ハイスクールD×S 超人類DX ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので す。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を 超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。 ︻あらすじ︼ 始まりはほんの小さな﹃油断﹄だった。 ちょっと修行中に死にかけたので、回復するまでスヤスヤと寝てたら、常日頃から自 分の力を危険視していた悪魔により、瀕死で弱りきっていたままを維持された状態で転 生させられ、その日から最悪な日々を過ごす嵌めに。 勿論絆だ仲間だなんてものは無い。 あるのは只、自分の力を利用し続ける悪魔への憎悪。 だからこそ何時の日か力を取り戻し、全部をぶち壊してやろうとするも、少年の持つ 力を失うと恐れた悪魔はそれを許さず、弱体化した少年を押さえつける。 ││あの日までは。 整理がしたかったのでIF集から引っ張りました 目 次 ラスボス化の赤龍帝 封じられし赤龍帝のこの日 ││ 弱体化と憎む理由 ││││││ 死する赤龍帝 ││││││││ 破壊の龍帝 ※閲覧注意 │││ 自由の赤龍帝 ││││││││ 共に歩く赤龍帝 │││││││ 能力保持者三人組 ││││││ 崩壊への道 │││││││││ 自由と遺恨 │││││││││ 集える同類達 報復が報復を⋮⋮ ││││││ 1 25 47 73 213 182 153 134 98 232 ラスボス化の赤龍帝 れやがった。 クソが⋮⋮クソがイライラが止まらねぇ しかし午後から降ったどしゃ降りのせいで午前中の競技だけで中止となり、午後から その日、駒王学園では球技大会の予定だった。 !!! お陰で弱体化ってレベルじゃねぇ所まで貧弱になった挙げ句、師匠との連絡も遮断さ やがって。 それを修行でボロボロになって死にかけてた所を頼みもしねぇのに転生なんてさせ テメーなんぞに監視される前よりも俺はテメーでテメーの力を御してたんだよ。 何が﹃その力は危険だから、監視する﹄だ。 クソが付く程イライラしやがる。 イライラする。 封じられし赤龍帝のこの日 封じられし赤龍帝のこの日 1 は通常授業へと切り替わった。 そして放課後となり、グラウンドを使用する部活動に所属するものは室内で軽い筋ト レをしたり、ミーティングをしたりと時間を過ごしていたのだが、基本的に文化部に雨 ﹂ 天なぞ関係ないので、美術部しかり吹奏楽部しかりなぞのインドア部活は、何時もの活 動を行っていた。 ﹁リアス・グレモリーで間違いないな ﹁ええ、アナタ達が教会からの使いの者ね オカルト研究部。 ﹂ 向きの話であり、この部員達は実は悪魔という種族であるという秘密があった。 駒王学園にて特に持て囃されている生徒で構成された部活動集団││というのは表 ? 日のオカルト研究部は少しばかり様子が違った。 とした部活も雨天なぞ関係なく何時も通りの活動をしている⋮⋮と、思われたが、この それは旧校舎を部室に使用する﹃オカルト研究部﹄という、少し変わった活動を目的 ? 2 部長であるリアス・グレモリーを頂点に、副部長である姫島朱乃を二番手に構成され たグレモリー眷属。 それがオカルト研究部の正体であり、悪魔として人の中に紛れ込んで生きている理由 も勿論ある。 その理由もまた様々であり、簡単に言えばリアスはこの地の管理を任されているとい う使命の下、街の中で許可もなく事をやらかそうとする他の勢力に対して目を光らせて いる訳だが⋮⋮今、リアスの下へとやって来たこのフードを深く被った二人組はまさに ﹃他の勢力からの使い﹄だった。 今、一人私の眷属が遅れて此処にまだ来てないから﹂ ﹁如何にも、私がリアス・グレモリーで間違いないのだけど⋮⋮もう少し待ってて貰える ? え事前に会談の話があったとしても、警戒するに十分なものであり、リアスの口調も 読んで字の如く、悪魔を祓って滅する事の出来る雨に濡れた目の前の人物二人は、例 悪魔からすれば天敵である天界に住まう天使が組織する教会所属の悪魔祓い。 ﹁⋮⋮﹂ ﹁む⋮⋮﹂ 封じられし赤龍帝のこの日 3 少々鋭くなって、今この場にまだ来ていないとされる自分の﹃眷属﹄の到着を待って欲 しいと頼みつつ、自身の右腕である姫島朱乃に﹃彼はまだなのか﹄と目で合図する。 それを受けた朱乃は無言で一つ頷くと、取り出した携帯電話を少し操作してから耳に 当てる。 どうやらその遅れているとされてる眷属に電話をしようというつもりなのだが⋮⋮。 は、態度悪く舌打ちを連発している青年に対して顔を顰める。 たと携帯をしまう朱乃の部長のリアス⋮⋮そして無言で佇んでいた平部員の搭城小猫 年に客人である二人の人物はちょっとだけ驚き、来たことで電話をする意味が無くなっ 壊しはしなかったものの、ドアを蹴り開けながらチンピラみたいにして入ってきた青 うオーラだけで感じられるイライラした態度。 眉間にこれでもかと皺を寄せ、まるでこの場所に一秒たりとも居たくないと全身に纏 に満ち溢れた表情をした茶髪の青年。 部室の扉を乱暴に蹴り開けながら入ってきたのは、何があったのかイライラして殺意 呼び出そうとしたまさにその刹那。 ﹁チッ⋮⋮クソが﹂ 4 ﹁遅いわよイッセー。それと、何をイライラしてるのかは知らないけど、物に当たるのは 止めて頂戴﹂ イライラしながら部室の隅にパイプ椅子をセットし、行儀悪く座るイッセーと呼ばれ ﹂ た少年にリアスは注意をする。 ﹁え、イッセー⋮⋮ あ ﹂ ? 親の仇を見るような形相でリアスを睨むイッセーだが、リアスの表情は飄々としてい ? してきたリアスに対して殺意を剥き出しにしながら睨み付けていた。 ついてる少年を凝視し始めるが、生憎イッセー少年がそれに気付く様子もなく、注意を いったような声を小さく出しながら、部屋の隅で今にも壁を殴り壊しそうなくらいイラ その瞬間、イッセーという名前に対して何故か客人の内の一人が﹃信じられない﹄と ? ﹁じゃあテメーを今すぐぶち殺して良いのか 封じられし赤龍帝のこの日 5 た。 ﹁今のアナタに出来るの ﹂ い、ドカッとわざとらしく椅子に座り直した。 ? ﹁⋮⋮。と、これで全員揃ったので、そろそろ始めるわよ ﹂ イッセーはリアスと同じように殺意を剥き出して掴んできた小猫の手を乱暴に振り払 小 柄 な 身 体 と は 思 え な い 力 で イ ッ セ ー を 押 さ え 付 け た 小 猫 の 抑 揚 の 無 い 言 い 方 に、 ﹁っ⋮⋮のガキィ﹂ ﹁抑えてくださいイッセー先輩﹂ まで移動し、左腕に作り出していたその拳を掴んで制止させる。 しかしその瞬間、それまで沈黙を守っていた白髪の少女・搭城小猫がイッセーの真隣 ながら勢い良く立ち上がる。 寧ろ殺れるものなら殺ってみろと啖呵を切るリアスにイッセーがパイプ椅子を倒し ? 6 ﹁む⋮⋮あぁ、それは良いが、彼はどうしたんだ ﹁放っておいて良いわ。何時もの事だから﹂ 何を苛立って⋮⋮﹂ 肘でつついて注意をしながら、自分達の所属する天界側で起きた話を簡潔気味に語る。 もう一人の片割れがさっきから茶髪のイライラした少年をずっと見つめているのを に向けて話始めた。 促された客人の片割れが、漸くかとばかりに、この場に来た理由でもある話を悪魔側 れていた聖剣エクスカリバーが奪われた﹂ ﹁先日、カトリック教会本部ヴァチカン及びプロテスタント側、正教会側に保管・管理さ アスは、漸く本題へと入ろうと話を促す。 まだイライラしてる様子のイッセーを気にする客人に気にしなくて良いと返したリ ? そんな彼等の会話を部室の隅からイライラしたまま座っていたイッセーは舌打ちを ﹁チッ﹂ 封じられし赤龍帝のこの日 7 止めずに全く聞こうとしなかった。 何やら聖剣がどうとか、奪ったのが堕天使の誰かだとかとほざいていて、リアス達が それに相槌を打ちながら聞いてるのが見えるが、自分には関係の無い話⋮⋮そして一刻 でもこのウザったい空間のウザったい連中から離れたいとイライラが止められなかっ た。 ﹂ 私たちと堕天使のエクスカリバー争奪戦にこの街にいる悪魔が一切介入しない事、つ ﹁我々から悪魔に対しての願い││いや要求は一つ。 まるところ事件に関わるなだ﹂ 私たちが堕天使と手を組んで聖剣をどうにかしようとしているとでも ﹁随分なな言い方ね。 ﹁可能性がないわけでもないと本部は思っているのでね﹂ ﹂ ! る﹂ ﹃堕天使コカビエルと手を組めば例え魔王の妹だろうと消滅させる﹄と上司は言ってい ﹁上は悪魔を少しも信用してない。 グレモリーの名に懸けて、魔王の顔に泥を塗るようなことは決してしない ﹁私たちは堕天使と手を組んでどうこうしようなんてまったく思ってないししないわ。 ? 8 話が進んでいる内に、悪魔が信用できないから聖剣奪取の介入はするなという切り出 しにリアスが心外とばかりに激昂するのが耳に入ったイッセーは、イライラしつつも内 心嘲笑いながら思った﹃どの口がほざいてんだ﹄⋮⋮と。 いや││ ﹁人権無視して勝手に悪魔に転生させた奴の言葉じゃねーな﹂ ﹂ わざとらしく全員に聞こえるような声で、イッセーは呟いた。 ? リアス達の顔をほんの一瞬だけ変えた。 煽るような⋮⋮そして心の底から憎くて仕方ないと感じられる声で紡がれた言葉は、 その言葉にまず反応したのは、教会側の使いである二人組だった。 ﹁え⋮⋮﹂ ﹁なに 封じられし赤龍帝のこの日 9 ﹁今アナタの事を話してるんじゃないの、静かにして貰えるイッセー ﹁気安く名前で呼ばれたかねーなクソ悪魔﹂ ﹁そのクソ悪魔にアナタ転生したのよ、言葉には気を付けなさい﹂ ﹁あぁ、そうだな。 た。 ﹂ ﹂ ﹁ちょっと待てそこの少年。キミは自ら望んで悪魔になったのでは無いのか ﹁あ ﹂ というより、先程イッセーの口から発せられた言葉が本当なら無視できない話だっ 少々面を食らった。 下僕と王という関係にしては異質なやり取りに、悪魔の事をある程度知る二人組は に精々気を付けろ⋮⋮ドブスが﹂ じゃあそのクソ悪魔に転生させくれた恨みで、後ろから首でも撥ね飛ばされねーよう ? でも差し支えない教会側の使いの一人の質問に、リアスが口を挟む前にイッセーが返事 被っていたフードが外れ、露になった青髪とそれが似合う整った容姿の美少女と呼ん ? ? 10 をし、吐き捨てる様にして口を開いた。 笑えねーな。こんな雑魚の寄せ集めの、人が弱ってた所を無理矢理転生させ ﹂ ! ﹂ しかし⋮⋮ 飛ばされでもしたら⋮⋮﹃今の﹄イッセーではどうしようも無かった。 戦車という眷属の駒特性の通り小柄なその身体とは思えない力を有する彼女に投げ んと手を伸ばした。 すると直ぐ様動いた小猫が座っていたイッセーの口を塞ごうと椅子から投げ飛ばさ らせようとすぐ近くに居た小猫に目で視線を合図を送る。 なっちゃいない﹄と返した瞬間、話されたら都合でも悪いのか、リアスがイッセーを黙 青髪の少女に対し、それまで見せていた殺意の雰囲気を緩和させながら﹃俺は望んで ﹁黙りなさいイッセー やがったクソ卑怯生物と同じになんざ死んでもなりたくなかったね﹂ ﹁望む ? ﹂ ? !? ﹁あ ﹁っ 封じられし赤龍帝のこの日 11 飛び掛かった小猫と、歯痒そうな表情と共に抵抗しようと椅子から立ち上がったイッ ﹂ セーの間に入り込んできた一つの影により、イッセーが投げ飛ばされる事は無かった。 ﹁⋮⋮﹂ ﹁何のつもりですか ﹂ ? る。 小猫の力に対して真正面から拮抗しつつ、放たれる威圧的な声にリアスの目が鋭くな ﹁⋮⋮何ですって ﹁その話が本当なら、私はアナタ達を許せない﹂ 行動に多かれ少なかれ驚いた。 青髪の少女もリアスも動きを止められた小猫も││そしてイッセー自身も、この人物の に当てながら動きを止めた⋮⋮まだフードの外れてない二人組の片割れのこの行動に、 伸ばされた小猫の手首を片手で掴み、もう片方の手に持った小さなナイフをその首筋 ? 12 ﹂ ﹁彼の力が危険で、それを監視するつもりで眷属にした事と、アナタが許さないというの と何の関係があるのかしら ﹁⋮⋮﹂ せ、それを仕舞いながら被っていたフードを脱ぐ。 被る少女は小猫を突き飛ばすと、持っていたナイフを針金程の大きさの物体に変化さ ぎってやろうかと言わんばかりな形相となるイッセーに、押さえたままだったフードを 転生させたにも理由があった上でそうした⋮⋮そう主張するリアスに耳でも食いち ? ! ﹁久し振りイッセーくん ﹃私だよ。﹄﹂ き、ただただ会いたかったと感じれる笑顔を向けると⋮⋮。 る少女達に負けない容姿の美少女は、訝しげな表情となっていたイッセーへと振り向 フードを脱ぎ、露になった明るめな茶髪のツインテールを揺らしながら、この場に居 ﹁ある。イッセーくんは私のよく知ってる人だから﹂ 封じられし赤龍帝のこの日 13 14 笑顔とは裏腹の異常性を垣間見る雰囲気を放ちながら、少女は幼き頃出会った﹃無限﹄ の男の子との再会を心から嬉んだ。 最初は解らなかった。 だって昔のイッセーくんと何もかもが違うんだもん。 強くて、凄くて、気持ち悪いと石を投げ付けられてた私にも手を差し伸べてくれた時 のキラキラした光が消えていたから、私は悪魔にイッセーと呼ばれた彼がイッセーくん だと信じたくなかった。 けど違った。 私が間違っていた。 彼は間違いなくイッセーくんで、間違いなく独りだった私に手を差し伸べてくれた イッセーくんだった。 だから嬉しくて⋮⋮そしてイッセーくんをどんな理由があったにせよ無理矢理悪魔 に転生させたコイツ等が許せなくて、私は動いて⋮⋮そしてイッセーくんに自分だよと 告げた。 ﹁⋮⋮⋮ 誰 ﹂ ? ﹁あ、あぁっ イリナって言ったらアレか 確か擦り傷だらけの⋮⋮﹂ ! ﹂ 急に居なくなったから心配だったが、そっかそっか⋮⋮良かった﹂ ﹁そっか⋮⋮無事に生きてたんだな。 ものに変わって私の心はポカポカとする。 それまでずっとイライラしていたイッセーくんのお顔が、やっとあの時と同じ優しい ﹁あはは、当時はそうだったね﹂ !? ほら、ちゃんと名前とかあの時の事を話したらイッセーくんは思い出した。 格好も見窄らしくて短パンやTシャツだったし⋮⋮。 でもそれは仕方ないんだよ、だってあの時の私は髪を無理矢理切られて短かったし、 ⋮⋮。残念ながら一目で私だと気付いてくれなかったけどね。 ﹁ありゃ⋮⋮﹂ ? ﹁あはは、やっと私の知ってるイッセーくんになってくれた ! 封じられし赤龍帝のこの日 15 気持ち悪い。おかしい。 誰からもそう言われてそれまで生きてきた私は、自分に生きる価値なんて無いと思っ てた。 けどそんな時に現れたのが、私と﹃同じ﹄で、でも腐らずに前向きに生きていたイッ セーくんだった。 ﹃同じ﹄だと一目で解り合って、直ぐ仲良くなって⋮⋮。 素敵な素敵な私の大切な思い出。 転生させられたせいでイリナと﹃同じ﹄ソレが殆ど薄れてしまってな。 ﹁あ、あぁ⋮⋮なんつーか、俺は俺でちょっとあってな。 やっぱり転生のせい お陰でそれまで積み重ねてきたものも取り上げられちまって⋮⋮もう何か嫌になっ てよ﹂ この悪魔達を﹂ ﹁そう、それ。一目で気付けなかったのはそれのせいなんだね なんだ⋮⋮⋮そっか、壊して良いのかな私 だからこそ許せない。 ? ? 16 どんな姿になってもイッセーくんはイッセーくんだと思ってるけど、イッセーくんの 意思を無視して、上から目線のコイツ等が私は許せない。 イッセーくんと﹃同じ﹄モノから自分でコントロール出来るようになったこの能力で 今すぐにでも壊してしまいたくなるくらいに⋮⋮。 ﹁いや、イリナがやることじゃない。コイツ等に報いを受けさせるのは俺だ。 生憎コイツ等は俺から力の億分の一は奪ったが、俺を殺すことだけは出来ない。 故にこのままコイツの奴隷として暫くは苦渋を舐めつつ、何れは全てを取り戻す。 幸い⋮⋮俺には﹃アレ﹄とは別にコイツがあるからな﹂ でもイッセーくんは自分でやると⋮⋮妙に顔を歪めてコッチを見てる連中に冷たい 器 セイクリッドギア ﹂ 視線を送ると、左腕に真っ赤な籠手を出現させて見せてくれた。 !? ﹁む、神滅具の一つか﹂ 声曰く赤龍帝の籠手らしいぜ﹂ ブー ス デッ ド ギ ア ﹁あぁ、イリナと会わなくなった後辺りに使えるようになってな、何でもこの神器に宿る ﹁わっ、これってもしかして神 封じられし赤龍帝のこの日 17 私と似た力とは別に神器⋮⋮しかも赤龍帝の籠手なんてやっぱりイッセーくんは凄 いや。 スキル なんて思ってたら、私の相棒になったゼノヴィアが会話に加わってきた。 ﹂ ? だ﹂ ﹁悪い⋮⋮言われるまであの独特の気配を感じることが出ないまで今ほぼ無くしてるん するとイッセーくんの表情が驚きに変わり││やがて悔しそうに目を伏せた。 ながら﹃同じ﹄と付け加える。 窺うような表情のイッセーくんに改めて自己紹介したゼノヴィアが、軽く笑みを見せ ﹁なに じ﹄タイプだ﹂ ﹁っと、すまない。私はゼノヴィア⋮⋮イリナの相棒であり、イリナとそしてキミと﹃同 れて││って、キミは⋮⋮﹂ ﹁あぁ、まあ、ぶっちゃけ能力との併用が一番使いやすくて今は基礎の基礎のまで落とさ 18 ﹁あぁ、そうみたいだな。 確かにイリナから聞いた通りキミもまた私達と同じ気配を感じるが、まるで何かに阻 ﹂ 害されている様にうっすらとしか感じられない﹂ ﹁それってやっぱり悪魔に転生させられたせい だろ、リアス・グレモリー ﹂ どうやら悪魔達も私達のこれを異常と認識し、また恐れているみたいだ⋮⋮そうなん ﹁恐らくそうだろう。 ? リアス・グレモリーにゼノヴィアは挑発的な顔で話をはぐらかすと、さてと⋮⋮なんて イッセーくん⋮⋮いや、言われて気付いたって顔で私とゼノヴィアまで警戒した顔の イリナの昔馴染みにした仕打ちを聞かされたら、友好的にはなれんしな⋮⋮﹂ ﹁その通りとだけ返すが、詳しく言うつもりは無いよ。 ﹁っ⋮⋮その言い方、アナタ達もイッセーみたいなのを⋮⋮﹂ ? 話はまだ││﹂ 言いながら私││そしてイッセーくんの手を取ってこの悪魔の巣窟部屋の出口へと向 かう。 ﹁ちょっと待ちなさい ! 封じられし赤龍帝のこの日 19 ﹁話なら終わりだリアス・グレモリー 我等教会側の提示通り、貴様等悪魔は一切今回の聖剣についての干渉は認めない。 ﹂ ましてや、無理矢理嫌がる人間を悪魔に転生させて管理しようとする考えの輩なぞ、 信用すると思うか ? 無いよね ﹂ ﹁イッセーくんはそう言ってないけど それとも何 係にまで口出しできる権利でも ふんだ。 ? 貴女はイッセーくんの交遊関 ? 素手でのしてやったわ。 途中、何か聖剣に恨みがあるとか何とかと襲ってきた金髪の悪魔が居たけど、適当に んに向かった。 屋から出た私達は、取り敢えずゆっくりとお話がしたいということで、近くのご飯屋さ 最後にリアス・グレモリーに舌を出してやりながら、イッセーくんを連れて悪魔の部 イッセーくんの精神の柱を奪った悪魔なんて信用できる訳が無いよーだ。 ? ? ﹁ぐっ⋮⋮じゃあイッセーは置いていきなさい。彼は私の││﹂ 20 ﹁聖剣を奪い返す為にねー⋮⋮﹂ ﹁そうなのよ⋮⋮って、やっぱり全然聞いてなかったんだねイッセーくんったら﹂ ﹁あれはその⋮⋮イライラしててさ、ごめん﹂ ﹁仕方ないだろ。私がもしキミ││いや、イッセーの立場ならまず来ようとは思わん﹂ 金髪の誰かさんをのした後、ご飯屋さんでご飯を食べながら昔の事とか今の互いの状 況についてのお話で盛り上がった。 あの悪魔の部屋では薄暗くて気づけなかったけど、イッセーくんってばカッコ良く なっててちょっとドキドキ⋮⋮。 ﹂ ? ﹂ ? ず目を丸くしてしまう。 目な顔をしながら私達の任務手伝いたいと切り出してきたので、私とゼノヴィアは思わ そんなドキドキした気持ちに暫く浸りながらイッセーくんを眺めていると、突然真面 ﹁む ﹁なあ、その聖剣を奪い返すって任務さ、俺も手伝ったら駄目か 封じられし赤龍帝のこの日 21 ﹁いや分かってる。キミ達が悪魔の介入を良しとしてないのは分かってる。 が、まぁ⋮⋮何だ、俺はさっきの通り奴等と仲良しこよしなんて死んでもしたくなく イリナはどうだ ﹂ て、寧ろ奴等の不利益になる真似なら喜んでしたいんだよ⋮⋮ぶっちゃけると﹂ ﹁なるほどな。 うむ、まあキミなら信用できるし私は構わんぞ ? ほらね、昔から変わってない。 るとは驚いたな⋮⋮特に胸とか﹂ ﹁にしても、擦り傷だらけの男みたいな格好してたイリナがこんな女の子らしくなって わってないし、快諾するのも当然よ。 ゼノヴィアがこんか短時間で打ち解けてる辺り、そこら辺は昔のイッセーくんと変 あの悪魔連中ならともかく、私達と同じである上に他ならぬイッセーくんだもん。 驚いたものの、断る理由は無かった。 なんていうか⋮⋮初めての共同作業みたいな⋮⋮きゃ、言っちゃった♪﹂ ﹁うん私も寧ろイッセーくんと一緒にやってみたい。 ? 22 胸の大きな女の人が好きなのも変わってない。 色々と大きくしてやろうと努力したんだもーん﹂ ﹁そりゃあ、昔のイッセーくんが大人の女の人の胸を見て騒いでたのを見てたからね。 相当キミを好いてるんだと私は若干ゲンナリしたくらいだ﹂ ﹁というか、知ってる限りじゃイッセーの話しかしないからなコイツ。 ﹂ ﹂ だから私はずっと、また会えるその日までに頑張って胸を大きく育てた。 理由なんて解りきってる⋮⋮。 良いけど⋮⋮なに ? ﹁え ? ﹂ ﹁はい、どーぞ ﹁わぽっ !? ﹂ ! 隣に座ってジュースを飲んでいたイッセーくんにちょっと屈んで貰い⋮⋮。 ? ﹁イッセーくん、ちょっと屈んで 封じられし赤龍帝のこの日 23 イッセーくんの頭を胸元で抱き締めてあげる為に今まで頑張ってきたのよ。 ﹁へ ﹂ ﹁おいイリナ⋮⋮念願叶った所に水を差して悪いが、イッセーがピクリとも動かんぞ ? ﹂ ? イッセーくんったら目を回しちゃったけど⋮⋮あはは。 ﹁あ、あれ ﹁お、おっぱいがひとつ⋮⋮おっばいがふたつ⋮⋮ふわふわ∼﹂ ? ﹂ ? 為なら││﹂ ﹁どうイッセーくん ちょっと恥ずかしくてドキドキしちゃうけど、イッセーくんの 24 弱体化と憎む理由 案の定、イリナとゼノヴィアと出てった事に文句を言われた挙げ句、この一件には絶 対に関わるなと偉そうに釘を刺されたが、そんなもんはクソ喰らえだ。 ﹂ 忠誠なんざ誓った覚えも無い。仲良しこよしをする気も無い俺が、わざわざ聞いてや る事なんてありえねぇんだよ。 ﹁くっそ⋮⋮肋と右腕をやられた⋮⋮ クソッタレが⋮⋮奪われたものがデカ過ぎるってのも考えものだぜ。 だから無視してやろうと思ったんだがな。 ! ちょっと前までなら即ぶっ壊してやれた雑魚共相手にこの様だ。 !? チッ、ド、ドライグと話せてたら笑われちゃうなこりゃ⋮⋮クソッタレ﹂ ﹁げほっ 弱体化と憎む理由 25 クソ悪魔の話を無視して出ていこうとしたら、力付くでクソ悪魔の目の届く範囲に留 められそうになった。 