乳龍帝?なる資格なんて最初からなかった(笑) ID:102542

乳龍帝?なる資格なん
て最初からなかった
(笑)
鶴マタギ
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので
す。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を
超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。
︻あらすじ︼
突然現れた﹁兄﹂を名乗る男に自分の人生を奪われた兵藤一誠。
だけれど彼は今日も幸せな生活を送る。これは﹁夢幻﹂と﹁無限﹂と一緒に住む彼の
ドキドキハラハラ殺伐コメディである。
※第3話を大幅編集いたしました
!
10
秘密の扉の先は地獄 │││││
︻愛 を 叫 べ ︼ ︻第1章︼戦闘校舎のフェニックス
V i v a c e
31
う手遅れ │││││││││││
55
諦めないうちは失敗ではない。だがも
!!
Re/verse︻垣間見えた本質︼ 65
混沌に舞い降りる種馬︵鳥︶ │
77
目 次 ︻Prolog︼兵藤一誠とその家族
俺、家 族 と の 夕 食 を 楽 し み ま す
!
!
﹁愛﹂ と ﹁憎﹂ と ﹁真 実﹂ と。 死亡フラグ乱立なお兄ちゃん │
1
20
47
│
︻Prolog︼兵藤一誠とその家族
俺、家族との夕食を楽しみます
キーンコーンカーンコーン
彼。そんな彼の頭の中には家で待ち受けているある男の手料理とある女の愛らしい笑
てそれを後に教師陣の間でも諦めムードが蔓延しはじめたのだ。せっせと準備をする
そう言った後に、げんこつを振り落とされたというのは言うまでもないだろう。そし
﹁準備はしましたが使うとは言っていませんよ。﹂
準備はしているのだ。1度だけだがそれを教師が指摘するとこう言ったらしい。
鞄を持ち上げせっせと教科書を詰め込む。そんな彼は律儀にも一応だが勉強道具の
授業など受けていないのである。
今では放置気味で、今日の授業だって眠っていた彼を放置していた。とどのつまり彼は
であるというのに彼は授業中寝てばかりであった。最初の頃は注意していた教師達も
ふぅーーと兵藤一誠は息を吐き出す。彼はもう高校2年生。受験を意識しだす学年
今日もつまらない学校が終わった。はやく帰ろ。
!
1
俺、家族との夕食を楽しみます!
2
顔が浮かんでいる。彼のとても大事な人。
ちらりと窓の外を見る彼。淡いオレンジ色の夕日が煩わしくてつい外を見てしまっ
たようだ。すると﹁うわぁ、嫌なものを見た﹂と言わんばかりに顔を歪め、早々にその
ひょうどうしんや
場を立ち去る。彼の目に映ったのは赤髪のおっぱい悪魔と白髪のぺったんこ悪魔、そし
て兄の兵藤信八。一応彼の兄貴らしい。突然現れた兄と名乗る男に両親を友人を、全て
を奪われた彼。自分の幸せを神の遊びで奪われてしまった、なんとも、なんとも可哀想
な少年。
そんな彼は今日も生きる。
﹁たっだいまー
オーちゃん
グーちゃん
!
﹂
!
ラスソースのハーモニーが素晴らしい程に調和している。
ので、とにかく美味いとしか言えない。だがなんというのだろうか
あむ。うん、うまい。もぐもぐとハンバーグを頬張る。グルメレポートなどできない
﹁なぁなぁ、聞いてくれよグーちゃん。俺の愚痴ってやつをさぁ。﹂
△▼△▼△▼△▼△▼
在である。
そんな可哀相な少年、兵藤一誠は世界No.1の実力を持つ﹁最強﹂で﹁最凶﹂な存
!
肉の旨みとデミグ
グーちゃんが口を挟む。うるさいな。語彙力ないんだよ、勘弁しておくれや。
﹁お前ハーモニーって言いたいだけだろ。﹂
·····
3
なんて
グーちゃんと呼ぶのは止めろ。俺の名前はグレートレッドというのだぞ。﹂
いや、そこまで誇らしげに言える名前ですか 俺の名前はグレートレッドだ
言われても失笑しかできない。
﹁長いからチェンジで。しかも厨二臭い。﹂
!
﹂
﹂
﹁グレートレッドって名前、日本語訳すると﹃素晴らしい赤﹄だよね。なんなの
のに幼稚園児なの
﹁そうだぞ。黙って食えやグーちゃん。﹂
然いい名前だ。
厨二な
そんな彼に声をかけるのはオーフィスことオーちゃん。グレートレッド︵笑︶より全
﹁ん、グレートレッドうるさい。﹂
しょうが。後でやりなさい、後で。
赤 い ポ ニ ー テ ー ル を し た 男 性 が 額 を テ ー ブ ル に 打 ち 付 け て 吠 え る。今 は ご 飯 中 で
!!!!
?
?
を口にするな。恥ずか死ぬ自信がある。﹂
﹁おい、一誠。お前が今何を考えているのかが手に取るようにわかる。だが絶対にそれ
eat red﹂じゃねぇか。なんだよ﹁素晴らしい赤﹂って。
それでいて厨二臭いときたもんだ。なんだよグレートレッドって。英訳したら﹁gr
?
﹁それと
·····
﹁だから言うなと言っただろうがああああああ
俺、家族との夕食を楽しみます!
4
﹁だとしてもその名前はやめてくれぇええええ
﹂
!!!
ーー夕食中だというのに我が家は元気だなぁ。
♢
♢
?
彼はそんな思いを胸に抱き、楽しい夕食の時を過ごしたとさ。
♢
?
?
♢
?
﹂
?
計画通りで私、大満足
それにしても名前かぁ。いい名前だと思うんだけどグーちゃんの言う通り少し要
·····
領を得ないかもしれないなぁ。
!
オ ー ち ゃ ん を 俺 の 膝 の 上 に 乗 せ た い が た め に わ ざ わ ざ 2 人 用 の ソ フ ァ を 買 っ た の だ。
て俺の膝の上にオーちゃんが乗っている。これが兵藤家のいつものポジションである。
夕食を終え、今はソファの上で団欒中だ。右側にはグーちゃんが、左には俺が、そし
うのか
﹁でもなぁ、一誠。お前俺達を他の人に紹介する時にオーちゃんとかグーちゃんとか言
5
﹂
ナデナデされるがままのオーちゃんに聞いてみよう。
﹁ねぇ、オーちゃんって名前は嫌
られる。
ああ、可愛いなぁ。ほれみろと言わんばかりにグーちゃんを見る。どうだ
?
﹁そんなことない。我、イッセーのくれた名前が好き。﹂
んは嫌じゃないらしいぞ
オーちゃ
ぶんぶんと首を横に振って答えてくれるオーちゃん。可愛い。非常に介護欲をそそ
?
﹁いやなぁ、お前がつけてくれた名前が別に気に入らないってわけじゃねぇ。だけどな
そんな俺の顔を見てはぁ、と溜息をつくグーちゃん。おい、何がおかしいんだよ。
?
けど
意外と嬉しいものだ、グーちゃんからは名前の感想を聞かされなかっただけ余計に。だ
ふんふん。意外と気に入っているとな。オーちゃんを抱いて背もたれによしかかる。
﹂
·····
何か不穏な空気が
·····
·····
100人ちゃんといるもんね
﹂
!
何を唐突にネーミングセンスがないだの、友達がいないだの。失礼なグーちゃんだな
いきなり罵倒されてしまい、焦りが身体中から滲み出る。
﹁べ、べっつにおま、と、友達なんているしぃぃい
!
﹁お前、友達いないからわかんねぇかもしれんけど、ネーミングセンスが壊滅的だぞ。﹂
俺、家族との夕食を楽しみます!
6
ちゃんと友達いるし。ちゃんと
いるし
·····
﹁おい。何を察しとるんじゃボケ。﹂
﹁あっ⋮︵察し︶﹂
!
まぁ、正直な話、友達なんていないんだけどね。一匹狼気取ってます。いつも1人
·····
女性陣からの印象最悪
というかボッチじゃなくて一匹狼です。ここ大事ですよ。
﹁まぁこの際お前のぼっち事情なんてどうでもいい。﹂
なんだけど。
に肩身が狭い。なんで俺のこと変態だとか言いふらしてんの
で弁当食べていつもひとりで帰宅してます。部活も入っていません。兄のせいで余計
·····
?
あのおっぱい星人マ
?
なるべく早く決めよう。こういう時はパッと思いついたやつが一番いい。
﹁じゃあ今俺が決めるね。﹂
たと思ってるのさ。
ジ無能。ちゃんと自分の領地のことは把握しておきましょうよ。何人俺の魔法で守っ
使の動きも活発になってきたから俺がでないといけないのかな
んーーー。そう言われればそうかもなぁ。ちょうど兄貴を叩き潰したかったし、堕天
のためにちゃんとした偽名は考えるべきだぞ。﹂
﹁何事も不測の事態はある。それは強者であればあるほど増えることだ。そういった時
いや、よくはないけどね
?
7
﹁うへっ
い、今すぐにか
﹂
?
ど思いうかんだ。
グーちゃんは赤太郎で、オーちゃんは
とにかくはやい
﹂
そ、そこまで拒絶する 流石に泣きたくなってくるんだけ
!
﹂
それでいい
ゆうぎり
俺は夕霧
すみか
オーフィスは澄玲だ
と黒美が一番いいのだが
まぁグーちゃんも満足しているし、オーちゃんだって﹁澄玲
﹂
気に入ってもらえて何よりだ。あっ、そうだ。
﹁なぁ、俺もそっちで呼んだほうがいいのか
澄玲﹂って呟いている。
·····
俺的には赤太郎
お前にしてはいい名前だと思う
!
か他の名前を
﹂
!
じゃあグーちゃんは﹃夕霧﹄でオーちゃんは﹃澄玲﹄ね。でも正直どうかと思うし何
·····
グーちゃんが必死すぎて怖い。というかこんなんで良かったのか
!
