オリンピックでの金メダル! シンガポール駐在員事務所 島 宗辰 リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックが終了し、日本では東京オリンピックへ向け各所で 準備が始まっていることと思います。今回のオリンピックでは金藤理絵選手(女子 200m平泳ぎ、金メダ ル) 、山縣亮太選手(男子 4×100mリレー、銀メダル)の地元広島の選手の大活躍が記憶に残っています が、ここシンガポールでも建国以来初となる金メダリストが誕生しました。男子 100mバタフライのジョ セフ・スクーリング(Joseph Schooling)選手が同種目でオリンピック 4 連覇を目指すマイケル・フェ ルプス選手に競り勝ち、オリンピック新記録で優勝しました。あまりオリンピックに関心を示さなかっ た多くの国民もこの快挙に歓喜し、凱旋パレードには多くの国民が集まるなどすさまじい盛り上がりを 見せていました。これまでのシンガポール選手団のオリンピックでの記録は銀メダル 1 個、銅メダル 2 個となっていますが、これはいずれも卓球競技において中国から帰化した選手の活躍によるものです。 【大会別成績】 大会名 2008 北京 2012 ロンドン 2016 リオ 合計 金 0 0 1 1 銀 1 0 0 1 銅 0 2 0 2 計 1 2 1 4 【競技別成績】 競技名 卓球 水泳(競泳) 合計 金 0 1 1 銀 1 0 1 銅 2 0 2 計 3 1 4 シンガポールでは「メダルを取れる競技は限られており、その競技の代表選手も純粋なシンガポール人 ではない」と言う考えがあり、オリンピックに関心を示さない人が多いと聞きます。ではなぜ限られた 種目でしかメダルが取れなかったのでしょうか?シンガポールは小さな島国であり資源も少ないことか ら、マレーシアから独立した後、政府は先進国に追いつき追い越すためにスポーツや芸術の分野には力 を注がず、教育(いわゆる学力向上)に力を入れてきたことが 1 つの要因です。今では 1 人当たりのG DPが日本を抜くまで成長したので、ようやく最近になってスポーツに力を入れる動きも出てきており、 その1つがFST(Foreign Sports Talent Scheme)と呼ばれる優れた外国人運動選手が帰化するため の特別な仕組みです。この仕組みを用いて優秀な卓球選手が生まれ育った中国の国籍を捨て、シンガポ ール人として頑張り、オリンピックでメダルを獲得しています。選手を輸入してメダルを獲得させてい ると揶揄されることがありますが、このような選手がその種目の知名度を高め競技人口を増やし、トレ ーニング方法や技術をシンガポールに持ち込むことで競技レベルを向上させていることは事実です。 一方、前述の金メダリスト、ジョセフ・スクーリング選手の場合はこれとは反対で、国籍はシンガポ ール人のままですが、14 歳の頃からより良い練習環境を求めアメリカに留学しています。確かに、彼が 金メダルを取ったことで水泳を始めとしたスポーツ全体の人気は上がったかもしれませんが、シンガポ ールのトレーニング環境改善にはなっておらず、今後のシンガポールにおける水泳競技の強化に繋がっ ていくかは疑問です。 自国で生まれ育った選手が自国で生活・トレーニングし、オリンピックで活躍することが望ましいこ とは言うまでもありません。今回の金メダルをきっかけに、シンガポールでのスポーツ競技人口のさら なる増加にFST制度のメリットを上手くマッチさせたオリンピック選手の育成に期待しています。 1016 広告審査済
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