だから思わずキレて大暴れしてやったんだが⋮⋮クソ、結局好きなだけやられて、何 とか目を盗んで逃げられたのが精一杯だった。 お陰であの白髪のクソガキに腕と肋折られてクソ痛てーが、イリナとゼノヴィアと約 束した場所まで自分で行ける程度のダメージに抑えられただけマシか。 !? ﹁おー⋮⋮昨日振りだな二人とも﹂ ﹁ひ、酷い怪我⋮⋮﹂ ﹁ど、どうした ﹂ 情が驚愕だった。 イリナとゼノヴィアが待ち合わせ場所にてイッセーの姿を目にした時、まず抱いた感 ﹁惨めにも程があるぜ⋮⋮チクショウ﹂ 26 右の頬が倍近く腫れた﹃同類﹄の存在を目にしたゼノヴィアとイリナは、ヘラヘラ笑っ ﹂ ているイッセーに駆け寄り、どうしたんだと詰め寄りながら傷の程度を確かめるように ぺたぺたと触診をする。 くっ、多分肋もやられてるな﹂ ﹁いやー⋮⋮クソ悪魔とちとやり合って││いぎっ ﹁痛いのか !? 角を睨み付け、走りだそうする。 ンで骨をやられたと判断した二人⋮⋮特にイリナは殺気だった顔で駒王学園のある方 服の上からでは解らなかったが、触診で腕と肋を触れた際に起こした一誠のアクショ ﹁それに右腕も⋮⋮﹂ !? するとイリナは﹃どうして ﹄と訴えたが、一誠はヘラヘラ笑いながら口を開く。 しかしそれを見抜いた一誠が無事だった左腕でイリナの手を掴んで制止する。 ﹁やめろ﹂ 弱体化と憎む理由 27 !? ﹁言っただろ、今の内にお山の大将を楽しますだけ楽しませてやるって。 だから力を取り戻すまではある程度我慢してやる。 ﹂ それに、今回の事に関しては奴等曰く﹃悪魔が干渉してはならない﹄のを俺が無視し てるからこうなったんだ﹂ ﹁で、でも⋮⋮それだけなら何でそこまで それまでいい気分にさせてやろうじゃないの﹂ ﹁心配しなくても、報いは必ず受けさせる。 二人に言うのだ。 れるともなれば、今すぐにでも一誠の代わりに報復に行きたかったが、それでも一誠は ば耐え難い仕打ちであるというのに、その上ただ止める為だけに此処までボロボロにさ 無理矢理悪魔に転生させられ、力を封じられてるという事実だけでもイリナからすれ ゼノヴィアは納得できないという表情を浮かべる。 良いから良いからとヘラヘラと痛々しく腫れた頬を携えながら笑う一誠にイリナと なのにこれでは虐待じゃないか⋮⋮﹂ ﹁確かに、止めるだけなら今の弱ってしまったキミを無傷で上手く止められる筈だ。 ! 28 ﹁﹁⋮⋮⋮﹂﹂ 力を取り戻したら地獄以上の恐怖を教えてやる。 大きく腫れた頬をした顔を獰猛な笑みへと変えた本人の言葉に、二人は渋々と矛を納 めるしか無かった。 だが一誠がこの様では聖剣捜索も儘ならないのは事実であり、取り敢えず一誠を安全 な場所に連れていこうとしたが、これも一誠は大丈夫と言いながら、逆に折れ曲がって いた右腕を鈍い音をさせながら無理矢理元の状態に戻す。 どうも悪魔に転生してから力は奪われたが、元からあった身体的特徴はある程度残っ ﹁心配せんでも、この程度の傷なら二時間もあれば治る。 てるみたいでね﹂ 要するに、何がなんでも奴等の嫌がる真似をしたいんだと言って聞かない一誠に、イ リナもゼノヴィアも断りきれずに結局は了承し、聖剣捜索を開始するのだった。 ﹁幸い両足は無事だったから飛べるし走れるぜ﹂ 弱体化と憎む理由 29 ﹁いや⋮⋮確かに時間は掛けられないが、そこまで急ぐ事でもないから、先ずは奴等が隠 ﹂ れてそうな場所を探して回ろう﹂ ﹁肩とか貸す アブノーマル ﹁何だと ﹂ か知らんが、あのクソ悪魔共が使ってやがるんだ﹂ ﹁俺の異常性││えっと、とある師匠から無神臓と名付けられたこの力を何のカラクリ 発的なのか意図的なのかよくわからない事実。 しかし一誠が一番に許せなかったのはその先⋮⋮悪魔に転生させられた事による偶 力を封じられた程度で済むならまだマシだった。 ││いや、正直な話それだけならまだ良かった。 いた。 落ちてしまっており、永遠の進化という特性である一誠自身の異常性すら殆ど失われて それこそ、自分の意思で相棒であるドライグとの会話すら出来なくなるくらいにまで 悪魔にさせられてからの一誠は全盛期の億分の一以下にまで力が落ちていた。 ﹁いいよ、大分痛みも無くなってきたし﹂ ? 30 ? ﹁それって⋮⋮﹂ 封じられた自身のスキルを、リアス達が行使している。 それが何よりも一誠の怒りを増幅させていたのだ。 て習得した技術を簡単に行使される事は一誠にしてみれば侮辱でしか無かった。 特性を行使出来る様なモノがあるのかは知らないが、師より聞かされたらお伽噺に倣っ 転生させた事で現れた﹃繋がり﹄がそうさせたのか⋮⋮それとも悪魔の技術に下僕の 勿論一誠が教えた訳でもないし、ましてやスキルにに関しては一誠自身の力だ。 を、リアス達が当たり前の様に使った。 無限の進化、そして一誠自身が死ぬほどの鍛練を重ねて習得した様々な技術の全て 大した修行もしてねぇ癖に俺の力を使って勝ちやがった﹂ 少し前にクソ悪魔に婚約騒動があって、それを破棄するために行われたゲームでも、 いが、奴等は少なくとも﹃自覚﹄して使ってやがる。 ﹁転生させられた弊害なのか、それともそういう技術を悪魔が持っていたのかは知らな 弱体化と憎む理由 31 ﹂ ﹁それは私とイリナがもし⋮⋮いや、死んでもあり得んが、悪魔に転生したら力を奪われ た挙げ句転生させた悪魔がそれを使えるようになるという事なのか ﹁わからない⋮⋮。 ﹁それってやっぱり知ってて使ってるって事なの イッセーくんのスキルを ﹂ ? あ、ライザーってのはさっき言った婚約騒動の相手だ﹂ だがクソ悪魔は言ったよ﹃この力さえあればライザーとの婚約は破棄できる﹄ってな。 ? ﹁いい気分のする話じゃないのは確かだな﹂ ﹁壊して良いのかな、アイツ等﹂ 分達で好きに使っている⋮⋮それも本人の了承無しで勝手にだ。 力が危険だからと、弱っていた所を無理矢理悪魔に転生させた挙げ句、力を奪って自 リアス達悪魔達への不信感を個人的に深めていく。 悔しそうに顔を歪め、吐き捨てる様にして話す一誠にイリナとゼノヴィアはますます 幸い、赤龍帝の籠手は使えないみたいだけど﹂ てる。 ﹁偶発的に気付いたと本人は言ってたけど、それも信じられられないから俺はそう思っ ? 32 ﹁⋮⋮。ま、今の俺が言っても愚痴にしかならないけどさ﹂ 特にイリナが光の無い瞳で何やら物騒な事をブツブツと呟き、止めなかったら今すぐ にでもリアス達へと突撃しそうな雰囲気を放っていた。 ギルティ 自分に手を差し伸べてくれた一誠の力を勝手に使われてるというだけで、イリナから 何か すれば有罪であり、今度隙があったら一発殴ってやろうと密かに考えるのだった。 さっきからフラフラしてる様な気がしてならないんですけど﹂ ﹁で、隠れてそうな所を探すって言ってたけど、宛とかあったりはするのかい が、話を変えようと二人の本来の目的である聖剣捜索についての話を振る。 そんなこんなで合流してから約三十分程が経ち、既に頬の腫れが引いてきている一誠 ? するとイリナとゼノヴィアは⋮⋮何故か無駄に偉そうに胸を張りながら一言。 ﹁あらら⋮⋮﹂ ﹁正直当てずっぽう﹂ ﹁無い﹂ 弱体化と憎む理由 33 その余りにも堂々とした言い方に一誠は思わずまだ痛む身体で軽くずっこけてしま う。 美少女故に妙なドヤ顔でも可愛いから許すが、これがもし一誠の嫌うリアス達だった ら、言ったその場で鼻をへし折ってやってた辺り、やはり昔馴染みと同類の人間という だけで一誠は寛大になれるタイプらしい。 ﹁む、キミは確か昨日の⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ それだけでも一誠は久しく味わえなかった癒しを感じる訳であり⋮⋮。 美少女二人と、ストレスも怒りも感じずに仕事とはいえ会話を楽しみながら歩く⋮⋮ イリナはちょっぴり申し訳なさそうにしながらトコトコと一誠の後を付いて行く。 悪魔に転生してから怒りとストレスで毎日が苦痛だった一誠の微笑にゼノヴィアと なら俺が怪しそうだと思ってる場所まで案内するよ﹂ ﹁まぁ、しゃーねーか。 34 ﹁なぁに まだ私達に何か用 ﹂ ? てしまうのは、多分仕方無いのかもしれない。 ﹁⋮⋮。クソ悪魔の手先か。何しに来たんだよ ﹁今キミに用は無いよ兵藤くん。 用があるのは後ろの二人が持ってる聖剣だ﹂ ? んどくさそうな顔をした。 ? ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ 誰かさんの様なそれとなり、イリナとゼノヴィアは昨日振りに見た男子に対して若干め その瞬間、今さっきまで穏やかな顔だった一誠の表情が一瞬で殺意の波動に目覚めた するかの様に立ちはだかる。 顔立ち整った金髪の男子が、人通りの少ない裏道へと入り込んだ三人の前に通せんぼ ﹂ そこに邪魔が││リアスの手先が来られるだけで、全部ぶち壊しにされた気分になっ ? ﹁キミの事はあれから独自に調べたよ。聖剣計画の生き残りらしいな 弱体化と憎む理由 35 金髪の少年⋮⋮木場祐斗にゼノヴィアが確かめるようにして問うと、祐斗の表情が憎 悪に溢れたらものへと変貌する。 それで ﹂ あの計画の復讐のつもりで私達が預かってる聖剣を狙ってるわけ ﹁そうさ、だから大人しく聖剣を渡してくれないかい ﹂ ? 切っ先を三人に向ける祐斗に、一誠が嘲笑う様に口を開く。 ﹁大人しく渡せと宣う奴の行動じゃねーな、クソ悪魔の下僕 ? くその全てを嫌悪している一誠の言葉に、木場は鬱陶しそうに顔を傾けながら言う。 リアスは当然として、その下僕である祐斗、小猫、朱乃⋮⋮と、まだ居るが、とにか ﹂ 聖剣が憎くくて堪らないといった形相で、周囲の空間から無数の剣を出現させてその ? ? ﹁生き残りが居るとは思わなかったけど、まさか悪魔の手先になってたなんてね。 ⋮⋮失敗作だけどね﹂ ﹁そうだ、僕は謂わばキミ達の先輩に当たる。 36 ﹁キミだって部長の下僕だろ ﹃Boost ﹄ まあ、正直同情は覚えるけど⋮⋮﹂ その言葉が、一誠の逆鱗に触れるには充分だった。 ? して軽かった。 ? ﹂ していたのに、今の一誠は、繰り出す攻撃速度も威力も悲しいほどに弱く、遅く⋮⋮そ 立ったままでも、適当にぶっ放した空気弾か何かで簡単に首を撥ね飛ばせる程の力を有 しかし弱体化というものは悲しいほどに弱体化しており、全盛期なら只そこに突っ し、即座に倍加を描けながら祐斗へと殴り掛かる。 に転生と共に宿っていた龍とすら意志疎通も出来なくなって弱体化した神器を呼び出 祐斗から向けられた皮肉にしか聞こえない言葉に対して一気に激怒した一誠が、左腕 ! ﹁いきなりだね兵藤くん 弱体化と憎む理由 37 ﹂ 殴りかかってきた一誠の籠手越しの拳を呼び出した剣を使って片手で防いだ祐斗の こんな雑魚、本来なら即ぶっ殺せたのに⋮⋮ 淡々とした言い方に一誠は悔しそうに顔を歪める。 ﹁クソ⋮⋮ ! 今後永遠に無理だ。 その証拠にその頬の腫れはどうしたんだい 塔城さんに殴られちゃった ﹂ ? て一誠の力を流し、そのまま転ばせる。 ﹁今キミの相手をしてる暇は無い。 ! 僕も僕で目的があるんでね﹂ ぶち殺してやるっっ ! 勢いよく前のめりに転んだ一誠を冷たく見下ろす祐斗に一誠の殺意の波動は更に強 ﹁こ、このガキッ⋮⋮ ﹂ 倍加させて剣ごとぶちのめしてやろうとするが⋮⋮その前に祐斗が身体を横にずらし 見下すような態度で煽る祐斗に、一誠の怒りのボルテージは最高潮に達し、更に力を ? ﹁そうだね、部長に転生して貰う前までなら可能だったかもしれないけど、今は⋮⋮いや ! 38 くなり、汚れた制服も気にせず飛び掛かるが⋮⋮。 ﹂ ﹁ストップよ一誠くん。怪我をしてるんだから、ココは私達に任せて﹂ ﹁っ ﹁っ⋮⋮く、くそ、自分が情けねぇ﹂ に充分な程だった。 その速さは騎士として転生し、スピードに自信のあった祐斗を驚愕に目を見開かせる 一誠の前に移動したイリナが真正面から一誠を抱き締めてその動きを止めた。 それよりも速く、瞬間移動にも見紛う程のスピードで祐斗に飛び掛かろうとしていた !? だ感情の無い表情で剣先を其々ゼノヴィアと自分に向けていた祐斗へと振り向くと、抑 の母性に溢れたら穏やかな表情から一変、どこまでも冷たく、どこまでも異常性を孕ん い頃のイッセーにして貰ったのと同じように一誠の頭を撫でながら落ち着かせると、そ イリナに抱き止められる体たらくに若干不貞腐れた顔をした一誠にイリナは嘗て幼 ﹁そんな事無いよ。寧ろやっとイッセーくんに恩返しが出来る﹂ 弱体化と憎む理由 39 揚の無い声でただ一言。 ﹁調子に乗らないでよね、悪魔の癖に。ぶち壊されたいの その異常性を伺い知るような、重苦しい殺気を放った。 それはゼノヴィアとて同じであり⋮⋮。 よ。当然貴様に聖剣を渡すなぞせん﹂ ﹂ ゼノヴィアもまた⋮⋮イリナと一誠を思わせる異常性を孕む静かな殺気を放った。 ﹁⋮⋮。なるほど、妙に兵藤くんと仲良く出来るなと思ったらそういう事か﹂ 二人から向けられる殺気に祐斗が察した様に呟く。 ! ﹁解るんだよ、僕もリアス部長と同じく⋮⋮彼の化け物だった理由を今使えるからね ﹂ ﹁力 を 奪 い 取 っ て 使 う こ と し か 出 来 ん 悪 魔 と そ の 下 僕 相 手 に 友 好 的 に な れ る と 思 う な ? 40 そして二人に拮抗する異常性││つまり元は一誠の持つ精神の根元を表に出すと、そ ﹂ のまま金髪だった髪を血を思わせる真っ赤な髪へと変色させると、二人に向かって襲い 掛かってきた。 ﹂ ! 乱神モードか ﹁全く恐ろしいね⋮⋮同じ元・人間が持ってた力とは思えないさ ﹁クソ ! める中、襲われたゼノヴィアは只一言⋮⋮。 その髪の色でかつて使った乱神モードであると察した一誠が再び悔しそうに顔を歪 ら派生させた技術を使って剣で斬りかかった。 素で構えた二人の内、ゼノヴィアへと襲い掛かってきた祐斗が、一誠の異常性の内か ! えた。 低く、響く様な声で只一言呟いたその瞬間⋮⋮ゼノヴィアの姿は忽然とその場から消 ﹁⋮⋮。クロックアップ﹂ 弱体化と憎む理由 41 ﹁っ な、なに ﹂ !? ﹁くっ、何処に││ぐあっ !? ﹂ !? ﹁お疲れ、ゼノヴィア﹂ ﹁うぉ ﹁ふぅ⋮⋮手加減はしてやったから死んでは無いと思う﹂ と共に頭からコンクリートの地面に落ち、そのまま意識を失ってしまった。 な音と共にボロボロの人形の様にその身を投げだすと、グシャリというこれまた嫌な音 すると、そんな祐斗の全身に強烈な衝撃と痛みが一斉に襲いかかり、何かが折れる嫌 ﹂ だけで肝心のゼノヴィアの姿が見えない。 に抱き締められた状態の一誠と、無表情のまま││いや、見下すような目をするイリナ と見渡すが、目に映るは同じくギョっとした顔で辺りをキョロキョロとしているイリナ 振り下ろした剣が虚を切り、姿も見失った祐斗が思わず動揺して辺りをキョロキョロ !? 42 グシャリと頭から地面に落ちたのと同時に、それまで全く姿の見えなかったゼノヴィ ﹂ アが額を拭いながら姿を再び現したのを見た一誠がビックリした顔になる。 ﹁お、おいおい⋮⋮まさか今のがか ﹁ん、そうだよ一誠君。 ﹁⋮⋮。それ、俺よのより反則じゃね ﹂ イッセー流に言うと、時間の流れを弄くれる異常性って所かな﹂ ﹁うむ、まあそういう事だ。 で、本人曰く、その流れを弄くると、さっきみたいに速く動けるらしいの﹂ のよ。 ゼノヴィアって何かしらないけど、時間の流れが生まれつき﹃視える﹄みたいらしい ? 笑いしながら首を横に振って否定する。 下手な神器なんかクソ扱いじゃねーか⋮⋮とただただ驚く一誠だが、ゼノヴィアは苦 ? ﹁そうでもない、結構疲れるから多用も出来ないし、多分力を取り戻したイッセーなら直 弱体化と憎む理由 43 ぐにでも私を捉えられるだろう。 ﹂ 現にイリナはこの程度ならもう簡単に捉えられてるしな﹂ ﹁え、そうなの だという。 自信は無かったものの⋮⋮その心は久しく感じなかった新しさに打ち震えていたの やっぱ世の中って広くて⋮⋮新しいぜ︶ かに上だ。 ⋮⋮いや、攻撃を受けても壊せるからアレだけど、速さだけならマジで昔の俺より遥 ︵ドライグブーストの黒神ファントムより速くて正確に動ける時点でかなりやべぇ。 が無かった。 シレっと言うイリナに取り敢えず強がって返事をした一誠だが、内心はあんまり自信 ﹁⋮⋮⋮。ふ、ふーん﹂ ﹁うん、まあゼノヴィアの行動を何十手も先読みしないといけないけどね﹂ ? 44 ﹁で、この聖剣計画の生き残り君はどうすれば良いんだ 一応返り討ちにしてしまっ たが⋮⋮﹂ 防衛で通るだろ。 ﹂ ﹂ まあ、んな事はどうでも良いとして⋮⋮あのさイリナ くて良いよ ﹁え、サービス もういい加減サービスしな ﹁え、あぁ⋮⋮良いよ放っておけ、何かキミ達の持ってる聖剣を奪おうとしてたし、正当 ? ? ﹁いや良いんだけどね うん。 イッセーくんに誉められると嬉しいな⋮⋮﹂ それにしても本当女の子らしくなったねイリナは﹂ ? ﹁あ、ご、ごめん﹂ クラクラしちゃうっていうか⋮⋮﹂ ﹁いやほら⋮⋮お胸がさっきから俺にダイレクトアタックしててよ⋮⋮良い匂いもして ? ? ? 途中、イリナが何かの絵を見て教会から与えられた資金を全部叩いて買おうとしたの 誠の三人は聖剣探しを再開する為に街中を歩き回った。 その後、泡吹いた祐斗はそのまま放置してその場から去ったイリナ、ゼノヴィア、一 ﹁そ、そう 弱体化と憎む理由 45 46 を、一誠が止めたり、サイコパスみたいなはぐれ悪魔祓いが、奪われた聖剣を片手に襲 い掛かったりしてきたのをイリナとゼノヴィアがはっ倒して取り返したりとしたプチ 冒険があったりしたとか。 死する赤龍帝 大いなる力を使役するには、大いなる責任が伴う。 なんて誰かは言うが、そんな事をバカ真面目に考えるやつなんて人間だろうが悪魔だ ろうが居る方が珍しいと俺は思っている。 ﹂ でなければ、他人から奪った力をホイホイ使って嫌なことから逃げまくったりなんざ しやしねぇんだ。 ﹁昨日、あれほど言ったのに何故あの二人と会ったの ? 勘違いしてる支配欲バカ程、そんなもんなぞ考えやがれねぇんだ。 ﹂ ? ﹁⋮⋮⋮﹂ 自分の弱さに反吐が出る。 ﹁黙っていたら分からないのだけど 死する赤龍帝 47 イリナとゼノヴィアの聖剣探しの手伝いをした後、二人と別れた瞬間にいきなり背後 から襲われた。 脳天に喰らった鈍い痛みと、全身を焼かれる様な痛みを一瞬感じてから視界をブラッ クアウトさせ、意識を取り戻したと思ったら、居たくも無いクソ部室の壁に縛られてお り、目の前には顔も見たくねぇクソ悪魔と手下共と来たもんだ。 目覚めからして最低最悪だぜ。 んなもんテメー等が憎い しかも一丁前に尋問の真似事でもしたいのか、縛られて強制的に床へ座らされた俺と 目を合わせながら勝手に触れてきやがる。 ﹁触んな不細工﹂ ﹁⋮⋮⋮﹂ そもそも何故イリナとゼノヴィアと行動したのかだと からに決まってんだろうが。 ⋮⋮。いや、正確には転生によるクソみたいな繋がりのせいで獲られた俺の劣化しま やがる。 何回も言った筈なのに、このクソ共は何を勘違いしてるのか、俺を所有物扱いしてき ? 48 スキル くりな能力をだが。 俺の顔に触れようとしたクソ悪魔から顔を逸らして言ってやると、手を伸ばしたまま 一瞬だけ固まると﹃そう⋮⋮﹄とだけ呟きながらスッと立ち上がり、俺を見下す。 ﹁いくらのぼせても構わないけど、イッセー⋮⋮これだけは覚えておきなさい﹂ 俺を見下ろすクソ悪魔が気取った様に話す。 ﹁アナタは死ぬまで私のモノよ﹂ うっすらと⋮⋮嘲笑う様にしてほざくその姿はまさに悪魔らしい物言いだ。 吐き気のしやがる⋮⋮俺が最もぶっ殺してやりたい人物像そのものだ。 室から出ていった。 そう偉そうにほざいたクソ悪魔は、ご丁寧に白髪チビを置いてクソ女王と共にクソ部 ﹁肝に命じて、暫く此処で頭を冷やす事ね﹂ 死する赤龍帝 49 こんな程度のロープなんて無理矢理引きちぎれ様もんなら引きちぎれる筈なんだが、 ちきしょう⋮⋮何か仕掛けてあるせいか身体に力が入らねぇ。 加えてこのクソ戦車の白髪のクソガキが見張りのつもりか、この場に残ってるせいで 逃げられもしねぇ。 イリナとゼノヴィアと明日もと約束してたんだが⋮⋮クソ、これじゃあ無理だ。 ﹂ まあ、死んでてくれようが俺には関係無いが。 ﹁⋮⋮。先輩、ご飯でも食べますか ? ﹁テメーの腸引き裂いてから引きずり出して、その口の中に突っ込む方法を考えてるん ? 回収でもされて治療か そういやあのクソ騎士のカスはどうなったんだろうか⋮⋮。 ら聞かせるなと言ってやる。 それを見越してなのか、此処に残った白髪クソガキの忠告にイライラした俺は、声す ﹁口を開くな⋮⋮殺すぞクソガキ﹂ ﹁無駄です先輩。部長の魔力で縛ったので、先輩の力ではどうする事もできません﹂ ﹁チッ⋮⋮﹂ 50 だ、話し掛けんなクソガキ﹂ 取り敢えず、このクソガキを出し抜いて逃げないとな。 ⋮⋮⋮。それか、俺に構う暇も無くなる位の災害が近くで起きれば良いんだがな。 その力は人じゃない。 その力は自分達の遥か上だった。 その力は簡単に世界を破壊できる危険なものだった。 その上今代の赤龍帝⋮⋮だからリアスは一誠を下僕にしてその力を封じてやろうと した。 恐らく彼を訪ねて此処に来るかもしれません ? ﹂ ﹁あの教会の二人はどうするのですか よ ? 自身の騎士である木場が、復讐心で先張っていた所を一誠が勝手に動いて共に行動し わらせない﹄と言って追い返せばいい﹂ ﹁来たら来たよ。﹃私達は聖剣や貴女達に関わらない。だから下僕であるイッセーも関 死する赤龍帝 51 ていた二人の教会の使いが押さえ込んだ。 それにより木場の身柄も回収でき、尚且つ二人と別れた所を押さえ込んで一誠も回収 した。 これで物理的に一誠とあの二人の距離を離せ、尚且つ二度と会わせない為に縛り付け る事もできた。 といっても、五分も寝れば勝手に動けるまで回復する⋮⋮とは知らなかったリアスは だ。 その理由は⋮⋮偶然一誠が修行で死の手前までにまで弱っていたのを発見したから しかしリアスは今一誠を下僕にしている。 余りにも大きすぎた。 何せ全盛期状態の一誠は、リアスの許容を遥かに越えた実力を持ち、転生させるには 元々リアスが一誠を下僕にするには、圧倒的に無理な話だった。 え居れば大した問題じゃないわ﹂ ﹁ええ、祐斗がやられた辺り、あの二人も結構な力を持ってるみたいだけど、イッセーさ ﹁あの二人もイッセーくんと﹃同じ﹄みたいですが⋮⋮﹂ 52 これをチャンスと考え、殆ど試す勢いで気絶していた一誠に自身の持つ兵士の駒全てを 与えて転生を試みた。 その結果、将来確実に悪魔││いや、世界の脅威となるだろう兵藤一誠を大幅に弱体 化させた状態で手中に収めることに成功した。 転生し、力を封じられたと知った一誠が今尚続く憎悪を向け、時には反逆をしてきた が、大幅に弱体化した一誠を抑え込む事なぞ造作も無く、あれほど脅威と怯えていた相 手を膝まづかせる事に一種の快楽すら覚えた。 ﹁イッセーから貰ったこの力さえあれば、私達はもっと強くなれる。 そうしたら誰も私達に指図出来ない、強要も出来ない﹂ いた婚約騒動を力で白紙に戻せる程に。 それこそ、フルメンバーですら無いのにレーティングゲームで勝利を収め、嫌がって 強くなった。 あれほどまでに強かった理由の一部を使役出来る事に気付き、その力を利用して急激に その上、転生させて下僕にした事で一誠との繋がりを獲た結果⋮⋮リアス達は一誠が ﹁⋮⋮ええ﹂ 死する赤龍帝 53 だからこそますますリアス達は一誠を縛り付けようとした。 自分達を常に憎悪の対象と睨む一誠から何を言われようが、決して解放なんかしてや らなかった。 それはこれからも変わらない。 ﹁じゃあ直ぐにでも助けに行かないと ﹂ という事はやはりリアス・グレモリー達に捕らえられたと考えるのが妥当だな﹂ ﹁⋮⋮。イッセーが来ない。 それが破滅を迎える事になろうとも⋮⋮。 愛だ恋だなんて健全な精神は皆無で⋮⋮身勝手な程に。 力を獲られる元であるイッセーの自由を束縛し、永遠に縛り付ける。 それはどす黒い欲なのかもしれない。 ﹁誰にもイッセーは渡さない⋮⋮絶対に﹂ 54 ! 一誠が捕らえらから時は過ぎ、次の日の朝。 今日も聖剣探しに出掛けようと、昨日の別れ際に約束した場所で待っていたのだが、 約束の時間になっても一向に来ない一誠に、二人はリアスに束縛されているだろうと予 想し、直ぐにでも助けに行こうとその場から駆け出そうとした。 ﹂ が、それに待ったを掛けたのは、昨日の捜索の際、自分達の前に現れていきなり襲い 掛かってきたはぐれ悪魔祓いだった。 またお前か。悪いが今お前と遊んでる暇は無い ! ﹁ちょい待ち、昨日はど∼も﹂ ﹁っ ! ると示すかの様に、両手を挙げ始める。 しかしどういう訳か白髪の少年神父はそんな二人に対してヘラヘラしながら降参す ぐ様ぶちのめしてやろうと構える。 白髪で白い神父服を着た少年のニヤニヤした顔での襲来に、ゼノヴィアとイリナは直 ﹁邪魔するなら擦り傷程度じゃ済まない怪我にして││﹂ 死する赤龍帝 55 じゃあ何をしに来た ﹂ ﹂ ﹁待て待て待て、今日はそんな気分じゃねーんだよ﹂ ﹁何 ﹁話は最後まで聞こうぜ元同僚。 ﹁今アナタと遊んでる暇は無いの ? る。 ﹁どういう事だ、何故お前がイッセーの居場所を知ってる ﹂ ﹁いや、別に知ってるって訳じゃねーんだな﹂ ﹁じゃあ何なのよ ? 見開いた。 冷静な口調に、ゼノヴィアとイリナは眉を寄せつつ、目の前の神父の告げた言葉に目を 昨日の七本に別れた聖剣の一つを力任せに振り回しながら襲ってきた時と随分違う ? ﹂ 引っ込める少年神父に、ゼノヴィアとイリナはピクリと反応し、構えを解きなごら訊ね このままでは話が進まないと判断したのか、昨日のフィーバーしたかの様な雰囲気を アンタ等が今お助けに行こうとしてる悪魔くんに関係してんだからよ﹂ ! ? 56 ﹁ボス⋮⋮コカビエルがアンタ等と直接話がしたいんだと。 ﹂ 昨日アンタ等に奪って貰った聖剣はその手土産さ﹂ ﹁なに の力を取り戻せるかもしれないだとさ﹂ ﹁ボス曰く、例の無理矢理悪魔にさせられたイッセーくんだっけ 上手くいけば全部 しかも││ その堕天使から直接自分達と会いたいと目の前の神父を通じて申し出て来たのだ。 天使だ。 何せコカビエルと云えば、聖剣を奪った張本人で、更に言えば自分達が今追ってる堕 流石にこの話に二人は驚いた。 ﹁コカビエル⋮⋮って﹂ !? ﹂﹂ !? ? 一誠の事情をどういう訳か知っていて、加えて昨日の戦いで取り返した聖剣の一つ ﹁﹁ 死する赤龍帝 57 このままお助けに行っても悪魔にされてる以上は抜け出せない。 は、わざと自分達に手土産としてあげたとまで主張している。 ﹁どうする ﹂ 決めるのはアンタ等だぜ 結局、残りの聖剣はコカビエルの手にあるのだし、何れは会わなければならなかった ﹁賭けになるが⋮⋮行くしか無いだろう。 いう言葉もまた魅力的だった。 正直な所罠かもしれないという懸念は大いにあったが、それ以上に全盛期に戻れると るのか、そして取り戻す方法を知ってるのか。 コカビエルが何故一誠の事を知っているのか⋮⋮更に言えばどうして力を失ってい 掛ける。 攻撃意思が見えない神父を油断無く見据えながらイリナは相棒と相談しようと声を ﹂ ﹁⋮⋮。どうするゼノヴィア ? ﹁⋮⋮⋮﹂ ? だが、ボスなら力を取り戻せる方法を知ってるから、悪魔共から自由にもなれる。 ? 58 んだ﹂ ﹁⋮⋮そうね﹂ ﹁決まりだな﹂ 考えた結果⋮⋮ギャンブルになると覚悟した上で二人はコカビエルと会うことを了 承し、ニヤリと笑って﹃じゃあ此方だ﹄と道案内をする神父の後を油断無く着いて行く 事にした。 どちらにせよコカビエルとは一戦交えなければならなかったと考えれば、例え罠でも 会う価値はある││そう思いながら。 そして││ ﹂ ? 剣を今まさに一つへと戻そうとする儀式が執り行われていた。 二人の姿はその日以降⋮⋮忽然と姿を消してしまい、駒王学園の校庭には、七つの聖 なるほど、その髪の色はまさに奴の妹と一目で解るぞ ﹁ほう、貴様がサーゼクスの妹で、そっちがセラフォルーの妹か。 死する赤龍帝 59 ﹁コカビエル⋮⋮ その七本の聖剣はっ ﹂ ! いや、あるか⋮⋮ククク﹂ ﹁あぁ、悪魔祓いの小娘二匹を少し罠に嵌めてな⋮⋮くく、だが貴様には関係ないだろう ! 60 ﹁まあどちらにせよ、儀式が終わるまでの間は俺が少し遊んでやろう﹂ ﹁っ⋮⋮﹂ ﹁それか、まだ居るのに隠しているのか⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮﹂ ようだな﹂ 特にリアス・グレモリー達が俺を倒せるといった顔だが⋮⋮ふむ、下僕の数は少ない ﹁さてと、貴様等と遊んでる暇は無いのだが、どうやらやる気に満ち溢れてる様だ。 す儀式を行おうとしている校庭内にて睨み合いが始まっていた。 告をしてきたコカビエルを迎え撃とうと駒王学園に終結し、今まさに聖剣を一つへと戻 リアスが率いるグレモリー眷属と、もう一人の悪魔が率いる眷属が合同して、宣戦布 それから更に数日が過ぎたある夜。 ? ﹂ そうニヤリとした笑みを浮かべたコカビエルは、背に十二もの漆黒の翼を広げなが ら、リアス達を威圧する。 ﹁来るがいい小娘共。俺を止めたくば殺すしかないぞ それがコカビエルの思惑であるとは知らずに。 リアス達がコカビエルと戦っているその頃、白髪神父のフリード・セルゼンは、ボス ていった。 リアス達は一誠から奪った無限の進化の劣化版の力を解放し、コカビエルへと向かっ ? と慕うコカビエルに命じられた通り、こっそりと駒王学園の旧校舎内を捜索していた。 理由は一つ⋮⋮ある男を連れ出す為であり││ ﹂ ! ﹂ ! ﹁うわ、ひでぇ⋮⋮ボロボロじゃねーか﹂ ﹁イッセーくん ﹁い、居た⋮⋮イッセー 死する赤龍帝 61 ﹁⋮⋮⋮﹂ 一誠を連れ出す為に一時的に手を組んだ悪魔祓いの少女二人と、旧校舎の地下にあっ たとある光が全く刺さない部屋の中から、傷だらけで放置されていた茶髪の少年を見事 ﹂ 発見することに成功した。 ﹂ ﹁イッセーくん ﹁イッセー かべた二人だが、かなり衰弱している姿に途方もない怒りを覚える。 息はある様で、ライトを顔に照らすと眩しそうに顔をしかめる一誠に安堵の表情を浮 ﹁うぉ⋮⋮ま、まぶし⋮⋮﹂ 寄り、一誠が無事かを確かめる為に身体を抱き寄せる。 ペンライトで照らし、見付けた少年の無惨な姿に、イリナとゼノヴィアは直ぐ様駆け ! ! 62 ﹂ ﹁くそ、あの悪魔共⋮⋮ ﹁絶対に許せない ﹂ ! ? せる為にこうして来た。 今の言葉が聞こえたら返事をしてくれねーか ﹂ 俺が誰かなんて多分分かりゃしねぇと思うが、取り敢えずアンタの力を完全に復活さ ﹁聞こえるかい兵藤一誠。 ロボロな一誠の顔を覗き込む様にして眺めると、そのままゆっくりと話し掛ける。 今すぐにでも報復に向かおうとする二人を止めたフリードは、見える範囲だけでもボ 先ずはコイツの力を全部復活させるのが先決だ﹂ ﹁へい待て、今行ったら折角ボスが囮になってくれたのがパァに何だろうが。 ! だ、誰の差し金だ 安心院なじみか ﹂ ? に対し、フリードは違うと言う。 視力を大幅に失って目の前が見えなくなってる一誠が力無く頷きながら訪ねる質問 ? ﹁あ、あぁ⋮⋮ちょっと目が見えねぇが、聞こえてるよ。 死する赤龍帝 63 ﹂ ! たイリナとゼノヴィアが肩にそっと触れる。 ? 安心院なじみ⋮⋮即ちコンタクトすら取れなくなった師の計らいと知り、安堵するよ ﹁そうか、くく⋮⋮連中に是非ともザマァ見ろと言ってやりたいね﹂ 全てはアンタをクソ悪魔から解放する為だ﹂ フェイクでね。 ﹁まあ、種族と所属柄はそーなるが、生憎ウチのボスが聖剣を奪って逃げたのは単なる ﹁イリナとゼノヴィアとは敵対してる訳じゃないのか ﹂ 中途半端に笑おうとして噎せる一誠を、イマイチ良く解らなそうにしつつも黙ってい ほっ ﹁そ、そうかい⋮⋮フッ、俺もまだ完全に運が尽きてなかったらしいな。げげげ⋮⋮げ けに来たんだ﹂ 違うが、ウチのボスはその女と一応知り合いでな。その女からの依頼でアンタの手助 ﹁いや、違う。 64 うに力を抜いた一誠は、見えなくなってる目を開きながら、目の前に居るだろう少年の ﹂ 声に向かって口を開く。 ﹁どうすれば良い ﹁簡単さ││いっぺん死ねや ﹂ ! それを見たフリードは、そんな一誠に対してニヤリと嗤うと⋮⋮。 一杯の意思表示を示した。 だがそれから抜けられる⋮⋮ともなれば今の一誠は何でも受け入れる覚悟があり、精 力を奪われ、その力を勝手に使われるという屈辱に堪えなければならなかった。 ? その手に持っていた剣で、一誠の胸を貫いた。 ﹂ !? それが取り戻す⋮⋮鍵となりて。 ﹁っ 死する赤龍帝 65 ﹂ ! ﹂ ﹁げほっ⋮⋮くっ⋮⋮ ﹁つ、強い⋮⋮ ﹂ ! ﹁こっちの力がまるで通じてない⋮⋮ ﹂ ! ! ﹁こ、このままだと聖剣が⋮⋮ ! ﹂ コカビエルの力が予想以上に強力であった事に。 なれば尚更な﹂ バラキエルの娘も、聖剣計画の生き残り小僧も、猫妖怪も揃って同じ真似が出来ると ﹁髪の色が変わると戦い方も変わるとは⋮⋮何の力だか気になるな。 一誠が貫かれたその頃、リアス達は焦っていた。 ﹁っ⋮⋮ ﹁存外、餓鬼にしてはやるじゃないか﹂ 66 コカビエルの力を利用し、聖剣を一つに束ねる儀式をしているバルパー・ガリレイと いう初老の男を殺してでも止めようとしたリアス達だが、それを阻止せんとコカビエル がリアス達の予想を遥かに越えた強大な力で跳ね返してしまう。 一誠の異常性による成長により、何とか食らいつけているものの、それでもコカビエ ﹂ ルの態度はまるで遊んでいるようなソレだった。 ﹁消し飛ばしてやるわ て畳み掛けようと、 ﹃改神モード﹄と本人が言っていた技術と合わせて、上空から此方を は、滅びの力を全身から放出し、一度見たことのある一誠の﹃音速で動き回る﹄技を使っ 故にこのまま何とかコカビエルに本気を出させず、そのまま殺しきると決めたリアス 対応できるようになっていた。 だがそれでもリアス達には一誠の成長する力があり、徐々にながらコカビエルの力に ! ﹂ 見下ろしているコカビエルへと特攻しようと力を込めた││ ﹁││││え ? 死する赤龍帝 67 ト キ ⋮⋮え ﹂ その瞬間だった。 ﹁え ﹂ ﹁ぬ、抜けていく⋮⋮ ﹁ち、力⋮⋮が !? !? ﹂ ﹁な、なんで⋮⋮い、イッセーの力が⋮⋮ ﹂ 自覚したリアスは盛大に狼狽えつつ、ハッとしながら思わず旧校舎の方角を見つめる。 れまで散々それに頼ってきたからこそ、自分の中に宿っていた一誠の力が無くなったと それはある意味で絶対的な信頼であった一誠の力が無くなった事を意味しており、こ ! ちたかの様な疲労感と共にその場に膝を付きながら激しい息切れを起こしていた。 それは小猫も、朱乃も、祐斗も同じであり、無限にみなぎっていた力が急激に抜け落 て元の紅髪の状態になりながらヘナヘナとその場にへたり込む。 黒神ファントムを使おうとしたリアスが困惑した表情をしながら、改神モードも切れ !? ? 68 ﹁まさか⋮⋮イッセーになにか⋮⋮ 気付いてない。 ﹂ その一誠の身に何かが起きたせいで力が使えなくなった⋮⋮と、焦り出したリアスは る事を一誠に解らせる為だった。 それは死なせない為であり、自殺をさせない為でもあり⋮⋮何より自分の所有物であ 日前から一誠を旧校舎の地下に軟禁していた。 もし死んでしまった場合、この力を失うと危惧していたリアスは、予め││いや、数 ! だがもう遅い。 けば、今こうして膝を付いている事なんて無かった。 封印した⋮⋮いや、そもそも只その日を強くなる為に生きていた一誠の事を放ってお 結論から言えばリアス達はやり過ぎたのだ。 同じく旧校舎の方角を眺めながら、微かに獰猛な笑みを浮かべたのを。 ﹁仕事が早かったなフリード﹂ 死する赤龍帝 69 偶発的にとはいえ、一誠の無限に進化する異常性を使い続け、やがては酔いしれてし まった今となっては全てが遅い。 力を行使するということは⋮⋮ましてや他人から獲られた力を使い続ける事に多か な、何⋮⋮ ﹂ ﹂ ﹂ れ少なかれ代償がある事から目を背けてはならない。 ﹁っ ﹁旧校舎の方から爆発の音が⋮⋮ ﹂ 背けた結果││ ﹁きゃあ ﹂ め、目に砂が⋮⋮﹂ な、何かが上から⋮⋮ ﹁ごほっごほっ ? !? ! ! ﹁げほっ ! !? ﹁くく⋮⋮くくくっ !? !? 70 ﹁そ、そんな⋮⋮どうして⋮⋮ ﹂ ﹁ハァ⋮⋮いい気分だぜ。なぁ、そうは思わないかクソ共よ げげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげ 破滅の未来が待っていたとしたら、それは本人の責任なのだから。 それなのにその力は自分の中から消滅した。 りたいと思っていた。 ﹂ 危険極まり無い男を封印し、下僕とし、そして偶発的に獲られた力でもっと自由にな !!! ? ? まさにリアス今それを身に染みて味わっていた。 恐怖は突然やって来る。 ﹁イ、イッセー⋮⋮﹂ 死する赤龍帝 71 何故か それは今絶望の表情をするリアス達の目の前には隕石を思わせる速度で じた、圧倒的な力の差。 ハハハハハハ ﹂ ﹁言ったよな 精々後ろから首を撥ね飛ばされないようにってさ 白と黒が反転している金色の瞳⋮⋮。 そして左腕に纏う龍帝の籠手。 恐怖を教えてやろう││げげげげげげ ﹁月並みの言葉だが言ってやる。 ﹂ ? そして始まるは││報復だった。 力を失った少年はその全てを⋮⋮完全な死を経る事で取り戻した。 !!!! くくく⋮⋮アッ 落下し、激しい砂ぼこりと共に見えた⋮⋮少年から発せられる﹃眷属にする前﹄まで感 ? 左右の米神から天を目指して伸びる二本の鬼を思わせる角。 !!!! ? 72 破壊の龍帝 ※閲覧注意 死の感覚なんて分からない。 走馬灯が見えるなんて誰かが言ってたが、俺はそんなもんは見えず、只普通に意識が 無くなっただけだった。 怖いという気持ちも正直無かった。 ││いや、怖いと思う暇もなく目の前が完全に黒くなったと説明した方が正しいのか もしれない。 だって、死の先に待ってたのは⋮⋮あの人だったから。 ﹃でも、これでやっとお前の中に埋め込まれたモノを取り除ける。 その人は死んだ俺をただ待っていた。 まったく、お前ともあろうものが気を抜き過ぎるからこうなったんだ﹄ ﹃やっと僕と会える様になって何よりだ。 破壊の龍帝 ※閲覧注意 73 そうなれば全ては元に戻るのさ﹄ その人はボーッとしていた俺の胸元に触れながら言った。 ・ 最後の最後、目の前がまた真っ暗になる直前、彼女はそう言ってた気がした。 ﹃コカビエル君達には後でお礼をしないとね﹄ 最後に⋮⋮ほんの少しだけ複雑そうに笑いながら、俺を押し出した。 のは正直アレだけと﹄ ﹃僕のお伽話全てを吸収したお前になら出来るさ⋮⋮まあ、言彦のお伽話さえ吸収した その人は俺の中に入れ込まれたそれを簡単に取り出しながら笑った。 あの悪魔達に﹃一体誰を御したつもりでいたのか﹄を教えてやれ﹄ ﹃さぁ、だから行くんだ。 74 ト ラ イ そして俺は、死の先に待つ彼女により枷を外され、送り返された事で全てを取り戻し ⋮⋮再臨する。 ﹁イッセー﹂ リ ﹁イッセーくん﹂ 0から這い上がりを果たした⋮⋮本当の俺として。 ﹁あららのら⋮⋮聞いてた以上にエグいなこれは。 あーぁ、あのクソ悪魔もバカな事をしたもんだわ∼﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 意識が覚醒する。 ﹂ イリナとゼノヴィアに支えられていた身体を一人で起こし、立ち上がる。 ? ﹁うん、間違いない⋮⋮あの頃のイッセーくんだよ﹂ ﹁イッセー⋮⋮だよな 破壊の龍帝 ※閲覧注意 75 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ イリナとゼノヴィアが恐らく今の俺を見て思ったのか、確認するかの様に呟いたの を、俺は黙って頷いて肯定する。 そういえばこうして会うのは初めてだったな⋮⋮。 イービルピース そう、これこそ戻った一番の証拠││一度完全な死を迎え、そして死の先で待ってい れる前まで自分のモノだった全ての力。 その掌の上に妙な光と一緒に出てきた忌々しいクソ悪魔の駒⋮⋮そして転生させら ﹁8つの悪魔の駒か⋮⋮ふん﹂ まれたクソみたいなモノが無くなっている事を確信する。 只の幻想ではないか⋮⋮等々を考え、取り敢えず自分の掌を見つめながら中に入れ込 本当に戻ったのか。 ﹁⋮⋮﹂ 76 た師により駒を取り除かれた事により、俺は転生悪魔の呪縛から解き放たれ、そして力 の全てを取り戻した。 ふふ、くくく⋮⋮。 ﹁やはり⋮⋮﹃自分﹄である事は気分が良いもんだな﹂ 自分自身を無限に進化させ続ける異常。 師から教えられたお伽話により作り上げた技術の数々。 そして││ ドラゴン ﹁久し振りだな││いや、待たせたなドライグ﹂ 異常と同じく俺の中に宿りし相棒の力。 その全てをひっくるめて﹃俺﹄として復活できた事がこんなにも気持ちの良いものな のか。 ﹃遅すぎだイッセー 破壊の龍帝 ※閲覧注意 77 あんな餓鬼共に嘗められやがって⋮⋮﹄ これこそ、一度奪われてみないと分からない気持ちだ。 まあ、二度とはごめんだがな。 久しく話す相棒からの悪態じみた挨拶を受けた俺は、取り敢えずこの薄暗くてうざっ たい空間をどうにかしようと思い、適当に天井目掛けて軽く凸ピンをしてみる。 これは、本当に取り戻せたのかという確認の意味での行為であり、凸ピンをする事で 大気を銃弾の様に飛ばせるかの実験なのだが⋮⋮。 衰えは無し、力が全身にみなぎる。 てくれる。 し、煌めく星夜の風がこの辛気臭い通り越して解体でもしたくなる部屋の空気を換気し 結果は成功、天井は吹き飛び⋮⋮更に云えば上の階の天井も何枚か破壊する事に成功 ﹁わぁ⋮⋮♪﹂ ﹁天井が消し飛んだ⋮⋮﹂ ﹁やるぅ∼﹂ 78 自由を取り戻した⋮⋮後一つ﹃やること﹄さえ終わらせればそれで終わる。 ﹁さて、終わらせてくるか﹂ 報いを。清算を。地獄を。破壊を。 散々俺の力を利用してきた馬鹿共に思い知らせてやる。 ﹃一体貴様等が誰の力を勝手に利用していい気になっていたのか﹄をな⋮⋮⋮くくく。 れたが⋮⋮。 それはゼノヴィアも同じらしく、イリナに並んで自分も行くといった表情を見せてく た。 それまで復活した俺を見て何かを思っていた様子のイリナが自分も行くと言ってき うと、相棒を呼び出した時だった。 ドライグ やっと要らん粗大ゴミの処理をしようと、まずは奴等の気配が感じる校庭へと向かお ﹁イッセーくん、私も﹂ 破壊の龍帝 ※閲覧注意 79 ﹁いや、良い⋮⋮﹂ 俺は断った。 その瞬間、二人は妙にショックを受けた顔をしてたけど、それでも俺は一人でやるつ もりだった。 そう、これは単に俺の個人的な返しなだけで、二人を巻き込む訳にはいかないんだ。 恐怖と絶望。 さぁ、これより我は修羅に入る││なんてな。 を少しだけ解放しながら、旧校舎の壁をぶち壊しながら跳んだ。 俺を一度殺してくれた白髪の男⋮⋮フリードに二人を任せ、俺はその場から溢れる力 ﹁わかった、ならフリード⋮⋮この二人を暫く頼む﹂ ﹁フリード﹂ ﹁キミ、名前は⋮⋮﹂ 80 今、リアス達の心はその感情だけに支配され、ただ顔を青くしながら目の前の暴君か ﹂ ら逃げたくても逃げられないという恐怖と絶望を抱いていた。 ﹁な、なんで⋮⋮転生して力は無くなったのに⋮⋮ しかしそれでも聞いてしまう。 神 臓の一部に執着していたリアスは、押さえ込めない バケモノ ゲッゲッゲッ ﹂ すると、一誠は⋮⋮反転した色の瞳でリアスをギョロりと見据えると、歪んだ口を更 絶望と恐怖の中、何とか目の前の一誠に向かって、叫んだ。 取り憑かれた様に一誠の無 インフィニット・ヒーロー そしてどうして自分達がその力の一部を失っているのか。 自分が転生させる事によって封じた力の全てを何故今保持しているのか。 ! ! に歪めて嘲笑いながら右手に持っていたソレを見せ付ける。 ﹂ ? イービルピース イ、悪魔の駒⋮⋮ !? 一誠の手にあるは、リアスが転生させる際に使用した八つの悪魔の駒であり、それを ﹁っ !? ﹁これを見たら、間抜けなテメーでも察せるだろ 破壊の龍帝 ※閲覧注意 81 ﹂ 見たリアス以外の小猫や朱乃や祐斗の表情は﹃ありえない﹄といった困惑の表情一色に 染まった。 ﹁そ、そんな⋮⋮一度転生したら駒は宿主の中から出てこない筈なのに⋮⋮ は全部取り除かれた。 ﹂ それがどういう意味かわかるよなぁ ﹁転生悪魔じゃ⋮⋮無くなった⋮⋮ !! ﹂ ﹁はいせいかーい ﹁ギャァァァッ !?!? ﹂ 間へと戻った事になる訳で⋮⋮。 信じられない事だが、それが事実であるなら今の一誠は転生悪魔では無い⋮⋮元の人 宿主の身体から、何をしたのかは知らないが駒が全部取り除かれた。 手に持っていた駒をその場に落とし、一誠の足元に転がる悪魔の駒。 ? ? ? ﹂ ﹁それはテメー等の中での話だろ くくく、どうほざこうが俺を縛り付けてたクソ駒 ! 82 小さく呟いた木場祐斗に、ニッコリと笑った一誠が恐ろしいスピードで祐斗の前まで 立つと、極限の疲労で膝をついてた彼の後頭部を掴み、地面へと叩き付けた後、そのま ま両腕を無情に踏み潰した。 ぜ ﹂ ││という嫌すぎる音と共に木場祐斗の両肘から先があらぬ方向に曲 アハハハハ ﹁正解したクソ騎士には豪華商品⋮永遠にぶっ壊れたままの両腕をプレゼントしてやる グシャア ! !? ⋮⋮。 ス達は恐怖に支配された顔のまま、動けない身体を何とか動かして後ずさりをするが その姿はまさに全盛期の一誠そのものであり、その一端を過去に見て恐れていたリア ﹂ みつけながら破壊していく一誠。 