どちらかといえばオーちゃん、グーちゃんで呼びたい。そんなことを思いつつグー
?
?
ぞ
·····
﹁いいのが思いついたぞ
はやい
﹁すまん。チェンジで。もう片方ので頼む。﹂
·····
グーちゃんよ。そんな不安そうな声を出すな。安心しろ。ちょうどいいのが2つほ
?
!
ど。でももう一つかぁ。あんまりこっちは気に入っていないんだけど
?
!
·····
!
!
﹁
·····
﹁いや
俺、家族との夕食を楽しみます!
8
ちゃんを見る。
おい、何笑ってんだよ。
·····
そうかそうか。グーちゃんもやはりその名前が気に入っているのだな。じゃ
!
え
?!
﹂
﹂デュエルスタンバイ
﹁はぁああぁぁぁぁぁぁ
?
拒否権はねぇから。﹂
··········
次回、﹁信八死す
!
!!!???
﹁あっ、それとだな。お前の学校生活が不安すぎるので明日から同行するぞ。ちなみに
たく、眠そうな顔をしちゃってまぁ。
あ家の中ではそう呼ばせてもらおう。すりすりとオーちゃんの頬を軽く撫でる。まっ
おお
に呼べ。さっきの名前を使うのは客人の前でいい。﹂
﹁いやな、そんな残念そうな顔をされるとは思わなくてな。名前に関してはお前の好き
9
死亡フラグ乱立なお兄ちゃん
目の前の一誠は今、必死になって外れた顎を元に戻そうと奮起している。外れすぎた
あまりその顎が凶器と化しているがそこは気にしないでおこう。そしてオーフィスの
頭 に 凶 器 と 化 し た そ れ が 突 き 刺 さ っ て い る だ な ん て 知 ら な い。だ か ら オ ー フ ィ ス よ。
そんな悲しそうな目でこちらを見ないでくれ。罪悪感に潰されそうになる。
ふー。ようやく直った。﹂
頭をさすりながら恨めしそうな目で一誠を見るオーフィス。
うなその動きは見ていて気持ち悪かった。
恐ろしほどの伸縮性だな、その顎。にゅにゅにゅって戻ったぞ。芋虫を連想させるよ
﹁ーー、あっ、あーうへぃ。
·····
ってほどの顎が突き刺さったのだ。俺なら半殺しにしている。
?
そう。こうして見ている分にはこいつはそれほど悪いヤツじゃない。俺はこうい
·····
う光景を見るたびに思うのだ。
﹁うっ、ご、ごめんなオーちゃん。許して下さい。﹂
いか
大分不機嫌そうだな。流石にこればっかりは謝るべきだろう。刺殺出来るんじゃな
﹁イッセー。頭痛かった。謝って。﹂
死亡フラグ乱立なお兄ちゃん
10
ーーこれなら普通友達なんてできるだろ。と。
前から不思議に思っていたのだ。いっつも早々に帰宅してくる我が息子。そんな彼
は面白い時と面白くないときの差が激しいのだが、まぁまぁのギャグセンスはある。顔
普通ならほおっておいても勝手に虫のごと
もかなりと言っていいほどの美形だし、体型だって細マッチョと呼ばれるウケのいいも
のだろう。逆に何故1人も友達がいない
く寄り付いてくるもんだと思うんだが。
?
まぁいい
俺の懐の深さをとくと知るが良いぞ
でも許してほしいならアイス買ってきて。﹃はーげん
なんでそんな高価な物を
!
﹁イッセーのことは許さない。
·····
とりぼっちなのだ
﹂
﹁そして俺をこんなめに合わせたグーちゃん。お前は絶対許さねぇ
チュー味で悶絶しろ
!
なぜひ
?
ガリガリくんのシ
!
?
に家族を想い、愛し、守ろうとしている。そんな奴が何故虐げられているのだ
こいつは優しいやつだ。聖人とまではいかないが人並み以上には優しい。そして特
!
!
だっつ﹄て名前のやつ。﹂
﹁ちくせう
﹂
!·····
11
おいおい。オーフィスのパシリに任命されるよう誘導したのは俺だぞ
だから。もし。もしもだ。
感謝されこ
?
オ ー フ ィ ス と の 差 が 激 し す ぎ る だ ろ。ま ぁ 別 に 俺 の は 要 ら ん ぞ。つ い で 程 度 で い
俺は今お金持ちだから。ほら
財布に5000円も入ってるんだぜ
もしもこいつの笑顔を奪うようなやつがいるのなら。
い。﹂
﹁遠慮すんなって
!
﹂
もしもこいつの幸せを奪うようなやつがいるのなら。
﹂
﹁おい、字が違うぞバカ。﹂
!
!
﹁
を買ってくる。﹂
﹁あっ、確かにそうだわ。グーちゃん、俺が悪かったよ。ガリガリくんのチョコレート味
そすれ、恨まれる筋合いなんてないぞ。﹂
﹁
!?
··········
·····
··········
﹁んじゃあ、逝ってきます
死亡フラグ乱立なお兄ちゃん
12
13
俺はそいつを絶対に許しはしない。殺して殺して、殺し尽くしてやる。
高だ。朝からお腹が減ってきたな。
の晩御飯はバーベキューがいいなぁ。満天の星空を見ながらのバーベキュー。うん、最
陽さんはらんらんと照り輝いている。ものの見事な快晴だ。この天気のままなら今日
おはようございます。今日はいい朝ですね。スズメさんはちゅんちゅんと唄って、太
△▼△▼△▼△▼△▼
彼の大きくて華奢な身体を見送りながら俺は決意した。
·····
覚束無い足取りで階段を下り、リビングへ向かう。そして目的地に近づけば近づくほ
なんともらしい朝食だ。やばい、お腹が減った。なんてこと考えながらふーと息
ど匂いも香ばしいものになっていくのがわかる。今日のご飯はパンとハムと目玉焼き
かな
﹃ふざけんな
﹃触らないで
﹄
﹄
もう近寄らないで
お前なんか俺の子じゃねぇ
私に触っていいのは信八くんだけなの
﹃なんなのよアンタは
!
!
すーと息を吸い込みドアを開ける。
グーちゃん
!
オーちゃん
!
*******************
﹄
俺の朝はそんな美味そうな飯の匂いと家族との挨拶から始まるのだ。
﹂
不安になんてならない。今日も彼らと幸せな日々を生きていこう。
がこの扉の向こうにいるのだ。
拒絶された。親から、友人から。そして絶望した俺を助けてくれた2人。そのふたり
!
!
!
!
!
を吐き、ドアの前に立つ。瞼を閉じれば思い出されるあの日々。
?
﹁おっはよー
死亡フラグ乱立なお兄ちゃん
14
結局ついてくることにした
﹂
?
﹁うん
でもつまらないよ
いいのそれでも
行くと言っているだろうが。お前の力ならそんなの造作もないことだろう
いやー、やっぱりついてくる
?
﹂
?
と。
﹂
﹁んー、まぁわかったよ。でも大人しくしててね
こと。オーケー
?
まぁそんなことグーちゃんはわかっているのだろうけど。
俺 の 中 で 暴 れ ま わ っ た り さ れ て は た ま ら な い。こ れ ば っ か り は お 願 い し た い の だ。
?
俺が静かにって言ったら静かにする
な 彼 を 見 る 度 に 思 う の だ。こ れ が 禿 げ た デ ブ の お っ さ ん だ っ た ら 違 う ん だ ろ う な ぁ、
リートサラリーマンのようにも思えるもので、悔しいがめっさカッコイイ。そしてそん
赤 髪 の イ ケ メ ン が こ ん な こ と を し て も さ ま に な る。そ の 姿 は ど こ と な く 休 日 の エ
ちゃんは毎回新聞を読みながら朝食の時を過ごすのだ。しかもコーヒーを片手に。
だがそんな俺の視線を知ってか知らずか、問題ないとばかりに新聞に目を戻す。グー
?
?
ない。9時登校にしておくれと刹那に思う。
しれないが時は一刻を争うのだ。今は8時ちょっきしで、制限時間まであと30分しか
もぐもぐとバターの塗られたトーストを頬張りながら聞いてみた。行儀が悪いかも
﹁それで昨日の話はどうなったの
?
?
15
﹁俺は小学生か。大丈夫だ。そこら辺はちゃんと自重する。﹂
やっぱり常識人だった。彼は人ではないが常識人と言える知識と常識を持っている。
そしてめっさ強くてカッコイイ。そんな自慢の父親だ。
す る と 牛 乳 を 口 の 周 り に つ け た オ ー ち ゃ ん が 不 安 そ う な 顔 で こ ち ら を 振 り 向 い た。
﹂
口を汚しちゃってまぁ。ウエットティッシュで口を拭いて綺麗にする。よし、完璧だ。
﹁イッセー。我もついていっていいの
グーちゃんの言う通りに行動しなさいね
?
出来るのだ。これは最高峰の次元系の能力で本当に便利で助かっている。
ら内側からでも攻撃できる。更には異空間移動でほかの地に瞬間移動のようなことも
﹃次元破壊﹄で俺の中に最高位の空間を創り出す。誰も干渉出来ないし、この空間の中な
﹂
ならない。それにしてもやっぱり癒されるなぁ。不安そなその姿はどことなく子猫を
で言ってあげる。言葉の綾で不貞腐れてしまう可能性もあるので特に心掛けなくては
不安な声で尋ねてくるオーちゃん。﹁大丈夫だよ﹂と出来るだけ優しい、諭すような声
?
連想させるもので、抱き締めたい欲を我慢するのが大変だ。
?
よし。いい子だ。これなら何の問題もないだろう。
﹁うん。わかった。﹂
﹁でもちゃんと静かにするんだぞ
死亡フラグ乱立なお兄ちゃん
16
17
そしてこれは俺の能力である﹃見聞稽古﹄で手に入れたものだ。あっ、もうこんな時
間じゃない。はいは∼い、この特別空間にご招待しますんで、早く食べちゃってくださ
いね∼。
♢
・
・
・
・
それにしても俺の能力で得た能力か。これもうわかんねぇな。
♢
・
?
