている。北海道からスタートして地域薬局網作りに力を入れながら、全国展開を図っ
てきた。目標は地域の人々の「かかりつけ薬局」になることで、そのための薬剤師の教育(集
合研修や e ラーニング)
、在宅診療のための在宅薬局にも力を入れている。自社調剤薬局は
2016 年 9 月末現在 374 店舗に増えている。
自社ブランドの調剤薬局は、アインファーマシーズ、日本調剤、クラフト、共創未来グル
ープ、クオール、総合メディカルに次いで、MSNW は業界 7 位である。その中で、もともと
基盤のある北海道では、店舗数でアインファーマシーズを抜いて、当社がトップである。
調剤薬局が取り扱う薬品の市場は 7.1 兆円。このうち、業界トップのアインファーマシー
ズでも売上高が 2400 億円であり、その市場シェアは低い。ドラッグストアは市場が 6 兆円
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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ある中で、トップのマツモトキヨシなど大手 7 社で 51%を占める。調剤薬局は大手 7 社で
シェア 12%にすぎず、今後大手がシェアを上げる余地は大きい。
M&A については、いくつかの形がある。調剤薬局事業を担うファーマホールディングが、
サンメディックや共栄ファーマシーを買収した時は株式譲渡であった。2011 年にサンメデ
ィックがメウスを買収した時は吸収合併、共栄ファーマシーがケイツージャパンを買収し
た時は事業譲渡の形をとって、店舗を中心に譲り受けてきた。また、ドラッグストアの傘下
にある調剤薬局の仕入れビジネスが当社に入ったという事例もある。
調剤薬局関連の上場企業比較(関連5社)
社名
コード
市場
MSNW
アインHD
日本調剤
クオール
総合メディカル
4350
9627
3341
3034
4775
東証1
東証1
東証1
東証1
東証1
業界順位
店舗数
売上高(15年度)(億円)
経常利益(億円)
売上高経常利益率(%)
7位
373
877
39
4.4
1位
881
2348
152
6.5
2位
533
2192
99
4.5
4位
588
1250
67
5.3
6位
578
1207
62
5.1
株価 (11/16) (円)
時価総額 (億円)
PBR (倍)
ROE (%) PER (倍)
配当利回り (%)
380
114
1.15
6.4
17.3
2.6
7110
2267
4.22
16.8
25.0
0.7
4320
692
2.01
19.3
10.4
1.2
1430
513
2.25
16.9
13.3
1.7
3240
497
1.58
12.1
13.0
1.5
(注)売上高、経常利益は全社ベース。業界順位は調剤報酬額ベース。アインHDは2016.4期ベース。
PBR、ROE、PER、配当利回りは直近予想ベース。
なの花スタンダード作り
「なの花スタンダード」というネーミングを使っている。10 年後にリーディングカンパ
ニーを目指すには、なの花ブランドを特別なものにする必要がある。一定の水準をクリアし
た薬局づくりということで、自ら新しい標準(スタンダード)を作ろうとしている。
なの花薬局は、
「なの花スタンダード」を確立すべく力を入れている。薬の過誤防止や在
宅医療の積極化など、地域密着を図っている。そのためには、教育レベルの向上が必須であ
り、研修担当者の増員を進めている。また、調剤報酬改定のハンドブックを出して好評であ
る。薬剤師が患者の状況をよく把握して、薬の事故を事前に避ける(プレアボイド)ように
対応する。その情報を医者にフィードバックして、薬の組み合わせを変えてもらい、副作用
を防ぐ。毎月 200 事例もあり、社内ではそのコンテストも実施して活動を盛り上げている。
また、当社は毎月 63 万枚以上の処方箋を取り扱っているが、そのうち在宅医療では、癌
の疼痛緩和の処方箋など自己で療養している患者の分が月 1.8 万枚程度ある。まずは 2 万
枚を目指し、今後もさらに拡大するように取り組んでいく。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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自社の薬局の構成は、小型の店が 5 割(薬剤師 2~3 人、20 坪)、中大型の店(50 坪程度)
が 3 割、医療モールの店が 2 割という内容である。将来は、薬局が予防や未病を担っていく
ことがリーディングカンパニーとして必要になってくる。そこで当社は栄養士による食事
療法のサポートにも取り組んでいる。
現在在宅実施店舗は 283 店で、全体の 76%を占めており、いずれ全店に広げる方向であ
る。在宅支援薬局には、在宅専門の薬局もある。介護施設から処方箋を受け、それだけで成
り立つ薬局も出始めた。現在1つある。専門化できれば効率はよいが、まだ専門化できると
ころは少ないので、既存の薬局が双方へ対応していく。
医薬品ネットワークに加盟する調剤薬局の7エリア別店舗数
(店)
自社店舗数
加盟店店舗数
合計
2014.3末 2015.3末 2016.3末 2014.3末 2015.3末 2016.3末 2014.3末 2015.3末 2016.3末
関東・甲信越エリア
67
75
79
231
287
346
298
362
425
北海道エリア
110
112
115
106
95
106
216
207
221
東海・北陸エリア
30
42
44
130
140
183
160
182
227
九州・沖縄エリア
37
35
36
87
106
159
124
141
195
近畿エリア
45
53
48
142
78
99
187
131
147
東北エリア
6
5
6
85
88
93
91
93
99
中国・四国エリア
26
23
25
61
61
61
87
84
86
合計
321
345
353
842
855
1047
1163
1200
1400
在宅医療における薬局、薬剤師の役割
例えば、札幌のなの花薬局南郷店の薬剤師は、個人宅、グループホーム、介護付き老人ホ
ーム、特別養護老人ホームなど 260 名の在宅業務を担当しており、月に 1~2 回 400 件の訪
問を行っている。16km 圏内の地域を 1 件 10~30 分で訪問する。医師、看護師、薬剤師、ケ
アマネジャー、介護士、福祉用具貸与業者など多職種がミーティングをしながら連携してい
く。医師と一緒に行く、ケアマネジャーと一緒に行く、薬の管理ができない人のところに行
く、などさまざまなケースがある。
在宅薬局は、居宅訪問 1 回につき 650 点(1点 10 円)の加算があるが、その報告書を書
くのに結構手間がかかる。また薬についても、飲み間違い、飲み忘れのないように色を付け
たり、箱に入れるなど分かりやすくする必要があり、在宅への対応は時間がかかる。
今後在宅薬局としてのサービスを、生産性を上げながらどのように拡大していくかは課
題である。需要は間違いなく増えていくので、当社では、良いサービスと効率が両立するよ
うな在宅薬局の仕組み作りに取り組んでいる。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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SMO は調剤薬局とのシナジーに活用
当社は治験(臨床検査)の支援も行っている。新薬の開発にあたって、病院でさまざまな治
験が行われる。新薬を開発する医薬品メーカー側ではなく、治験を行う病院側をサポートす
るビジネスが SMO(病院などの治験施設を支援する業務)である。
少し大きな専門性のある病院は、何らかの新薬の開発に当たって、その協力をすることが
ある。病気の治療を図るには、新薬が欠かせないからである。このサービスは調剤薬局とシ
ナジーがある。そういう病院で専門医として働く医師は、いずれ開業する可能性が高い。そ
の開業情報をいち早く仕入れて、開業サポートをし、メディカルモールとして調剤薬局もオ
ープンすれば、うまくシナジーが得られるのである。
SMO を担う子会社エスエムオーメディシスは、そのビジネス自体で利益をあげるよりも、
調剤薬局事業とのシナジー効果を重視する。この SMO は北海道中心で展開している。
薬剤師教育専門機関を社内に有する
当社は、薬剤師研修教育専門機関「北海道医薬総合研究所」を社内に有している。ここは、
薬剤師研修の資格認定機関として日本薬剤師研修センターから認定を受けた研修認定薬剤
師制度実施機関の1つである「北海道医薬総合研究会」と連携している。
薬剤師は資格をとった後も、研修を受けて自らの技量を磨いていく必要がある。必要な単
位を認定されると、研修シールが発行され、認定薬剤師となる。ネットワークの加盟店にも
こうした研修を積極的に導入することで、質的向上を支援している。同業の大手企業はこの
ような機能を有していないので、当社の特色となっている。
2.強み
自社開発のシステムでサービス向上と効率化を推進
医薬品ネットワーク事業でオンリーワン
当社は自前で 374 店舗の調剤薬局を展開するが、それも含めて、当社のネットワークを活
用している薬局は 1600 件に及ぶ。この数は業界トップである。当社のようなネットワーク
システムを持っている同業他社はない。その強みは何か。通常は医薬品卸への大量発注によ
るバイイングパワー(購買力)を行使して、安く仕入れるということが考えられるが、当社は
方針として無理なバイイングパワーは使わない。
薬局での薬の価格は国によって決められているので、販売価格に自由度はない。その中で、
薬局と卸がマージンの取り合いをしても生産的でないと考えている。むしろ、デッドストッ
クにならないような在庫の有効利用によるコスト削減、薬剤師教育や店舗管理の効率化な