場祐斗と、それを邪悪極まり無い歪んだ笑みを浮かべながら、背中、脚、顔面と次々踏 がり、その激痛に駒王学園の王子様と云われている美少年にあるまじき悲鳴をあげる木 ! ? ﹁ひぃっ 破壊の龍帝 ※閲覧注意 83 ﹁ほぅら、仲間がピンチだぜ慈愛のグレモリー ﹂ ﹁が⋮⋮は⋮⋮﹂ ﹁ひぃぃぃっ 助けに来てやれよ ﹂ ? ﹁ひ、ひぃ⋮⋮ こ、来ないで ﹂ ! 怖がってるの ? ? その恐怖故に仲間が大事だどうとか言ってる場合じゃない精神状態へと追い込まれ ﹂ ﹁あらら おいおいおい、三人揃って今まで俺の事を散々玩具にしてくれといて何を ! も気絶により逃れられる事が出来ない。 更に恐ろしいのは、それでも木場祐斗の意識だけははっきりとしており、痛みも恐怖 全てが逆方向へと向き⋮⋮もはや人では無い状態へと仕上がっている。 顔立ち整ったその顔は、鼻はねじまがり、歯はへし折れ、手足はまるでソフビの様に 前に投げつけながらゆっくりと近づいてくる。 一誠はもはや見る影もなくなってしまった木場祐斗の身を後ずさりしていた三人の !!! ? 84 たリアス達は、助けを求める木場祐斗からも逃げようと、後ずさりを止めない。 しかし一誠がそれを許す訳もない、逃げたからと見逃す筈もない。 ﹂ ほら、だったら何時もの通り、聞き分 ほら、この前言ってたじゃねーか。 自分の精神の源を土足で踏みにじった相手に慈悲なぞある訳がない。 ﹁げげげげげ、逃げるなよ ⋮⋮⋮⋮⋮なぁ、クソ戦車ァ ﹃いくらのぼせてもお前は私のモノ﹄だってさ けの無い俺に教育しなよ ! ﹂ 車の小猫の足を掴み、その場に吊し上げた。 ニンマリ笑い、そう最後の言葉を怒鳴る様に言った一誠は、同じく恐怖で泣いてる戦 !! ? ? ? や、やめて⋮⋮ ! バケモノ しかし一誠はいくら懇願しようが、許さない。 バケモノ 何故なら鬼を思わせる変貌を遂げている一誠から一刻でも早く逃げたかったから。 小猫だが、その事に羞恥心は無かった。 駒王の制服を着ているので、足を捕まれて吊し上げにされて下着が丸見えにされてる ﹁や⋮⋮やだ 破壊の龍帝 ※閲覧注意 85 だっけ ﹂ ﹂ !!! カーボール宜しくに蹴り飛ばした。 掴んだ足を離し、重力の通りに頭から地面にへと落ちる小猫の顔面を容赦なくサッ がぁぁぁ ﹁テメーみてーなクソガキなんざ好きになる要素があるわきゃ│││ねぇぇだろぉぉぉ しかしそれでも一誠は優しくなんてなかった⋮⋮。 復唱し出した一誠に恐怖の余り失禁をしてしまった小猫。 足を持ち上げられ、目線を合わせながらニンマリと笑って以前自分が口にした言葉を 蛇に睨まれた蛙││いや、猫か。 !? ? ﹁っ⋮⋮ひ⋮⋮ ﹂ 早く私達のモノになってください。そうしたら好きになってあげられますから││ ﹁散々テメーには殴られたな。 86 ﹁がばぁっ ﹂ 痙攣している。 が、それで終わる事なぞ無かった。 ? ﹁まずは肩。 ﹂ 木場祐斗と同じように⋮⋮敢えて無事にしていた身体を丹念に破壊し始めた。 !?!? ただただ顔を真っ赤にしながら泣いている小猫を足を使って仰向けに寝かせると⋮⋮。 地面を転がる小猫の元へとゆっくり近づいた一誠は、最早戦意も逃げる力も無くして ﹁散々にテメーは殴ってくれたよな∼ ﹂ 壊し、ゴム毬の様に地面を何バウンドしながら転がり、ピクピクと死にかけの虫の様に その余りの衝撃、余りのパワー、余りの痛みのある蹴りは小猫の綺麗な顔を楽々と破 !! ﹁ゆ、ゆるし⋮⋮みぎゃぁぁぁっ 破壊の龍帝 ※閲覧注意 87 ﹂ くく、これは一番最初に転生させた事にキレた俺をお前が殴った時に折られた時の だ﹂ ﹁い、いたい⋮⋮いたい⋮⋮ きながら一言⋮⋮。 ﹂ ﹁助けたかったら、何時でもどーぞ ﹁う⋮⋮あぁ⋮⋮ ? それはもはや仲間を助けるという意思は無かった。 るかの様に震えながら、来る自分達の番にただただ恐怖しか無かった。 だがやはり羞恥心よりも恐怖と絶望が勝っており、二人はガタガタと真冬の山中に居 アスと朱乃も既に小猫と同じく恐怖の極限により失禁をしていた。 ニンマリと、最早嫌味でしか無い愛想の良さそうな笑みと共に向けられた言葉に、リ ﹁こ、小猫ちゃんが⋮⋮﹂ ! ふふふふ﹂ な顔で、既にその場で胃の中のものを吐き出していたリアスと朱乃が居る方へと振り向 容赦なく踏み壊され、激痛の悲鳴をあげる小猫にふと一誠はさぞ今思い出したかの様 ! 88 ただ助かりたいという欲だけだった。 るぜクソガキ ﹂ このクソボケ﹂ ﹁次は腕、次は鎖骨、次は肋、次は脚、踝、指、膝、肘、背骨⋮⋮はははは、まだまだあ ﹁た、た⋮⋮たすけ││﹂ ﹂ ﹁る、訳ねーだろバーカ﹂ 一誠は元来、こんな戦い方はしない。 一誠のリアス達に向ける怒りと憎悪はまさに無限に近い程に膨れ上がっていた。 だ。 自分の中の踏み込まれたくない領域に土足で踏み込まれ、そして散々利用されたの しかし今回ばかりは違った。 やり方は本来嫌う性質であった。 倒すなら全力で、倒すなら時間を掛けずに││倒すなら一撃で等々、痛め付ける等の ? ? ﹁ぐぎぃぃぃぃっ !?!? ﹁ほーら、お姉ちゃんでも呼びつけるか 破壊の龍帝 ※閲覧注意 89 ﹁あ、そうだ。生きてるからって安心しても良いけど、一つ良いことを教えてやるよ﹂ 最早ミンチよりも酷い有り様になるまで小猫を痛め付けた一誠は、それでも気絶が出 来ずにただ虫の息な小猫に飽きたかの様に蹴っ飛ばした後、次はどっちだとばかりにリ アスと朱乃へと振り向きながら、更なる絶望の言葉を送りつけようと口を開く。 ス キ ル で近づき、見下ろしながら一誠は続ける。 ? ﹂﹂ ﹁それがどういう意味なのか⋮⋮はは、間抜けなテメー等にもわかる話だよな ﹁﹁ひっ !? ﹂ 最早生きてるだけの死人と化した二人に視線を寄越しつつ、動けずに居た二人の前ま れたままだ﹂ それが例え自 然の力だろうが不自然だろうが悪魔の力だろうが何だろうが、永遠に壊 ナチュラル うが﹃二度と﹄直らない。 ﹁俺に意識して壊されたモノは、有機物だろうが無機物だろうかが、事象だろうが何だろ 90 二度と直らない。 それは小猫も祐斗もあのまま永遠にそのまま⋮⋮という宣告であった。 ﹂ だ、だから許して ﹂ そして今まさにその力を自分達が受ける番だと悟ったリアスと朱乃は⋮⋮。 ﹁わ、私が間違っていたわ ﹁ま、まだ死にたくありません ! ! ﹂ ! ただ本能の命ずるままに助かりたいと思った二人は、目の前の暴君に取り入ろうと、 それは最早プライドもへったくれも無かった。 ﹂ なるわ⋮⋮望むなら性奴隷にだって⋮⋮ ﹁もう貴方を二度と縛らない。あぁ、そうだわ⋮⋮何だったら今日からアナタの奴隷に ら媚びるような顔をし始めた。 本来の彼女達ならまずあり得ない⋮⋮命乞いをしようと一誠の脚にしがみつきなが ! ! だ、だから⋮⋮ ! ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁私もです 破壊の龍帝 ※閲覧注意 91 持て囃される容姿と身体を使ってまで助かろうと必死になってしまった。 それこそ自分自身を捨てた事に他ならない行為であり、先程から黙って上空から見て いたコカビエルは、落胆と憐れみの入り交じった表情を浮かべて小さく呟いていた。 何人かは助けられた。 確かに苦労もあったし、全員とまではいかなかったが、あの﹃計画の被験者﹄だった ﹁そうでもない。 ﹁ああ、しかし何だ⋮⋮勝手に聖剣計画の主犯にされたお前も難儀だな﹂ ない訳だが﹂ ま、そうで無くてもこれは只借りただけだし、後で﹃ガブリエル﹄に返さないといけ 振るう相手があのザマじゃな。 ﹁そうだな。 しかし、その聖剣も最早必要あるまい﹂ ﹁あぁ、よくやったバルパー ﹁コカビエル、一応聖剣を一つに纏めたが⋮⋮﹂ バラキエルの娘まで一緒になってあんな真似を⋮⋮ハァ﹂ ﹁馬鹿な小娘共だ。 92 それに、アナタのバックアップを得られてからからは、最早誰にも怯える必要が無く なったんだ。 アナタとガブリエルのお陰でな﹂ ﹁俺は何もしてない。全てはガブリエルがやったことだ﹂ ﹁ふふ⋮⋮まぁ、そういう事にしておこう﹂ 木場祐斗が聞けば驚愕する事実である会話だが、既に祐斗は再起不能となっていてそ の会話は聞こえなかった。 ﹁あの木場祐斗という少年もまた私を憎んでいたのかもしれないな⋮⋮﹂ ﹁だがあの小僧は一人で堕ちた。 一誠という小僧の力を散々利用した事でな。 気にするな││と言うのは酷だが、全ては自業自得だ﹂ 底へと落とされた。 かつての仲間の安否を知れる希望を独りでに喪うという形で⋮⋮木場祐斗は絶望の ﹁⋮⋮⋮そうだな﹂ 破壊の龍帝 ※閲覧注意 93 そして││ ﹂ ﹁ね、ねぇ⋮⋮アナタをずっと愛するわ⋮⋮だから⋮⋮ ﹂ ﹁声帯を壊される前の最後の遺言はそれかい ﹁ひぃ ? 私の何が不満││ 破壊の龍帝と呼ばれる少年によって。 バランスブレイク ﹁ど、どうして⋮⋮ ﹁禁 手 化﹂ 全ては地獄がマシに思える絶望へと。 め、目がぁァァっ !?!?!? ﹁あ、手が滑った﹂ !! ! ﹁イギャァァァァァッ ﹂ ﹂ すがり付こうとする悪魔達もまた絶望の底へと突き落とされる事となる。 !? ! 94 リアス達は、土足で踏み込んだが故に味わうのだった。 ﹂ じゃないとあの小僧⋮⋮サーゼクスの妹の片目を抉って顔面をしこたま殴りまくっ ﹁っと、取り敢えずバラキエルの娘だけは一応ある程度無事に済ませる様に頼まんとな。 あの少年の怒りは半端じゃないぞ そんな男に自然と集まる者達はフリードやバルパーだけでは無かった。 だった。 コカビエルは堕天使だが、その堕天使の組織には所属しておらず、所謂フリーな男 コカビーチームのお家にて。 オマケ 終わり 入り込むなどあってはならんのだから﹂ あの小僧にはそれだけの権利はある⋮⋮誰だろうが許可もなくその者の心へ土足で ? てる辺り、バラキエルの娘も無事じゃ済まなくなる﹂ ﹁だが許してくれるのか ? ﹁まあ、無理なら諦めるさ。 破壊の龍帝 ※閲覧注意 95 それがこの⋮⋮ただ今コカビエルのお家でせっせとお掃除している美女と美少女の コンビだった。 ﹁はい、ガブリエル様 ﹂ ﹁それにしてもコカビエルのコートは何時着ても着心地の良いものです﹂ な二人のお仕事からの帰還をご馳走を用意しながら待ってる姿はまさに嫁さんだった。 ルフェイは白夜騎士⋮⋮というかフリードにそれぞれ惹かれて居るからであり、そん ガブリエルはコカビエルに⋮⋮。 理由は簡単だ。 バーだった。 に尽くす美少女・ルフェイは、種族も所属も違うが、実質的にコカビエルチームのメン 使⋮⋮ガブリエルと、とある白夜騎士に憧れ、出奔してから騎士の相棒として日々健気 天界一の美女とされ、天使史上、その種族としての力を遥かに超越した最強の美女天 ! イさん﹂ ﹁コカビエルが今日にも帰ってくるという事なので、沢山ご馳走を作りましょう、ルフェ 96 ﹁フリード様のお召し物も抜群です⋮⋮えへへ﹂ ただ、ほんの⋮⋮ほんの少しだけだが。 ﹁はぁ⋮⋮いい加減コカビエルの方から滅茶苦茶にして貰えないかしら﹂ 終わり 具体的に、二人が留守の間に私物を失敬してハァハァしちゃう程度に。 残念なタイプだった。 ド様にちょっと乱暴にして貰いたいです﹂ ﹁フリード様も、下ネタは言うのに実行はしてはくだされませんし⋮⋮はぁ⋮⋮フリー 破壊の龍帝 ※閲覧注意 97 自由の赤龍帝 慈しみは無く、ただ壊す。 力を完全に取り戻した龍帝はその破壊行為の最中ですら無限に進化をしていく。 もはや力を取り戻した直後の彼と、今の彼の力の差は文字通り次元が違う。 ありとあらゆる力、生物、環境、事象、概念に即座に適応・吸収・学習し、それを礎 俺を制御したつもりになって に更なる進化を無限に行う事が出来るというものこそが兵藤一誠の持つ本来の異常性。 臓⋮⋮それが俺の本質。 インフィニット・ヒーロー 神 全く以ての名前負けだけど、ククッ⋮⋮分かるかい ﹁無 ﹃⋮⋮⋮⋮﹄ 思ってるがなぁ ﹂ まあ、それでも俺からすれば勝手に人の中の領域に侵入して好き勝手してくれたと 散々勝手に行使してたテメー等は、本来の数%程度しか使えてなかったんだよ。 ? くなってしまった訳だがなぁ ﹂ ﹁ま、もう二度とテメー等はその数%も使えない⋮⋮いや、まともな日常生活すら送れな ? 98 ? ゲゲゲゲ 全ての存在に勝利出来る可能性のある異常性⋮⋮それこそが兵藤一誠の無神臓の本 質だった。 ﹂ 故にその本質を勝手に利用した連中は決して許さない。 ちゃんと人の言葉で喋ろうぜクソ悪魔 ? ﹁ぐぉ⋮⋮がぃ⋮⋮が ﹂ ﹁おいおい、此処は人間界だぜ ゲ ? ! Boost Boost Boost ﹂ ﹂ アッハハハハ ! それが例え、悪魔全てを敵に回すことになろうとも⋮⋮。 Boost ﹂ ! ﹃Boost ! ﹁助かりたいのであれば﹃助かりたいと﹄言ってみな ! ぎごがごがば││ぎぃぃっ ? !? ? ! ﹁ごめん何言ってるかわっかんねーや ! !? ﹄ 命乞いをしようが何をしようが、一誠は決して許さずその者達を丹念に破壊する。 ! ﹁ぐぎ 自由の赤龍帝 99 一誠は絶対に止まらない。 ﹁しかし師匠とアンタが知り合いとは⋮⋮﹂ いた。 きた屍を前に、実に冷たい表情を浮かべながら隣に降り立つ黒髪の男相手に会話をして 中にも進化を果たした茶髪の少年が、目の前に転がる⋮⋮死んだ方がさぞ楽に思える生 異様なまでの静けさだけが残るこの場所で、力の全てを取り戻し、更にその報復の最 ⋮⋮。 夜 と い う こ と も あ る せ い か、そ れ と も あ っ と い う 間 に 嵐 が 過 ぎ 去 っ た せ い な の か 駒王学園・校庭。 ﹁アンタ達には借りがあるからな。それに、もう大体の気も済んだ﹂ まぁ、どっちにしろ済まんな兵藤一誠よ、恩に着る﹂ これくらいならまだ許容範囲内だろうな⋮⋮奴にすれば発狂物かもしれんが。 ﹁両足の破壊か⋮⋮。 100 ﹁言うほど親しくは無いぞ 知り合い以上程度だ﹂ お陰で全部取り戻す事が出来たからな﹂ ﹁アンタ達には感謝してる。 しかし一誠に罪悪感情はゼロだった。 れており、最早日常生活すら満足に送れないだろう。 願により留めたが、残りの三人に至っては持て囃されていた容姿が見る影もなく破壊さ の一人である朱乃だけは両足の骨と精神をへし折って破壊する程度に、コカビエルの懇 きた悪魔の集団を完膚なきまでに再起不能にした事で折り合いを付けた訳だが、その内 れに成功すれば今度は偶発的に発見した一誠の持つ異常性の一部を使役し、我を通して 衰弱していて完全に弱っていた所を無理矢理悪魔へと転生させる事で制御を図り、そ 木場祐斗、塔城小猫、姫島朱乃、そしてリアス・グレモリー ? ﹁ご忠告に感謝するぜ⋮⋮﹂ まあ、その実力なら何の心配も要らんとは思うがな﹂ それよりもこれから恐らくこの事実を知った悪魔の一部に狙われる事を気にしろ。 ﹁頼まれからやっただけだし、気にする必要はない。 自由の赤龍帝 101 ? 呻き声を出す屍を無視してコカビエルの忠告に頭を下げていると、自分の名前を大き ﹂ ﹂ な声で呼びながら此方に向かって走ってくる少女二人に視線を向ける ﹁イッセーくん ﹁大丈夫だったか ! ? ﹁い、いや⋮⋮別に何にもされてないっつーか、寧ろ引く程ぶちのめしたというか⋮⋮﹂ ﹁あの悪魔に変な事とかは⋮⋮﹂ ﹁怪我とかしてないよな ﹂ どうやら二人にとっては一誠がまだ心配で仕方ない様だ。 る。 一誠に駆け寄り、妙に過保護気味な様子でペタペタと怪我が無いかと身体に触れてく 少女ゼノヴィアが、転がる屍達に目もくれず、角も反転した瞳も無い只の少年に戻った 明るめの茶髪をツインテールに縛る少女イリナと、青髪に緑色のメッシュを入れてる !? 102 どうも二人はまだ一誠が力を取り戻す前の、顔を倍に張らして腕もへし折られた封印 一誠の印象が強過ぎたのか、揃って困惑する一誠の身体をペタペタと触りまくりながら 心配している表情だ。 ﹂ ﹁ったく、そのお二人に大丈夫だって言ってるのにアンタの心配ばっかりしてたんだぜ リと頭を下げながら改めて今回世話になった事のお礼をする。 事を伝えてきたので、一誠はまだペタペタと触ってくる二人から距離を離しつつ、ペコ そんな困惑する一誠に後からゆっくりと歩いてきたフリードが呆れた様子で、二人の ? 情だ。 一つに融合させたバルパーにも頭を下げる一誠に、受けた三人は微妙にむず痒そうな表 感謝してもしきれないとフリードとコカビエル⋮⋮そして然り気無く七本の聖剣を 今回の事が無ければ、自分は力を取り戻せなかった。 ﹁キミにも世話になった。本当にありがとう﹂ 自由の赤龍帝 103 ﹁よせよ、別に偶々そんな気になったってだけだし﹂ ﹁まあ、あの女に借りを作るつもりなだけだったしな﹂ ﹁私は⋮⋮只の手伝いで何もしてないし﹂ 直接お礼を言われることにあんまり慣れてない三人組は口々にそう言いながら微妙 に視線を逸らしつつ、これ以上言われるのもアレだったので、無理矢理話題を逸らそう とコカビエルが口を開く。 ﹁どうせだし、ついでに滅しちまうか ﹂ の屋上から障壁を張っていたもう一組の悪魔団体の姿を見据えつつもどうでも良さげ か手に七本の聖剣とは違う聖剣を手にしていたフリードの好戦的な台詞に、一誠は学園 話題逸らしに利用されたソーナ達をどうするのかと云うコカビエルと滅する気なの ? をしてるな﹂ 奴等も一応悪魔で、今も離れた所から││あー⋮⋮どうしたら良いか解らないって顔 ﹁そういえばセラフォルーの妹とその下僕共はどうするんだ ? 104 に口を開いた。 をされたって訳でも無いですからね。 ﹁余計な事をしゃべる前にぶちのめしても良いんすけど、ぶっちゃけあの悪魔共から何 正直、このゴミ共の後処理を押し付けてメッセンジャーにでもなって貰いたいから、 俺は別に何もしませんよ﹂ 興味の無さそうな目でソーナ達は無視すると宣言した一誠にコカビエルはそうかと 頷く。 ﹁それなら放っておくか。 あの小娘も魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹だが、別に戦いを楽しめる程度の力 も無いしな﹂ 線を切る。 今も恐怖に引き吊った顔で屋上から様子を伺ってるだろうソーナ達に向けていた視 ﹁ボスが言うなら俺っちも何もしねー﹂ 自由の赤龍帝 105 その表情はフリードと共に最早一ミリも興味が無くなったといった顔だった。 合体させて元に戻した聖剣をどうするかであった。 ﹂ ﹁む⋮⋮アナタの相棒に渡して天界に返還するのでしょう ﹁ガブリエル様にですよね ? ﹂ ? 過剰に嫌悪感を示さないのは、バルパー自身が大人で聖剣自体が原因とはあくまで考 くは無い代物とすら思っている。 寧ろバルパーからすれば聖剣自体が昔の嫌な記憶を呼び覚ますので、あんまり触れた 使って何かをするという考えは皆無であった。 そもそも今は既に七本が一つに纏まった聖剣だが、コカビエルもバルパーもこれを さないとお前達としても不安だろう ﹁うむ⋮⋮とはいえ、堕天使の俺が本当にガブリエルと知り合いなのかという証拠を示 ? ﹂ それよりもコカビエル達にとって重要なのは、フェイクで集め、そして流れで一つに ﹁それでだ、今バルパーが持ってる通り、聖剣が元の状態に戻った訳だが⋮⋮﹂ 106 えて無いからだ。 なのでさっさとこの聖剣を教会側に返してしまうつもりなのだが、問題はその返還の 方法だった。 コカビエルとバルパーとフリード的には、任務で派遣された二人に渡して、その二人 が教会に返還すればそれで良いのではとは思うのだが、イリナとゼノヴィアはあの日コ カビエル││と、びっくりな事にそのコカビエルと当たり前の様に一緒に居た天使のガ ブリエルから聞かされたコカビエル自身の人格を信用し、彼から元々は天使側の所有物 である聖剣をガブリエルに渡すと思っていた。 ﹁それはそうでしょうが、私とイリナとしてはアナタを信じるつもりです﹂ 地味にリアス達の呻き声が聞こえるが、全員が全員してガン無視であり、全てを一体 化させた聖剣をコカビエル経由でガブリエルに返還するという方向で話は纏まった。 必ずガブリエルに渡すことを誓おう﹂ ﹁なら確かにこの聖剣は預かった。 自由の赤龍帝 107 二人に言われてしまえば断るという訳にもいかず、コカビエルはバルパーに封印の術 式をする様に命じてから誠実にそう宣言する。 基本普通に極悪人みたいな容貌だが、その実は普通に誠実な男なコカビエル。 欠点があるとすれば、戦闘狂である事ぐらいだが、生憎その戦闘狂に救われた者達が 今コカビエルと共に居るので余り咎められる事も無かった。 正直⋮⋮俺はバルパーとい それに対してバルパーは半分諦めてる様な、少しだけ遠くを見るような目で苦笑いを パー・ガリレイが聖剣計画の狂気の主犯格と思っていた事を暴露する コ カ ビ エ ル の 問 い に 対 し、ゼ ノ ヴ ィ ア が 少 し ば か り 目 を 伏 せ な が ら こ れ ま で バ ル ﹁⋮⋮。皆殺しの神父等と呼ばれてるからな私は﹂ ﹁教会の人間はバルパー・ガリレイを聖剣計画の主犯格として扱っています﹂ が、問題はその後であり、イリナとゼノヴィアの今後の身の振り方についてだった。 う例を見てるせいか、悪魔祓いやら教会の人間達が微妙に信用ならんのだが﹂ ﹁聖剣はこれで良いとして、お前達はどうするつもりだ ? 108 しており、ゼノヴィアもイリナも数日前までバルパーを狂人と思っていた事に罰が悪そ うな表情だった。 ﹁恐らく、知りすぎた私達は戻っても秘密裏に処理される可能性が高いと思います⋮⋮﹂ それ故に、もし教会に戻った場合口封じで処理される可能性が実に高くなっており、 どうであれ神を信仰してきた二人はショックから抜け出せない表情で自分達のこれか ﹂ らについての予想を話す。 ﹁え らずだ﹂ ? 経験者は語るとばかりにバルパーが複雑そうな顔でイリナとゼノヴィアの今後につ ﹂ もしかしたらキミ達の中に残る因子を抜き取られ、始末される可能性も無きにしもあ な。 聖剣計画自体はあのおぞましい人体実験を経験しても尚、未だに残ってるものだから ﹁まあ、そうなる可能性は高いな。 ? ﹁ちょ、ちょっと待ってくれ。教会ってのはそんなにアレな組織なのか 自由の赤龍帝 109 いてを予想する横で、一誠が驚いた表情をする。 どうも一誠の中ではまだ悪魔より教会組織の方がクリーンと思っていた様だが、それ を否定したのはフリードとコカビエルとバルパーだった。 ﹂ 一部にはそういう輩も居るんだ⋮⋮現に今話した聖剣計画にしても、ミカエルの意思 ﹁全部が全部クリーンではない。 を完全に無視したものだったからな﹂ ﹁でなければ、そこでくたばってる彼が復讐なんて企てないだろ その実はかなり壮絶な人生を送っており、それを補足するかの様にバルパーが隠されて それもその筈、何せこのフリードもまた幼少期は天才と呼ばれた悪魔祓いだったが、 いった顔だった。 