模様の複雑さを使う 新しい識別技術 東京理科大学 工学部 電気工学科 講師 増田 恵子 模様には・・・ 動・植物、自然現象、人造物、 抽象的なもの、象徴的なもの、情景的なもの・・・ ・ 個性がある ・ 意味をもつ場合がある ・ 模様によって受け止め方が異なる 個性を定量化することで 新しい事が行える 2 個性 羽の模様 → 昆虫の種類 雲の様子 → 気象情報 写真 → 場所 織物 → 産地、染め方 壁画、絵画 → 画風、画家 対応関係で得られる情報 人間のもつ模様(身体情報)の識別 → バイオメトリクス さまざまな身体的特徴を使うことができる 3 人間のもつ身体的特徴について 模様(指紋) 4 従来の指紋認証 指紋の構造 谷間 隆線 分岐点 マニューシャを 端点 特徴量として認証 5 従来技術の問題点 マニューシャを用いる照合 ・ 僅かな擦れなどの影響を受けやすい ・ 乾燥や湿潤に弱い ・ 指紋採取時の圧力により指紋が変形 6 新技術の概要 撮像された2つの模様の同一性を 統計的な複雑さ(フラクタル次元)を用いて識別する技術 大量生産物でなければ、用途は無限 ・ 指紋、葉脈、羽の紋様などにも適用可能で 類似性の定量化が行える技術 ・ 織物など、ユニークであれば利用可能 7 新技術の特徴・従来技術との比較 指紋の複雑さにより照合を行うため、 正確にマニューシャを抽出する必要がない ・ 指紋のコンディションによってマニューシャが出たり出なかったりの 影響を受けない マニューシャ抽出を行わないので指紋などに限定する必要はない ・ 模様の同一性を利用できるようであれば何に対しても利用できる 模様の複雑さしか利用しないため、プライバシーなどを気にしなくてよい 模様を取得する領域を変えることで認証精度と認証時間のトレードオフを 変更できる 8 統計的な複雑さ(フラクタル次元)とは? 平面:2次元 立体:3次元 曲面:2∼3次元の間 フラクタル次元を用いることで、曲面を 2∼3次元の間の数値で表すことができる 9 指紋画像における輝度曲面の作成 8画素 512画素 F = 2.6 8画素 F = 2.9 512画素 F = 2.2 10 フラクタル次元によるヒストグラム 2.00 2.14 ・・・ 2.78 2.00 ・・・ ・・・ 2.12 2.34 2.65 2.17 64ブロック 2.00 2.28 2.25 2.00 ・・・ 2.00 2.21 2.57 2.00 64ブロック 11 度数 200 100 100 0 0 2.86 2.87 2.88 2.89 2.9 2.91 2.92 2.93 2.94 2.95 2.96 2.97 2.98 2.99 500 500 400 400 300 300 度数 200 2.86 2.87 2.88 2.89 2.9 2.91 2.92 2.93 2.94 2.95 2.96 2.97 2.98 指紋の移動・回転の差異によるヒストグラムの影響 人差し指 移動 人差し指 フラクタル次元 フラクタル次元 回転 12 500 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 度数 人差し指 フラクタル次元 2.86 2.87 2.88 2.89 2.9 2.91 2.92 2.93 2.94 2.95 2.96 2.97 2.98 2.99 2.86 2.87 2.88 2.89 2.9 2.91 2.92 2.93 2.94 2.95 2.96 2.97 2.98 度数 指紋の差異によるヒストグラムの影響 小指 500 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 フラクタル次元 13 2 2.05 2.1 2.15 2.2 2.25 2.3 2.35 2.4 2.45 2.5 2.55 2.6 2.65 2.7 2.75 2.8 2.85 2.9 2.95 度数 キウイの模様をフラクタル次元化 70 60 50 40 30 20 10 0 フラクタル次元 14 2 2.05 2.1 2.15 2.2 2.25 2.3 2.35 2.4 2.45 2.5 2.55 2.6 2.65 2.7 2.75 2.8 2.85 2.9 2.95 度数 みかんの模様をフラクタル次元化 30 25 20 15 10 5 0 フラクタル次元 15 2 2.05 2.1 2.15 2.2 2.25 2.3 2.35 2.4 2.45 2.5 2.55 2.6 2.65 2.7 2.75 2.8 2.85 2.9 2.95 度数 みかんの模様をフラクタル次元化 35 30 25 20 15 10 5 0 フラクタル次元 16 想定される用途 乗っただけ、触れただけで個人が認識され日々の健康 管理(体重、体脂肪率など)を行える機器 商品売買時に顧客カードの持参がなくても個人認証さ れる顧客管理システム 模様のある野菜や果実、家畜などの食品生産管理や 個体管理技術(すり替え防止など) ・ 牛、犬、猫の鼻紋 17 実用化に向けた課題 認証精度の向上 安定した、フラクタル次元の抽出のために 次の課題をクリアする必要がある ① 個体ごとの2値化/多値化のための閾値の設定 ② フラクタル次元を求める際のブロックサイズの決定 ③ ブロック間の相対的なフラクタル次元分布の活用 ④ 高フラクタル次元領域と低フラクタル次元領域の分割利用 非接触認証への応用 カメラ等で撮影した画像からの認証の実現 18 企業への期待 ① マニューシャを用いる指紋認証技術に対する 付加的な技術としての採用 ② 新たな模様認証分野の開拓 ③ 実用化に向けた研究員の派遣 19 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称:画像処理装置、画像判定装置、 画像認証システム、及びプログラム • 出願番号 :特願2016-195049 • 出願人 :学校法人東京理科大学 • 発明者 :半谷精一郎、早川準也、増田恵子 20 問い合わせ先 東京理科大学 研究戦略・産学連携センター 担当URA 名久井恒司 TEL03−5228−7440 FAX03−5228−7441 e-mail ura@admin.tus.ac.jp 21
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