どによって、システムの利用度をあげることに力を入れている。こうした当社のネットワー
クの使い勝手の良さが紹介営業に繋がっている。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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卸と調剤薬局を結ぶ当社のネットワークシステムは、価格交渉、在庫管理、自動発注、決
済、薬剤師の教育などをビジネスとして担っている。年間の医薬品の取扱高は、2005 年 9 月
期の 118 億円から 2010 年 9 月期 537 億円、2016 年 3 月期 1237 億円と急ピッチで増えてき
た。ネットワーク事業の収入は売上全体の 4%だが、営業利益では 35%を占める高収益部門
である。ここを伸ばすことが最大の戦略である。
医薬品等ネットワーク事業
2013.3
1033
948
2014.3
1163
1124
2015.3
1200
977
2016.3
1400
1237
発注手数料(百万円)
897
1018
564
1255
システム販売額(百万円)
586
933
658
1213
その他(百万円)
138
174
124
181
合計(百万円)
1622
2126
1348
2650
(注)加盟店舗数には自社店舗も含む。2012.3期は6ヵ月決算。
1490
1183
170
2843
1601
1029
183
2814
1913
1109
212
3235
加盟店舗数(店)
医薬品発注取扱高(億円)
2010.9 2011.9
597
740
537
704
2012.3
854
415
医薬品ネットワーク事業の営業利益率は 50%台と極めて高い
調剤薬局は、患者が医者の処方箋によって求めてくる薬をある程度取り揃えておく。その
ために、必要と思われる薬を医薬品の卸に注文する。この受発注システムを当社が担当して、
その手数料を得る。必要な薬には常に余剰となるものがあり、どう在庫管理するかによって
無駄を排除し、コストの削減になる。薬局間で在庫のやり取りができれば、期限切れの薬の
廃棄ロスも少なくて済む。ネットワーク事業は、加盟店がこのネットワークを通じて仕入れ
た金額の一定料率を発注手数料として売上げにたてる。仕入額に一定の料金をかけたもの
が、ネットワークの使用料として当社の収入となる。当社全体の平均的なネットワーク料率
は 1.5%前後とリーズナブルである。
この収入が毎月入ってくるので、加盟店が増えるほど収入は上がってくる。これとは別に
システムの販売もある。レセプトを処理するレセプトコンピューター(ファーマシーエース)
の販売も、新規加盟やシステムの入れ替えで収入となる。システム販売の利益は発注手数料
に比べれば高くないが、安定した更新需要はある。
実際、新規加盟に伴う情報機器のシステム販売の粗利は 10%程度で、医薬品の発注手数料
で稼いでいく。当社のネットワーク事業は、売上高営業利益率が 50%台と極めて高い。
トータル・メディカルサービスを買収
2013 年 11 月に、当社の子会社で調剤薬局を統括するファーマホールディングが、トータ
ル・メディカルサービス(TMS)を公開買付(TOB)によって買収した。投資額は 51 億円であ
った。これによって、九州地区での店舗数が大幅に充実した。九州において、TMS は総合メ
ディカルに次いで、2 番手であった。九州で TMS 32 店+当社 5 店、中国地区で TMS 3 店+
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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当社 23 店という規模であった。全国では、282 店(2013 年 9 月末時点)に 35 店が加わった
ので、その効果は大きいものであった。
調剤薬局のエリア別自社店舗数
エリア
北海道
関東甲信越
近畿
東海北陸
九州沖縄
中国四国
東北
2012.3末 2013.3末 TMS 2014.3末 2015.3末 出店数 退店数
101
34
41
20
4
19
4
109
62
44
24
5
20
5
0
0
0
0
32
3
0
(店)
M&A 2016.3末
110
67
45
30
37
26
6
112
75
53
42
35
23
5
4
1
0
2
1
0
1
-2
0
-5
0
-1
0
0
1
3
0
0
1
2
0
115
79
48
44
36
25
6
合計
223
269
35
321
(注)TMS(トータル・メディカルサービス)店舗数。
345
9
-8
7
353
当社は絶えずシナジーを考えており、ドミナントを形成できるかどうかがポイントであ
る。子会社となった TMS の大野社長はそのまま経営を担っている。TMS とのシナジーについ
て、大野社長とは考え方が合うので、九州は任せた。TMS は、薬局のアメニティも高い。当
社のネットワークシステム、在宅医療サービスなどで展開の余地はかなりある。
2014 年 3 月期よりトータル・メディカルサービス(TMS)が連結に入った。TMS の 2015 年
3 月期への寄与度は年商で 101 億円、経常利益 253 百万円となった。
TMS が手掛けている病院給食については、今後とも続けていく。給食事業はまだ赤字であ
るが、利益面では収支トントンを目指していく。一方、TMS が行っていた事業の中で、医薬
品の卸については事業として撤退した。年商 15 億円ほどあったが、利益への影響はなかっ
た。
主要子会社の業績
調剤薬局
コムファ
サンメデック
共栄ファーマシー
トータル・メディカル
サービス(TMS)
決算期
売上高
2013.3
2014.3
2015.3
2016.3
2013.3
2014.3
2015.3
2016.3
2013.3
2014.3
2015.3
2016.3
2015.3
2016.3
11692
13546
13600
14895
7380
10433
13956
17817
15613
17163
17710
18765
10158
11360
(百万円、%)
経常利益 同利益率
805
753
793
909
254
233
616
885
112
74
358
700
253
283
6.9
5.5
5.8
6.1
3.4
2.2
4.4
5.0
0.7
0.4
2.0
3.7
2.5
2.5
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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経営改革による薬局の収益性改善が進展
これまで調剤薬局の子会社の収益格差が十分縮まらないことが、一つの課題であった。連
結売上高の 10%を越えている子会社(薬局)は 4 つあるが、コムファに比べて、サンメディ
ックや共栄ファーマシーの収益性が低かった。関西を基盤とする共栄ファーマシーについ
ては、経営体質の強化にここ数年力を入れてきたが、新規出店が上手く行かなかったことも
あり、収益性の回復が遅れていた。ここに手を打って、2015 年 3 月期からかなり好転して
きた。トータル・メディカルサービスの単体の業績にはのれんの償却分を含んでいるので、
2 億円近くその影響がある。実態としての薬局の収益力は 4%台を確保している。
業界 8 位の阪神調剤薬局と業務提携し、流通改革を実践
2012 年に業務提携した阪神調剤ホールディングと医薬品仕入れの合弁会社 H&M(出資比
率当社側 51%、阪神調剤 49%)は、2013 年から活動を開始した。関西では調剤薬局 300 件を
まとめることになるので、業界でトップクラスである。医薬品の仕入れ、流通合理化に共同
で取り組み、サプライチェーンを強化している。
調剤薬局チェーンの業界順位
(2015年度ベース)
順位
会社名
アインファーマシーズ
1
2
日本調剤
3
クラフト
4
クオール
5
共創未来グループ(東邦HD)
6
総合メディカル
ファーマホールディング(MSNW)
7
8
阪神調剤薬局
9
アイセイ薬局
10
たんぽぽ薬局
ファーマライズホールディングス
11
12
ファーコス
13
フロンティア
14
薬樹
15
メディカル一光
16
エスマイル
(億円、店)
調剤報酬額
2070
1888
1575
1046
1000
951
778
645
581
432
418
342
333
312
234
206
店舗数
881
526
677
534
577
576
354
257
311
118
248
200
139
130
93
132
(出所)ドラッグマガジン、2016年ポケット版
阪神調剤薬局は、兵庫、大阪を中心に東京も含めて直近で 310 店舗を有し、業界 8 位であ
る。7 位の当社と単純合算すれば、両社で業界 4 位のポジションに位置する。業務提携した
狙いは、仕入れにおける協業である。この 2 社の調剤薬局を合計すると、仕入れ規模では業
界トップのアインファーマシーズを抜いてトップとなる。こうしたバイイングパワーの強
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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化を通して、田尻社長が長年主張していた医薬品卸と調剤薬局のプライシングのあり方に
ついて、新しい仕組みを作っていこうとしている。
H&M では、卸との勉強会を 1 年余り続けた。マージンのあり方、決済期間と金利負担、配
送頻度と在庫の兼ね合いなど、どういう値決めが合理的かという点について議論を重ねた。
2014 年 2 月に前回の薬価改定に伴う値決めが決着したが、その時には、同 4 月の薬価改