特にフリードの表情は格好こそ悪魔祓いのソレだが、教会側を一切信用していないと 口々に完全なクリーンではないと語る三人組。 恐らく、知りすぎたという理由でこの二人はタダでは済まないだろう﹂ 主義の強さだけは未だに根強く残ってる。 ﹁まあ、今でこそ本来の急進派共はコカビエルとガブリエルによって駆逐されたが、秘密 ? 110 いた真実の一つをイリナとゼノヴィアに語る。 ﹂ ﹂ ﹁このフリードもまたあの計画の被験者だったからな﹂ ﹁え ﹁あ、アナタも ズ﹄の使い手だったからだ﹂ 理由はキミ達も見たかもしれないが⋮⋮フリードは生まれながらにして﹃ジョワユー があった。 とはいえ、元々フリードは聖剣に対する適合数が他の子供達と比べて次元の違うもの だから七本に別れた聖剣をキミ達と同じように扱えたんだ。 ﹁フリードはその更に前の完全なプロット段階の、たった一人の被験者だ。 ﹁だが計画の雛型は確かそこの木場祐斗達では⋮⋮﹂ バルパーの暴露にフリードが目を逸らし、イリナとゼノヴィアは驚愕する。 !? !? ﹁っ⋮⋮なるほど、だからあの時キミの持っていた剣に何かを感じたのか﹂ ﹁そーそー、これの事だ﹂ 自由の赤龍帝 111 ﹁そーゆーこったデュランダル使いさん﹂ 明かされる真実の一端に尚驚くイリナとゼノヴィア。 木場祐斗達雛型の被験者よりも更に前、プロット型のただ一人の被験者だったフリー ド・セルゼン。 その身には様々な初期実験が施されていて、その実験を基に雛型生まれ、そして自分 達の世代へと徐々に安全面を考慮された計画へとスライドされいった。 その事実は所謂計画の完成形と呼ばれる二人にしてみれば更なるショックを受ける に充分であり、器用にジョワユーズの剣を回してるフリードに対して何とも言えない気 分を抱いてしまうが、フリード自身はヘラヘラ笑って気にする事でもねーよと言う。 れたんだ。 それに今の人生は楽しいな⋮⋮だから気にすんなって後輩ちゃん ? そんな一誠は途端に心配になってイリナとゼノヴィアを見つめる。 ケケケケケと口を歪めて嗤うフリードに二人は言葉が出ずに押し黙ってしまう。 ﹂ ﹁まあ、クソみてーに身体を弄くられたのは否定しねーが、お陰で今までこうして生き残 112 この二人にも一誠は大きな借りがあるので、これまでの話を聞いてて楽観視は出来な かった。 故にそんな話を聞いた以上⋮⋮じゃあ頑張れよと送り出す訳にもいかなくなったと ﹂ 一誠は二人に訊ねた。 ﹁二人は戻るのか これで二人がそれでも戻るというのであれば止める事は出来ない。 そして取り敢えず聞いてみた、二人の意思を。 ? 化け物⋮⋮化け物がそこには居る。 そんな一誠の問い掛けに二人は││││ ﹁﹁⋮⋮﹂﹂ 自由の赤龍帝 113 赤龍帝を手中に納めたと機嫌良く言っていた幼馴染みの黒い部分に対して忠告出来 ﹂ ずに居たソーナは、来てしまった悪夢に足がすくんで動けなかった。 ﹁あ、アイツ⋮⋮な、仲間を⋮⋮こんなに⋮⋮ 寄ったソーナ達は、その成れの果てとなった残骸を見て全員が吐いた。 ﹂ 私は魔王様達にこの事を報告します ! ﹁むぐぉ⋮がぉ ﹄ ﹁リ、リアス達を直ぐに治療しなさい ﹃は、はい ! ! だが、その途中で恐ろしい現実⋮⋮。 し、駆け付けた悪魔の医療班達と共に冥界へと渡った。 真っ青な顔をしながら指示を飛ばしたソーナは、直ぐ様魔王達に今晩起きた全てを話 に口らしき箇所からくぐもった声を発する、見る影も失った幼馴染みとその仲間達に 全身を隈無く破壊され、それでも意識だけが残ってるのか、声も言葉も満足に発せず ! ﹂ 人の形をした悪鬼達が消えた後、取り残された幼馴染みとその仲間達へと直ぐ様駆け ! 114 ﹁ち、治療が出来ない な、何故ですか ﹂ ! ﹂ まるで治療を拒絶するかのように⋮⋮ ﹁そ、そんなバカな事が⋮⋮ ⋮⋮ ﹂ し、しかしその全てを以てしてもリアス様達の受けた傷は全く回復がしないのです ﹁治療の魔法も、秘薬も、フェニックスの涙も⋮⋮ありとあらゆる手を尽くしました。 た。 そう顔を真っ青にした医療班の悪魔に詰め寄るソーナに、その悪魔は震えた声で言っ リアス達の治療が全く出来ない。 !? ! たのか⋮⋮ ! ! 眠らせる魔法を駆使しても、麻酔薬を使用してもリアス達は眠らず、それどころか痛 絶望に満ちた表情の悪魔にソーナもまた絶望の底へと叩き落とされる。 ﹂ ﹁わ、私達ですらこんな事は初めてです 一体どんな力を受けたからこんな事になっ ! ! ﹁⋮⋮⋮﹂ 自由の赤龍帝 115 みに獣の唸り声の様な絶叫をあげる。 これのせいで外科的な施術すら施せず、かと云って冥界に伝わる秘薬をも治療できな い。 壊れた所は壊れたままで⋮⋮受けた傷は何をしてと直らない。 それは恐らくリアス達を此処まで痛め付けた赤龍帝の兵士の影響である事は間違い なかった。 なかったが⋮⋮ソーナはあの悪鬼の様な男に挑み、リアス達の治療方を聞く勇気が既 に失せていた。 理由は簡単だ⋮⋮余りにも彼の戦い方が残酷で⋮⋮余りにも怖かったからだ。 その現実がソーナの心をへし折るに充分であり⋮⋮。 る。 幼馴染みでありライバルでもあったリアス達が永遠に壊れたまま永遠に苦しみ続け 永遠にこのまま⋮⋮。 ﹁⋮⋮⋮﹂ ﹁到着すればもっと色々な手段を試せますが⋮⋮恐らくは⋮⋮﹂ 116 ﹁も、もし彼が悪魔に恨みが強かったら⋮⋮み、皆殺される⋮⋮﹂ 只の赤龍帝では無い兵藤一誠に、ソーナは更なる恐怖心を植え付けられてしまうのを 責めるのは、余りにも酷なのかもしれない。 悪魔にとっての悪夢の夜から時は流れた。 駒王学園の一般生徒達からすれば、オカルト研究部の面々は一種のアイドルの様な存 何でグレモリー先輩達が休学なんだよ ﹂ 在であり、そのアイドル達が挙って﹃休学﹄となったと知った時は学園全体が騒然となっ た。 い転校生によるものだと知らず、唯一部員の中で普通に登校してきた一誠に、ここ最近 その理由が⋮⋮転校と同時にオカルト研究部の部員となった一誠というよく解らな ! ﹁おい兵藤 ! ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 自由の赤龍帝 117 は同じような質問を毎日の様に男女問わず、嫉妬もあったせいか責めるようにする生徒 達だが、決まって一誠は何時もこう返す。 ﹁知るか、部員ではあるが親しい訳じゃ無いんでね﹂ ﹃⋮⋮⋮﹄ いっそ吐き捨てる様にそう返されてしまう生徒達。 言われてみれば確かに一誠はオカルト研究部の面々を怨めしそうに睨んでる事が多 く、その態度に対しても部員である事を妬む一部によく絡まれていた事を思い出した生 ﹂ ﹂ 徒の大半はそれで諦めてしまうが、特にファンだって方の生徒は妬みもあってか、それ でも納得せず一誠を問い質そうとする。 ﹁またイッセーくんにそんな質問してるの が、それに対して何時も間に入る二人組が居た。 ﹁まったく、本人は知らんと言ってるのだからいい加減納得したらどうだ ? それが、オカルト研究部員の謎の休学から数日後に入れ替わる様にして転入してきた ? 118 二人の美少女⋮⋮紫藤イリナとゼノヴィア・ルイゼンバーンであり、この二人の美少女 が一誠を庇い、そしてその一誠がオカルト研究部員達にすら一切見せたこと無い、優し しかもその げな態度を見せるものだから、彼女いない歴=年齢の男子生徒の多くは、更に一誠に対 して妬みを強くしていた。 ﹁そもそもイッセーはもう例のオカルト研究部とやらを退部したんだぞ ﹂ 部員達との交流はほぼ無かったと主張してるんだ。 問い質しても答えなんて求められないだろう ? その部員だったイッセーくんが知らないと言っても納得出来ないって思う皆の気 ﹁そうよ、まあ、聞いてみればかなりそのオカルト研究部の人達が人気者だったらしいし ? 教室の外へと連れ出すその背中を怨めしそうに睨む生徒達。 今日も過激ファンからの無意味な尋問の間に入り、そのまま無言の一誠の手を取って 持ちも解らないでもないけどね﹂ ? ﹁こ、こんな美少女二人とも知り合いとか⋮⋮マジで死ねよ兵藤﹂ ﹁う⋮⋮﹂ 自由の赤龍帝 119 美少女二人が転入してきたとテンションが上がったかと思えば、よりにもよって一誠 と知り合いでしかも妙に距離感が短いときた。 この時点で妬むネタとしては充分すぎる程であり、今もまた二人に手を引かれてさっ さと教室から出ていった一誠の無表情な態度に嫉妬の念を向ける生徒達は、ますます一 誠が気に食わないと思うのだが、一誠本人は一切気にしてなかった。 何せ一誠からすれば、オカルト研究部⋮⋮いや空中分解待ったなしの部活の面子共の 嘘だった関係より、同類として再会した昔馴染みとその相棒の友人との時間の方がよっ ぽど有意義で本物を感じるのだから。 意したご飯を食べながらうんざりした様子で駄弁っていた。 教室を出て、使われてない空き教室へ入った一誠、ゼノヴィア、イリナの三人は、用 ﹁しかしまあ⋮⋮見た目だけしか見られてなかったと思うと滑稽に思えるわ﹂ シだろ⋮⋮本人達にとっても﹂ ﹁まぁ、原型も留めない程のボロクズになってて二度と復学もしないと言われるよりマ ﹁予想はしてたけど、いい加減うざったくなってきたぜ﹂ 120 結局あの夜二人が出した答えは⋮⋮一度教会に戻って任務達成の報告をして様子を 見る││という選択だったのだが、程なくしてバルパーが予想した通りに﹃知りすぎた﹄ と言われて追放された。 その際、ゼノヴィアは隠していたデュランダルの適合パターンのサンプル採取として モルモットにされそうになったのだが、ゼノヴィアが捕まる訳もなく、同じく家族から 化け物扱いされていて追い出されていたイリナと一緒に教会から脱走⋮⋮そのままガ ブリエルとコカビエルの手引きにより、一誠の待つ駒王町へと戻って年相応の学生生活 を営む事となった。 ちなみに二人の家は、親に捨てられて独り暮らしの一誠宅に転がりこんでたりする が、別にだからと云って何がある訳でも無いとだけ言っておく。 ﹁もう一組の悪魔は生徒会として残ってるが、まあ、何もしては来ないだろ。 聞けば偉い悪魔から﹃関わるな﹄とか言われたらしいし﹂ に悪魔からの干渉をほぼ防いでいる状況は、自由を取り戻したのと相まって久々に充実 コカビエルとガブリエルという堕天使と天使側からのバックアップにより、以前以上 ﹁それで絡んできたとしても、どうとでもなるしな﹂ 自由の赤龍帝 121 ス キ ル ホ ル ダー した日々を一誠に与えており、また、自分と同じ能力保持者であるイリナとゼノヴィア との刺激のし合いが更なる進化を一誠に与えていた。 ﹁今日のご飯だけど、誰が作る 流石にずっとイッセーくんばっかりってのも申し訳 122 胃の方もある意味耐性的な意味で進化していたりと⋮⋮今の一誠は実に充実してい ﹁﹁むぅ⋮⋮﹂﹂ ﹁只の目玉焼きを炭の塊に錬金するイリナも相当だと俺は思うが﹂ ﹁それはゼノヴィアじゃない。私はただお砂糖とお塩を間違えただけで⋮⋮﹂ たんだ﹂ ⋮⋮まさか米を磨ぐのに洗剤をぶちこむなんてベタな真似をされるとは思わなかっ ﹁それは聞いたけど⋮⋮取り敢えずまともになるまでは俺がやる。 が⋮⋮﹂ ﹁む⋮⋮一応サバイバル訓練みたいな真似事をしてて料理が不得意って訳じゃないんだ あんまり言いたくないけど、二人して料理が壊滅的というか⋮⋮﹂ ﹁いや良い。 無いし、そろそろ私かゼノヴィアが││﹂ ? た。 料理下手な二人はちょっと不満そうだったが。 ﹁誰かの嫁さんになるまでにはその下手くそさを直した方が良いと思うぜ には何とかするね ﹂ いや何で俺││﹂ ﹂ イリナと同じく飯ならそ ﹁あ、うん分かった。イッセーくんのお嫁さんになるままで二年ちょいだから、それまで ? いやだから、俺じゃなくてこの世界の男の誰かの嫁さんになった場合の││﹂ ﹁﹁じゃあお嫁さんにしてください﹂﹂ ﹂ ? ﹁は れまでに上手くなるようにするから﹂ ﹁嫁か⋮⋮ふむ、ついでに私の事も引き取ってくれるよな ﹁え ? 紫藤イリナ う。 これから先、助け合いながら生きていく事を思えば苦でも何でも無かったのだとい ? ? ? ﹁⋮⋮⋮。あっれ、俺達そこまで仲良かったか 自由の赤龍帝 123 124 元・悪魔祓い ハンドレッドブレジャー 現在無所属 能力・ 快 楽 手 義 者 ゼノヴィア︵名乗る上ではゼノヴィア・ルイゼンバーン︶ 元・悪魔祓い オーバークロッカー 現在無所属 能力・ 時 由 時 在 デュランダル適合者 兵藤一誠 元・グレモリー眷属兵士 現在無所属︵種族も人間に回帰︶ インフィニットヒーロー 能力・赤龍帝の籠手 無 神 臓 破壊のスタイル 普通に誤解するし﹂ 備考⋮⋮能力保持者同士による共鳴により自然発足されたチームであり、気色悪いレ ベルの仲の良さで基本的に一誠が妬まれてる。 例・基本ずっと三人一緒に行動してる 基本普通にボディタッチが多い。 基本気付くと何かハグしてたりする。 ﹁というか、冗談でそういう事は言わん方が良いと思うぜ 冗談なんかじゃないもん⋮⋮﹂ ﹁今の台詞は完全に傷ついたよイッセーくん。 ? ﹂ に無かった何かを目覚めさせた様な気がしてな。因みにイリナと同じく冗談では無い ﹁あー⋮⋮私はどうもお前が放って置けないというか⋮⋮お前ってなんかこう、私の中 ぞ ? オマケ・帰還 終わり ﹁⋮⋮⋮あー⋮⋮そう﹂ 自由の赤龍帝 125 フリード、バルパー、コカビエルの三人はやるべき事を終えて帰還した。 外敵から守る為に徹底的に施した防護の術式で覆われた大きめの家には、現在三人の 他にもバルパーが必死になって救い出した聖剣計画の雛型にされた子供達と、偶々フ リードが行き倒れになっていたのを拾ったルフェイという美少女、そしてコカビエルと 切磋琢磨してきた美女天使・ガブリエルがそこには居る。 ﹂ ﹁⋮⋮。まだ言ってるのかお前⋮⋮というか、それ俺の服だろ。何でお前が着てるんだ 妙に納得できませんね﹂ それにしても⋮⋮その子供の為とはいえ、あの女性の言うことをホイホイ聞くのは微 ﹁ええ、確かに受け取ったわ。 あと騒動に巻き込んですまんかったと⋮⋮﹂ いてくれ。 ﹁安心院なじみの依頼は完了だ。あ、これ聖剣だからお前からミカエルにでも返してお 126 ﹁⋮⋮⋮。察してくださいよ⋮⋮ばか﹂ ? ﹂ ふーん ﹂ あれやっぱスゲーわ﹂ ? ﹂ つーか、微妙に怒ってねーかルフェイたん ? ﹁俺達の後輩がボスと同類の力を持っててよ ? その⋮⋮僕達の仲間は⋮⋮ ﹂ ? ﹂ ? ﹁ふーん、女の子でしたっけ ﹁え、何そのリアクション ? ﹁いーえ別に⋮⋮ふーんだ﹂ ﹁ ? ﹁バルパーお爺様、こっちにお花を植えてみたよ ? ﹁お爺様 ! ﹁お、パンジーか⋮⋮ふむ、中々センスがあるじゃないか﹂ ! ? 距離感の近すぎる三人組。 その2 コカビエル・チームの平穏はこれにて戻った。 種族の隔たりも無く、ただ平和に過ごすは理想の場所。 それはまさに平和だった。 ﹁⋮⋮⋮⋮。すまん、彼は悪魔に染まりすぎて助けられなかった。すまん⋮⋮﹂ 自由の赤龍帝 127 同類故のシンパシーなのか、イリナとゼノヴィアとイッセーの三人の距離感は十代集 まる高校でも異様だった。 と、い う 訳 で 俺 は 押 し 入 れ で 寝 る か ら 二 人 は 相 談 し て 布 団 か ベ ッ ド で 寝 れ ば 良 い ﹁ワンルームは狭すぎだな。そろそろ適当な広さの部屋に引っ越すべきだぜ。 ﹂ ⋮⋮⋮⋮ってこの前ずっと言ってるのに、どうして二人揃って押し入れに来るんだよ 意味ねーじゃん ﹁んが⋮⋮ ﹂ が朝になり目を覚ますと⋮⋮。 じゃあジャンケンで寝る場所を決めようというルールに乗っ取り、ベッドで寝た一誠 ? ゼノヴィアもわざわざ一誠の入る押し入れに入り込んできて密着するわ。 例えば部屋を二人に提供し、家主なのに押し入れで寝るつもりだったのに、イリナも !? ! 128 ﹁どぅわ ﹂ ﹂ な、生おっぱい ﹁ん⋮⋮なんだ、朝か⋮⋮ !? けど ﹂ 俺がここまでサービスして貰う程、イリナとゼノヴィアに好かれる覚えが無いんだ ﹁ちょっと待て、決して嫌な訳じゃなく寧ろうほほーな嬉しさがあるが、おかしくねーか 人の胸に挟まれてビックリドッキリなイベントが起きたり⋮⋮。 別々に寝てた筈なのに、いつの間にか自分の真横で⋮⋮しかもほぼ全裸で寝ている二 ﹁おはよーいっせーくん⋮⋮﹂ ? !? 私、昔からイッセーくんのお嫁さんになりたいって思ってたしー⋮⋮﹂ ? ﹂ ? 力を取り戻し、同類故に惹かれ合っている三人はほぼ事実婚状態に近い生活パターン ﹂ 事は好意を抱いてるつもりだが ﹃イッセーはイリナだけじゃ無く私も居ないとダメだ﹄と思ってな⋮⋮。それに、お前の ﹁私 は ⋮⋮ 何 だ ろ う な ⋮⋮ 力 を 奪 わ れ て た お 前 と、取 り 戻 し た お 前 を 両 方 見 た 結 果、 ﹁えー ? !? ? ﹁え、えぇ⋮⋮ 自由の赤龍帝 129 を送っていた。 ﹁そら、早く風呂にでも入ろう。私が洗ってやるから﹂ ﹁⋮⋮。ねぇイリナ、ゼノヴィアって俺を餓鬼扱いしてないか ﹂ ? ﹂ ﹁同盟⋮⋮まあ、アザゼル達とはしても良いですが、ちょっと悪魔達とは⋮⋮﹂ 天使と堕天使との会合で、こんな事を言われたからだ。 悪魔達は困った。 終わり ﹁そら確かにそうかもだけど⋮⋮何かなぁ⋮⋮﹂ 良いじゃん、ゼノヴィアも胸大きいよ ﹁何かイッセーくんを見てると﹃変な保護欲が沸いてくる﹄んだってさ。 ? 130 ﹁無理矢理悪魔に転生させて力を奪って、報復されたのがお前の妹って時点で地雷の気 配が半端無いんだよ。 コカビエルとガブリエルのお陰でミカエル達とはすんなり同盟は結べるが⋮⋮﹂ ﹁くっ﹂ クソ悪魔を直す方法 ﹂ ミカエルとアザゼル両方から同盟を拒否られ。 ﹁は ? ﹂ ? 少年に訪ねれば⋮⋮。 ? 少 年 は 自 分 達 悪 魔 を 嫌 悪 す る よ う な 態 度 で 教 え る つ も り は 無 い と 言 っ て ア ッ サ リ ﹂ それから屍のまま強制的に生かされているリアス達の治療法を聞き出そうと、元凶の 法を教えてくれないか ﹁そうだ、キミに妹がした無礼は我々一同誠心誠意謝罪する。だから、せめて妹を直す方 ? ﹁死んで火葬でもしてやれば治ると思うけど 自由の赤龍帝 131 去っていき⋮⋮。 ﹁へぇ、主に害を為したからはぐれ悪魔ねぇ 面白いな、俺悪魔じゃねーんだけど ﹂ ? てしまったり。 ﹁人間ごときが、ねぇ ? ゲゲゲゲゲゲ ﹄ ﹂ !!!! ﹁いい加減貴様等には飽きたな。 新しさの欠片も無いし、そろそろ終わってしまえや⋮⋮ 笑わせるな !!! ﹃悪魔如きが俺とイッセーを殺れると思ってるのか ? ! │我、全てを喰らい、全てを糧とし永遠の進化を遂げる無神臓と化し汝を滅ぼさん│ │無限を超越し、夢幻を破壊せん│ │我、目覚めるは覇の理を神より奪いし二天龍なり│ 別に見下したければ好きにしたら良いけど⋮⋮﹂ 人間にやられた事に我慢できなかった過激派のバカのせいで完全に敵対関係となっ ? 132 自由の赤龍帝 133 龍の逆鱗に再び触れし時、世界の勢力から一つの種族が滅びる。 エセ予告 共に歩く赤龍帝 力を取り戻したばかりの時はテンションがおかしかったので無視してたけど、そうい えばドライグが気になる事を言ってたな。 ﹃白いのが近くに居る﹄だっけ 何かそんな事をボソッと言ってた気がしたけど、白 ﹂ ちまってたから周りなんて全然気にしてなかったからな。 ﹂ 確かにあの時は力を完全に取り戻せたって喜びでテンションがおかしな方向にイッ 見てたねぇ ? ? ﹁ふーん⋮⋮ 仕掛けて来なかったのは解せんかったがな﹄ あの時の状況なら無理も無いが、外から俺達を見る白いのの気配は確かに感じたぞ。 ? ﹁本当に居たのかよドライグ 俺全く気付かなかったぜ いのってーとアレだよな⋮⋮白龍皇の事で間違いないよな。 ? ﹃それはお前が調子に乗ってたからだ。 ? 134 嘗ては殺し合いをしていた相手なら間違いないんだろう。 ﹄ 今回はあの女のアシストがあったから良かったものの、無かったら今もまだあの餓鬼 ﹃そんな事より、二度とあんな不様な理由で力を奪い取られる事が無いようにしろよな。 共に良い様に使われてるんだぞ 今は奴等曰く﹃何も出来ない﹄らしいが、それも何時までかは分からん﹄ 理由も黒髪の方の悪魔の餓鬼経由で知られている筈だ。 次の日に消えていたということは確実に悪魔共に回収され、どうしてそうなったかの ﹃それに、あれだけ派手に生かした状態で餓鬼共を破壊したんだ。 ﹁解ってるよ。俺も二度とゴメンだぜ﹂ ? か、そこまでする価値があるとは思えない。 向こうから仕掛けてくるならまだしも、自分から探して仕掛ける事はしない⋮⋮つー な興味は無い。 まあ、ドライグは多分戦いたいんだろうが、俺は正直な所その白龍皇ってのにはそん その為にこうして鍛えてんじゃねーか﹂ ﹁それも含めて承知してるぜドライグ。 共に歩く赤龍帝 135 それよりも今回のクソ事案を反省して、今度は二度と奴等⋮⋮それかその他共に封印 されるなんて間抜けな沼に嵌まるなんて事が無いようにもっと強くならなきゃな。 俺の目標はあくまで﹃誰よりも生き続ける﹄事なのだから。 ! ﹁イッセーくーん ﹂ そうなれば誰よりも長生き出きるんだからな。 だったらその通り、最低最悪にでも何でもなってやるさ。 ドライグ曰く﹃歴代最強最悪の赤龍帝﹄なんてお墨付きまで餓鬼の頃に貰ってんだ。 例えこの星││いや宇宙全てが敵になったとしてもぶちのめせる程の力を。 いくら死に掛けたとしても、誰も干渉できない領域に⋮⋮。 更なる進化を。 ﹁へーへー﹂ ﹃戒めとして諦めるんだな﹄ 力が奪われてた状態で受けた傷だから仕方ねーが⋮⋮﹂ ﹁にしても、クソ共にやられた傷は消えねぇな。 136 ﹁一人で先に行こうとするな ﹂ ! だが、一誠にとって自分のアイデンティティを勝手に使われたのと同じくらいに怒り に、虫を捻り殺すかの様にリアス達を破壊した。 それこそ他の悪魔達から逆襲されようが、恨まれようが知った事じゃないとばかり め付け、生き地獄を味会わせた。 一誠からすれば堪えられない屈辱で、だからこそ完全に復活を果たした際は執拗に痛 用し、自分達の願望を叶えていた。 自分のアイデンティティに土足で踏み込まれ、あまつさえ本質を一切理解しもせず利 こまで激怒した。 故に一誠はリアス達にほんの数%程度の微々たるものでも勝手に使われた事にあそ 異常性は一誠の持つ向上心をそのまま具体的にしたスキルと云えるだろう。 獲た知識、経験、技術の全てを吸収し、一誠自身を物凄い速度で成長させ続けるこの リアス達から取り戻した一誠の異常性の性質は進化だ。 只、イリナとゼノヴィアにはまだ言ってない事があるんだよな⋮⋮はは。 ﹁あ、悪い﹂ 共に歩く赤龍帝 137 知らねーな、殺して火葬したら苦しまねーんじゃねーの と憎悪を覚える理由が一つあった。 ﹁直し方 ﹂ ? それが││ ソーナに一つ任務を与えた。 