♢
・
?
♢
?
それは﹃見聞稽古﹄﹃昇華﹄﹃派生﹄﹃完成﹄たったこれだけである。
彼の能力は4つしかない。
?
だがしかし、彼の実力は間違いなく世界最強である。
見聞きした力を自分のものにする﹃見聞稽古﹄。
得た全ての能力、それは頭脳・筋力・異能力などの全ての能力を100%以上に。い
や120%以上に発揮できるようにする﹃昇華﹄。
それらを全知した場合にのみ自分の最高峰を設定できる﹃完成﹄。
まで広げ、それを学ぶ﹃派生﹄。
﹃時空﹄
﹃剣技﹄
﹃銃技﹄
﹃火﹄などありとあらゆる概念を枝分かれするかのように最大限
死亡フラグ乱立なお兄ちゃん
18
19
漫画で、アニメで、小説で、実践で、彼らは多くのものを学び吸収した。
そんな最強で最凶は今日も家族と一緒に笑い合うのである。
後に訪れる大量の鮮血を見ることになるだなんて露も知らずに。
そしてもらったのが﹃魅了する能力﹄と﹃赤龍帝の力を完全に制御できる﹄というも
形成されるということなのだ。
いってもハーレムもの。俺が一誠の代わりに主人公になれば自動的に俺のハーレムが
そして頼み込んだ。HSDDの世界がいい、と。俺はこの小説が好きだった。なんと
公になれるとは思ってもいなかった。
した、いかにも神様ですって方が現れたのだ。よく二次創作で見かける転生ものの主人
たのだ。正直その時は心踊った。気づいたら真っ白な空間に居て、ヒゲのモジャモジャ
だが運悪く死んだ俺。そんな俺を見かねてか神様が転生させてくれると言ってくれ
けたのだ。
生死だなんて心底どうでもよかったのだが、ラノベ的展開を求めたために命を張って助
理由なんて簡単だ。刺激欲しさってのが2割。そして残りの8割は期待だ。正直猫の
俺は猫を助けるために車に飛び込んでいったのだが死んでしまったのだ。勿論助けた
それはある日のことだった。いつも通りつまらない生活を繰り広げていた時のこと、
よっす、俺の名前は兵藤信八。転生者だ。
﹁愛﹂と﹁憎﹂と﹁真実﹂と。
「愛」と「憎」と「真実」と。
20
21
のだ。
欲を言えばもう少し欲しかったのだが、これでもなんとかなると思っていた。原作知
識という未来予知もあるし、なにより俺の頭はいいと自負している。それに冷徹の非情
さを持っているというのも自信のひとつだ。女の扱いにも長けていた。
そんな俺は意気揚々とこの世界に転生したのだ。ハーレムをつくるため。主人公に
成り代わるために。
そして今のところは全てが順調だ。昨日はアーシアを救った。計算し尽くして、どう
やったら期待値と新愛値を上げるかと随分と考えたものだ。だがその成果は実り、見事
にハーレムが出来上がった。そして生徒会長であるソーナとも関係がある。まぁ、関係
といっても身体の関係なんてないがな。そういうシチュエーションにはこだわがある
のだ。
そして男組とも仲良くやれている。木場くんとは剣技を交えて。ギャスパーくんと
はネットゲームで。
もう全てが完璧だ。完璧と言っていい。寸分の狂いもないハーレム道だろう。
だが少しばかり誤差が生じている。リアスの結婚の話がすぐ近くまで迫っているの
「愛」と「憎」と「真実」と。
22
だ。俺というイレギュラーが混じったからそうなったのかはわからないが、とにかく急
だ。
まぁ、ある程度すべきことは考えているから良しとしよう。そのためにも今はあい
ちらへ向かってきて、﹁お前は1通り予習してたんだな。それなら授業中暇になっても
今日の件で俺の評価︵先生方からだけだが︶爆発的に上昇した。授業が終わる度にこ
ら完璧だ。
度の難しさで聞いて、
﹁やれやれ。仕方が無いなぁ。﹂と嬉しそうに答えさせる。我なが
てられたら完璧に答え、ソレに関する疑問を投げかける。先生のプライドを折らない程
今日の授業では、できる限りのことはしたと思う。積極的に手を挙げ、質問する。当
め、できる限り寝ないように頑張っていた。だっていいとこ見せたいもん。
と終わったのだと思うのだ。今日はグーちゃんとオーちゃんが授業風景を見ていたた
授業という名の地獄から解放されたことを告げる安らかな音。これを聞くたびやっ
キーンコーンカーンコーン
△▼△▼△▼△▼△▼
つが必要だ。兵藤一誠。今日、お前は俺のために死ね。
·····
仕方が無い。﹂とか、
﹁そんなに出来るのなら放課後あたりにでも来いよな。﹂と、嫌味で
はなく暖かい笑顔で言われたのだ。
グーちゃんとオーちゃん以外の人と喋っていなかったため俺は終始声が小さかった
のだが、無事に生還することが出来た。それに先生方はいい人達ばっかりだった。俺な
んかもう既に見放されているもんだと思っていたのだが、裏で密かに﹁兵藤一誠強化計
画﹂なるものを計画していたらしい。何それ怖い。不穏な気配しかしない。
嬉しそうだな、一誠。良かったじゃないか。︶
︶
心の声が聞かれているのを忘れていた。にやにやとした声のグーちゃんだけ半殺
ちょ、こ、こっちからもそっちに聞こえているのか
しにしよう。
︵
︵お肉。嬉しい。︶
気も良いし外で食ってくれ。オーちゃんは俺とバーベキューな
あぁ、ちゃんと聞こえていたよ。今日のお前の晩ご飯はシュールストレミングだ。天
!?
︵うん。イッセー嬉しそう。こんなイッセー初めて見た。︶
︵
?!?!·····
·····
れ。︶
︵おい、一誠。すまなかった。俺が謝るから半殺しもシュールストレミングもやめてく
?
23
はぁ。別に言葉の内容は良かったのに声が全部ダメにしてたんだよ。許してあげ
·····
るけどもう二度目の慈悲はないよ
︵仰せのままに。マイキング。︶
わかった
?
い声援とも言うべきなのか。
もしかして。︶
ここにいるぞ。﹂
一体何のつもりだ
こちらへお前の声を流せ
︶ どうなって
オカルト研究部まで何だけど。﹂
まさか。
!
︵
︶
どうかしたのか、一誠よ。って、おい お前の声が聞こえなくなったぞ
るんだ
がらり、と教室の扉が開き、ある男の声が谺響する。
﹂
?
その声の主は兵藤信八。平穏から最も程遠い存在である。
一誠
!
?
﹁あっ、良かった。ちょっと付いてきてくれないか
︵おい
!
?
﹁
·····
·····
!
·····
!
そんな茶番劇を繰り広げていた時のことだった。ふと廊下から歓声が上がる。黄色
お前の晩飯はにぼしだ、愚か者め。
?
黄色い声援を浴びながらも着実にこちらへ近づいている足音。
!
︵
·····
?
﹁やぁ、俺の弟はいるかな
「愛」と「憎」と「真実」と。
24
良かったー。じゃあ、行こっか
﹂
ごめんな。グーちゃん。今の俺じゃあグーちゃん達を失望させちゃうから。
そっか
!
別にいいよ。﹂
﹁おう
!
やっぱりこんなの聞かせられないよなぁ。グーちゃんとオーちゃんには。
♢
♢
♢
?
んで。何の用なんだ
♢
﹁
?
﹂
有象無象に囲まれながら歩く廊下は永遠と思わせるほど長かった。
すくりと立ち上がり兄の後を追いかけるように教室を出る。
見せてみろ。と、ドロドロに塗れたどす黒い心の内が脳裏を彷徨く。
その仮面塗れの笑顔を見せるな。お前の本当の顔を見せてみろ。お前の本来の姿を
!
﹁
·····
·····
·····
?
仮面を剥いだと思ったら何だこれ
﹂
?
﹁俺のために死ね。﹂とかいうやつ初めて見た
﹁話が早くて助かる。お前さ、俺のために死んでみない
·····
るだけだ。
今は周りに人は誰もいない。ただ先の見えない淡いオレンジの空間をただ進んでい
?
?
25
?
ぞ。俺の戒禁にも引っかかっていないのが余計に腹立たしい。
家族を残して先に死ねない。﹂
あ
﹂
何が可笑しいんだよ。
﹁あっはっはっはっはっ
﹂
誰もいねぇじゃねぇか
ぷーぷっぷっぷっ
お前に家族
頭の中に綿あめでも詰まってんの
家族がいる
お前に
﹂
なになに
もしかして
兄貴の邪魔は
まーだそんな妄想してんのか。お前はさっさと
?
!
俺にも家族はちゃんといる。今はそいつらと暮らしているんだよ。
何だって
しないから、もう関わらないでくれないか
﹁え
?
それにー、と何か続けようとした。
!
!
目の前にいる野郎は俺の言葉を長い間咀嚼した後、馬鹿にするように嗤った。
﹁ぶっ
そして俺がそう言い放った時だった。
ては相手の意図すら読めなくなる。思う壷だ。
だが出来るだけ静かに喋る。伝わるように喋る。恨みの対象だが冷静さに欠けてい
﹁
·····
·····
·····
?··········
? !
俺のために死ねばいいのによ。﹂
?
?
·····
?!
?
?·····
﹁
「愛」と「憎」と「真実」と。
26
やめろ。
それ以上言ったら。
ヒーロー気取りなのかねぇ
﹂
こんな出来損ないのゴミ野郎
ぷっ、ははははははは
!
﹁もし仮にお前に家族がいたとしてもそいつらは屑だな
を拾ってさぁ
!
··········
本気で殺すぞ。
!
!
27
「愛」と「憎」と「真実」と。
28
俺は全力でそいつの顔をぶん殴った。
どうなっているんだよ
△▼△▼△▼△▼△▼
くっそ
!