定の影響についても、その折り込み方がほぼ固まっていた。2015 年 3 月期は 2014 年 9 月ま
でに価格が決まった。その意味では、H&M によっていい効果は出てきている。
H&M のマネジメントは、2015 年 6 月に岩崎社長(阪神調剤ホールディングス社長)が会長
へ、田尻副社長(MSNW 社長)が社長に就いた。2 年を経て、規定の路線であった。
ネットワーク加盟と自前薬局は経営の両輪
薬局の役割も単なる薬の処方だけではなく、予防、医療、介護までを含めて新しいサービ
スのあり方を工夫していく必要がある。また、当社はネットワーク加盟店に対しては、薬剤
師の研修も提供していく。社内の薬剤師だけではなく、広く機会を提供して、人材の育成を
通して連携の強化を図っていく。
ネットワーク事業は、一段と強化していく。当社は医薬品受発注システムやレセコン(レ
セプトコンピュータシステム)
、債権流動化サポート業務で独自の強みを有するが、医療分
野における IT 化を一段と促進していくことが求められる。サプライチェーンの中で、新し
いイノベーションを起こすことや、そのために他の企業とも連携していく。
加盟店を今後 2000~3000 件に増やす手立てとしては、当社のネットワークに加盟するメ
リットをよりはっきりさせていく。基本的には、システムベンダーとの連携を強化していく
ことや、ジェネリックの仕入ネットワークを独自に作っていく方針である。
日本の医薬品の市場は 10.8 兆円である。その内新薬が 9.8 兆円で、ジェネリックと言わ
れる後発品は 0.9 兆円である。ジェネリックは、新薬の特許が切れた後に同じ薬効のものを
作るので、価格が安くなり、患者にとっても負担は軽くなる。こういったジェネリックの指
導も調剤薬局が担うことになるが、選ぶのは患者であり、高い薬の方が、収益性がよいのも
明らかである。その薬局の受発注は全国でみるとまだ電話やファックスを利用している方
法が 4 割以上を占めており、ネットワークシステムの利用は遅れている。
沖中会長が調剤システムを担当し、秋野副社長が調剤薬局を担当してきた。ネットワーク
に加盟したいという薬局は大いに歓迎し、ネットワークに加盟している薬局でも当社と経
営を一体化したいというニーズもある。また、ネットワークに入るのではなく、直接当社が
M&A をする場合もある。当社のネットワークが加盟店に役立つという点では、価格代行+決
済代行+ファイナンス+在庫という機能がある。大量仕入れの中で価格が決まる。決済も速
やかに進む。支払いのサイトが通常は 3 カ月程度だが、当社は 2 カ月で対応する。流通在庫
を減らすように対応する、といったメリットがある。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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セグメント別業績
2013.3
2014.3
2015.3
(百万円、%)
2016.3
医薬品等ネットワーク事業
売上高
2650 (+8.7)
2843 (+7.3)
2814 (-1.0)
3235 (+15.0)
営業利益
1221 (+10.8)
1475 (+20.7)
1549 (+5.1)
1776 (+14.6)
同利益率
46.1
51.9
55.1
54.9
調剤薬局事業
売上高
52581 (+12.1) 63006 (+19.8) 71743 (+13.9) 82002 (+14.3)
営業利益
1766 (-20.1)
1840 (+4.2)
2377 (+29.2)
3412 (+43.5)
同利益率
3.4
2.9
3.3
4.2
賃貸・設備関連事業
(調剤薬局関連、
売上高
1122 (+13.6)
1317 (+17.4)
1517 (+15.2)
2430 (+60.2)
高齢者賃貸住宅関連)
営業利益
111 (-12.7)
-39 (na)
25 (na)
129 (+409.3)
同利益率
9.9
-3.0
1.7
5.3
給食事業
(病院、福祉施設内) 売上高
607
1932 (+218.3) 2830 (+46.5)
営業利益
ー
-12
-13 (na)
-89 (na)
同利益率
-2.0
-0.7
-3.1
その他事業
(SMO、
売上高
252 (+3.1)
407 (+61.5)
182 (-55.2)
143 (-21.5)
治験施設支援業務) 営業利益
4
10 (+116.3)
-76 (na)
-109 (na)
同利益率
1.9
2.5
-41.8
-76.2
合 計 売上高
54827 (+11.9) 66181 (+20.7) 75548 (+14.2) 87715 (+16.1)
営業利益
2046 (-16.2)
2091 (+2.2)
2641 (+26.3)
3783 (+43.2)
同利益率
3.7
3.2
3.5
4.3
(注)カッコ内は前年同期比伸び率、naは計算できず。給食事業はTMS買収で2014.3期より加わる。
メディカルモールに独自の強み
子会社である日本レーベンは、不動産の開発を手掛けている。サ高住(サービス付き高齢
者向け住宅)を手掛けるほか、薬局の不動産開発にも力を入れている。サ高住を単独で拡大
するよりも、それだけの資金があれば、サ高住とメディカルモール、薬局の開発を組み合わ
せた新しい街づくりに力を入れている。
薬局の開発の中でもメディカルモールに力を入れ、374 店ほどある薬局のうち、70 店程度
がメディカルモール型である。メディカルモールとは、2 科以上のクリニック(医院)の前に
薬局を作るという一体型の医療施設開発でビル型が多い。
これは、ドクターが新たに開業したい場合に複数の診療科目を用意し、そこに薬局を併設
することで、集客力を高めることができ経営効率も上がる。立地をうまく考えることによっ
て、患者サービスの向上にも結び付く。このメディカルモールについて、他社は不動産業者
に頼っているが、当社はグループで機動力を発揮し、実績を上げている。
サービス付き高齢者向け住宅「ウィステリア」の事業展開
JR札幌駅から 1km、北海道大学病院の近くにウィステリアN17 がある。これが第1号
で、64 室のサービス付き高齢者向け住宅である。有料老人ホームではないが、同様の介護
サービスを行うことのできる許可を北海道から受けている。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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設立から 8 年を経ており、3 年目からはほぼ満室である。80 名が入居(1 室 1 名または 2
名)している。マンションの1階には内科循環器のクリニックと調剤薬局(なの花薬局)があ
る。1室の広さは 65~73m2 と広く、リハビリのスペースも有している。基本的に高級な施
設である。
札幌市清田区の医療法人清田病院の前に、当社として 2 棟目のサ高住となるウィステリ
ア清田を 2013 年 5 月に開設した。札幌の清田病院の建て替えに伴い、その隣に当社のウィ
ステリアを作った。1 棟目のウィステリアN17 が投資額 20 億円、1 室のスペースも広めで
あったが、こちらは投資額 10 億円、1 人部屋タイプで 1 室が 25~30m2 と標準的なもので
ある。家賃 7~8 万円と手頃で、75 戸のうち 65 戸を単身向けに作ってある。ウィステリア
清田もほぼ満室で、評判もよい。このウィステリア清田は、
「高齢者住宅+医療モール+調
剤薬局」+「病院」が一体となった再開発である。
高齢化が進む中で、建て替え、住み替えが必要になってきている。医療介護ゾーンにショ
ッピングモールも組み合わせた新しいクラスターの形成も求められている。それに向けて、
当社では 2012 年 10 月に開発の事業組織を作り、担当常務のもと 20 名が活動を始めた。複
合型医療・介護施設を計画している。但し、投資をすべて自社で持つとバランスシートが重
くなるので、土地は自社で購入するとしても、建物については、オフバランスしてマネジメ
ント業務のみを担当する方式とすべく検討している。
3.中期経営方針
調剤薬局のネットワークで圧倒的トップを目指す
今後の方向性~圧倒的 No.1
田尻社長は今後の経営環境を次のように認識している。2050 年をみると、日本の人口は
3000 万人ほど減少する一方で、
75 歳以上の高齢者は 900 万人近く増加する。
これに伴って、
医療から介護へという動きは加速する。
調剤薬局の市場は、7 兆円から 9 兆円に増える反面、
今ある調剤薬局数 5.7 万件は 5.0 万件程度へ減少しよう。薬剤としてはジェネリックが増
加する一方で、中小薬局の統合は進んでいくという見方である。医薬分業の比率も 80%へ、
さらに高まりそうである。
その中にあって、当社の長期目標は 10 年後に、①医薬品サプライチェーンのキープレイ
ヤーとなり、流通の合理化に貢献すること、②調剤薬局のリーディングカンパニーとして、
ネットワークを活かして圧倒的業界№1になることである。
第四次中期経営計画~地域薬局をつなぐ
地域包括ケアシステムでは、看護、介護、調剤薬局がバラバラではなく、その機能を集約
して連携できるようにするのが望ましい。病院の建て替えの時に、介護やリハビリ、薬局、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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サ高住などをまとめて立地していくことは有効である、在宅医療のための核に薬局がなっ
ていくことも便利である。どのようなコアを作りながら、業界が再編されていくか。その中
で、当社は一定の役割を果たすべく先手を打とうとしている。