報告により、力で押さえ付ける事がほぼ不可能と魔王達は判断し、それなら対話でと しかしあの夜に発覚した赤龍帝の力は余りにも絶大で、尚且つソーナとその下僕達の い傷の治療方法を知りたかった。 故に悪魔達は主をほぼ殺したに等しい元下僕の悪魔に対し、リアス達の受けた治らな ほぼ絶望的だ。 暫く経って確信したリアス・グレモリー達の完全再起不能という判断のせいで、復帰は 幼馴染みのソーナ・シトリーがリアス復帰まで管理を任されている訳だが、あの夜から グレモリー家が管理として機能していたこの街は現在、管理主が不在のままリアスの リアス・グレモリーが失われた駒王学園。 ﹃⋮⋮⋮﹄ ? 138 ﹁そ、そこを何卒お願いします⋮⋮ リアス達は今も、意識を失いたくても失えない状 態で、言葉も発せないんです⋮⋮ 恐怖を押し殺した任務だ。 ﹂ それも刺激せずにという⋮⋮ソーナからしたら今にも胃の中の物を吐き出しそうな 赤龍帝・兵藤一誠からリアス・グレモリー達の治療方法を聞き出す事だ。 ! ! ザマァねーな⋮⋮はははは﹂ ﹁まあ、そういう風にぶち壊してやったからな。 ﹂ ! 誠を下僕にしてからのリアス達は異常な成長を見せており、人数からして既に不利だっ 幼馴染みでありライバルでもあるリアスが強くなる予感を覚えた││というか、現に一 最初はリアス曰く﹃赤龍帝の籠手所持者の危険な人間だから下僕にした﹄と聞かされ、 に座らせながら、ソーナ達を前にヘラヘラと嘲笑うは兵藤一誠。 室内のソファにどっかり座り、警戒心バリバリの様子の元悪魔祓いの少女を二人傍ら 駒王学園・生徒会室。 ﹁っ 共に歩く赤龍帝 139 たライザー・フェニックスとの婚約破棄を掛けた非公式レーティングゲームにも完全な 勝利を手にしたのを見せられた時は、自分の眷属共々頑張ろうと心に誓った筈だった。 しかし全てはあの日の夜に壊れた。 教えてくだされば、魔王様達││いえ、以下我ら全 この兵士の少年の﹃反逆﹄によって⋮⋮。 ﹁そ、そこを何とかなりませんか います⋮⋮ですから││﹂ ? リアス達の身を肉塊と変わらない姿になるまで、嗤いながら痛め付けた鬼を。 悪鬼の如き容貌でリアス達を破壊する修羅の姿を。 しかしあの日の夜ソーナ達は確かに見た││ 今はこうして普通に見える、ヘラヘラした少年。 ﹁人まで指名手配出来るんだね悪魔って、初耳だわ﹂ ﹁確かにおかしいな、イッセーは転生悪魔では無いのに﹂ ﹁だってよ、面白いなオイ 俺はぐれ悪魔だってさ﹂ ての悪魔達はアナタをはぐれ悪魔して認定しませんし、今後一切干渉をしないことを誓 ? 140 ﹁そ、それは⋮⋮確かに今の兵藤君は転生悪魔ではありませんでしたね。私が⋮⋮間違 えました﹂ 恐ろしい⋮⋮関わりたくない⋮⋮干渉したくない。 すっかり一誠に対して怯えてしまったソーナは、魔王達から受けた任ですら、叶うな ら投げ出して逃げたかった。 しかし幼馴染みの為⋮⋮何より今のリアスはリアスでは無い何かにすら見えてしま う故。 せめてその姿を元に戻してあげたいという気持ちが残っているソーナは、眷属達と共 に怯えながらも必死に懇願した。 しかし現実は││一誠の悪魔に対する嫌悪は余りにも強大すぎた。 ﹂ そんなに苦しんでるならとっとと燃やして骨にでもしてやれよ。それこそ慈悲だろ ﹁嫌だね。 共に歩く赤龍帝 ? ﹁う⋮⋮﹂ 141 ヘラヘラとしていた表情を一変、ソーナの姉であり魔王でもあるセラフォルー・レ ヴィアタンの扱う氷の力を遥かに凌ぐ石像の様な冷たき表情で切り捨てた一誠に、ソー ナは冷や汗が止まらずに只俯いてしまった。 駄目だ⋮⋮リアスが一体何をしたかは聞き出せないし、解らないが、一誠という少年 は悪魔自体を本気で嫌悪している。 何があったからそこまでの憎悪を向けるのか⋮⋮せめて知っていれば、その事に対し て リ ア ス に 代 わ っ て 謝 罪 で も 出 来 る が ⋮⋮ と 内 心 蠢 く 恐 怖 を 押 し 殺 し な が ら 考 え る ソーナを見て察したのか、それまで無言で警戒心を露にしていた一誠の傍らに座る二人 の悪魔祓いの少女二人が口を開いた。 ﹃⋮⋮ ﹁なっ ﹂ とに虐待の真似事まですれば尚更よ﹂ ﹁挙げ句の果てには、自分の思い通りにならないからって、転生で弱体化したのを良いこ れば、許せる訳もないだろ﹂ ﹁無理矢理悪魔に転生させた挙げ句、一誠から力を奪い取って勝手に使っていたともな 142 ﹄ !? !? 話そうとしなかった一誠に代わって、無表情で暴露された話にリアスをよく知ってい ﹂ たつもりだったソーナは驚愕の表情で固まってしまった。 ﹁ぎゃ、虐待⋮⋮ですって⋮⋮ だからその力を管理させて貰うわ﹄なんてほざいて俺を転生させた。 ﹁最初は一人で修行をしていて死にかけるレベルの重症を負って弱っていた所を、 ﹃危険 れまでの事を大まかに語りだした。 すると一誠は無表情からかったるそうな表情へと変えると、リアスから受けていたこ を見つめる。 しかしそれでも信じられずに思わず、鼻を鳴らしながら目線を少し上に向けてる一誠 !? それのせいで本来の1%以下の力も引き出せない状態がずっと続いた状態で監視下 ﹂ ! に置かれた﹂ ﹁そ、そんな 共に歩く赤龍帝 143 忌 々 し そ う に す ら 見 え る 様 子 で 話 す、自 分 の 知 ら な か っ た 一 面 の リ ア ス を 知 り、 ショックを受けるソーナだが、それで終わることはなかった。 吐き捨てる様に嫌悪にまみれた顔で語られる、リアスの急激な成長の理由に先程以上 俺の持つ力の一部を無理矢理奪ってクソ共の間で使い回してたからだ﹂ ﹁ご名答。 ﹁じ、じゃあリアス達がある時から急激に強くなったのは⋮⋮﹂ じの通り婚約破棄に成功した﹂ を発見したクソ共は階級が一番低い俺の力を勝手に使い始め⋮⋮結果、アンタ等もご存 理由は恐らく、似非とは云え、主と下僕という繋がりが出来たからだと思うが、それ ﹁その時偶発的にあのクソ共は、奴隷にした俺の力の一部を行使出来る事を発見した。 ﹁⋮⋮⋮﹂ を無理矢理付き合わせた﹂ の婚約者とやらとレーティングゲームをして白黒付ける事になり、従う気がなかった俺 で、奴は﹃自分一人を愛する人しか結婚しない﹄なんて薄ら寒い台詞をほざいて、そ ﹁それから暫くしてからか⋮⋮あのクソ悪魔に婚約話が舞い込んで来た。 144 にショックを受けたソーナ。 それは傍らで聞いていたゼノヴィアとイリナも予め知っていたとはいえ、同じく嫌悪 にまみれた表情を浮かべる辺り相当なものだった。 だがこれで終わりじゃなかった。 一誠は墓場まで持っていくつもりだったが、これに加えて最も許せないもう一つの理 由があった。 ナとゼノヴィアにも話すつもりは無かったもう一つの真実を││ それは情けなさ故になのか、それまでの嫌悪から自嘲染みた顔で笑った一誠は、イリ その挙げ句の果てにだ││﹂ かせようと躍起になった。 勿論俺はクソ食らえと言ったが、奴等は聞き分けのねぇ俺を痛め付けて言うことを聞 よ。 ﹁そこからだね、奴等は俺の力を使いたがり、俺をますます縛り付けたがる様になった 共に歩く赤龍帝 145 ﹁つまらねぇ色仕掛けのつもりか、俺を無理矢理犯しやがった﹂ ﹂﹂﹂ 最も憎悪に値する理由を暴露した。 ﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮え ヴィアも声がそれしか出なかった。 ﹂ ク ッ ク ッ ク ッ ク ッ アーッハハハハハハハハハ ! 笑える話だろぉぉぉ ﹂ !!!! ﹁﹃ア ナ タ は 死 ぬ ま で 私 の モ ノ よ﹄⋮⋮⋮ ク ク ク、く く く っ あっはははははは ﹁イ、イッセー⋮⋮くん⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁そ、そんな事まで⋮⋮されてたのか⋮⋮お前は⋮⋮ !? 暴露してから急に狂ったかの様に笑い始めた一誠に、ソーナは別の意味で顔を真っ青 ! !!! ! 一瞬何を言われたのか⋮⋮今初めて聞かされた真実にソーナはおろか、イリナとゼノ ? 146 にしなながらガチガチと歯を震わせた。 あのリアスが⋮⋮慈愛のグレモリーと呼ばれるに値するリアスが⋮⋮。 力の為に尊厳を無視して目の前の少年を無理矢理││ バカな俺をよぉぉぉ ﹂ ギャハハハハハ ﹂ !!! だから落ち着け ﹂ ﹁笑えよ、間抜けに転生させられた挙げ句力を奪われて、挙げ句無理矢理ヤらされたクソ ﹁イッセーくん ﹁誰もお前を笑いやしない ! !? ﹂ ﹂ ! のか分からなくなり、過呼吸にまでなる。 ソーナとしても最も禁忌とする真似をした幼馴染みに、どちらが本当のリアスだった それほどまでにリアスは変わってしまったのか。 ! ! ﹁はぁ⋮⋮はぁ⋮⋮ひぃ ﹁か、会長 !! 判らない、分からない、解らない、ワカラナイ⋮⋮ ! 共に歩く赤龍帝 147 パニック陥り、過呼吸となったソーナに眷属達が一斉に駆け寄る中、イリナとゼノ ヴィアに左右から抱き締められながら狂った様に笑っていた一誠は立ち上がると⋮⋮。 ﹁だから俺はテメー等を嫌悪し続ける。 だから俺はテメー等を助けない。 ﹂ 肉塊のまま寿命が尽きるまで生きて死ね あのクソ共にそう伝えとけ⋮⋮クソボ ケ そう暴露した一誠と共に学園から出て帰るイリナとゼノヴィアは、落ち着いた一誠か 自分は既に汚れている。 識を手放すのだった。 それ故にリアス達は報いを受けた⋮⋮その現実にソーナは目の前を真っ暗にして意 一誠に与えた悪魔からの業は余りにも深すぎた⋮⋮。 ながらハッキリと拒絶した一誠は、生徒会室の扉を粉砕しながら退出していった。 あの日の夜見た時と同じ、鬼を思わせる角を額に伸ばし、反転した瞳で悪魔達を睨み !! ! 148 俺はクソ悪魔にやられちまった薄汚い人間だ。 らソーナ達に向けていたのとは全く真逆の、優しくも痛々しさを感じる笑みを浮かべて ながら言った。 ﹁⋮⋮。わかったろ しかし二人が一誠に対する感情は思っていた以上に大きいものだった。 経ってないのかもしれない。 確かにイリナとは久々の再会で、ゼノヴィアに至っては知り合ってそんなに時間は けど一誠は甘かった。 そう、自分を情けなく思いながら、然り気無く二人から距離を離そうとした一誠。 トモダチで居てくれるのは嬉しいけど、好きになられても良いことなんて無い。 自分はもう人には戻れたが穢れてしまった。 俺を頼むから好きにならないでくれと。 だから、全部が綺麗なイリナもゼノヴィアも俺に拘るのは止めるんだ﹂ ? ない﹂ ﹁ふざけるなよイッセー、確かに驚きはしたがそれでお前を汚れた奴だなんて思う訳が 共に歩く赤龍帝 149 ﹁そうよ、あんまり見くびらないでよ。 ﹂ 安っぽいかもしれないけど、私達はそれでもイッセーくんと一緒だよ ﹁⋮⋮ ﹂ ! ﹂ ? まあ、確かに一発ぐらいぶっ飛ばしておけば良かったとちょっと後悔してる ? 一度でも認めた相手には誠実になる。 けど、一誠くんを穢らわしいとは思わないわ﹂ ﹁何が ﹁いや⋮⋮引かないのかよ ﹁まったく、もっと早く言えば良かったのに⋮⋮﹂ 故にいくら悪魔達に無理矢理身体を犯されたとしても、そんなのは関係なかった。 で寂しがり屋である事を二人は見抜いていた。 誰よりも強くなって、誰よりも生き続ける目標を持ちながら、両親に捨てられた影響 本来の一誠の性格を一身に受けてきた二人は、一誠の本質をほぼ理解している。 ノヴィアに一誠は目を見開く。 アホらしいとばかりに距離を離した一誠に詰めより、何時もの様に接するイリナとゼ ! 150 ハ ナ それが一誠の本来の性格であり、再会と出会いからまだまだ日は浅いけど、そんな一 誠の優しさをほぼ独占状態で貰ってきた二人は最初っから離れるという思考は皆無で ﹂ あり、罰悪そうな顔をする一誠の腕を左右から挟む様にして組みながら、帰ろうと引っ 張るイリナとゼノヴィアに一誠は⋮⋮。 ﹁お前等、何でそんな優しいの⋮⋮俺泣くぞ ? ﹁ほら泣くなら帰ってから思う存分泣け﹂ ﹁何なら私達が胸を貸してあげる。だから⋮⋮ね ﹂ ちょっと泣きそうになった⋮⋮いや、既に涙声だった。 ? 一誠は初めて抱く暖かいものを心に感じながら、二人の少女と共に歩みだす。 しかしその代わりに獲たものは喪ったモノよりも遥かに大きかった。 悪魔から奪われたものは多かった。 ﹁お、おう⋮⋮﹂ 共に歩く赤龍帝 151 終わり りしたけど、変な事は決して起こらなかったとだけ言っておく。 三人で強くなるために修行しまくったり、変わらず二人の胸にサンドされながら寝た 因みにこの後メチャメチャ││ 本当の自由と共に⋮⋮。 ﹁⋮⋮⋮。イリナ、ゼノヴィア││ありがとう﹂ 152 能力保持者三人組 最後の最後に俺は運に振り向かれた。 果報は寝て待て⋮⋮とでも言っておくべきなのか、兎に角俺はやっと抜け出せた。 後は二度とあんな目に合わない様に遇わないように更に強くなり、邪魔をする者は全 部ぶちのめす。 今の俺ならそれが出来るんだ。 駒王学園の本日は父兄参観日だった。 其々生徒の親が我が子の授業風景を眺める⋮⋮のだが、兵藤一誠という少年には親は 居らず、何時もの変わらない気分のまま授業を受けた。 ﹁す、すげぇ⋮⋮ もはやフィギアじゃねーか﹂ ﹁修行風景。モデル・イリナ&ゼノヴィア﹂ ﹁えっと聞くだけ聞きますが、兵藤君が作ったこれは⋮⋮﹂ 能力保持者三人組 153 ! 英語なのに何故か紙粘土細工をさせられた際、引くレベルのクオリティーでイリナと ゼノヴィアを作り上げたりもしたがそれだけでしか無い。 寧ろ今一誠は今日のこの父兄参観日が鬱陶しいと思っており、その原因は父兄に混 じって何故か自分達を見ている﹃誰か﹄の視線だった。 ﹂ そしてその視線を向けていた者共が自分達の前に現れた時││ ﹁ライザーとのレーティングゲーム以来だね、兵藤イッセー君 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 終わった筈の悪魔との小競り合いは再び始まる。 ﹂ ? ﹁イッセー⋮⋮何となく予想は出来るが、彼方の者は誰だ ﹁魔王。 ﹂ で、あのクソ悪魔の兄だかなんだか﹂ ﹁魔王⋮⋮ 僕はサーゼクス、リアスの兄だ﹂ ﹁そう、キミ達二人には初めましてだね。 !? ? 154 能力保持者三人組 155 リアス・グレモリーの呪縛から解放され、その借りをタップリ返した際、 ﹃抑止﹄のつ もりで肉塊の状態で生かしたまま冥界にリアスを送りつけた一誠は、何時かこんな事が 起こるだろうとは思っていた。 何せリアスは悪魔の中でも影響力の大きいグレモリー家の次期当主だった悪魔であ り、そして今目の前に居る紅髪の一見優男風な男性││魔王・サーゼクス=ルシファー の妹なのだ。 その魔王の妹を完膚なきまで叩き潰したばかりか、日常生活すら送れなくなる程の甚 大すぎるダメージを元下僕だった一誠が与えた。 ともなれば、一誠の予想ではまず逃亡すらせずに堂々と駒王が学園に通い続ける自分 に遠くない内に悪魔側から接触があるだろうと思っていたし、恐らく来るのはリアスよ り遥かに力の強い誰かだろうとも踏んでいた。 何せ相手は決して癒えない傷を作れる異常者であり、現代の赤龍帝だ⋮⋮並みの悪魔 では恐らく太刀打ちすら不可能と悪魔の上層部は考え、だからこそ冥界最強の一人であ ハ ナ るサーゼクス自らが、妹の元下僕である一誠の前に現れたのだ。 この時点でソーナの﹃干渉しない﹄という言葉すら最初っから信じちゃいなかった一 誠は、サーゼクスが自ら名乗り出した瞬間に一誠を守る様に前へと出て警戒心を露にし たが、そんなイリナとゼノヴィアの二人の肩に触れ、黙って後ろに下がらせた一誠は、全 ﹂ 盛期に戻って初めて顔を合わせるサーゼクスに石像の様な表情で見据えながら口を開 く。 ﹁これはこれは⋮⋮妹の危機にお兄様が自らご出陣ですか ﹁⋮⋮⋮﹂ ﹂ ? ている。 元気な訳が無いことを知っている上で聞く一誠の言葉には思いきり皮肉が込められ ﹁そうですか。で、彼女は元気ですか ⋮⋮⋮⋮⋮。妹がキミにした事全てを﹂ を裏付ける為にリアスの記憶を読み取った。 ﹁キミがリアスに行った行動の理由は既にソーナ・シトリーさんから聞いているし、それ 言えないものだった。 全然笑ってない顔で皮肉がたっぷりと込められた言葉にサーゼクスの表情は何とも ? 156 しかし、サーゼクスはそれに対して怒るでもなく、ただただ残念そうに目を伏せなが ら口を開いた。 ﹁⋮⋮⋮⋮。ある意味ね。 手足はちぎられ、顔は原型すら分からなくなるほどに壊され、正直悪魔だとしても死 んだっておかしくないレベルの重症だというのに、何故か意識はずっとハッキリして て、今もずっと苦しんでいる﹂ 冥界にて最新の医療設備の整う場所であらゆる手を尽くして治療を受けているが、そ れでも一切あの日の夜のまま回復しないと言うサーゼクスに、石像の様だった一誠の表 情が嘲笑へと変わる。 れるぐらいなら死んだ方がマシなんじゃねーか ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 果しないまでの憎悪。 ククククク ? ﹂ ﹁悪魔の寿命は永いって聞かされてましたが⋮⋮くく、死ぬまであの肉塊のまま生かさ 能力保持者三人組 157 !! 決して癒える事無い傷。 最早一誠はリアスどころは悪魔全体に不信感と憎悪を抱いていると、嘲笑う台詞を平 然と宣う姿を目にしながらサーゼクスは悟る。 目の前の少年に妹が与えた全ては決して許されるものでは無い事も重々承知してい る⋮⋮だが、それでもサーゼクスにとってリアスは妹だった。 言葉すら発せず、生きた屍の様に呻き声しか出せないあの姿からせめて解放し、悪魔 としての罰を与えなければならない。 そう思うからこそ、サーゼクスは後からやって来た妻と両親が見ている前で一誠に土 下座しながら言った。 ﹂ ! 生き地獄からリアス達を解放する方法を。 ていたら教えてくれ 頼む⋮⋮キミならリアス達の癒えない傷を戻す方法を知ってるのか⋮⋮そして知っ で断罪したいんだ。 リアスがキミにした事を我々も許すつもりは無い、だからこそリアスを元に戻した上 ﹁虫の良い話かもしれない。調子の良い話なのもわかってる。 158 ﹂ 1 魔 王 が 元 下 僕 悪 魔 に 対 し て の 土 下 座 ⋮⋮ そ れ が ど れ 程 の も の な の か 少 な く と も サーゼクスの妻や両親は解っていた。 どう思うよイリナとゼノヴィアは けど⋮⋮。 ﹁だってさ ? 土下座なんてしてる所悪いけど、俺は土下座されても信じないタイプでね﹂ ﹁だ、そうだ。 直してやった瞬間、私達を殺すかもしれないし﹂ ﹁同じく。 ﹁悪魔側の断罪なんて信じられる訳が無いな﹂ ? しかしそれでもサーゼクスは土下座の体勢を止めずにひたすら懇願する。 する。 だった一誠もまた土下座をするサーゼクスを見下しながらハッキリと教えないと宣言 イリナとゼノヴィアは悪魔の言うことなんて信じないとキッパリ言いきり、同じ意見 ﹁⋮⋮⋮⋮お願いだ﹂ 能力保持者三人組 159 ﹂ ﹁全てが終われば、我々悪魔は今後一切キミ達に関わる事をしないと誓う。 だから⋮⋮どうかリアスを元に戻す方法を⋮⋮ ! ﹂ させたいんだ⋮⋮ だが││ ? ﹁悪魔も人間と内面は変わらないと⋮⋮﹂ ﹁なるほど⋮⋮﹂ るから﹂ を下げているのに許してくれないんだ﹄と心中此方を非難して、冷血漢呼ばわりし始め こやって無視していくと、今度この勝手に土下座してる連中は、 ﹃どうしてこんなに頭 ﹁さてとイリナにゼノヴィア、よーく見てろよ グレモリー家も総出になって一誠に対して土下座をし始める。 ﹂ ! ﹁お願いします⋮⋮ ! 娘がキミにした所業は決して許されない││だからこそ正式に我々がケジメを付け の妻でリアスと姉妹の様な深い関係だった者だ。 ﹁私からもお願いする。私はリアスの父親で、彼女は母親⋮⋮そして彼女はサーゼクス 160 一誠はそんな一家の行動を完璧に見下し、嘲笑って聞こうとすらしなかった。 許すだの何だの⋮⋮一誠には何の意味も無いのだ。 じゃあ肉塊になったまま勝手に自己満足でしておけば良 尊厳無視されて、玩具にされた経験も無い癖に偉そうに土下座なんざ噛ますなゴミ共 ﹁消え失せな。 が﹂ そう締めた一誠は、イリナとゼノヴィアを連れて地面に額を擦り付けたま 悪魔として断罪したい いだろう ? 故に教えない、友好的にもならない。 の羽がちぎれて飛べなくなろうが知ったことではなかった。 最早一誠が悪魔に対する持つ感情は﹃ウザい蠅の大群﹄としか思っておらず、その蠅 ま動かないグレモリー一家に背を向けてさっさと帰ってしまった。 ? ﹁さてと、これで奴等がどう出るか⋮⋮ククッ、しつこい様ならぶち壊してやるか﹂ 能力保持者三人組 161 一誠の憎悪はどこまでも深かった。 そして悪魔達の悲運はこれで終わりじゃなかった。 それは後日行われた天使・堕天使・悪魔のスリートップが集まる会合にて、天使代表 ミカエルと堕天使総督アザゼルが互いに切り出した話から始まった。 カオスブリケード ﹂ 話ではなかったかもしれませんけど﹂ ﹁⋮⋮ ﹁まさかのミカエルちゃんとアザゼルちゃんが握手⋮⋮ の理由でアザゼルからの切り出しに対し、かつて殺し合いまでしたいたミカエルは喜ん 無限の龍神がトップとして君臨すると噂される禍 の 団なる組織との有事に備えてと カオスブリケード !? ! 三大勢力の内の二つが同盟を結んだ。 ﹂ とはいえ、貴方の所のコカビエルとウチの所のガブリエルの件が無ければ上手く行く ﹁いえ、私も貴方に切り出そうとしていましたので、喜んで受けましょう。 ⋮⋮。まあ、昔から色々あって今更調子の良い話ではあるかもしれねーがよ﹂ 結びたいと考えてる。 ﹁禍 の 団の活動が本格的になるだろうし、俺としてはミカエル達と有事に備えて同盟を 162 で引き受けるという展開に、サーゼクスともう一人この会談に出席していた魔王・セラ フォルー=レヴィアタンは大層驚いたが⋮⋮何となく納得もした。 ﹁コカビエルのヤローが組織抜けやがったから穴埋めが全くできねーんだよ。 この前会った時なんか人間連れて一緒に行動していたしよ﹂ ﹁それは⋮⋮聖剣計画の犠牲者の生き残りですね。 天然のジョワユーズ使いと、計画の主犯の烙印を押されて冤罪のまま追放された神父 とその彼が命懸けで助けた生き残りの子供達。 ガブリエルから聞いていましたが、逆に此方としては安心です⋮⋮あの二人が居るな らまず誰からも彼等は狙われない﹂ ﹁だな⋮⋮﹂ 戦後其々史上最強の堕天使・天使との呼び声の高いあの二人のお陰で、天使と堕天使 密会。 三大勢力戦争後から暫く経った後に発覚した堕天使コカビエルと天使ガブリエルの 超絶盛大スキャンダル。 ﹁﹁⋮⋮⋮﹂﹂ 能力保持者三人組 163 は同盟が簡単に結びやすく、ミカエルもアザゼルも昔の因縁も忘れて架け橋となった二 人 の 話 題 に つ い て か な り 盛 り 上 が っ て い た が ⋮⋮ 困 っ た の は サ ー ゼ ク ス と セ ラ フ ォ ルー達悪魔だった。 