何故なんだ
だが何故
·····
何故
?
心の内から溢れる醜い感情でも聞かれると思っているの
?
そしてそれを聞いたオレらが幻滅すると
声を遮断した
か
?
たい予想は出来る。おおかたあいつの嫌いな奴でも来たのだろう。
俺は今とてつもなく混乱している。突然外からの声が聞こえなくなったのだ。だい
!
本気で思っているのか
?
?
·····
﹁おい、オーフィス。恐らく緊急事態だ。外の声どころか、一誠の全てが聞こえなくなっ
た。多分早めに対象しないとここら一帯が血の海になる。﹂
﹁朝、イッセーに言われただろ
俺のいうことをちゃんと聞けって。﹂
まぁ、どちらにせよ俺達がいて良かったのには違いない。
?·····
?
·····
渡された呪文だ。
ふー、と息を吐き出し、呪文を唱える準備に入る。イッセーからもしもの時のために
﹁わかった。﹂
﹁オーフィス。解き放て。﹂
や、そろそろ頃合だったのか
よし、まさかこんな日に使うとは思わなかったぞ。い
たしかに変。イッセーの声が何も聞こえない。﹂
·····
オーフィスがこくりと頷く。
﹁
29
その瞬間。全ての時が凍ったように止まった。
して抱くな。愛は振舞え。憎はいつでも己の中に。戒禁﹃慈愛﹄機動。﹄
﹃愛は憎を生む。抱いてはならない。その清らかなる心から生まれたものは他人には決
「愛」と「憎」と「真実」と。
30
っ、なんで
なんで体が動かないんだ
!
だ。
なんで動かないんだ
動け動け動け動け
!
なんで
!
なかった。
自分が耐えればいい話なのだから。別に自分のことについて何と言われようとも構わ
に映っていたのは深い深い憤怒であった。自分を貶められるのは別に良かった。ただ
もう彼の目にあるのはただただ深い燃えるような怒り。家族を馬鹿にされた彼の目
!
ぶ彼を見て、尚も追撃しようと足を踏み出そうとした。そう。踏み出したはずだったの
怒りに身を任せ、兄を名乗る何者かをぶっ飛ばした。スーパーボールのようにはね飛
1歩も足を踏み込むことが出来ない兵藤一誠は今困惑していた。
!
秘密の扉の先は地獄
31
秘密の扉の先は地獄
32
でも、家族のことを馬鹿にされるのだけは許さなかった。屑と、ヒーロー気取りだと
言われた。
オー
俺の家族を馬鹿
グーちゃんの優しさを知っているのか
知らないだろ。知らねぇのに
?
お 前 が 俺 の 家 族 の 何 を 知 っ て い る
ちゃんの愛らしさを知っているのか
にするなよ。
·····
たのだ。
ーーそこで問題。今激昂している彼を止められるような人物がいるのだろうか
?
なかった。我慢ができなかった。それほどまでに愛してやまなかった大切な存在だっ
結局は彼が我慢すれば済む話であったに違いないだろう。でも、どうしても彼は許せ
?·····
?
フィス。またの名をオーちゃん。澄玲ともいう。
せ、その顔には普段からは想像できないほどの怒気が含まれていた。彼女の名前はオー
そしてその隣で一誠を睨みつける少女。グレートレッドと同じように髪の毛を靡か
親であるグレートレッド。またの名をグーちゃん、夕霧ともいう。
目の前に現れたのは紅色の髪の毛を靡かせる、凛とした顔立ちの男性。それは彼の父
答えはYesである。
﹁イッセー。今回ばかりは我も許さない。﹂
﹁イッセー。ちょっとばかし説教だ馬鹿野郎。﹂
33
﹁
あっ、
﹂
·····
駆け巡っているのは﹁後悔﹂と﹁自責の念﹂である。
そんな愛しの存在を前にした彼に今、先程のような怒りなど、もうない。今彼の頭を
·····
久しぶりの拳骨だぁ、一誠。歯ぁ食いしばれよ。﹂
·····
のだった。
その瞬間、一誠の負の感情など吹き飛ばすかのような痛みと突風が彼の頭上を襲った
怒りを顔に滲ませた夕霧は躊躇なく拳骨を放った。
﹁
秘密の扉の先は地獄
34
35
△▼△▼△▼△▼△▼
ここは
どこだ
?
·····
ここは、オカルト研究部か。
俺は確か誰かを迎えに行っていた。そして廊下で話をしながらこっちに向かって、
·····
ことが出来ずに意識を手放したのだ。じゃあ
·····
なんで俺はここにいる
?
ん殴られたのだ。それも勢いよく。いきなりの不意打ちであったため、直ぐに立ち直る
その誰かを思い出した瞬間、ただならぬ怒りが身体を支配した。そう。あの変態にぶ
それで
ゆっくりと上体を起こし、頭に手を当てて考える。
であるインテリアの数々から、ここがどこなのかは容易に導き出せた。
の主の髪の色と目の端に映る微かな淡いろのオレンジ、そしてどこかオカルト風な彩り
うっすらと目を開けると心配そうにこちらを覗く2つの瞳があった。そしてその瞳
·····
·····
·····
頭から手を離し周りを見渡す。まずは状況確認をせねば。
目に映るのは、こちらを不安そうに見つめるリアス。お茶を入れながらもこちらをチ
ラチラと伺う朱乃。チョコレートを口に含みながらも、どこか不安そうな目でこちらを
見る小猫ちゃん。良かった、と呟いてどこかホッとしているアーシア。そして木場はあ
る人物の監視をしていた。
その人物とは
·····
♢
♢
?
?
♢
?
♢
?
さきほど殴り飛ばした張本人である兵藤一誠であった。
﹁あっ、やっと起きたよこの愚兄。﹂
秘密の扉の先は地獄
36
はい。めっさ怒られました。グーちゃんには虐待だろ
より堪えました。
そして言われたのだ。
程度でお前を嫌いになるなど一生ありえん。﹄
﹃イ ッ セ ー。家 族 が 大 事 な の は イ ッ セ ー だ け じ ゃ な い。
て。嫌いになんかならないから。﹄
と言いたくなるくらい拳骨
我 も 大 事。だ か ら 頼 り に し
を偽り嘘をついていたのだ。そんなのが本当に﹃家族﹄だなんて言えるのだろうか。ー
あんなに大切だ、なんて言っておきながらどこか一線を引いていたのだ。自分の過去
馬鹿なんだとも。
念に苛まれていた俺には本当に嬉しくも思ったし、辛くも思った。そして自分はなんて
この時の俺の顔ったら酷かったのだろうな。涙と鼻水で顔はぐちゃぐちゃ。自責の
·····
安心しろ。お前は人間なのだから負の感情など湧き水の如く湧くものだ。俺達はその
それと
·····
を浴びせられて、オーちゃんからはただただ冷たい目で睨まれた。正直、グーちゃんの
!
﹃隠し事があるのならちゃんと話せ。それもお前に関わることなら余計にな。
37
答えは否であろう。だから俺は全てを打ち明けよう。ある程度のケリをつけてから。
そう考えた俺は兄をお姫様抱っこし、オカルト研究部へ連れていった。
重そうな扉が眼前に立ち塞がった時は少しばかりびっくりした。こんな大層な扉を
用意できるのなら暖房を教室につけてくれと切に願った。
と思ったがこの学校はそういう所だったな。と目蓋を閉じ、思いに耽った。思
早く信八から手を離しなさい
気絶させた原因も俺ですけど。
彼に何をしたの
﹂
連れてきてあげたのは俺ですよ
!
そんなことを考えていると声が掛かる。
あなた
!
早くてを離しなさいはないんじゃないですかね
!
い返されるのは虐げられる日々。まともに女子と交流出来ていないなぁ。
ム万歳
扉を開け、その向こう側にいたのは男女比が狂っている異空間であったのだ。ハーレ
!·····
まったく、周りの奴らの警戒心と不安がひしひしと伝わってくる。よほどこの愚兄
が心配なのだろう。
?
!
·····
?
﹁っ
秘密の扉の先は地獄
38
このリア充が。
あぁ、リア充ってあれか
それはピカチュウな。
︵
·····
·····
それは饅頭な。
ーー2人ともどした
黄色の電気を纏う鼠。︶
頭大丈夫か
心配になってきたぞ。
?
らグーちゃんの荒い声なんて聞こえませーん。バーカ。
なんじゃないか思ったのは秘密だ。シャーター締まりマース。恥ずかしいので。だか
おちゃらけた雰囲気の二人、こんないい奴らに囲まれて生活している俺の方がリア充
?
︵イッセー。我それ知ってる。あの白色の生地にあんこはいってるやつ。︶
?
39
ってあれ
あの白い子って確か
?
あぁ。そういうこと。お疲れ様です。
·····
△▼△▼△▼△▼△▼
!!
テメェェェエエ
!
·····
おかしいですね
何処かで嗅いだ
信八先輩が怒り狂い、一誠先輩に飛びかかろうとしていました。そして信八先輩の視
﹁いっせぇぇぇえええ
﹂
シャーターを殴りつける暴龍2匹を押さえつけるのには時間がかかりそうだ。
ーー早く起きてくれよ愚兄よ。
たことぐらいだろう。沈黙がとにかく辛かった。
そこから先は特に何も無かった。強いていうならば、イケメンくんから監視され続け
·····
線の先にはどこか面倒くさそうな顔の一誠先輩。
?
秘密の扉の先は地獄
40
ことのあるような
私の思考が彼の放った言葉に遮られました。それにしても憎しみを抱いちゃダメ
そして何故そんなに余裕そうなのですか
﹁なにふざけたことを
·····
っ
な、なんで動けねぇんだ
!
の殺気を纏っていました。正直私でも怖いです。
﹂
で、昨日戦った中級堕天使をも瞬殺するほどの強さでした。今の彼も昨日と同じくらい
私は信八先輩の戦いっぷりを昨日、この目でちゃんと見ました。彼は今代の赤龍帝
?