第四次中期経営計画の骨子
(2016.3期~2018.3期)
テーマ
*地域医療を支える企業
*医薬品ネットワークの拡大
*「未病・予防-医療-介護」の地域薬局機能の充実
重点施策
1.医薬品ネットワークの拡大
・中小薬局への営業強化と新規サービス提供による加盟店の拡大
・芙蓉総合リースとの戦略的包括提携による新規加盟店向け「医薬品仕入れ代金立替払いサービス
(支払短期化に伴うファイナンスサービス)
・業務提携による営業チャネルの拡大
(不用な医薬品の在庫消化サービスを提供)
2.「なの花スタンダード」の深化
・医療、安全、接遇、服薬指導、在宅、待ち時間短縮を一層促進
3.地域包括ケアシステムに対応した次世代モデル薬局の開発
・地域包括ケアシステムの5本柱(医療、介護、予防、住まい、生活支援)のうち、医療、介護、予防
(コミュニティケア機能)の付加と充実
4.調剤薬局のM&Aの推進
5.SMO事業の立て直し
6.業務の徹底的な効率化
7.財務健全性の確保
・芙蓉総合リースとの協業によるサ高住、メディカルモール等への不動産リーススキームの導入
・これによるバランスシートへの負荷の軽減
基本方針として、地域医療を支えるために、ネットワークサービス、コミュニティケア機
能、コストコントロールにしっかり力を入れる。
今回の第四次中期計画では、ネットワークの加盟店を大幅に増やすビジネスモデルが可
能となった。芙蓉総合リースと組んだ薬局向けファイナンスサービスや、医薬品卸など新た
なネットワークの活用が期待できるからである。
薬局では、在宅サービスを全ての店舗で行えるようにする。コミュニティケアとは、医療、
介護、予防の 3 つの機能をサポートすることである。千里中央と小樽のサ高住は、不動産リ
ーススキームが導入できれば、投資負担が軽減される見込みである。SMO(治験施設支援)
では、EP 総合(旧綜合臨床ホールディングス)と業務提携して、新規案件の獲得と事業の効
率化を目指す。
この中期計画の KPI はネットワーク加盟 2200 件以上、自社調剤薬局 500 店以上、売上高
1050 億円、売上高経常利益率 3.6%以上である。営業利益 40 億円(2015 年 3 月期 26.4 億
円)を目標にしているが、これに対する利益貢献では、ネットワーク事業で+6 億円、調剤
薬局で+6 億円と、丁度半々の寄与を見込んでいる。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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その先の見通しとして、経常利益 50 億円は売上高が 1300 億円になってくれれば十分達
成できるので、4~5 年後にはこの水準に乗ってこよう。
中期計画のKPI(重要経営指標)
(件、億円、%)
2017.3
2018.3
(修正計画) (中期計画目標)
1750
2200
385
500
医薬品ネットワーク加盟件数
地域薬局店舗数
2015.3
(実績)
1200
345
2016.3
(実績)
1400
353
売上高
医薬品ネットワーク事業
調剤薬局事業
755
28
717
877
32
820
900
33
830
1050
36
995
営業利益
医薬品ネットワーク事業
調剤薬局事業
26
15
24
38
18
34
23
17
25
40
22
30
経常利益
25
39
23
売上高経常利益率
3.4
4.4
2.6
当期純利益
9
17
6.5
(注)セグメントの営業利益は全社的一般管理費前ベース。
38
3.6
15
ネットワークへの加盟は拡大傾向
医薬品ネットワーク事業で、新システムを導入した。営業員も増強して、加盟店の拡大に
力を入れる。医薬品ネットワークの加盟店は、DSE(デッドストックエクスチェンジ)サービ
スの効果が広がってきたので、年 300 ~400 店ペースの増加が期待できよう。
医薬品ネットワークの加盟件数は現在 1600 件余りで、当面の目標は 2200 件であるが、
中長期的には 4000~5000 件を目指せるので有望である。全国 5 万件の薬局に対してまだ
2000 件台の目標であるから、将来は 5000 件~1 万件を達成することも十分ありえよう。
ヘルスケア分野の IT はこれから大きく変貌していこう。個々の分野の特性がより統合さ
れていく方向にある。薬局と卸、薬局とクリニック、患者と薬局、病院がどのようにデータ
を共有して、医療の効果と効率化を図っていくか。新しい IT サービスの競争が始まろう。
ここで、当社のネットワークの強みが一段と発揮されてくれば、医薬品ネットワーク事業
の伸びが高まってくる。現在は、調剤薬局と医薬品ネットワークのセグメント利益の比率が
7:3 であるが、医薬品ネットワークの利益構成が 5 割を超えてくるような伸びを示してく
ると、当社の収益構造はさらに強固なものとなろう。
ネットワーク加盟店について、最近は大口の引き合いも増えている。当社のネットワーク
の知名度が上がり、信頼も増してきていることによる。医薬品取扱高の増加につれて、価格
交渉におけるリーダーシップをとって、業界の流通改善に寄与することができるようにな
ろう。単に大量仕入れをテコに、卸に対して値引きを要求するという構図ではない。適正な
価格をスピーディに決めて、互いの無駄を省こうという考えである。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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この点でみると、調剤薬局を囲い込むというだけでは不十分で、ネットワークシステムを
強く築けるかどうかが重要であり、当社はユニークな戦略を展開している。
医薬品加盟件数と発注取扱高
2008.9
2009.9
2010.9
2011.9
2012.3
2013.3
2014.3
2015.3
2016.3
加盟件数(件)
499
545
597
740
854
1033
1163
1200
1400
医薬品発注高(億円)
398
474
537
704
830 *
948
1124
977
1237
(注)*:6カ月を年率換算、2015.3は一部大口先の脱退で減少。
ネットワークの強化に向けた業務提携
医薬品ネットワーク事業は、サプライチェーンの強化に向けて、いくつかの手を打ってい
る。1 つは、芙蓉総合リース(コード 8424)によって、新規に加盟する薬局の仕入れ代金の支
払い条件が従来の 3 カ月から 2 カ月になっても、立て替え払いのファイナンスサービスが
提供されることによって、資金繰り面で加盟しやすくなった。
デッドストックエクスチェンジサービス(DSE:不動在庫消化サービス)の活用
当社のネットワークに加入すると、
医薬品の在庫管理が DSE のサービスで効率化できる。
つまり、各薬局にあって、期限切れで廃棄せざるをえない薬を早めに相互にやり取りして、
うまく使うことができる。また、仕入れ代金の立て替え払いサービスの利用によって、加盟
時の運転資金の増加を回避して、安心して加盟できる。
「ズー」と業務提携~薬剤師用タブレットアプリを支援
10 月に長野県上田市にあるレセコン会社「ズー」と業務提携をした。ズーは独立系のソ
フトウェア会社(1986 年独立、従業員 85 名)で、調剤薬局向けレセコン、医薬品のデータベ
ース、調剤薬局 POS などを開発してきた。
今回は、薬剤師向けタブレットのアプリ「kusudama(薬玉)」を開発し、薬剤師が 1 人 1
台のタブレットを持つことで、業務効率の向上を狙っている。この販売活動に当たって、当
社の薬局向けネットワークを活用することが有効であると判断して提携に至った。
当社としても、1)ズーが有するレセコン薬局へ当社のネットワーク加盟をアプローチす
ることができる、2)既存のネットワーク薬局へのサービス向上の一環とする、3)デッドス
トックデータと結びつけることができる。4)新規薬局開拓の営業ツールになる、5)今後は
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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ズーの開発力を活かして、新しいビジネスのシステムの開発力を高めることができること
になる。このような効果を狙っている。
調剤薬局の薬樹と業務提携
薬樹との業務提携では、教育研修プログラムの共同利用、災害時の相互協力に加えて、デ
ッドストックエクスチェンジサービス(DSE)を 2015 年 10 月からスタートした。
当社は 2015 年 6 月に、神奈川を本拠地とする調剤薬局、薬樹と業務提携した。薬樹は神
奈川を中心に首都圏に 150 の薬局を展開する。地元密着で質も高い。薬局の人材を育てる、
地域医療を支える、という点で双方のトップマネジメントの息が合った。大事なことは、経
営理念が共有できるという点にあろう。互いの教育研修システムを学ぶというところに主
眼があるが、災害時における相互協力体制というのもユニークである。
在宅医療サービスの強化に向け、JP(日本郵便)と連携し、物流の効率化を目指す
JP(日本郵便)と連携した在宅医療サービスを 2016 年 7 月から開始した。JP のゆうパッ
クによる宅配機能と、当社の調剤薬局(なの花薬局)における在宅処方の機能を合わせて、
サービスを行う。
在宅医療を受ける患者に、処方薬等を宅配サービスする。まずは札幌市、名古屋市を中心
にするエリアでスタートした。薬剤師が在宅訪問による服薬指導を終えた後に、点滴に用い
る輸液、栄養剤などの重量物の宅配を行う。その後は、処方箋薬への拡大、衛生日用雑貨、
飲料、健康食品などへと広げていく方針である。
この意義は、ネットワークビジネスにおけるデリバリー機能を強化することで、サービス