何せ⋮⋮。 ﹂ ﹁一応聞くけど、どうしてだい !? も把握してる。 ﹂ ﹁サーゼクスの妹⋮⋮リアスのやったことは既にコカビエルとガブリエルを介して俺達 間の││それも赤龍帝の少年に対して何をしたのかを。 そう⋮⋮二人は当然知っているのだ、ガブリエルとコカビエルにより悪魔の一人が人 釘を刺すようなアザゼルの言葉に何故と問うサーゼクスにミカエルが答える。 ても良いですが、他の悪魔達は一切信用できません﹂ ﹁個人的にサーゼクスとセラフォルー⋮⋮それにアジュカとファルビウムはまだ信用し ? ﹁え ﹁⋮⋮⋮⋮⋮。悪いがサーゼクスにセラフォルー。お前達とは組まねーぞ﹂ 164 随分驚いたぜ 本当にお前の妹かよとすら思ったもんだ﹂ ﹂ ﹁故に我々はアナタとは同盟を結べません。恐らく不満が出ますからね﹂ 返せなかった。 若干どころかかなりを込められた皮肉な一言にサーゼクスもセラフォルーも言葉を ﹁⋮⋮⋮﹂ ﹁それは⋮⋮﹂ ねアナタの妹は を利用して奪い取り、自分と他の眷属達と共有していた││実に悪魔らしく育ちました ﹁赤龍帝の少年を無理矢理悪魔に転生させて支配下に置き、更にはその力を駒の繋がり ? ? 絶望的に無理だった。 拍子で敵対となればまず不利を強いられるからこそ、自分達もと思っていたがこれでは 天使と堕天使が組んだ時点で悪魔の勢力を大きく上回るのは明白であり、もし何かの お前達と組んであの赤龍帝を敵にはしたくねーしな﹂ ﹁俺達もだ。 能力保持者三人組 165 な、何だ ﹂ しかもそれだけに終わら無かった。 ﹁っ !? 入したのだが⋮⋮。 ﹂ ﹁か⋮⋮ぁ⋮⋮ぎぃ⋮⋮ ﹁こ、これは⋮⋮ ! ? ﹂ ﹁か、カテレア⋮⋮ちゃん⋮⋮ ﹁な、何故こんな事に⋮⋮ ﹁旧魔王の血族者じゃねーか﹂ ! ﹂ 真ん中で横たわるそれを見たトップ達は驚愕した。 進入してきた何者かは既に虫の息であり、砂煙が晴れると共に無惨な姿で会議室のど !? ﹂ 壊され、トップ達の顔付きが変わった中、壁が破壊された際に何かが会議室の中へと進 天使と堕天使が同盟を組む事で更に話は続く中、会議室の壁が巨大な爆撃音と共に破 !? 166 ﹁既に虫の息ですが⋮⋮一体何が││む ﹁って、あら ﹂ 皆様お揃いで⋮⋮ゲゲゲゲ﹂ セラフォルーは特に驚愕した。 破壊されて大穴となった壁から悠然としながら現れた更なる訪問者に、サーゼクスと ぜ﹂ ﹁オーフィスの蛇だか何だか知らないが、どれもこれも蚊みたいな攻撃ばかりで飽きた !? ││ そう⋮⋮今ボロボロで虫の息となる女性悪魔を此処まで吹っ飛ばしたのはこの少年 しかしその左腕にある赤き籠手は紛う事なき本物の龍帝の波動を放っている。 写真で見たのとは明らかに違う容貌の少年。 ? ﹁お目汚し、失礼しました﹂ 能力保持者三人組 167 ﹂ 悪魔にとっては悪夢の権化⋮⋮兵藤一誠だった。 ﹁兵藤君⋮⋮カテレアをこうしたのはキミか ﹂ カオスブリケード オイオイ、サーゼクス⋮⋮こりゃどういう事だ イラっとしてぶちのめしちゃったわ﹂ あぁ、アンタか⋮⋮そうだよ。何か禍 の 団どうたらこうたらとか言って仲間に なれとか強要してきたからさー よ ﹂ ﹁旧魔王の血族がテロ組織に入った ﹁まさか悪魔は禍の団と⋮⋮ ら私達は誓って禍の団とは関係ない !! !! ! ﹁結局同じクソ悪魔だろ⋮⋮バカらしい﹂ とばかりに否定したのはセラフォルーだが⋮⋮。 葉から察知したミカエルとアザゼルが疑う様な目でサーゼクスを見るがそれに憤慨だ 会談の話題として出たテロ組織に旧魔王の血族者が与する⋮⋮という話を一誠の言 ﹂ ﹁そんな訳無い 私達現政権とカテレア達旧政権派とで分裂してるんだもん だか ? ? ? ? ﹁は ? ? 168 ﹂ ﹂ ﹄という神器の力で倍化させると、アッサリとカテレアの首の骨をへし折り、絶 それを横目で聞きながら虫の息のカテレアの首を掴んで吊し上げにした一誠は﹃Bo ost 命させた。 ﹁か、カテレアちゃんを⋮⋮ ﹁何故殺したんだ⋮⋮もう勝負は着いていた筈だろう 言。 思いながら静観していたりする中、サーゼクスとセラフォルーに問われた一誠は只一 アザゼルとミカエルは然り気無く﹃自分達の種族が余計な真似しなくて良かった﹄と 終えたとばかりに手の汚れを叩く一誠を少しだけ睨みながら問う。 どうであれ同族を目の前で殺されていい気分では無かった二人は、パンパンと一仕事 ? ! ! 悪魔を蚊と比喩し、そして命を奪う事にまるで躊躇しないかの様にアッサリと言って ﹁蚊の駆除﹂ 能力保持者三人組 169 ﹂ のけた。 ﹁⋮⋮ に居ると﹂ ﹁同じくガブリエルから話を聞いています、シスターゼノヴィアとシスターイリナと共 たぜ﹂ ﹁コカビエルから話は聞いてる。なるほどね、うちのヴァーリが逃げ帰った理由が解っ 罪をする。 悪魔とは全く真逆の低姿勢な態度でペコペコと頭を下げながら騒がしくした事に謝 ﹁あ、すいません⋮⋮何か御忙しい場所に突撃噛ましちゃって﹂ な二人にまるで興味も無いままアザゼルとミカエルの方へと振り向くと⋮⋮。 あまりにもあんまりな言い方に思わず絶句する悪魔のトップだが、答えた一誠はそん ﹁そ、そんな⋮⋮﹂ ! 170 ﹁あ、はい⋮⋮。教会から追放されたみたいですがね﹂ ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮。その事について今度正式にお二人に謝罪をしたいと思うのですが⋮⋮宜し いでしょうか ﹁我々天使はアナタ達に余計な干渉はせず、必要なら全力でサポートをします﹂ 界で肉塊となるリアス達の事を頭の中に過らせ、顔を大きく歪めた。 ルー⋮⋮そして付き人として控えていたサーゼクスの妻であるグレイフィアは、今尚冥 この態度の差でどれだけ悪魔を嫌ってるかが窺い知れる様で、サーゼクスとセラフォ ﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂ 俺はその事に関しては正直部外者ですから⋮⋮﹂ ﹁え⋮⋮あ⋮⋮それは二人に聞かないと。 ? ﹁﹁⋮⋮﹂﹂ から﹂ ﹁いやまぁ⋮⋮恩人のコカビエルのおっさんから頼まれたら聞かない訳にもいきません に感謝している﹃この程度にしてくれて﹄とな﹂ ﹁俺達堕天使もだ。思い出させる様で悪いが、バラキエルという姫島朱乃の父親がお前 能力保持者三人組 171 更に言えばちゃっかり堕天使と天使が一誠に与する発言をして、本人も別に満更でも ない態度になってる事で最悪な状況へと悪魔は追い込まれた。 これでもし完全に一誠が何かの拍子で悪魔に牙を向けた場合、下手したらアザゼルと ミカエル達まで敵になるという事に他ならないからだ。 ダル使いですからね。 並みの相手には遅れは取りません⋮⋮という事でしょう﹂ ﹁そういう事ですね。正直友達になれた事に奇跡を感じますわ。あっはっはっはっ ! しかも堕天使と天使故に頼めばコカビエルとガブリエルという二大神超越者も出て 敵対した時点で一誠が遠慮無く自分達悪魔を絶滅させる。 ﹂ ﹁シスターイリナは聖剣適合者で体術の達人で、シスターゼノヴィアは天然のデュラン ﹁マジかよ、その二人もそんな強いのか﹂ んすけど、イリナとゼノヴィアが軽く捻って置いた感じなんで﹂ あ、それとあの⋮⋮学校の周辺で何かスタンバってたこの蚊の仲間っぽい連中が居た ﹁じゃあ俺はこの辺で。 172 くる可能性は高い。 実質悪魔は完全に抑止力に敗北した瞬間であり、悠然とカテレアの死体を二人の近く に放置して帰ろうとした一誠は最後に││ 眼鏡の悪魔。 下僕共々﹂ ソーナ・シトリーって居るじゃん ﹁あ、そうだ悪魔方。 ﹁う、嘘⋮⋮ソーナちゃんが させられたんだろう !? ! しかし一誠は﹃へっ﹄と鼻で笑う。 しかし話に矛盾を感じたサーゼクス達は指摘と共に一誠へと問う。 ならばどうしてソーナさんを⋮⋮﹂ キミの話だと今居る禍の団の構成員は他ならぬキミ達によって殲滅 だめ押しとばかりに悪魔へ爆弾を投げつけた。 ﹂ あれ⋮⋮例の組織に拉致られたぜ ﹂ ? ﹁なっ ? !? !? ﹁そんなバカな 能力保持者三人組 173 ? れたのに ﹂ ﹁それが本当なら⋮⋮どうして黙って見てたの⋮⋮ キミならソーナちゃんを助けら 思っていると⋮⋮。 めて振り向き、今更ながら﹃何だあの格好⋮⋮﹄とゴテゴテ衣装の魔王を見ながらふと 帰ろうとする一誠に向かって小さくそう声を出したセラフォルーにピタリと足を止 だけどその足を止めたのはセラフォルーだった。 ﹁なんで⋮⋮﹂ じゃあと大穴の空いた壁から外に出ようと歩き出す。 心底拉致られ現場を前にしてもどうでも良かったといった言い方で締めると、それ ないのはそちらの自由ですのでこれ以上言い様がねーな﹂ ﹁俺達が来た時と同時のタイミングで拉致られたのを見たからねー ま、信じる信じ 174 !! !? 妹大好きなシスコンと有名なセラフォルーは、感情を爆発させて一誠に向かって叫 んだ。 確かに一誠ならソーナが拉致されそうになったとしても助けられただろう。 だがその叫びはあまりにも一誠にしてみれば無意味であり、感情が爆発するセラフォ テメー等悪魔なんて﹂ ルーに対して﹃ゴミを見るような目﹄を向けると⋮⋮。 ﹂ ﹁助ける義理が全く無いだろ⋮⋮ ﹁うっ⋮⋮ ? いやそれどころか⋮⋮。 の勢いは一気に削がれた。 どこまでも悪魔を毛嫌いしているのが一発で解ってしまう一言により、セラフォルー ! さ ﹂ 言いたいことがあるなら││﹂ くくっ、でもなぁ⋮⋮ ﹁な、何 ? ? ﹁拉致ったはぐれだか何だかが脂ぎっしゅの如何にもって感じの変態だったなぁ 早 ? ? ? ﹁だから助けないし、助けたければテメー等でやれば 大事な大事な同族なんだから 能力保持者三人組 175 く助けないと後日アンタ等の所に﹃⃝⃝⃝負けしてダブルピースしたビデオテープ﹄で ﹂ も送られて来ちゃうかもね﹂ ﹁なぁっ ﹂ ! ﹁終わったかイッセー ﹂ ﹂ ﹁怪我とかしてないよね ? 大量の屍の山に戻った一誠を、作った本人達であるイリナとゼノヴィアは心配性を爆 ﹁お、おうしてないしてない⋮⋮。何でお前らは揃ってそんな心配性なんだよ⋮⋮﹂ !? 彼の悪魔に対する憎悪の深さはやはり計り知れなかった様だ。 た足取りでさっさと帰っていった。 心底見下すような表情で言うだけ言ってセラフォルーの心を折った一誠は悠然とし だけだけどな⋮⋮ククククク まぁでも、下僕を縛る為に無理矢理犯してきたクソ所業がテメー等に返ってきたって の道具なんだろーね。 ﹁くくく、まあ、悪魔のクソ雌なんて何が良いんだか知らねーが、変態からすりゃあ格好 !? 176 発させてベタベタと一誠に怪我は無いかと触って確かめて動揺させる。 恐らく今の一誠を御せるのはこの二人ぐらいであり、悪魔ではどう逆立ちしても不可 能だろう。 何を言う、腫れたら私とイリナで静めてやるさ﹂ されると色んな意味で腫れが酷くなるし⋮⋮うん﹂ ﹁あの⋮⋮そんな密着しなくても良いよ。俺怪我してねーし、それ以上おっぱいサンド ﹁腫れ ﹁そうよ、もう私もゼノヴィアも信仰してる訳じゃないもん﹂ ? 使を何としてでも取り込みたいと考えていた。 |禍の団としては組織を脱退して自由奔放にしているコカビエルという最強の堕天 コカビエルへの勧誘 オマケ 終わり。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮。下ネタなのにドン引きされないって⋮⋮﹂ 能力保持者三人組 177 だがコカビエルは何時でもこう言った。 ウロボロスドラゴン に来る⋮⋮意外としつこいし﹂ ﹁ガブリエルは天使だからか、最初から奴等に勧誘されてないらしいが、俺の所には直ぐ 以前に入るつもりも無かった。 というか、抱えてる子供達の事を考えると教育上よくないので無限の龍神と戦う云々 故に禍の団の誘いは全部断る。 になったコカビエルは、基本的に戦闘狂だったのだ。 密会し、互いに切磋琢磨した結果種族としての力を遥かに越えた次元の違う力を持つ様 戦後ひょんな事からガブリエルと知り合い、ひょんな事から周りに秘密にした状態で 世界最強の龍と殺し合いたいから嫌だと。 ク﹂ か つ て 真なる赤龍神帝 と ひ ょ ん な 事 か ら 戦 っ た が、奴 と は ま だ だ か ら な ⋮⋮ ク ク ク アポカリュウスドラゴン ﹁無限の龍神と敵対できるなら俺は喜んで貴様等の誘いを蹴らせて貰おう。 178 そんなコカビエルは、今日も丁重に禍の団からの使者を返した後、徹底的な防護魔法 を施して鉄壁の守りを持つ屋敷の居間のソファに座ると、隣に座る金髪の美しい女性に 対してちょっとうんざりした様子で愚痴っていた。 すると金髪の女性⋮⋮天使ガブリエルは、そんなコカビエルにフッと見惚れる様な微 笑を浮かべながら口を開く。 ﹁私達は最初からアナタが勧誘を受けるとは思って無いわ。だって信用してるもの﹂ 現・天界最強の女性天使ガブリエル。 周囲にバレるもっと前からコカビエルと密会し、切磋琢磨してきた結果、彼女もまた 天使という種族を遥かに超越した存在へと昇華し、コカビエルとも互角に渡り合える才 色兼備そのままの女性なのだが⋮⋮若干コカビエルに関わる事になるとぽんこつ化す るのがたまに傷だった。 が、超越者になったせいなのか、天使としてタブーな思考に陥ろうとも全く堕天する ﹂ 気配が無く、コカビエルの私物でハァハァしてしまっても天使だった。 ﹁ところでコカビエル⋮⋮私って女としてどう思います ? 能力保持者三人組 179 ﹁は 何だ唐突に⋮⋮ ? ﹂ ? 別に女としてで比べたつもりは無いぞ べられた事があったなーと思い出しましたといいますか﹂ ﹁あー⋮⋮強さの事だろ ﹁わかりました、今すぐセラフォルーを倒してきますね ﹂ まあ、セラフォルー・レヴィアタンは別に嫌いじゃないが││││﹂ ? 嫉妬深くても天使。 冗談を真に受けて暴走しても天使。 ﹁⋮⋮。えぇー⋮⋮ ﹂ 私は何時まで処女を守ってないといけないんですか ﹁じゃ、じゃあ今すぐ私を孕ませてください ﹂ ﹁お、おい冗談だ そもそもあの女と関わりが薄いんだからどうとも思ってないぞ ? !? ! !! しながらハァハァしててもガブリエルは天使だった。 ﹂ 毎晩毎晩コカビエルにちょっと乱暴にされる的なシチュエーションで│││と、妄想 ? ! ? ﹁いやその⋮⋮何と無くそう思ったと云いますか⋮⋮。昔、アナタにセラフォルーと比 180 ﹂ ﹁こいつ、俺の酒を間違ってまた飲んだな﹂ ﹁コカビエル⋮⋮コカビエルゥ⋮⋮ ! コカビエルチームは今日も平和だったとさ。 ﹁おう、はいはい⋮⋮わかったから暑苦しいぞガブリエル⋮⋮ハァ﹂ 能力保持者三人組 181 崩壊への道 もしも⋮⋮もしもリアスがその選択を間違えなければ。 もしも⋮⋮もしもリアスがきちんと筋を通して居れば。 しかも力も││﹂ もしも⋮⋮もしもリアスが下僕にした理由が違ければ。 もしも、もしも⋮⋮もしも⋮⋮。 ﹁っ⋮⋮ドライグの声が聞こえない ﹂ アンタはたしか⋮⋮﹂ ﹁目⋮⋮覚めたのね ﹁⋮⋮ ? その⋮⋮聞いてくれるかしら ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ ? ばならないの。 ﹁今アナタの身に起きている事を順番に説明するのと同時に、私はアナタに謝らなけれ !? !? 182 力の強大さだけでは無く、その中身をちゃんと知ろうと努めて対話をしたなら⋮⋮も しかしたら未来は変わっていたのかもしれない。 これは覚えてる ﹂ ﹁まずアナタは死にかけていた。 係が⋮⋮﹂ アナタが死にかけてるのを発見したから、その⋮⋮助 ⋮⋮⋮⋮そ、そうだった、の そ、その⋮⋮ごめんなさい ﹁五分 ? だが死にかけたとしても5分も寝てれば治るし、それと俺の力が消えてるのと何の関 ﹁あ、あぁ⋮⋮確か修行に熱が入りすぎてつい。 ? ? これはそんなもしもにもしもを加えたおとぎ話。 ﹂ けるつもりでその⋮⋮駒を使ってアナタを転生させてしまって⋮⋮﹂ ! !? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮は 崩壊への道 183 兵藤一誠は失った力を取り戻す為に毎日死ぬ気で鍛練をしていた。 学業以外の全てを鍛練へと費やすその姿はまさに鬼気迫るものであり、一刻でも早く ﹂ ﹄ 全てを取り戻そうと躍起になる姿は、リアスをより罪悪感を抱かせる要因だった。 ﹃Boost ﹁キャオラッッ ! ﹁終わりました﹂ た。 ちょっと無愛想な顔で何とも言えない顔のリアス達にこれまた無愛想な声でこう言っ 一誠単騎で達成させられる程であり、今日も一人ではぐれ悪魔を消し飛ばした一誠は、 大公からの指令によるはぐれ悪魔討伐の任も、既に兵士の駒を礎に悪魔へと転生した ルをこなした結果、既に上級悪魔ですら始末できるまでの力を獲た事だった。 いく成長も出来ないというのにも拘わらす、出来無いなりに地獄の様な鍛練スケジュー そしてげに恐ろしきは全ての力を赤子同然にまで封じられた一誠が、封じられて満足 !! 184 蹴り潰し、殴り千切り、叩き殺したはぐれ悪魔を最後に消し飛ばした一誠の距離を置 ﹂ いた様な言い方にリアスは気弱そうに頷く。 ﹁ご苦労様⋮⋮その、力の方は ? けどしかし、リアスは死にかけていて、寝てれば治ると知らずに自分を取り敢えず死 確かにリアスは自分に許可も無く勝手に悪魔に転生させたのかもしれない。 許せなかったのだ。 もそうだが、何よりも悪魔に転生したってだけで自分の力が落ちたという脆弱さが実に それは勿論、悪魔に転生してしまった事で全盛期の億分の一にまで落ちてしまったの 兵藤一誠は正直イラついていた。 力を引っ込め、スタスタと自分一人だけ先に帰ってしまう。 戻すには全てが足りないと告げた一誠は、左腕に纏わせた会話も出来なくなった相棒の ぶっきらぼうに自分の力が話にもならないレベルまで落ち込んでいて、まだまだ取り やしない﹂ 全力で殴ったのに、殺すまで二・三発必要でしたし、赤龍帝の籠手も禁手化すらでき ﹁話になりませんね。 崩壊への道 185 なせないと思って苦肉の策として悪魔に転生させただけで、話を聞いたり観察した結 果、彼女に打算的な内面が一切感じなかった。 だから一誠はリアスを憎む事もなく、ただただ消えたのなら取り戻せば良いと、全盛 ご飯作ったのだけど、良かったら││﹂ 期の頃よりも更に殺人的なトレーニングメニューに取り組んだ。 ﹁あの、イッセー 雇い主と労働者⋮⋮あくまで一誠の認識はその程度だった。 とは思わなかった。 しかし仲良くなれと言われたら⋮⋮元々どうでも良かった相手なので仲良くなろう 良かれと思った行動が失敗してしまった⋮⋮のは痛いほど謝られたので理解はする。 理由はある程度リアスを一誠は信用しているからだ。 だが決して一誠はリアスに恨み言の一つも吐かなかった。 の謝罪の意を込めて色々と気を使いまくってる行動も避け続けていた。 結果一誠は眷属でも完全に浮いており、周囲に壁を作って孤立しており、リアスなり ﹁あ、う、うん⋮⋮そうね。邪魔してごめんなさい﹂ ﹁修行するんで結構です﹂ ? 186 でも一誠に憎悪は無かった。 そう⋮⋮一つでも選択を間違えてなければ、もしかしたらこうなっていたのかもしれ ない。 ﹁ぐぅ⋮⋮お、がぁぁぁぁっ ﹂ ﹂ ﹂ ち、鎮静剤を投与しろ ﹁ぎぃぃぃっ ﹁っ !?!?!? ! ﹂ !! れ続ける中、そう思うようになったが⋮⋮。 葉すらまともに紡げない地獄の中、最近現実逃避の様に冥界の集中治療室に閉じ込めら 収まらない激痛と恐怖の底へと閉じ込められ続けるリアスは、失えない意識の中と言 肉体を破壊され、死んだ方が楽だった目に合わされる事も無かったのかもしれない。 ﹁リアス様の眷属様にもだ !?!? !? ﹁どんな手を尽くしてもまったく回復の兆しが見えない⋮⋮。 崩壊への道 187 いったいどうすればリアス様達を⋮⋮﹂ ﹂ ? そこには今冥界中から集められた悪魔の有権者が、今回負った自分達の痛手について ルシファード・ルシファー城大広間。 あのままだと単騎で禍の団に戦いを挑みかねない勢いだったからね⋮⋮﹂ ﹁今シトリー家にて眠らせてある。 セラフォルー殿はどうされた ﹁リアス・グレモリーに続きソーナ・シトリーまで⋮⋮。 に、魔王達も悪魔の上層部達は頭を抱えていた。 した禍の団の襲撃に伴い、ソーナ・シトリーとその下僕が拉致されたという新たな問題 にグレモリー家の管轄だった人間界の土地にて、三大勢力のトップの集まる最中に勃発 リアス・グレモリーが元下僕により再起不能となった更に後、今度はリアスの代わり 所詮、全てはリアスの中での妄想でしか無く、現実は地獄のままだった。 ﹁やはり魔王様がリアス様を裏切った者から直接聞き出すしか無いのか⋮⋮﹂ 188 どうリカバリーするかについて話し合っている真っ最中だった。 カオスブリケード 三大勢力の中で悪魔だけが同盟を結べなかった。 禍 の 団というテロ組織にソーナ・シトリーとその下僕達が拉致された。 旧魔王の血族者とその支持者の同族がそのテロ組織に加盟した。 そして⋮⋮リアス達を完全に再起不能にした、癒えない傷を生み出す赤龍帝。 尽きる事の無い頭の議題は魔王と上層部にとって頭の痛いものであり、それ故に上層 部の一部はその全ての元凶になった赤龍帝に対して其々思うものがあった。 ﹁リアス嬢が赤龍帝に対して行った所業は全て愚策だったな。 ﹂ でなければ、今頃此処まで追い詰められる事も無かった筈だ﹂ ﹁何を言うか 下僕の分際で主に牙を向ける時点で万死に値する ﹁貴様、サーゼクス様を愚弄する気か ﹂ ふん、慈愛のグレモリーというのは嘘だったようで⋮⋮サーゼクス殿 ﹂ ﹁だが彼女の行動が赤龍帝の我々に対する不信感を完全なものへとした事は事実だ。 ! ! ﹁愚弄では無い、事実を言ったまでだ。 ! ﹁⋮⋮⋮﹂ 崩壊への道 189 ? カオスブリケード 現にリアス・グレモリーは赤龍帝により癒えない傷を負わされて再起不能。 ソーナ・シトリーは禍 の 団により拉致される。 天使と堕天使との同盟は断られる。 でなければ、少なくともソーナ・シトリーはもしかしから助かったかも どれもこれも理由を辿れば彼女が赤龍帝に悪魔全体への不信感を植え付けたからで はないのか しれないのだ﹂ ? ﹁先代レヴィアタンの血族者であるカテレア・レヴィアタンを無傷で殺したとなれば、も げ句殺したという事実があったからだ。 理由はそう⋮⋮襲撃に現れた旧レヴィアタンであるカテレアを簡単に捻り潰した挙 なった。 クスから聞かされた、赤龍帝排除派の悪魔の誰もが、今すぐにでも殺しに行こうとはし とはいえ、今回の会談と禍の団の襲撃に伴い浮き彫りとなった赤龍帝の実力をサーゼ ば、あくまで主に牙を向いた赤龍帝を始末すべきだと主張する者も居る。 