?
﹁まぁまぁ、俺に憎しみを抱いちゃダメだよ。兄者。﹂
·····
彼も何か持っているのでしょうか
?
なんか面倒くさいのでパパッと言いたいことだけ言って帰りますね。﹂
の何かの神器
?
白音。﹄
·····
それは思い違いなのでしょうか。いえ、思い違いであってほしいのでしょうか。
·····
﹃ごめんね
で見たことがあるものでした。
たのです。燃え上がるような決意とどこか寂しさを募らせる哀しい目。それは何処か
頭を掻きながらため息をつく彼。その目には信八先輩とは全く違うものが映ってい
﹁
·····
するとピタリ。と時が止まったかのように信八先輩の体が止まりました。一誠先輩
!
41
ぶんぶんと頭を振り、彼を観察することにしました。今はこの一誠先輩を見なくて
は。
信八先輩が言うような人ではないと思います。変態でもないし、人格破綻
ば容赦なく殺しますんで。﹂
﹁えーと、あっ、そうだ。俺と俺の家族に手をかけたり、貶めたり、馬鹿にするようなら
彼の目。信八先輩が言うような人物では絶対にないと思います。
者でもない。逆に何を思ってそう言ったのか不思議なくらいでした。その根拠は勿論
見る限り
·····
それはあまりにも軽々と出た言葉。まるで殺すということを何とも思ってない言
せたのです。
そこまで知っているんですか。い、いえ、今のは別にリアス先輩のことを無能姫と
?
私が聞きたい
·····
たい放題されてたようですし。﹂
認めたとかそういうんじゃないです。ほ、本当ですよ お、おっほん。
?
·····
昨日までやり
い方。右足が出たら左足が出る。それくらい短調な物言いで、それが一層と私を恐怖さ
·····
﹁ではでは。あっ、無能姫さん。ちゃんとこの町守んなきゃダメですよ
秘密の扉の先は地獄
42
のは何故この領地の主がリアス先輩だと知っているのかです。
それは俺達が最強の家族だからです。﹂
·····
♢
♢
♢
?
?
♢
?
﹂
大分怒っているようだ。ごめんなさい。隠し事とといいシャーター閉じたことと
·····
たかなーと思っている。でもまずは話さなくちゃ。
いい、意外と根に持つようだった。意外と知らない家族の一面を知れたので別に良かっ
﹁2人用だからだ。ほら、オーフィスと俺でちょっきしだろ。﹂
今は床の上で正座してます。なんでソファに座らせてくれないんですかねぇ。
﹁ーーという訳で一誠。まずお前の隠し事を話してもらうぞ。﹂
?
部を埋め尽くしていました。
誰も声を発することが出来ず、誰も身動きすらできない。そんな空気がオカルト研究
その言葉とともに、彼は一瞬にして霧のように消え去りました。
﹁
その言葉に何も答えず、彼は扉の方を向いてこう言ったのです。
﹁な、何故あなたが私が領主であることを知っているのかしら
!?
43
そうさなぁ
まずは
·····
﹂
·····
その言葉に目を見開き、驚くグーちゃん。デメキンみたいだよ、素敵。
﹁まず、隠し事は2つあって、1つは俺のこと。もう1つは隠し家族のこと。﹂
·····
ちょ、ちょっと待て、その家族というのは
·····
うん。今はここにはいないよ。ある場所に行ってもらってるから。
﹁
秘密の扉の先は地獄
44
悪の象徴みたいな黄色の吸血鬼さんは悪魔勢力に。
最凶の雑草刈り名人は天使勢力に。
メルヘンホストは堕天使勢力に。
自らを人外と名乗る少女は禍の団に。
﹁は、はぁあああああああああ
﹂
!!!???
45
秘密の扉の先は地獄
46
お、昨日の仕返しができたかな。
そんな父親の咆吼を聞き、彼はニッコリと微笑んだのだった。
︼
一誠。混乱していて、よく話の内容が掴めん。できるだけ簡潔な説明を頼む。﹂
︻愛を叫べ
︻第1章︼戦闘校舎のフェニックス
Vivace
!
﹂
なるほど。大体はわかった。だが何故隠していた
?
·····
隠すような内容ではないだろう
?
?
話をしよう。
﹁その家族っていうのはね
俺の兄貴を名乗る何者かを追い詰めるために動いてもらっ
納得したと思ったらまさかの追撃。まぁでも、それに関しては俺の過去捏造に絡めて
﹁
なんかじゃない。ちゃんとした命がそこにあって、俺の大事な家族。
言ってしまえば俺の創造物。だけどちゃんとした家族だと俺は思っている。創造物
んだ。つまりは漫画であったり、小説の人物ってこと。﹂
﹁うーんとね。まずここにはいない家族っていうのは﹃見聞稽古﹄と﹃派生﹄の混合技な
いるようだった。こんなこと突然言われたら俺でも混乱する。
衝撃の告白をしてから約5分後。先程までほうけていたグーちゃんは未だ混乱して
﹁
·····
!!
47
ているんだ。﹂
1度話を区切ってグーちゃんとオーちゃんを見つめる。グーちゃんは真剣に、オー
ちゃんも真面目に聞いてくれている。
何故そこまであいつを毛嫌いする
兄貴がいるだなんて聞いていなかったのだが、
﹁まずは外堀を埋めようって考えて、あいつが手を出そうとする戦力にそれぞれ入って
もらったんだ。﹂
?
た。冷たく、冷たく広がっていくのがわかる。
相変もわらずこちらを見つめながら呟く。どこか力強そうな声はやけに心まで通っ
そこまで悪いヤツでもなさそうだぞ。﹂
﹁
·····
良い奴だったら何もしないよ。﹂
··········
そうか。﹂
この空間は嫌だなぁ。いつもみたいにバカ
·····
せない。
騒ぎしていたい。話を切り出そう切り出そうとタイミングを見図るがなかなか踏み出
鳴り響くのは規則正しい時計の針の音。
グ ー ち ゃ ん が そ こ で 言 葉 を 止 め る。そ し て そ れ と 同 時 に こ の 空 間 の 時 も 止 ま っ た。
﹁
るが、あんな奴を﹁悪いヤツじゃなさそう﹂と評価したのは悔しかったし、哀しかった。
その言葉に少しぶっきらぼうに答える。グーちゃんに悪気がないのはわかってはい
﹁
Vivace!! 【愛を叫べ!】
48
すると、突然オーちゃんが立ち上がり、こちらへ向かってくる。
え、どうしたの
·····
?
え
がやっつけるから。﹂
うん。ありがとね。
﹁ありがと、オーちゃん。﹂
れた。
いい顔しているんだろうな。普段見せてくれないオーちゃんの顔を見れて少し心が晴
彼女の柔らかな髪があたってくすぐったい。こちらからは顔が見えないが恐らくは
大丈夫。我
俺の考えていることなど気にもとめない様子でこちらへ向かってくる。そして│俺
の膝の上に座った。
さっきから混乱しっぱなしだ。え、どうしたのオーちゃん
?
﹁我、大体のことはわかった。そいつがイッセーの幸せを奪ったんでしょ
?
·····
·····
?
49
オ ー ち ゃ ん の 頭 を 撫 で る。さ ら さ ら と し た 髪 の 毛 が 手 に 心 地 の 良 い 感 覚 を 与 え る。
昨日の、さっきまでの心地良さ。
グーちゃんが目を見開きこちらを見る。さっきまでの重たい空気はどうしたの
?
﹁俺はあいつに全てを奪われた。家族も、友人も、自分の全てを奪われたんだ。﹂
デメキンみたいだよ、結婚して。
どまだ沢山いる。﹂
俺はあいつが嫌いだし、憎い。だけど
·····
﹁だけど、俺を愛してくれる家族がいる。オーちゃんが、グーちゃんが、今は会えないけ
Vivace!! 【愛を叫べ!】
50
﹁俺はこれでよかったのかもしれない。グーちゃんと会えて、オーちゃんとも会えて。
本当に幸せだよ。﹂
咲かせよう最高の向日葵を。輝かしい笑みを。今の俺なら胸を張って言い切れるだ
ろう。断言出来るだろう。
♢
?
家族3人を取り囲むのは暖かな空気。彼はそっか、と笑って、彼女はうん、と呟いた。
♢
?
♢
?
♢
?
い。ダメ
金髪デブ:そうだな。今回は悪魔勢力を味方につけるように誘導するから今は我慢し
快なパーティにするようにしなくちゃ。
最高峰のBBA:僕としても早めに始末したいけどダメだよ。イッセーを立てつつ愉
?
冷蔵庫:イッセーの野郎が幸せそうで何よりだ。それより早くあのクソ野郎を殺した
﹃イッセーを愛でようの会:念話回路にて﹄
51
Vivace!! 【愛を叫べ!】
52
ておけ。フィナーレは全ての勢力が集結した時でいいだろうよ。
病弱腹黒:そうですね。それが一番いい幕締めだと思いますよ。その時に処分でいい
でしょう。いえ、処分なんていう生温い始末の仕方で済ませる気などありませんけども
ね。
彼らはイッセーの家族である。そしてイッセー大好き。彼を観察するために自分た
ち独自の念話回路を作り上げ、様子も観察することができるようにした。なんと素晴ら
しい愛情であろうか。イッセーがこれを聞けば、
﹁愛が深すぎて重い﹂と言うのだろう。
やはり彼は幸せ者である。
話を端折りすぎだって
特にこれといって
イッセーの知らないところでとある計画が着々と進んでいくのであった。
△▼△▼△▼△▼△▼
え
?
今日も元気にグットイーブニング
?
な何もなかったんだよ。あの後お風呂入って、寝て、朝になったら起きて、朝ご飯食べ
!