の質を一段と向上させ、差別化を図ろうというところにある。
訪問看護事業に参入~在宅医療の 1 つの要
2016 年 5 月末に訪問看護事業を運営する「株式会社ひまわり看護ステーション」を買収
した。ひまわり看護ステーションは、東京練馬区で 2013 年に開業し、重度の在宅患者への
訪問事業で実績を上げている。2015 年 3 月期は、売上高 59 百万円、営業利益 10 百万円で
あった。契約件数は 150 名で、月間 700~800 回の訪問を行っている。
地域包括ケアシステムの中で、訪問看護事業は在宅医療の現場において、重要な役割を担
う。当社にとっては、地域薬局の薬剤師や栄養士が、訪問看護師と連携することによって、
在宅ケアのサービス向上に結びつけることができる。
訪問看護ステーションでは、①在宅療養上の介護・指導、②かかりつけ医の指示による医
療処置、③病状のチェック観察、④在宅酸素など医療機器の管理、⑤がん末期などでも自宅
で過ごせるようなターミナルケア、⑥床ずれ防止や手当て、⑦在宅でのリハビリ、⑧家族へ
の介護支援相談などを行う。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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医療、介護を支える地域薬局事業にとって、在宅ケアの中で、訪問看護はシナジーのきく
重要な機能を担っているので、その分野に自ら参入することにした。
訪問看護事業は全国に 7000 カ所ほどあるが、まだ大幅に足らない。しかも、大手といっ
ても 50 カ所の展開に留まっており、サービス向上へのニーズは高く、市場開拓の余地は大
きい。東京をベースに展開し、将来は大阪、名古屋、札幌などにも拡げていく方針である。
高齢化時代の都市の再生
サ高住については、乱立気味な傾向もあるが、当社は質を重視して、医療機関、介護、薬
局との連携をきちんと図っていく。
地域医療の立て直しがますます必要になっている。同時に福祉施設の充実も求められ、生
活者としての街の機能も大切である。行政と民間の力をうまく合わせて、複合施設を開発し
ていくことが、社会インフラ作りのイノベーションとしてビジネスになる。
当社は北海道からスタートしているので、札幌では知名度も基盤もある。病院の近くに高
齢者住宅と薬局と医療モールを複合的に開発するという計画がいくつか動き出している。
医療モールのプラン自体は既に一般的であるが、病院、クリニック、薬局、高齢者住宅を含
めたまちづくりで、独自のモデルを作ろうとしている。
小樽では、デパートとホテルが経営的に行き詰まった場所を 2 年半かけて再開発してき
た。このサ高住は 2015 年 12 月にスタートした。また、大阪の千里中央では、東京海上のデ
ータバックアップセンター跡地を取得して再開発したものである。2016 年 5 月にスタート
した。
サービス付高齢者向け住宅
~サ高住+医療モール+調剤薬局+病院~
開設
ウィステリアN17
投資額 サ高住
(戸数)
2007.12
20
64
ウィステリア清田
2014.5
10
75
8
ウィステリア小樽稲穂 2015.12
17
81
7
ウィステリア千里中央 2016.5
35
82
15
○
42.5
106
未定
○
ウィステリア南1条
2018.11
サ高住
(賃料)
25
診療所
○
○
(億円、戸、万円/戸)
急性期 調剤
介護
病院
薬局 事務所
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
(予定)
(注)投資額は全体を含む。○は有。賃料は月額。
画期的な複合型医療モールを開発
ウィステリア小樽稲穂は、10 万人を超える街の中で最も高齢化が進んでいる小樽におい
て、急性期病院が移転し、そこに介護事業所、薬局、サ高住が集結する。2015 年 12 月の入
居開始で、すでに 9 割が入居している。食費と光熱費付で、1 室 1 人 15.3 万円/月である。
千里中央も急性期病院が移り、そこに介護事業所、薬局、サ高住が一体となる。14 階建
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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てのビルの1~9 階が病院、10~14 階がサ高住である。医療は純幸会、介護は日本レーベン
が担う。この病院は救急が 3000 件と大阪で 2 番目に多い急性期病院である。2016 年 5 月に
入居を開始した。こちらは食費込みで月 28.4 万円とやや高額である。
ウィステリア千里中央は 5 月にオープンして現在入居率が 13%であるが、これを 3 月ま
でに 60%に持っていく方向である。
札幌のウィステリア南 1 条が具体化
2018 年 11 月にオープン予定のウィステリア南 1 条(仮称)は、札幌市中央区にあり、北
海道の医療の中核を担うエリアに建設する。南 1 条のサ高住は建築費 42.5 億円、サ高住 106
室、一般賃貸住宅 12 室、調剤薬局、医療機関 6~7 科目、保育所等が予定されている。徒歩
5 分以内に、札幌医科大学付属病院や NTT 東日本札幌病院、その他の医療、介護サービス拠
点が揃っている。
この案件については計画を練り直していた。建設費が 1.5 倍に上がっているので、開発内
容を再検討した。この場所は札幌市の中心部にあり、徒歩 5 分圏に総合病院 4 つ、医院が
20 ほどある集積地である。ここに、医療、介護、見守り・配膳・買い物などの生活支援サー
ビス、バリアフリー高齢者住宅を含めた「地域包括ケアシステム」(厚生労働省、国土交通
省提唱)を実現しようというプロジェクトである。
当社では、
「医療と福祉が一体となったまちづくり」と称している。この地域は病院の銀
座通りであるが、190 万人の札幌市民にとって、どこの病院も混み合っている状態にあり、
新しい医療モールを作っても十分ビジネスとして成り立つ地域である。この地域の調剤薬
局のトップクラスは、年商 10 億円(通常の薬局は 2 億円レベル)に達する。
日本レーベン(100%子会社)が札幌市から複合型医療・介護施設の建設用地を取得した。
日本レーベンは医療モール作りで培われたノウハウと実績を有しており、それが認められ
た。このプロジェクトへの入札(コンペ)で、同業他社に勝った。13 億円で土地を購入し、
ここの医療開発をリードする。
サ高住の建物はオフバランス化を目指すが、まだ検討中
サ高住については、オフバランスが進まない状況にある。会計上の認識において、リース
バックのような形でその施設のマナジメントのみを受託するということが、今のところ難
しい。新規のサ高住を建てて、2 年で満室にしたとしても、償却負担で 3 年間は赤字となる。
とすると、今の B/S を使って、この事業を拡大するには一定の限界がある。オフバランス化
の対策は今後も検討していくが、現状では南1条までの 5 棟で一巡することになろう。
リースにしたとして、それが実態面でオペレーティングリースにあたるのかという点で
結論が出ていない。リースバックでバランスシートから切り離す要件としては、この建物の
実質的な所有権がどこに属するかという点が論点になる。1)リース期間が余りに長いと実
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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質所有ではないか、2)施設のオペレーションは当社が担当するので、これも所有をサポー
トすることになるとみられる。法的には所有権が移るわけだから、何ら問題ないようにも見
えるが、ここが課題となっている。
リースの活用に向け芙蓉総合リースと戦略的包括提携
2015 年 1 月に芙蓉総合リースと戦略的包括提携を結んだ。業務面では通常のリース以外
に、2 つの戦略的内容を含む。1 つは、医薬品ネットワークに加盟する調剤薬局の加入時フ
ァイナンスをサポートする。これまで新規加入先は、医薬品仕入代金を 3 ヶ月サイトで支払
っていた場合、支払サイトを 2 ヶ月に短縮するために、新たな資金が必要となるケースがあ
った。このため、加入月の医薬品仕入代金を芙蓉総合リースが当社へ一括立替払いを行い、
加盟先は最長 60 回の分割払いで芙蓉総合リースへ返済、分割手数料は当社が負担する。こ
れにより、当社のネットワークに加盟する薬局が年 100 店ペースで従来よりも上乗せする
ことができる。芙蓉総合リースにとっても新しいビジネスとして収益機会となる。
もう 1 つは、サ高住及びメディカルモール等の不動産リーススキームの開発である。当社
にとってはサ高住を重要なビジネスと位置付けており、強みも有する。しかし、土地建物を
自前で所有すると、そのファイナンスには財務上限界がある。
このリースをファイナンスリースではなく、オペレーティングリースになる仕組みとし
て連携する。そうなると、当社のバランスシートには載らないので、サ高住の投資をオフバ
ランス化でき、当社は賃料(リース料)を支払えばよい。費用も均等化できる。小樽、千里
中央の新規案件から新しいリースのスキームをスタートさせようと検討している。
MSNWのバランスシート
(百万円、%)
2011.9
2012.3
2013.3
2014.3
2015.3
2016.3
2016.9
流動資産
7786
8901
8271
10941
11023
10783
11910
現預金
1329
2072
2091
3106
2499
2081
2555
売掛金
2238
2596
1513
2801
3125
2614
3132
商品
1710
1735
2150
2650
3764
3335
3672
固定資産
16747
17700
22518
