鉱工業生産 16 年 9 月

ニッセイ基礎研究所
2016-10-31
鉱工業生産 16 年 9 月~7-9 月期の
生産は伸びが加速も、10-12 月期は減速へ
経済研究部
斎藤 太郎
E-mail: [email protected]
経済調査室長
TEL:03-3512-1836
1.7-9 月の生産は前期比 1.1%
経済産業省が 10 月 31 日に公表した鉱工業指数によると、16 年 9 月の鉱工業生産指数は前月比
0.0%(8 月:同 1.3%)の横ばいとなり、先月時点の予測指数の伸び(前月比 2.2%)
、事前の市場予
想(QUICK 集計:前月比 1.0%、当社予想も同 1.0%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比
1.1%と 2 ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比▲0.4%と 2 ヵ月ぶりの低下となった。
9 月の生産を業種別に見ると、輸出の持ち直しなどから輸送機械(前月比 2.6%)
、はん用・生産
用・業務用機械(前月比 3.7%)は比較的高い伸びとなったが、情報通信機械が前月比▲11.8%と
急速に落ち込んだことが生産全体を大きく押し下げた。速報段階で公表される 15 業種中 7 業種が
前月比で上昇、8 業種が低下した。
16 年 7-9 月期の生産は前期比 1.1%と 2 四半期連続で上昇し、4-6 月期の同 0.2%から伸びが加
速した。業種別には、新型スマートフォン関連需要で電子部品・デバイスが前期比 4.6%の高い伸
びとなったほか、熊本地震からの挽回生産などから輸送機械が前期比 1.5%と 2 四半期連続の増産
となった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移
(2010年=100)
120
生産
出荷
(前期比)
3%
鉱工業生産の業種別寄与度
在庫
2%
115
1%
110
0%
105
▲1%
▲2%
100
▲3%
95
▲4%
1301 1302 1303 1304 1401 1402 1403 1404 1501 1502 1503 1504 1601 1602 1603
90
1301 1304 1307 1310 1401 1404 1407 1410 1501 1504 1507 1510 1601 1604 1607 1610
(注)生産の16年10、11月は製造工業生産予測指数で延長
(資料)経済産業省「鉱工業指数」
(年・月)
はん用・生産用・業務用機械工業
電子部品・デバイス
その他
輸送機械
その他電気機械
(注)その他電気機械は電気機械、情報通信機械を合成
(年・四半期)
(資料)経済産業省「鉱工業指数」
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送
機械)は 16 年 4-6 月期の前期比 3.4%の後、7-9 月は同 1.0%となった。一方、建設投資の一致指
標である建設財出荷指数は 16 年 4-6 月期の前期比 0.0%の後、7-9 月期は同▲1.7%となった。16
年 4-6 月期のGDP統計の設備投資は前期比▲0.1%と 2 四半期連続の減少となったが、企業収益
の悪化を受けて 7-9 月期も低調な動きとなった可能性が高い。
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消費財出荷指数は 16 年 4-6 月期の前期比 0.2%の後、7-9 月は同 0.6%となった。耐久消費財は
前期比 4.0%(4-6 月期:同▲1.2%)と 3 四半
期ぶりに上昇したが、非耐久消費財が前期比▲
2.0%(4-6 月期:同 1.0%)の低下となった。
財別の出荷動向
(2010年=100)
130
資本財(除く輸送機械)
125
建設財
120
耐久消費財
非耐久消費財
115
7-9 月期の消費関連統計を振り返ると、消費財出
荷指数は前期比 0.6%、
「商業動態統計」の小売
110
105
100
業販売額指数(当研究所による実質・季節調整
95
値)は前期比 1.1%、
「家計調査」の消費水準指
85
数(除く住居等)は前期比▲0.5%となっており、
75
1304
総じて見ればほぼ横ばい圏の動きとなった。
90
80
1307
1310
1401
1404
1407
1410
1501
1504
1507
1510
1601
1604
(資料)経済産業省「鉱工業指数」
1607
(年・月)
2.10-12 月期の増産ペースは鈍化する見込み
製造工業生産予測指数は、16 年 10 月が前月比 1.1%、11 月が同 2.1%となった。生産計画の修正
状況を示す実現率(9 月)
、予測修正率(10 月)はそれぞれ▲0.9%、▲1.0%であった。
予測指数を業種別にみると、はん用・生産用・業務用機械(10 月:前月比 3.4%、11 月:同 4.9%)、
電子部品・デバイス(10 月:前月比 6.3%、11 月:同 4.8%)
、情報通信機械(10 月:前月比 7.2%、
11 月:同 0.2%)が強めの計画となっているが、これらの業種はいずれも生産計画が大幅に下方修
正される傾向があるため、実際の生産の伸びは予測指数を明確に下回る可能性が高い。
在庫循環図を確認すると、15 年 10-12 月期から 3 四半期続いた「在庫調整局面」から 16 年 7-9
月期は「意図せざる在庫減少局面」に移行した。出荷指数の前年比マイナス幅が縮小する一方、在
庫指数が前年比▲2.0%と 10 四半期ぶりにマイナスに転じた。ペースは鈍いものの、在庫調整が一
定程度進捗してきたことは生産の先行きを見る上で明るい材料と言えるだろう。
最近の実現率、予測修正率の推移
在庫循環図(鉱工業全体)
2%
15%
実現率
予測修正率
1%
2012年10-12月期
(景気の谷)
在庫積み上がり局面
2012年1-3月期
(景気の山)
10%
0%
在
5%
庫
・
前
0%
年
同
期 ▲5%
末
比
▲1%
▲2%
▲3%
▲4%
▲10%
在
庫
積
み
増
し
局
面
在
庫
調
整
局
面
45度線
2016年7-9月期
▲5%
45度線
意図せざる在庫減少局面
▲6%
1404 1406 1408 1410 1412 1502 1504 1506 1508 1510 1512 1602 1604 1606 1608 1610
(資料)経済産業省「製造工業生産予測指数」
(年・月)
▲15%
▲15%
▲10%
(資料)経済産業省「鉱工業指数」
▲5%
0%
5%
10%
15%
出荷・前年同期比
16 年 9 月の生産指数を 10、
11 月の予測指数で先延ばし(12 月は横ばいと仮定)すると、16 年 10-12
月期は前期比 2.9%の高い伸びとなる。しかし、生産計画が下方修正される傾向が続いていること、
7-9 月期の増産ペース加速は新型スマートフォン関連需要、熊本地震による操業停止からの挽回生
産など一時的な要因が重なった面があること、内外需ともに回復ペースが鈍いことなどを考えると、
10-12 月期の生産は 7-9 月期から伸びが低下する可能性が高いだろう。
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