て、学校に来たんですよ。勿論グーちゃんとオーちゃんは俺の中にいます。
︵おう。いるぞ。︶
︵我、とーじょー。︶
はい。
そして悪魔勢力の管理者から昨日連絡が入って、﹁明日面白いことあるからオカルト
研究部へ行っとけ。﹂とのこと。彼も来るようなので楽しみだ。
そんなこんなで今は放課後。授業は全部終わったし、後は帰るだけなのだが、今日は
昨日言われた通りにオカルト研究部、略してオカ研に行こうと思う。
楽しみだなぁ│
もう来ているようだぞ。2人の新しい魔力を感じる。︶
そうだね。じゃあ早く行こうか
!
︵
·····
ん
!
鞄を手に取り廊下に出る。目指すはオカ研
!
!
53
Vivace!! 【愛を叫べ!】
54
昨日とは違って、やけに足取りが軽かったような気がした。
諦めないうちは失敗ではない。だがもう手遅れ
ここはオカルト研究部部室。いつもは活気で溢れていたこの明るい部屋は今となっ
ては暗く、重たいものになっていた。
その原因というのは﹁リアスの婚約﹂である。政略結婚の様な仕打ちに対してリアス
とその眷属は共に憤慨していた。王である彼女の幸せを願っていた彼女等にとって、こ
れほどの屈辱と悔しさはなかった。
だが、彼女の口から悔しさと息苦しさの吐露が終わった時であった。一人の少年が口
を開く。
もいい。とにかく強さを証明するんだ﹂
だから弱いお前は不要だって言ってやればいいのさ。非公式のレーティングゲームで
﹁そのフェニックスとやらに強さを証明すればいいだけだよ。こんなに強い俺がいるん
たのは最強の赤龍帝である兵藤信八、その人であった。
それは彼女の大好きな、彼女等の大好きな人の力強い言葉であった。その言葉を放っ
﹁大丈夫だよ、リアス。僕が絶対にそんなことをさせない﹂
55
十八歳の少年から放たれた言葉とは思えないほどの重みと力強さ。自信満々な顔つ
きにリアスは安堵し、眷属たちもほっとした。そうだ。大丈夫。信八が、赤龍帝がいる
じゃないか、と。
私はどうも信用できてない。︶
·····
だがしかし、この中に微かな不信感を抱いていた人物がいた。
信八先輩がいたらどうにかなるんだろうけど
·····
しの姉の匂いをどこかに漂わせて。
かった。信八とは違う本当の優しさを持っていて、暖かさを持っていて、そしてーー愛
そして兵藤一誠の本質。彼女は一度見ただけだが、信八が言うような人ではないと分
れらに全て嘘と演技が入っていたと気づいただけなのだ。
ただけなのだ。彼の体面のいい仮面に。優しい笑顔に、誠実な態度に、暖かい言葉に、そ
信八の言動については特に言うことはない。なんてことはない。ただ彼女は気づい
質。
を信じきれていないようだった。彼女をそうさせたのは信八の言動。そして一誠の本
それは塔城小猫。通称小猫ちゃんである。先日の一誠との一件を見て、どうにも信八
︵
諦めないうちは失敗ではない。だがもう手遅れ
56
再びじっと信八を見つめる。その顔にはよく見なければ気づかない打算的な何かが
潜んでいた。今この瞬間だって表に出る言葉とは違う何かを考えている。その顔を見
るに、やはりどこか信用が出来なかった。ここに一誠先輩がいたらいいのに、とどこか
頭の隅で考えている自分がいた。
をしようとした時であった。
﹁そうか。貴様がフェニックスを打ち倒すか。
随分と可愛い小悪党だが何とかなりそ
ス様の傍にいるのに相応しくありませんからね。当然でしょう﹂
﹁そう言ってはいけませんよ、DIO。フェニックス如きに遅れをとる赤龍帝などリア
うだな﹂
·····
できる体勢に入る。話は終わったらしい。そう思い、各々がそれぞれ自分のしたいこと
にっ、と笑い腕を組んでソファにもたれかかる。話は終わったとばかりにリラックス
らさ﹂
﹁ーーそこでフェニックスを叩き潰すんだ。大丈夫だよリアス。だって俺がいるんだか
57
突 如 と し て 現 れ た の は 黄 色 の 服 を 着 こ な す ご つ い 体 型 の 男。そ し て 銀 髪 の メ イ ド
だった。いきなり何もない空間から現れた彼ら。そして突然の事態に攻撃体制に入る
どうしてここにいるの
﹂
眷属達。だがそんな眷属達を見る来訪者の顔はどこか楽しそうだった。
﹁っつ、グレイフィア
!?
ダメですよ、リアス様。まずは眷属達の矛をしまわせないといけません﹂
!?
激昂するリアスと至って冷静なメイド。眷属達達は完全に混乱していた。
﹁
·····
なんでコイツがここにいる
︶
!
ていなかった。
嘘だろ
!
ハートマークと黄色の服が印象的なカリスマに溢れたボスなのだ。
目 の 前 に い る の は 最 凶 の 吸 血 鬼。物 語 の 主 人 公 を 何 度 も 追 い 詰 め た 最 強 の 存 在。
︵おいおいおいおいおい
!
魅力的なカリスマに溢れていた。だがその男の笑みを前にとある男は驚愕の色を隠せ
くっくっくっ、と笑うのがとてつもなく似合う男の笑み。魔王を連想させるその笑は
有象無象のコスプレ集団ではないか。﹂
﹁おいおい、笑わせるなよ。貴様がただのメイドさんならばそこら辺にいるメイドなど
かブフォという声が聞こえたのは気の所為であろう。
にこり、と柔らかな笑顔。それを見た眷属は安心し、それぞれが席に着く。どこから
﹁私はグレモリー家に仕えるただのメイドです。ですからその闘気はお収めください﹂
諦めないうちは失敗ではない。だがもう手遅れ
58
﹂
やはり貴様は俺のことを見たことがあるのだな。目にあるのが驚愕の色だぞ
﹁おや、DIOはどこかで会ったのですか
﹁
·····
﹂
?
バタン
﹂
指をくるくるしメタ発言を放った彼は笑っていた。
﹁さっきから地の文がしつこいので巻で﹂
る。
その混乱に乗じて登場したのは兵藤一誠。扉を豪快に開け、堂々と部室に侵入してく
﹁そして俺が来た
!
!
信八は混乱していた。
しそうな色を滲ませて意気揚々と喋っていた。だからこそ知識にある彼とは違う面に
だがどこかが違う彼。DIOはどこかが違った。グレイフィアと話す彼はどこか楽
﹁いや、知らんぞ。完全に誰コイツ状態だ﹂
?
59
△▼△▼△▼△▼△▼
あったら欲しいな﹂
﹁さっきから地の文多すぎ。慣れなさ過ぎてツライ﹂
﹁そういうことは言うな﹂
あっ、お菓子ある
?
信八にいたっては口をだらしなく開けてどこか虚ろな目をしている。
楽しそうに談笑をするDIOと一誠。それに反してリアス達は驚きが隠せていない。
﹁えー面倒くさいなぁー。
·····
貴方がDIOの言っていた一誠様ですか。どうも初めまして。グレイフィア・ルキ
·····
﹁あっ、そうだ。DIOはどうです
迷惑かけていませんか
﹂
?
微笑みながらお茶を啜る彼女とチョコボールを口に運ぶ吸血鬼。一誠のせいかはわ
﹁おい、︵笑︶ってなんだ。︵笑︶って﹂
静かにしていますし、大変役に立っていますよ。﹂
﹁いえいえ、迷惑だなんてとんでもない。彼の自慢のカリスマ︵笑︶でうるさい老害達も
?
メイドと絶対的な強さを誇る人間である。かなりシュールだ。
お互いにぺこりと礼をして挨拶をする彼等。その実態は最強の女王と呼ばれる悪魔
﹁おぉ、これはこれはご丁寧にどうも。俺の名前は兵藤一誠です﹂
フグスと申します﹂
﹁
諦めないうちは失敗ではない。だがもう手遅れ
60
からないがDIOはかなり温厚な性格になっているようだった。チョコボールを口に
運ぶその姿はどこか可愛らしさがある。
俺様は奴隷のようになど扱われるつもりは無いぞ
﹂
!
もらいます﹂
﹁おい
﹁話を聞けぇえええ
﹁と、いうわけだDIO。これからもよろしく頼むぞ﹂
!
そして何故グレイフィアと親しげに話しているの
!?
違いリアス側は焦りに焦っていた。
︵なぜ信八の弟がいるの
︶
!? !?
朱乃が尋ねる。
ピヨピヨとヒヨコが頭の周りを回っている時であった。この中で一番冷静であった
のDIOって奴は誰なの
そしてあ
なっては話などもう聞いておらずお茶を飲んでいる。だがほのぼのカオスな彼らとは
完全なるカオスである。メイドは満足そうに微笑み、吸血鬼は不満げに叫び、一誠と
!
﹂
﹁ええ、そう言ってくれると大変扱いやすくなります。これからも奴隷のように働いて
よ。これからも奴隷のようにお使いください﹂
﹁おぉ、それは良かった。まさかカリスマ︵笑︶が役に立つとは思ってもいませんでした
61
﹁それでグレイフィアさんとDIOさんはどうしてこちらに
﹂
の役割を果たすを忘れて談笑するというのは非常にまずいことだ。であるのに彼女は
それでいいのかというツッコミを抑えた彼等は賞賛に値するだろう。メイドが本来
﹁あぁ、そうでしたね。すっかりと忘れていました﹂
いたし、彼女と共にいる人物に対しても不信感を抱かなかった。
の態度を崩さず、お茶を淹れてお菓子ももてなした。グレイフィアのことは既に知って
実際彼女はそれほど焦ってなどいなかった。グレイフィアとDIOが来た時も普通
?
いでおこう。
﹂
えーとですね。フェニックス家との仲介役に来たので
すよ。多分もう時期来るのではないでしょうか
その言葉に誰も声を出さず、沈黙をする。
﹁なぁ、フェニックスって完全に焼き鳥だよな
﹂
前言撤回だ。一誠とDIOは除くだった。彼らは予想以上に図太かった。もはや今
﹁お前は空気を読むことを覚えろ﹂
?