32172
34564
38063
38414
有形固定資産
9162
9975
11471
15975
17249
20253
20156
のれん
4900
4968
8176
12253
13214
12916
13218
投資等
2601
2684
2783
3797
3759
4329
4406
資産合計
24533
26602
30789
43114
45587
48847
50325
負債
19270
20923
24553
37761
39451
38581
40136
買掛金
5026
5158
5615
7798
8598
9525
8947
短期借入金
1099
2405
3015
10270
5895
3607
4775
長期借入金
7364
5921
7510
9669
14201
13323
17572
純資産
5263
5679
6236
5352
6135
10265
10188
有利子負債
8663
9480
12193
22011
22743
19562
22347
有利子負債比率
35.3
35.6
39.6
51.1
49.9
40.0
44.4
自己資本比率
19.9
19.7
18.8
11.9
12.7
20.3
19.5
(注)2014.3期はM&Aでのれんが増加。三井物産との合弁解消で、自己株式が増加し純資産が減少。
2015.3期より短借から長借へシフト。2016.3期は公募増資等で自己資本が充実。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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ファイナンスで財務体質は改善、希薄化も十分カバーできる
バランスシートでは長期借入金が増えている。低金利なので、負担は少ない。南 1 条のサ
高住の投資額(42.5 億円、土地は以前に 13 億円で取得済み)は外部ファイナンス(長期借
入)に頼らざるをえない。しかし、自前の調剤薬局新設 10 億円、M&A30 億円規模は内部資
金でほぼ賄うことができよう。
バランスシートでは、公募増資等によるファイナンスと業績の向上が相まって、自己資本
が充実し 2016 年 3 月末の自己資本比率は 20.3%(2015 年 3 月末 12.7%)へ改善した。
EBITDA(税前純利益+減価償却+のれん償却+支払利息)は、2016 年 3 月期で 60.4 億円
となった。この EBITDA を活用して、M&A には引き続き力を入れていく方針である。
調剤の新規出店は 10 店程度、M&A で 30~50 店程度となろう。投資額としては有形固定資
産で 10~15 億円、M&A で 15~30 億円という水準であろう。M&A については中小もベースに
するが、大型の案件についても機会があれば検討していく方向である。薬局の M&A では採算
重視で、高齢者医療の需要が見込める首都圏、愛知県、京阪神、福岡県に重点投資する。
2015 年 6~7 月に実施したファイナンスでは 28 億円を調達し、これまでの M&A と今後の
設備資金への対応をしつつ、財務体質の強化を図った。公募増資と第三者割当増資の中で、
自己株式の処分も行った。合弁解消で三井物産から買い取っていた自社株についても、今回
のファイナンスの中で、処理できた。第三者割当では、EP 綜合(旧綜合臨床ホールディング
ス)へ 2.7%、芙蓉総合リースへ 0.9%、その他りそな銀行、福岡銀行、北陸銀行と、ネットワ
ーク事業における顧客紹介先を対象とした。
自己資本比率は 25~30%に上げることを目標としているが、今回のファイナンスで、それ
に一歩近づいた。発行済株式総数 2597 万株に対して、公募 336 万株、第三者割当自己株式
の処分 170 万株等によって、増資後の株式数は 2989 万株となった。ダイリューション(希
薄化)は 25.1%となった。発行価格は 488 円であった。ダイリューションを克服して、ど
こまで業績を上げられるかがポイントであるが、業績は十分伸ばせよう。
MSNWのキャッシュ・フロー
2013.3
営業キャッシュ・フロー
3790
税引後当期純利益
840
減価償却
840
のれん償却
487
投資キャッシュ・フロー
-5425
有形固定資産取得
-1624
子会社株式の取得
-3543
フリー・キャッシュ・フロー
-1635
財務キャッシュ・フロー
1654
長短借入金
2581
配当金
-200
自己株式の取得・処分
-129
株式の発行
0
現金・同等物の期末残高
2077
2014.3
3706
754
1076
669
-7559
-4180
-4179
-3853
4863
7055
-199
-1155
0
3088
2015.3
3838
1170
1209
849
-3958
-2360
-1626
-120
-483
481
-190
0
0
2485
(百万円)
2016.3 2017.3 (予) 2018.3 (予)
6409
3210
4400
2113
650
1700
1362
1560
1600
917
1000
1100
-5040
-4000
-4000
-3674
-2000
-2000
-304
-2000
-2000
1369
-790
400
-1792
1700
170
-3210
2000
500
-229
-330
-330
672
0
0
1810
0
0
2061
2971
3541
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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EP 綜合と資本業務提携
SMO では、綜合臨床ホールディングス(現 EP 綜合)と業務提携した。綜合臨床 HD は EPS ホ
ールディングスと経営統合した。そして、この 10 月に子会社の EP 綜合に吸収合併された
が、SMO 事業は継続するので、当社との業務提携も継続する。株式の相互持合では、当社が
EPS ホールディングスの 0.45%を保有している。これによって、SMO(治験施設支援機関)の
有力企業である EP 綜合と当社の子会社であるエスエムオーメディシス(SMO メディシス)
の連携が強化された。当社は北海道の病院とのつながりは強いが SMO の案件が少ない。EP
綜合は、SMO の案件はあるので、治験を実施する有力病院を強化でき、シナジーが出せるこ
とになろう。
医療給食事業も強化
病院を中心とする給食事業では、2015 年 10 月、TMS の傘下に九州医療食(株)が入った。
TMS の給食事業が年商 15 億円、九州医療食が同 25 億円である。合わせると、九州地域を中
心に年商 40 億円となる。両社合わせて、利益はほぼトントンというレベルであったが、今
期は赤字が拡大している。今後、仕入れの効率化や値上げなどを通して、利益確保を目指す。
給食事業についても、医療と食事と居住という観点で、一定の取り組みを図っていく方針で
ある。
4.当面の業績
薬価改定の影響を乗り越え、来期は大幅増益へ
2016 年 3 月期は極めて好調であった
2016 年 3 月期は、売上高 87715 百万円(前年度比+16.1%)
、営業利益 3783 百万円(同
+43.2%)
、経常利益 3860 百万円(同+52.0%)
、純利益 1720 百万円(同+94.3%)と、2
期連続でピーク利益を更新した。
主力の医薬品ネットワーク事業と調剤薬局事業が順調であった。調剤薬局ではジェネリ
ックの利用促進や在宅訪問が成果を上げ、調剤技術料の拡大に結びついた。また、本州エリ
アでの薬局店舗の効率化がようやく進展して、収益力を改善した。サ高住を中心とする賃
貸・設備関連事業では、販売用不動産の売却が利益の上乗せとして寄与した。
セグメント別にみると、ネットワーク事業では加盟件数が前年度比+200 件の 1400 件と
なった。セグメントの営業利益は 1776 百万円(同+14.6%)と好調であった。
調剤薬局は、新規出店 9 店、株式取得 2 社 2 店、事業譲受 5 店、閉店 8 店で、全体では+
8 店の 353 店となった。既存店の処方箋枚数、単価とも上昇し順調であった。C 型肝炎治療
薬も売上増加に寄与した。セグメント利益は 3412 百万円(同+43.5%)と大幅に増加した。
子会社サンメディック(関東)
、共栄ファーマシー(近畿)、シー・アール・メディカル(東
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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海)の業績改善は、①人員配置の適正化、②不採算店の整理、③待ち時間を減らすなどのサ
ービス向上に力をいれたこと、④ジェネリックや在宅の利用促進で、調剤技術料の取得に力
を入れてきたことによる。
賃貸・設備関連は、ウィステリア小樽稲穂、ウィステリア千里中央の開業に向けた人員増
加が先行しコスト負担は増えたが、販売用不動産の売却で、セグメント利益は 129 百万円
(+409.3%)となった。小樽の入居件数は、全 81 戸に対して 72 戸まできた。
販売用不動産(医療モール)を 1 件売却した。北海道の手稲に所有しており、クリニック
4 科と薬局が入っていたが、不動産を持つ必要はないということで売却した。この売却益が
242 百万円ほど入っている。これは当社が開発したモールが価値を生み、それがキャピタル
ゲインとなって寄与したものである。
給食は、病院・福祉施設での給食受託業務であるが、新たに 1 社を買収したこともあり、
営業損失-89 百万円(同-13 百万円)と赤字が増えた。
業績拡大に合わせて、配当も増配した。前期の 8.0 円に対して、上期 4.5 円、下期 5.0 円
で、通期では 9.5 円とした。2017 年 3 月期は、この下期ベースが続くので 10.0 円となろ
う。
調剤薬局の売上内訳 (%)
内 訳
2015.3期
(伸び率) (既存店伸び率) 内 容
2016.3期
(伸び率) (既存店伸び率)
処方箋枚数(千枚) a
内 容
6909 (+14.0)
(+0.7)
7415
(+7.3)
(+1.6)
処方箋単価〈円/枚) b
技術料
薬剤収入
9809
2270
7539
(+1.0)
(+1.2)
(+1.0)
10485
2337
8148
(+6.9)
(+3.0)
(+8.1)
(+6.8)
(+3.0)
(+8.0)
(+1.7)
82002
77753
4249
(+14.3)
(+14.7)
(+7.2)
(+8.5)
(-0.2)
(+0.6)
(-0.5)
売上高(百万円)
71743 (+13.9)
調剤売上 a×b
67780 (+13.8)
その他
3963 (+15.8)
(注)伸び率は前年度比全店ベース。
2016 年 4 月の薬価改定の影響
診療報酬の改定において、基本料算定で当社は病院の門前薬局は少ないが、大手チェーン
薬局としての影響は受ける。ジェネリックの比率を上げるという体制加算の取得について
は、75%以上という店舗を増やしていく。
基準調剤加算では、その店舗を大幅に増やしていく。かかりつけ医院に対してかかりつけ
薬局という構図に対して、かかりつけ医師と同じように、かかりつけ薬剤師がいる方が、薬
の取り扱いにおいてより望ましいサービスができるという国の方針に基づく。これに本当
に意味があるのかという疑問も出ているが、まずは手を打っている。
4 月に実施された薬価改定、調剤報酬改定では、
「かかりつけ薬剤師、かかりつけ薬局」
の概念が導入された。一方で、処方箋受付回数が一定規模以上の薬局グループに対して、報
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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酬を引き下げる特例も設けられた。
今回の薬価改定の影響は会社側の試算で-425 百万円、調剤報酬の改定で-379 百万円、
合計-804 百万円を見込んだ。-425 百万円の内訳は、既存の在庫の評価損が-208 百万円、
薬価差額の減少が-217 百万円である。
-379 百万円の内訳は、調剤基本料で-342 百万円、基準調剤加算で-164 百万円、ジェ
ネリック調剤体制加算で-87 百万円、薬剤服用履歴管理指導で+197 百万円である。これは
本来なら-796 百万円となるものを、店舗運営の見直しとジェネリックの引き上げによるプ
ラス効果+416 百万円でカバーするというものである。
①かかりつけ薬局として店舗運営を見直す、②ジェネリック比率を上げる、③特定の医療
機関への集中度を下げる、などに対応すると、調剤報酬でプラスの効果が得られるので、そ
れらに力を入れて吸収していく方向である。
2017 年 3 月期の 2Q 累計は大幅減益となった
2017 年 3 月期の 2Q 累計(上期)は、売上高 43401 百万円(前年同期比+3.1%)、営業利益
549 百万円(同-68.7%)、経常利益 542 百万円(同-69.0%)
、純利益 66 百万円(同-91.4%)
と、利益は大きく落ち込んだ。
薬価改定の影響が既存店の処方箋枚数の伸びの鈍化となり、想定を下回ったことが大き
い。賃貸(サ高住)
、給食、治験等での赤字もマイナスに響いた。
前年同期は不動産の売却益が 2.4 億円入っていたので、その分は差し引いてみる必要が
ある。薬価改定・調剤報酬改定の影響による処方箋単価の下落は想定通りであり、それに対
応した施策は進展しつつある。
ネットワーク事業は堅調であり、9 月末の医薬品ネットワーク加盟件数は、3 月末比+197
件の 1597 件となった。通期の計画が+350 件であるから、ピッチは順調である。
調剤薬局は 2Q で、新規出店 7 店、M&A で 17 件、閉店 3 店の 21 店増により 374 店となっ
た。新規出店の今期計画は 10 店なので進捗は早い。M&A は 30 件を予定しているが、すでに
17 件が入っており、早いペースである。かかりつけ薬局への対応、新卒薬剤師の確保とい
う点で、大手と中小の薬局では格差が広がっており、経営者の後継難という問題もからんで、
M&A の案件は増える方向にある。
サ高住のウィステリアの入居状況は、昨年 12 月に開業した小樽稲穂が全 81 戸中 77 戸、
今年 5 月に開業したばかりの千里中央が全 82 戸中 11 戸である。千里中央は、来年 3 月末
までに 60 戸に持っていく予定である。4 つあるウィステリアは、先行した 2 つは既に黒字
にしているが、小樽は来期に黒字、千里中央は 2 年後に黒字化という流れになろう。
給食事業は、食材の仕入れコストや人材派遣のコストが上がっており、収支的に苦しい。
そこで、委託先との価格交渉を進め、下期には改善する状況となろう。SMO は、受託件数は
増えているので、状況は改善してこよう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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調剤薬局の売上内訳 内 訳
処方箋枚数(千枚) a
内 容
3825
処方箋単価〈円/枚) b
技術料
薬剤料
2017.3 2Q累計
(伸び率) (既存店伸び率)
(+5.3)
(+0.4)
9806
2279
7527
(-4.1)
(-2.0)
(-4.7)
(-3.8)
(-1.8)
(-4.3)
売上高(百万円)
39858
調剤売上 a×b
37512
その他
2346
(注)伸び率は前年同期比。
(+1.6)
(+1.0)
(+11.6)
(-3.4)
業績は今下期から好転、来期は大幅増益へ
上期の業績は、当初の公表を売上高で 11 億円、営業利益で 4 億円ほどに下回った。調剤
薬局とその他事業で計画に届かなかったことが大きい。通期の業績についても、今回(11 月
に)下方修正した。売上高で 20 億円、営業利益で 9.1 億円ほど下げた。
2017 年 3 月期の会社見通しは、売上高 90000 百万円(前年度比+2.6%)、営業利益 2300
百万円(同-39.2%)、経常利益 2300 百万円(同-40.4%)、純利益 650 百万円(同-62.2%)
となった。
ネットワークはチャンス到来で加盟件数のピッチは上がっていこう。薬価改定で中小は
苦しくなっており、バリューチェーンの効率化の中で、当社のシステムを利用するようにな
っている。調剤薬局は、点数が稼げるように手を打っており、その方向に間違いはない。M&A
にも積極的に力を入れていく。
よって、来 2018 年 3 月期の業績については、中期計画の目標数値をやや下回るかもしれ
ないが、大幅増益にはもっていけよう。サ高住、給食、治験の事業の赤字をどのように縮小
するかが課題である。ネットワークは順調である。調剤はほぼ的確な手を打っているので、
収益は十分回復してこよう。
業績を上期、下期でみると、上期の営業利益は 549 百万円(前年同期比-68.7%)と大き
く落ち込んだが、下期の営業利益は 1751 百万円(同-13.8%)と急回復してくる。かかり
つけ薬局への対応では人員の増加が先行的に必要であり、薬価改定の影響は上期に大きく
出る。薬剤師は昨年、今年とも 100 名前後採用できている。来年はさらに採用を増やす意向
を持っている。
下期の業績のペースから来期を見通すと、M&A の進展度合いにも依存するが、2018 年 3 月
期の中期計画の目標である営業利益 40 億円、経常利益 38 億円には届かないとしても、経
常利益で 35 億円(同+52.2%)は十分達成できよう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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セグメント別業績予想
2015.3
医薬品等ネットワーク事業
売上高
営業利益
同利益率
調剤薬局事業
売上高
営業利益
同利益率
賃貸・設備関連事業
売上高
営業利益
同利益率
給食事業
売上高
営業利益
同利益率
その他事業
売上高
営業利益
同利益率
売上高
営業利益
営業利益率
経常利益
経常利益率
当期純利益
2016.3
2017.3
(予)
2018.3
(予)
(百万円、%)
5年後の
業績イメージ
2814
1549
55.1
3235
1776
54.9
3280
1730
52.7
4000
2200
55.0
5500
3000
54.5
71743
2377
3.3
82002
3412
4.2
83000
2540
3.1
90000
3200
3.6
120000
4300
3.6
1517
25
1.7
2430
129
5.3
2020
-180
-8.9
2400
-100
-4.2
4000
200
5.0
1932
-13
-0.7
2830
-89
-3.1
4620
-160
-3.8
5000
-50
-1.0
6000
100
1.7
182
-76
-41.8
75548
2641
3.5
2540
3.4
885
143
-109
-76.2
87715
3783
4.3
3860
4.4
1720
190
-180
-94.7
90000
2300
2.6
2300
2.6
650
200
-100
-50.0
98300
3600
3.7
3500
3.6
1700
500
20
4.0
131000
5600
4.3
5300
4.0
2500
組織再編を検討中