?
﹁まぁまぁそんなに慌てないで
·····
まぁそれでも容赦なくツッコむ者もいるが一誠達だからということで深追いはしな
﹁﹁いや、ちゃんと覚えておけよ﹂﹂
﹁あっ、そうだった﹂程度なのだ。ツッコミと苛立ちが募るのも仕方が無い。
諦めないうちは失敗ではない。だがもう手遅れ
62
の一誠は水を得た魚であった。完全に暴走している。
少し黙っててもらえないかしら﹂
·····
自分の怒りと鬱憤を一誠めがけて投下した。
・
・
・
えーとですね。じゃあ一つだけ言いたいことがあるんですけど
・
早くいいなさいよ、信八の偽物﹂
・
おもむろに彼は口を開く。
﹁
·····
·····
﹂
どこまでも煩わしい。彼女は信八が傷つけられた時から彼を拒絶すると決めた。愛
﹁
·····
日信八を部室に連れてきた時から、初めて会った時から気に食わなかった。だから今の
分のこれからについてチャチャを入れられたのはどうも逆鱗に触れたらしかった。昨
完全なる拒絶だ。信八の慈悲心だと思って一誠という存在を許していた彼女だが、自
とるようであったら即刻でていって頂戴﹂
﹁これから話す内容は私にとって、とっても大事なことなの。これ以上巫山戯た態度を
がもう遅い。リアスは完全に敵とみなしている。
機嫌を損ねたくない彼は素直に謝った。嫌われたくないという理由が一番であろう
﹁はい。ごめんなさい﹂
く。それも致し方がないのだろう。
自分にとって大事なことであるというのに、どこかふざけた態度である一誠に毒づ
﹁
63
しの彼をいたぶったであろう彼を嫌った。
ーーだが
我が儘言ってんじゃねぇよ、三下が。愉快に素敵に踊り狂いてぇのか
﹂
?
·····
た。
怒気を含んだ彼の顔を見るに、その意思は間違ったものであろうことが確定的であっ
﹁
諦めないうちは失敗ではない。だがもう手遅れ
64
だが。だがしかしだ。
·····
手くいっている。
ば万々歳だ。一誠はあとからにでも排除できる、と。確信していた。実際に今の所は上
だから彼は本来の主人公を貶め、自分がその座につこうとしたのだ。計画通りにいけ
強いて言うならば女を食い散らかして悠々自適に暮らしたい。それだけであろうか。
いう純粋で清い理由ではない。
塊である彼は目指したのだ。ハーレム王に、誰からも好かれる英雄に。憧れた、などと
など打ち砕くような鈍器のようなゲス具合が彼の底には渦巻いていた。そんなゲスの
兵藤信八。彼は転生者である。才能に満ち溢れ、容姿も整っている。だがそんな利点
Re/verse︻垣間見えた本質︼
65
﹁自分の立場を自覚しろ。お前は王だ。その王たるお前は自分の幸せよりも民を、悪魔
の世界を幸せにしなくてはならないんだ﹂
目に怒気を含ませた彼を見るとどうやら一筋縄では行かないであろうことは信八に
も わ か っ た。D I O と い う 異 端 児 や 一 誠 の 不 思 議 な 力。警 戒 す べ き 点 は も っ と あ る。
もしかしたら赤龍神帝や無限龍も味方につけているかもしれない。
だからこそ彼は怒鳴りつけた。
﹂
!
てめぇ、リアスに謝れやぁああああ
!
おそらくはオレの評価が上がるだろう。リアス達も、もしかしたらグレイフィアも。
ば 自 然 と 軍 配 は こ ち ら に 上 が る。心 か 弱 き 乙 女 に 説 教 を す る 弟 か ら 守 る 兄。完 璧 だ。
それは彼女、リアスのために怒ること。いや、怒っている風に見せること。そうすれ
﹁イッセェエエエエ
Re/verse【垣間見えた本質】
66
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
ま だ ま だ 一 誠 と い う 存 在 は 未 知 数 だ が D I O と い う 存 在 に 一誠の能力は関与してい
ない。そんなチート能力があるのならばとっくの前に俺のことを殺しに来ていただろ
う。彼はそう考えた。
黙らんか羽虫が。耳障りだ﹂
·····
﹁
67
だがそんな彼の思いとは裏腹に黄色い閃光が信八の首を斬り飛ばしていた。
△▼△▼△▼△▼△▼
ー10年前ー
あぁ疲れた。でも早速一誠一家を侵食しよう。なぜなら英気を養いたいから
﹂
!
·····
ーーピンポーン
仮拠点なのでやりたいようにやらせてもらおう。
眼前にあるのはインターホン。そう、これからだ。これから俺の物語が始まる。まぁ
﹁ま、こんな便利な能力を貰えたんだ。存分に使わせてもらおっと﹂
適当な場所に落とした神は許さん。絶対にだ。
いきなり森に落とされてからさまようこと約20分。ようやく一誠一家を見つけた。
﹁
Re/verse【垣間見えた本質】
68
・
・
・
・
・
﹁ただいまー
・
・
・
・
・
・ ・ ・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
皆のアイドル、兵藤信八が帰宅しました
﹂
・
!
・
信八
早速だけどあそぼ
﹂
!
﹁おかえりなさい
!
ばたばたと鳴る足音をBGMにしながら彼は口を大きく歪めた。
まずは一誠から追い出すかな。
!
いない。覚えているのはどうやったら一誠を排除できるか、ということだけだった。ま
そこから先なんて殆ど覚えていない。最初のワクワクなどもう今となっては覚えて
初めまして紫藤イリナ。これからも末永くよろしく頼む。
三日月の形に割る口の中にある黒は深く淀んでいた。
ーーあぁ、たくさん遊ぼうな。邪魔者を消してから。
!
69
ず俺はさっさと一誠を消すつもりだった。この世から、ではなくこの家からだが。
だが一誠は意外とタフだった。物理ではダメ。いくら言っても、いくら蹴っても、い
くら殴っても一誠は頑なに自分の居場所を守り続けた。
そんな態度にイラつきを感じたのは一誠家に住んでから半年ほどたった頃。俺は物
惨めに泣き崩れ、ワンワンと泣き叫ぶ。温情など
理攻撃から精神攻撃に手段を移行した。
そうするとどうであっただろうか
イリナ
遊ぼうよ
﹄
﹄
イリナに頼んで恋人となった。イリナに頼んで一誠を拒絶してもらった。
殴った。
求めるなと思った。泣けばなんとかなると思っているのかと思った。だから蹴ったし、
?
あっちに行って
!
触らないで
!
親に頼んで贔屓してもらった。親に頼んで一誠を拒絶してもらった。
!
﹃いやだ
!
!
ーー彼は一つ心に深い傷をつけた。
!
﹃ねぇ
Re/verse【垣間見えた本質】
70
今日の晩ご飯はなーに
﹄
!
﹃お母さん
アンタは
近寄らないで
﹄
!
﹃なんなのよ
!
小さな手をブンブンと振って、ご飯をねだる一誠。
!
絵本読んで
亀さんとウサギさんの
!
﹄
!
﹃お父さん
﹃近寄んじゃねぇ
迷惑だ
お前なんか俺の子なんかじゃねぇ
!
﹄
!
ーー彼は立ち直れないほど傷ついた。 自分の親が知らない誰かに取られていくの
そんな彼を父は拒絶した。彼は三つ目の傷を心の底に突きつけられた。
!
大きな絵本を頭の上に乗せてとてとてと走って駆け寄る一誠。
!
そんな彼を母は拒絶した。彼は二つ目の傷を心に彫られた。
!
71
を遠目で見るしかなかった。
恋していた女の子がいた。ーーだが信八がいつの間にか奪い取っていた。
美味しいご飯を食べたいと願った。ーーたが与えられるのは缶詰のみだった。
暖かい布団でもう一度寝たいと思った。ーー相も変わらず犬小屋であった。
もう一度だけ。最期でいい。最期だけでも父と母の言葉が聞きたい。だから、だか
スッキリすんね
足
こういうのは
!
クソザコナメクジの一誠くんを退治できて、私、大満
そしてそんな拒絶の言葉と共に一誠もどこかへ消え去った。はい、雑魚。やっぱり
ーー結局返ってきたのは拒絶だった。
らーー
·····
!
Re/verse【垣間見えた本質】
72
!
﹃イーリーナ
遊ぼうぜー
﹄
!
だ が。油 断 し た。彼 は 一 誠 し か 見 て な か っ た。軽 率 す ぎ た。彼 と 和 気 藹 々 と 話 す
△▼△▼△▼△▼△▼
DIOという存在を軽く見すぎたのだ。DIOのもつ本来の残虐性を忘れて。
·····
性格のおかげだと自負していた。
らであろう、一誠を天敵と見なせたのは。油断し切れずにいたのは自分の驕りすぎない
だからこそ感じた、一誠の異常さ。彼は敵であろうが過小評価は決してしない。だか
なんてないと思っていたし、事実、高校まで会わなかった。
これが彼の記憶。一誠の居場所を奪って吸い尽くした。だから今後一誠と会うこと
!
73
﹂
だから今度こそ一誠の野郎を殺してやろう。さっきま
よ か っ た 大 丈 夫 だ。
·····
﹁はっ
ぞくり。
?
に耽っていた彼にとってこれほどまでに皮肉めいたものはなかった。
・
・
・
・
・
・
の顔よりも気になることがある。それは
・
太い螺であった
·····
目を一誠の方に見やる。口を三日月の形にして笑っている。さっきまで過去の思い
おにーさまー﹂
でのもなにかの幻覚だ。
さっきまでのは夢だったんだ
気 づ け ば 信 八 は 生 き て い た。手 を 首 に ま わ し て 確 認 す る。
·····
!
﹁とでも思ってんのか
Re/verse【垣間見えた本質】
74
だがそんな彼
·····
お前は
一体何者なんだ
﹂
!