2017 年 3 月期の業績をみると、税率が高く、純利益が大幅にダウンする見込みである。
これは、当社グループの組織運営の形態にも理由がある。業績が落ち込むと、子会社間の税
負担の違いが相対的に目立ってくる。
持株会社の下に、薬局、サ高住、治験、給食などの会社を別々におくと、経営の自立化と
してはよいが、赤字会社がある場合、表面上の税負担が重くなる。そこで、組織の見直しと
しては、純粋持株会社ではなく、一度会社を統合して、その中で各事業を社内カンパニー的
に配置する。そうすると間接部門の負担も軽くなる。地域を統括する薬局の拠点は子会社と
して、今後の M&A に備えておくとしても、これらは黒字会社なので、特に問題はない。
来期はこの効果が見込めるので、税負担は軽減されて、税引き後利益は中期計画の数値を
上回ってこよう。
今後の重点施策
今後の重点施策としては、5 つあげられよう。1 つは、ネットワーク事業の加速化である。
加盟店の増加に向けて、大手企業との連携を模索していく。加盟店獲得に向けて自社の営業
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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を強化しているが、それだけでは足らない、システムの良さをアピールして、事業連携を具
体化する方向にある。
2 つ目は、ジェネリック医薬品の推進である。流通の合理化に向けて、ジェネリックメー
カー、卸、物流などバリューチェーンの効率化に取り組んでいく方針である。
3 つ目はサ高住のオフバランス化の実現である。5 月には千里中央のサ高住がオープンし
た。当社にとっては、北海道以外で初の案件である。オフバランス化して、マネジメントに
徹することによって、資金面の負担も含めて効率化が進む。
4 つ目は、M&A の展開である。前期は M&A を控えた。4 月の薬価改定、調剤報酬改定の影
響が調剤薬局にどう影響するのか。大手調剤への負担がどういう形で出るのかを見極める
必要があったためである。ここがはっきりしてきたので、M&A のプライスをみながら、再び
件数を増やす方向に入る。
5 つ目は、調剤薬局のサービスと収益力強化に向け、患者、顧客に役立つ薬剤師のアドバ
イス機能を高めることである。その一貫としてサプリメントなどのプライベート商品の開
発にも取り組んでいくこととなろう。薬剤師と栄養士の活用に力を入れていく。
5.企業評価
ズー、芙蓉総合リースなど新たな連携効果に注目
ネットワーク事業の将来~BD(ビッグデータ)の時代に備えて
ネットワーク事業の将来をどう考えるか。今はサプライチェーンの効率化に寄与してい
るが、そこで扱っているデータをさらに活用することはできないだろうか。患者毎の処方箋
データ、薬局毎のデータ、クリニック毎のデータ、医薬品毎のデータなど、ビッグデータと
して豊富である。これらをどのように再利用するかは今後の課題である。5 万店を超える薬
局の 1 割に相当する 5000 件の薬局ネットワークを持つようになれば、データは一段と蓄積
されてくる。その活用を通して、新しいビジネスを作ることも 1 つの挑戦であろう。
独自性の発揮
当社の業績と成長性の独自性をどうみるか。2016 年 3 月期のネットワークの営業利益が
18 億円、調剤薬局が 34 億円であった。2017 年 3 月期の会社計画では、ネットワーク 17 億
円、調剤薬局 25 億円である。5 年後の中期業績でみると、同 30 億円、同 43 億円である。
この利益貢献がいつ逆転してくるかがポイントであろう。調剤薬局の利益増が第 1 のドラ
イバーであるうちは、ネットワーク事業のユニークさは、それがあるにしても 2 番手とみら
れてしまう。利益成長の第 1 のドライバーがネットワーク事業に乗ってくるならば、当社の
ビジネスモデルの独自性が光ってくる。ネットワーク事業への加盟件数が今後飛躍的に伸
びてきて、流通の効率化のイニシアティブがとれるようになれば、自前の調剤薬局に大きな
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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投資をしなくてもよくなる。
その可能性が今後 4~5 年内にみえてくるかどうか注目される。
ネットワーク加盟件数は現在 1600 件で、医薬品の発注取扱高は 1300 億円である。つま
り 1 件で年間約 1 億円弱の取扱高になる。この件数が 2000 件、3000 件、4000 件と増えてい
くのであれば、発注の取扱高も 2000 億円、3000 億円、4000 億円と、業界で断トツトップに
なっていく。卸の機能に頼りながらも、ジェネリックメーカーと直接取引するというウエイ
トも上がってこよう。これに配送の仕組みがついてくるならば、新しいネットワークシステ
ムが構築できることになる。そうなれば画期的であり、その可能性は十分ある。
ネットワーク事業の拡大に期待
中期計画について、1 年目の 2016 年 3 月期は計画を上回って好調であった。今期は薬価
改定、調剤報酬改定の影響があるので、業績は落ちることになろう。しかし、3 年目は再び
上昇に向かう。
今後の業績の見方について、中期計画にある売上高 1050 億円、営業利益 40 億円は十分
射程内にある。その先の見通しとして、4~5 年内には売上高 1300 億円、営業利益 50 億円
が達成できよう。
ネットワーク事業は、加盟店 3000~4000 店に向けて引き続き拡大が見込める。ここは高
収益で、当社の独自性を最も発揮するところである。ここで売上高 55 億円、営業利益 30 億
円は達成できよう。調剤薬局は M&A を入れて、1000 億円を超える規模は狙っていける。
ネットワーク事業を活かした薬の仕入れコストと調達の安定化、サ高住ビジネスの拡大
による薬局事業との連携など、シナジー効果も十分見込めよう。全体として、売上高営業利
益率で 4%台を確保し、維持できるかどうかが課題である。
田尻社長は、調剤薬局のサプライチェーンを効率化するというテーマに長年取り組んで
きたが、ここにきて足並みが揃う兆しがある。医薬品の取扱額で業界トップクラスになって
きたが、さらに効率化を図るべく新しいモデルを形成していくことに力を入れていく。
また、次世代を担う当社のマネジメント人材について、創業者の 3 人に続く人材が育って
きていると、田尻社長は強調する。それが、M&A 案件で当社が先方からより信頼される理由
でもある。
当社の DSE「不動在庫消化サービス」(期限切れ前に不用な医薬品を互いに活用)を幅広
く使えるようにする。こうした強みを軸に、加盟店を大幅に増やす可能性が高まろう。ネッ
トワーク事業は有望で、利益貢献はかなり期待できよう。
中小調剤薬局の収益性をどう改善するかが課題である。業界における調剤薬局 1 店当た
りの年商は平均で 1 億円規模である。当社は平均 2 億円であり、トップクラスの企業は 3 億
円を超えている。中小の調剤薬局の M&A をするということは、相対的に効率の悪いところを
傘下に入れる可能性があるので、収益構造改革を行う必要がある。どのように効率を高めて
いくか、という点で当社はすでに経験と実績を有している。低採算の M&A は実施しない方針
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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であり、ネットワーク事業をもっていることが有利に展開できる余地も大きい。
調剤薬局の M&A とサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)への投資が、財務体質改善の制
約となっていたが、課題であったサ高住のオフバランス化が、芙蓉総合リースとの戦略的包
括提携(不動産リーススキームの導入)で可能となれば、過大な投資負担を避けて事業が推
進できるようになる。今後は加盟店の増加と共に、医薬品ネットワーク事業のユニークさが
注目されよう。
当社独自の強みを生かして、加盟店を 3000~4000 店へと拡大できそうであるが、その実
行戦略はもう少し見極める必要がある。激戦が続く調剤薬局業界で再編のコアとなって、業
界トップを目指す田尻社長の経営戦略には期待が持てるが、そのためには、一定の努力を要
するので、企業レーティングはBとする。(企業レーティングについては表紙を参照)
2016 年 9 月末の株主数は 8038 名に増えている。現状では株主優待はやらない方針で、で
きるだけ配当で報いていく考えである。2012 年 4 月に続いて、同 6 月にも 1:2 の株式分割
を行った。この 2 度の株式分割、J-ESOP の導入(2012 年 6 月に実施した社員 1200 人への 1
単元株の株式給付)等の影響により、2015 年 3 月末の株主数は 5227 名となり、その後さら
に増加した。
2016 年 3 月期の配当は 9.5 円へ増配した。配当性向 20%程度を目途に、業績を見ながら
決めていく考えであるが、2017 年 3 月期は 10.0 円を公表している。11 月 16 日時点の株価
(380 円)でみて、PBR 1.15 倍、ROE 6.4%、PER が 17.3 倍、配当利回り 2.6%である。薬価
改定、調剤報酬改定の影響を見る必要はあるが、来期は大幅増益に転換し、中期的に業績が
伸びていくことは十分見込めるので、割安感を反映して株価はかなり見直されてくること
になろう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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