﹁イッセェエエエエ
!
た。
?
こんなんじゃダメ
·····
満天の笑みから一転。うっすらと開かれた目から放たれていた光は紅く、蒼く、翠で、
﹁
おにーさま﹂
た。凍てつくような空気が部室を支配する。だが、そんなのを気にもとめずに彼は言っ
ただただ異常であった。恐怖せざるを得なかった。それほどまでに狂気に満ちてい
﹃お兄様のことがだーいすきな兵藤一誠くんですよー。にぱー☆﹄
茶目な姿。だが、
差し指をくっつけ、むにっとする。傍から見ればイケメンの可愛らしい高校二年生のお
信八の口から放たれた咆吼をものともせず、螺をどこかにしまいながら笑う。頬に人
!
75
どこまでも狂気に溢れていた。
訪れたのは沈黙である。冷水を浴びせられたような痛さと静けさ。リアスは、信八
は、グレイフィアは、夕霧は、澄玲は、彼の知られざる裏側を見てただただ驚愕してい
世界が飲み込まれる︶
·····
た。
イッセー。そちら側をあまり見せるな
····
た。
腕を組んで思考の海に飛び込んでいた吸血鬼の頬を伝ったのは小さな冷や汗であっ
︵
Re/verse【垣間見えた本質】
76
混沌に舞い降りる種馬︵鳥︶
一誠。少し落ち着け。お前の中にいる者も萎縮してしまっているだろう﹂
俺はいたって冷静だよ。本当に。本当に冷静だよ﹂
﹂﹂
困難になるくらいの重圧。高くなればなるほど低くなると言ったのは誰であろうか
まるで空気の重みが違う。
?
まさに一触即発の状態。片方は世界第5位で片方は世界最強。もはや息をするのも
﹁﹁
味な発光色が心のそばに纏わり付く。
まであった明るいオレンジ色の部屋などとうの昔に置いてきた、とでもいうような不気
だがそんなのは知らんとばかりに殺気と狂気の入り混じった空気を吐き出す。先程
﹁
言葉を発する。
痛い静けさの中で声を出したのはDIO。一誠の肩に手をおいて諭すような口調で
﹁
··········
·····
77
混沌に舞い降りる種馬(鳥)
78
ーー誰か。誰か来てくれないか。この窮地を救う救世主が。
この部屋の者、全員が祈った。あの信八でさえ祈りを捧げた。それほどまでに息苦し
い空間であったのだ。天井に吊るされているシャンデリアは揺れ、シャワー室のカーテ
ンは揺れに揺れ、窓はガタガタと揺れ始める。もう既に限界であった。
だがそんな時であった。希望の紅色の炎が部室を照らした。その炎は暖かく、燃え上
がるように円陣を中心に火の粉をまき散らす。冷えきっていた空気を取り戻すかのよ
うな炎。そしてその中から出てくる二つの影。
﹂
?
﹁
と言われても仕方が無いくらい媚びている。
うっわ。まじでチキりましたよこのお兄様﹂
!
果たして彼らにこの状況が止められるのか。争っているのは世界を壊すこと
たのはチキンと可愛い女の子。止められるはずがない
が出来る力を持つ二人。そう、普通に考えて止められるはずがないのだ。しかも出てき
だが
·····
交人なのだ。
とも残念なことに彼の妹なのだ。不甲斐ない兄に変わってしっかりと世渡りをする社
そんな兄を道端に落ちているゴミと同列に見ているレイヴェルフェニックス。なん
·····
んな奴フェニックス家の恥だ
紅色の炎の中から片手に食パンの袋を持って現れたのはライザーフェニックス。こ
名の食パンなんですけど食べます
﹁うっへっへっ。どーもどーも、ライザーフェニックスと申します。これ茶菓子という
79
が。
·····
ん
︶
?
占める中、必死になって愛を、居場所を守り続ける彼が。
れたこの眼を通して見た一誠は彼女の心を揺らした。憎しみと哀しさが心の大部分を
それは兄の補佐として働いてきた彼女だから分かったのだ。人を見抜くために養わ
ある熱を帯びた愛。今も必死になって狂気と闘っている。
ながらも目には明確な殺意。そしてその中にある憎しみと哀しさ。だがその闇の中に
レイヴェルの目に映ったのは狂気をまき散らす兵藤一誠。屈託のない笑みを浮かべ
︵
·····
カッコイイ﹂
·····
となった。
幸いなことに一誠は普通ではない。だからこそこの場面での彼女の言葉は大きな鍵
﹁
混沌に舞い降りる種馬(鳥)
80
△▼△▼△▼△▼△▼
ねぇ。俺っていらなくね
もう婚約なんてどうでもいいし帰っちゃダメ
妹が辛辣すぎて泣きそう﹂
﹂
?
ていうかレイヴェルはなんて言った
カッコイイだと
俺がなぶり殺しにしてやるよ。
?
?
ヴェルへの愛ならば誰にも負けない自信ある。
の骨だ、そいつは
レイ
おいおいおい。どこの馬
何故なんだ。俺の何がいけないというのか。ちゃんと俺は愛しているんだぞ
﹁
﹁少し黙っててくださいませ﹂
﹁
·····
··········
︵
これは俺には無理だな。レイヴェルの応援にまわろう。︶
応援する兄。なんとも素敵じゃないか
俺の選択肢は決して間違ってなどいない。寧
さっきまでの攻防を耳と気で感じ取っていた俺は勝負することを止めた。妹の恋を
·····
原因。
視線をすーとずらすとその先には頭を抱えて悶える少年。恐らく先程までの狂気の
?
!
?
!
81
いつの間に居たの
ろ正しいと言えるだろう。
﹁って、ライザー
﹂
流石に泣きたくなってくるぞ﹂
?
て、え
﹂
いいか
﹂
愛しの眷属達よ。
!? ·····
﹂
俺はお前との婚約なんか死んでも無理だ
俺のSAN値はもう限界よ﹂
うるさいなぁ
どういうことなの
もうちょっと黙って
婚約なんてどうでもいいって、どういうことなの
麗な夕焼けを見て一緒にお寝んねするんだ。もう帰りたいよ
﹁
﹁
·····
だが俺達の意見が一致しようが約束を破った俺達を世間がどう見るか。その結果は
·····
火を見るより明らかだ﹂
﹁
ない。
ハナからなかったのだ。酔っ払った親同士の約束事など守るようないい子ちゃんでは
ぜぇぜぇと息を吐きながら食パンを握りしめるライザー。元々彼は婚約する気など
!
!?
?
もぅ
!
!
!
﹁い、いいから
!
きり言わせてもらうが論外なんだよ
はっ
帰ったら眷属達に癒してもらうんだ。一緒にスイーツ食べたりショッピングしたり、綺
·····
!?
俺の存在感薄すぎじゃないか
·····
あんなに派手に登場したのに﹁居たの ﹂だ。もうマジで死にたくなってきた。俺
﹁なぁ
? !?
!
!
·····
·····
﹁あぁ
混沌に舞い降りる種馬(鳥)
82
﹁
だから
·····
﹂
?
リアス
騙されるなよ
!
こいつは油断したところに付け込む
!
事は起きないだろう。
﹂
って、ちょっと待て
つもりだぞ
﹁
·····
﹂
こいつ。これが今代の赤龍帝とか片腹痛い。
ライザー
もうそれでいいよ。はいはい、僕ちゃんの負け負けー。服従のポーズしまーす。ワ
すみませんが八百長というのは信用できませんね。嘘をついているとは思えません
ンワン。
!
が万が一という場合がございますので﹂
﹁
!?
?
﹁そ、そうなのね
··········
も何なの
イドに関わるが背に腹は代えられない。正直勝ち負けとかどうでもいい。それにして
もうお前死ねよ。さっさとあの少年に殺害されろ。確かにわざと負けることはプラ
!
!
言いたいことはハッキリ言ってやった。お互いの利害は一致してるしこれ以上面倒
婚だ。勿論八百長で負ける。ほら、完璧だ﹂
﹁だからレーティングゲームをしよう。俺が負けたらリアスとの婚約破棄。勝ったら結
83
口を開いたのはグレイフィアさん。グレモリー家の中で唯一まともな人だ。
でよろしいですか
﹂
まぁ、
﹁ですので明日、非公式ですがレーティングゲームを執り行います。ライザー様はそれ
そう言われるとそうなのだろうが。
·····
?
ギッタンギッタンにしてあげる
﹂
!
というわけですが。リアス様もよろしいですか
構わないわ
﹂
﹁勿論構いませんよ。そこの赤龍帝がいるから修行期間なんて設けませんからね﹂
?
!
威張るなアホンダラ。
そうだ。レイヴェルちゃん。俺のところにこないかい
生活をさせてあげる﹂
﹁
ぞ
そこの種馬よりも全然いい
そんなドヤ顔で言わないでくれ。見た感じ俺に勝てるのはそこの赤龍帝くんだけだ
﹁ええ
!
﹁
·····
·····
?
で、レイヴェルはどういう返答を
レイヴェルが気に入った
ごめんなさい。生理的に無理です﹂
立ち直れないくらい深い傷つけられてやんの
﹁え、何言っているんですか
はっはっ
?
になった。
·····
!
?
おい、なんだよこの赤龍帝。マジで殺したろかな。やばい。苛付きすぎて変な関西弁
?
!
混沌に舞い降りる種馬(鳥)
84
のはテメェの弟さんじゃボケェ
まぁた一誠かよ﹂
·····
!
さーて、明日はどうしようかな
?
あったし。それに顔すら見たくない奴が約2名ほどいるし。
後ろは振り返らない。後ろ向きで手を振ったらカッコイイとどこかの雑誌に書いて
﹁じゃ、俺達は帰る。明日また会おうな赤龍帝。リアス﹂
だよ馬鹿め。
なんか言ったかもしれないが聞こえなかった。まぁどちらにせよお前は振られたん
﹁
85