リアスの行動により悪魔全体が危険な状況に追い込まれていると非難する者も居れ ﹁そ、それは⋮⋮﹂ 190 はや並の実力ではない。 聞けば、リアス・グレモリーはそんな赤龍帝を無理矢理転生させた挙げ句、その力の 一部を奪って使役していたと聞くが⋮⋮これでフェニックス家の三男とのレーティン ﹂ それにその横暴さのせ グゲームの快勝の理由がわかった││││ふん、実に我等と同じ悪魔らしくて感心する な﹂ ﹁貴様先程から⋮⋮ 下僕は王の為に全てを捧げてこその下僕な筈だ いで天使と堕天使との同盟すらも断られた。 ﹁その横暴さで多くのはぐれ悪魔が生まれた事を忘れたのか ? ! ! ﹂ 分かって無いのは貴様の方だ⋮⋮天使と堕天使にはあのガブリエルとコカビエルが 居るんだぞ ﹂ !? ? ス庇護派の悪魔は言葉を詰まらせる。 のに、初老の悪魔が口にしたガブリエルとコカビエルという二大実力者の名前に、リア 旧魔王の血族を難なく絶命させる程の力を取り戻した赤龍帝だけでも厄介だという ﹁うっ 崩壊への道 191 ﹁赤龍帝を殺したければ殺してみれば良い。そう簡単にいくとは思えないが。 だが忘れるな、そうすれば既に赤龍帝と友好関係を結んだ天使と堕天使を一挙に││ ││更に云えばあの二人を相手にしなければならないことを﹂ ﹂ 療法を聞きに人間界へと向かわれました ﹁なっ ﹂ ! !! ! 父と母にも彼と接触することは厳禁と伝えてある筈だ ! !? ﹁馬鹿な ﹂ ﹁ご、ご報告します ジオティクス様とヴェネラナ様が赤龍帝の元へとリアス様の治 しかも││ 単騎でどうこう出来る事は不可能だ。 そんな二大勢力の同盟と共に赤龍帝までもが加わったともなれば⋮⋮もはや悪魔が 成立してしまった訳で。 同盟は、今回の騒動と⋮⋮何よりコカビエルとガブリエルのスキャンダルにより一気に 今までアザゼルとミカエルの意地の張り合いが元で成立してなかった二つの勢力の 初老悪魔の悠然とした口調に他の悪魔達は口を紡いでしまう。 ﹃⋮⋮⋮⋮﹄ 192 ﹁お、お二人もそれは承知していました。 しかしリアス様の為と⋮⋮﹂ 悪魔達の結束弱さもまた、この事態を招いている訳で。 娘の治療法を聞こうと単身赤龍帝の元へと乗り込んだという報告に、サーゼクス達が 焦る中、この事態を招いたのは自分達の自業自得と主張した初老の悪魔はどうしようも 無いようなモノを見るような顔で一言。 当たり前だと思っていただけに、より素晴らしく感じるぜ。 誰にも邪魔されず、誰にも指図されず、誰にも強要されない。 素晴らしいね、平和。 悪魔という種族の末路を悟っていた。 我等ももう先は長くないかもしれない﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮。また愚策か。 崩壊への道 193 クソ悪魔が﹂ オ マ エ ラ ? ﹂ ﹁ぐ⋮⋮ぅ⋮⋮ 同族に対して情が深いのか何だか知らねーが、前に見た気がする悪魔の二人組が現 身体を鍛えていた時だ。 ご飯の材料を買いに行った二人を送り出し、その間に修行を続けようと寂れた広場で を送っていた事だ。 休日で修行が身に入る時間が増えたと喜び、ゼノヴィアとイリナと一緒に修行の日々 例の日より後日。 ﹂ ! ﹁が⋮⋮ふ⋮⋮ ! テメー等はそれしか言えねぇのか⋮⋮ゴミが﹂ ﹁治せ治せ治せと二言目にはそればかり。 だからこそ⋮⋮悪魔共なんぞ必要は無い。 ﹁﹁⋮⋮﹂﹂ ﹁そうは思わないか 194 れ、開口一番にリアスを治せと言ってきた。 当然そんな事してやるつもりも無いし、教えもしないつもりで無視していた訳だが、 あんまりにもしつこいというか⋮⋮はぐれ悪魔にはしないしどうのとほざいて煩かっ その耳は飾りなのか ? たので、取り敢えず黙らせて今に至る。 ん ? ﹂ ﹁教えるつもりなんて無いと何度言えばわかるんだ あ ? スを許す 馬鹿かコイツ等は つーかあの眼鏡の方のクソ悪魔はどうしたんだ ? いい加減しつこいぜテメー等は﹂ あぁ、テメーの娘ないし妹の方が大事って訳かい。 ? ? 尊厳を踏みつけられ、無理矢理犯され、力を勝手にさも自分のものですと使う様なカ 治せ。教えてくれ。許してやってくれ⋮⋮全てくだらない戯言ばかり。 か出せない様子だ。 ない⋮⋮確かあのクソ悪魔の親だか何だを見下ろしながら俺は問うも、二匹は呻き声し 内臓を破壊し、手首を枝で切り落とし、両足の関節を逆に折り曲げて身動きすら取れ ? ﹁なあ、魔王サマよ ? 崩壊への道 195 ﹂ なあ、アンタが代わりに答えてみろよ。魔王。 ﹁ち、父上と母上を⋮⋮ ﹂ 息である事を確認すると、俺を睨みだす。 ﹁私の父を母が君に何かしたのかい 親が傷つけられてご立腹といった様子だな⋮⋮ふん、何をしたかなねぇ ? フッ⋮⋮それは常識だろクソ悪魔共。 耳元で煩い蚊が居たら黙らせる。 ﹁カスを治せ治せ治せ治せ治せ治せ治せ治せ治せと喧しかったから、黙らせただけ﹂ ? 二匹を見るや否や、同行していた銀髪の悪魔と一緒に切羽詰まった顔で駆け寄り、虫の 転移用の陣の出現と共に現れたあの愚図と同じ紅髪の悪魔は、俺の足下に転がる悪魔 ! 196 ﹁父と母がキミにしつこかったのは謝る。 だけど、何も此処までしなくても⋮⋮ ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮と、いう所業をアンタの妹は俺にしてきたぜ ﹁っ ﹂ ﹂ くく、テメーの妹にゃ散々世話になったもんだからな。これぐらい に何されてるのやら﹂ ﹁治すよりあの眼鏡の悪魔を助けるべきだろうに。あーぁ、可哀想になぁ⋮⋮今頃変態 まあ、反省なんてしないがな。 ちょっとイラッとしただけで直ぐこうしてしまう。 だから俺も⋮⋮という訳じゃないが、どうも俺は悪魔が心底嫌いらしい。 ? ! 記憶に新しい。 オカルト研究部員に加えて生徒会役員が全員休学となって騒然としたのはまだまだ の皮肉は許せや﹂ ? !? ﹁おっと怒った 崩壊への道 197 ﹂ だが俺にとってはどうでも良い事案だ⋮⋮拉致されようが、変態プレイさせられよう が、ぶち殺されようが知った事じゃない。 というかだ⋮⋮。 ﹂ ﹂ ﹁それにしても貴様等悪魔にはいい加減飽きてきたな⋮⋮げげげげげげ ﹁がはっ ﹁グレイフィア ﹂ ここまでしつこいのであれば││もう良いよな ﹁貴様っ⋮⋮ 燃焼だクソ共。 ? ゴミはゴミ箱だ。 ﹃意外な末路だったな悪魔共﹄ なぁ、そうだろドライグ ﹂ ﹁目新しさゼロ。意外性ゼロ。しつこいだけのゴミはどするべきか⋮⋮⋮⋮⋮焼却炉で !!! ? !!? !? ! 198 ﹁やるぞドライグ﹂ ﹃コイツ相手にはちとオーバーキルな気がしないか 判断する。 ﹄ ? ﹁おいおい、でき損ないの分身なんか作ってどうするんだ たら人間様の世界が壊れるだろうが。 ったく、どこまでも悪魔ってのは悪魔だな﹂ てか、そんなの振りかざし ⋮⋮いや魔力を見ながら俺とドライグは、徹底的にぶち壊さなければ此方がやられると た││見てるだけで殺意が沸く紅髪の魔王の全身から溢れる殺意と高密度のオーラ 口から血の塊を吐いて倒れた女と両親とやらを比較的安全な場所まで運び、戻ってき ﹁そうでも無いだろ。あの魔王はどうも只の悪魔とは違うらしいしな﹂ ? つまり、この場所でのみ⋮⋮私はキミを殺すために本気を出せる﹂ 属達によって展開されている。 ﹁心配しなくても、既に周囲に出来るだけの被害が及ばない障壁を潜ませていた私の眷 崩壊への道 199 溢れる魔力が形を変え、魔王の頭上に分身の様に出現する。 どうやら本気らしい。なるほど、なるほど⋮⋮くく。 │我、目覚めるは覇の理を神より奪いし二天龍なり│ │無限を超越し、夢幻を破壊せん│ │我、全てを喰らい、全てを糧とし永遠の進化を遂げる無神臓と化し汝を滅ぼさん│ ﹂ じゃあ、もう殺るっきゃあありませんね。 ﹁っ⋮⋮何だ、それは くく、あぁ⋮⋮でも言っておくか。 ? もう、悪魔はうんざりだ。 帝の誰もが至った事のない、俺達だけの結果とでも思って⋮⋮くたばれ﹄ 兵藤一誠の異常性と精神と、赤い龍の力と精神を一つにした結果生まれた、歴代赤龍 俺は一誠でもドライグでも無い、俺は貴様を破壊する者。 ﹃何でも良いだろ ? 200 ﹁早く戻るぞイリナ。一誠を一人にするのは心配だ﹂ 教会を追い出され、異常者な私を喜んで送り出してくれた家族とも縁が切れ、ゼノ ﹂ ヴィアと共に力を取り戻したイッセーくんと仲良く楽しい生活を送る事になってから 早いものだと思う。 ? して癒してあげられないかと思ってしまう。 くんが頭から離れられず、その身に受けた傷跡を見てると余計に心配というか、何とか どうも私とゼノヴィアは力を取り戻す前の、悪魔に好き勝手されていた時のイッセー る。 か私はゼノヴィアに腹が立つことは無く、寧ろ一緒になってイッセーくんをお世話して イッセーくんに世話を焼こうとしてるのを見せられてる身だけど、不思議なことに何故 サッパリしてる性格だと思っていたゼノヴィアが意外なまでに過保護で、四六時中 ﹁前から思ってたけど、何でゼノヴィアってそんなにイッセーくんに過保護なの 崩壊への道 201 この時もイッセーくんに言われて渋々私とゼノヴィアの二人で夕飯の買い出しから ﹂ 急いで戻ってる訳で⋮⋮。 おいイッセー ﹁いた ﹂ いかと探ってるのが見える。 いな ﹂ ﹁変な奴に声を掛けられたとかは無いな ﹁してないというか⋮⋮俺はガキか﹂ ? ﹂ ⋮⋮⋮む、言われてみれば悪魔の⋮⋮それも強い力の気配が残ってるが﹂ ﹁ねぇイッセーくん。もしかして悪魔が居なかった !? ﹁いや別に イリナとゼノヴィアの気のせいじゃねーの 俺一人で普通にやってた ﹁なに ? ? お菓子を上げるから付いていくとかしてな ると、私達に倣って我流の剣術の修行中だったイッセーくんの身体をベタベタ怪我は無 ゼノヴィアは我先にとばかりにスキルで高速移動なんてしてまでイッセーくんへと走 ちょっと寂れた広場で無事な様子で身体を鍛えているイッセーくんの姿を見るなり、 ? ! 悪魔の気配⋮⋮ ! ﹁⋮⋮ ? 202 ? ? し﹂ お姉さんぶりたいのか、悪魔の気配すらそっちのけで気づいてないゼノヴィアも今気 付いたみたいだけど、イッセーくんは会ってないと言っている。 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮。何か表情的に怪しいけど、イッセーくんが無事な以上、奴等の事なん ﹂ て気にしても仕方ないので私もこれ以上の追求はしなかった。 今日はハンバーグだ﹂ ﹁帰るぞイッセー ﹁料理本を読んでお勉強をしたから失敗はしないわ ﹁⋮⋮⋮⋮。切に願うよ﹂ そんな事より家に帰ってご飯。 ! 私とゼノヴィアはイッセーくんの手を引っ張りながら家に帰る。 うん│││ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 崩壊への道 203 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 例えばイッセーの身体に残る無数の傷は悪魔達により付けられたものであり、残留思 ﹁すまん、教会からかっぱらった聖薬でもこれが精一杯だ﹂ ﹁チッ、傷は消えないか﹂ えた今でも根深く残っている事を私もイリナも知っているのだ。 本人のヘラヘラした態度で誤魔化されてるが、実はとてつも無く甚大であり、報復を終 力を取り戻したイッセーの強さを疑ってる訳じゃないが、悪魔から受けた傷の深さは イッセーの事が心配だ。 い何かはゼノヴィア共々知らないフリよ。どうでも良いし。 近くにあった腰ぐらいの高さの植木の影にあった数匹のミンチになってる悪魔っぽ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 204 念とでも云うべきか⋮⋮何をしても消せなかった。 イッセー本人は﹃まあ良いや﹄なスタンスなのだが、それは意識がある時だからこん な態度であり⋮⋮。 ﹁⋮⋮く⋮⋮ぐぅ⋮⋮あ⋮⋮﹂ 眠ってる時は毎日悪夢に魘されている。 力を奪われ、尊厳を踏みにじられていた頃の記憶が悪夢として⋮⋮。 ﹁ゼノヴィア﹂ ベッドに寝かせると、冷やしたタオルで汗を拭く。 を開け、苦しそうな顔で魘されているイッセーを抱き上げ、元々はイッセーが寝ていた は、押し入れから聞こえるイッセーの苦しそうな声に黙って頷き合うと、押し入れの扉 ﹃頼むから別々になってくれ﹄と深刻な顔で言われて渋々別々に寝ていた私とイリナ ﹁わかってる⋮⋮﹂ 崩壊への道 205 ﹁ドライグ⋮⋮お前から問い掛けてもダメなのか ﹂ ? ままイッセーを抱き締める。 所謂川の字で眠るという奴か、私とイリナでイッセーを挟む様にして横になり、その 事だけだ。 そんなイッセーに対して私達が出来る事は、魘されているイッセーに寄り添ってやる ﹁うん﹂ ﹁やるぞイリナ﹂ た仕打ちがイッセー自身を苦しめ、イリナ好意に対しても背を向ける傾向にある。 自分の中に残る悪夢に閉じ込められてしまっているのか⋮⋮それは解らないが、受け い。 厄介な事に、悪夢に魘されている時のイッセーは起こそうとしても起きることが無 ﹁やっぱりアイツ等にされた事が余程ショックだったんだね⋮⋮﹂ イッセーには聞こえない﹄ ﹃⋮⋮。寝ているときは完全に意識間の繋がりが切れるからな。問い掛けても俺の声は 206 本格的な日本の夏が近付いてるので熱くて汗ばむので若干恥ずかしくもなるので、教 会から盗んだ結界技術の応用をイリナと編み出した特殊防壁で結界内の気温を肌寒さ を感じるレベルまで下げれば、寧ろ人肌湯たんぽとやらになるので心配はない。 ﹁すー⋮⋮すー⋮⋮﹂ ﹁落ち着いたか⋮⋮﹂ ﹁みたいね⋮⋮もっと早くイッセーくんと再会出来てたらとこれ程までに悔やむ事はな いわ﹂ ﹁まったくだな﹂ イリナの悔やむような声に私も同意する。 最初はイリナの話でしかイッセーを知らなかったが、今では大事な仲間だ。 いや⋮⋮確かに仲間以上の感情は持ち合わせている事は否定できないが、イリナに悪 いしな⋮⋮。 ﹂ ? ﹁ねぇゼノヴィア⋮⋮アナタ、イッセーくんの事好き 崩壊への道 207 だからこそ、穏やかに眠るイッセーを抱き締めながらされたイリナからの質問に私は 返答に困る。 好きかと問われたそりゃあ好きだし、最近ちょっと意識すらし始めてるのも否定でき ない。 けれどイリナの手前そんな事は言えず、私はあくまで友達で通すつもりだったんだ。 なのに⋮⋮。 みたいな ﹂ こんな事を言われたら嬉しくなってしまうじゃないか。 ﹂ ﹁イ ッ セ ー く ん は 胸 が 好 き ⋮⋮ さ ぁ ど う 動 く ゼ ノ ヴ ィ ア 先 攻 は ア ナ タ に 譲 る わ よ 寧ろこれから三人でやっていくなら上手いこと⋮⋮こう、半々で ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮。む﹂ ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ? ? 何も言わないわよ ﹁別に私だってイッセーくんの恋人って訳じゃないし、ゼノヴィアがそう思うなら私は 208 ニヤッと暗くてもわかるイリナの笑った顔に私は⋮⋮乗った。 ﹂ 着ていた上着を脱ぎ、そのままイッセーの顔辺りに押し付けるように抱き締め││ ﹁んが た。 ﹁え、あれ⋮⋮押し入れじゃない⋮⋮ ﹁﹁⋮⋮﹂﹂ ? ﹂ のそのそと身体を起こそうとしたので⋮⋮。 だがどうやら寝惚けているらしく、真隣で息を殺してフリーズした私達に気付かず、 ﹂ 様とした所でイッセーが起きてしまい、上半身が裸な私はそのまま固まってしまっ ﹁﹁あ﹂﹂ ? ﹁イッセー⋮⋮ ! 崩壊への道 209 ﹁むががっ ﹂ ちゃっかりイリナもイッセーの身体に絡み付いて動きを抑えている。 何か取り敢えず寝惚けてるイッセーにそのまま抱き着いてみた。 !? 抱く堪らないこの気持ちがあるせいか、途中で止めようとは思わなかった。 さらけ出してしまってるので恥ずかしいものの、抱き締めている時は何時だって心に ﹁ちょっと恥ずかしいな⋮⋮。だがイッセーの為だ﹂ ﹁これでよしと⋮⋮﹂ からイッセーの顔辺りに胸を押し付けるようにしながら抱き締める。 ちになりながらも隣で横になった私は、同じく上が何も無いイリナと一緒になって左右 その結果窒息させてしまったらしく、再び眠ってしまったイッセーに申し訳無い気持 ﹁な、何だ前が見えねぇしく、苦し││││ぐぇ﹂ 210 こ、今度は私に⋮⋮ぃ ﹂ ちょ、な⋮⋮い、いっせぇ⋮⋮ わ、私のなんて吸っても出な⋮⋮あっ⋮⋮ ﹁ちゅうちゅう⋮⋮﹂ ﹁ひぁ ﹂ ﹁やっ⋮⋮ !? ﹁んー⋮⋮んむ﹂ !? ! ﹁んぁ⋮⋮朝⋮⋮か、あぁ ﹂ ﹁い、いっせーくぅん⋮⋮あは♪﹂ ﹁あ⋮⋮ぅ⋮⋮いっせぇ⋮⋮﹂ !? 変な声が出てしまうが、嫌な気持ちには私もイリナも決してなかった。 ちょっとした想定外な事で驚き、全身に伝わる痺れるような何かに身体の力が抜けて 寧ろ何だろうか⋮⋮安心できるというべきなのか。 !? ! ﹂ !? !? 色々と想定外で⋮⋮しかし心に抱いた気持ちがより増大化して心地好い気持ちにな ちまったのか ﹁な、何だこりゃあ まっさらおっぱいにエロエロな雰囲気の二人って⋮⋮俺何かし 崩壊への道 211 212 れた。 ちょっとお風呂に入って下着を変えなければならない事態になろうともな。 終わり 自由と遺恨 血相変えた部下からの報告を受けた時、俺は最初何かの間違いだと思いたかった。 ﹂ だがしかし、現実はそのまま現実だった。 ﹁サ、サーゼクスが完全に再起不能⋮⋮ そう、会談の際にカテレア・レヴィアタンをアッサリと殺してのけた赤龍帝。 あのサーゼクスを誰がやったかなんてのは、簡単に想像出来てしまう。 ﹁⋮⋮何てこった﹂ ﹁は、はい⋮⋮そ、その⋮⋮初めは判別すら困難な程に手酷く﹂ ? リアス・グレモリーに下僕にされた事で憎悪を募らせ、何のカラクリを駆使したのか ﹁本当にやりやがったのか⋮⋮﹂ 自由と遺恨 213 知らないが、人間に戻ることでその力を取り戻し、そして復讐した子供。 会談の際に顔を合わせた時は、ミカエルや俺に対してて普通な態度も悪魔であるサー ﹂ ゼクスやセラフォルーにはとことこん憎悪を向けていた。 だからこそ解ってしまう。 ﹁冥界内は混乱していますが、どうしましょう はぁ⋮⋮参ったぜ。 だからこそ、個人的な親しさよりも自分達種族の存続を選ばなければならない。 ﹁一度、腰を据えて話をしてみないとな﹂ 赤龍帝の持つ悪魔への憎悪はどこまでも深く、決して消える事が無いものなのだと。 かなんてわかりきった事だ﹂ 悪魔達とは同盟は結んでないし、今此処で助ける真似をすれば⋮⋮ソイツが何を思う ﹁どうする事も出来ないだろう。 ? 214 彼をやったのは﹂ ﹁サーゼクス・ルシファーがやられたのか。 赤龍帝だろう ﹁お前も確か見たんだろ 実際どうなんだ ﹂ 赤龍帝を⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮。コカビエルの野郎は﹃今から実に楽しみだ﹄としか言わずにはぐらかしたが││ そして、あの時見て感じたものは全て鮮明に覚えている﹂ ﹁当然見た。 ? 龍帝の小僧が関わっている事を察している様子だったので一つ頷いておく。 どうやら近くで盗み聞きしていたみたいで、サーゼクスがやられた話に俺と同じく赤 やって来たのは、俺が拾った﹃白龍皇﹄のヴァーリ。 部下を下がらせ、この先待ち受ける不安な未来について考えていると、ひょっこりと ? ? だから俺は今の実力では無理と判断して、恥ずかしながら逃げ帰った訳さ⋮⋮と、コ ビエルと同じ﹃臭い﹄と赤の力を併せ持った異質な存在というべきかな﹂ ﹁白である俺の宿敵である赤としてこれ以上無い実力││いや、師⋮⋮じゃなくて、コカ 自由と遺恨 215 カビエルに似て戦闘バカである筈のヴァーリは、少しだけ悔しそうに歯噛みしながら、 間近で見た赤龍帝の実力についてを俺に教えた。 コカビエルと同じ臭い⋮⋮それはそのままの意味では勿論無く、中身⋮⋮つまり、俺 達でも現在に至るまで解析不能の何かをも赤龍帝は持っているという事だ。 そう⋮⋮どんな存在すらも超越しうる異常な何かを。 ﹁今は無理でも自分なりに納得できるコンディションになれば挑むさ。 コカビエルがウチを抜けなければ、もう少し余裕だったんだが⋮⋮。 それもオジャンになる可能性だって否定できない。 幸い、一言二言の会話の感触的に敵意は感じなかったが、行動ひとつ間違えただけで 禍 の 団も厄介だが、近い分赤龍帝の方が尚厄介だ。 カオスブリケード 考えれば考えるほど、厄介過ぎる事に頭が痛くなる。 わからんが、再起不能にまで追い込むレベル⋮⋮﹂ その時点で厄介なのに、実力は少なくとも、サーゼクスがどこまで本気だったのかは ﹁コカビエルと同質に加えて赤龍帝か⋮⋮。 216 勿論、アンタ達に迷惑は掛けないようにね﹂ ﹁お気遣いに感謝したくなるよ⋮⋮はぁ﹂ ﹁まあ、その前にコカビエルにひっついてるジョワユーズ使いを捻り潰してからだがな﹂ ﹂ ﹁何だそりゃ そいつは確かコカビエルが拾ったとか言ってた小僧だったが、何かさ れたのか ? ? 俺と被り過ぎなんだよ⋮⋮﹂ つまり、お前が半分悪魔の血を持つと奴が解れば││﹂ ﹁理由は解ったが真面目に気を付けろよ 赤龍帝は悪魔を憎悪している。 いっそ引き込めでもすれば一番安泰なんだけどなぁ。 し⋮⋮。 うお墨付きを貰ってるにも関わらず、不満にしているヴァーリが俗に言えば嫉妬してる コカビエルはコカビエルでいつの間にか大所帯だし、それについて﹃自立可能﹄とい ﹁⋮⋮⋮。あー﹂ ただ、置いて行った俺がじゃ無く、あんなのが弟子気取りなのが気に食わないだけさ﹂ ﹁別に何もされちゃいない。 ? ﹁ジョワユーズ使いめ。大体何なんだあの白い鎧は ? 自由と遺恨 217 ﹁⋮⋮⋮。おーい、聞いてるかー もある気がしてならない。 ﹂ ⋮⋮⋮⋮。敢えては聞かないけど。 ﹁まだだ、まだ足りない ﹂ 誰にも文句を言わせない程の力までこれじゃあ足りやしないぜ⋮⋮ ﹂ ﹁根を詰めすぎだ。それではいくら異常性があるとしても逆効果だろう ﹁そうよ。それに、そうやって追い込みすぎたから悪魔なんかに足元を掬われたのよ 学業以外は全て鍛練に費やすイッセーに付き合い、私とイリナもとある山奥で一緒に ? ! ﹁⋮⋮む﹂ ﹂ その理由は考えるまでも無いと私とイリナは思っているのだけど、何となく別の理由 より苛烈に自分自身に負荷を掛け続けている。 どうやらこの前魔王を再起不能にしたらしいが、それでも尚﹃全然足りやしない﹄と イッセーは力を取り戻してからも修行を続けている。 ? ? ! 218 鍛練をしているのだが、どう見てもオーバーワークで逆効果状態となってぶっ倒れそう になっているイッセーに少しは休めと無理にでも休憩させる。 悪魔相手では何時でも薄ら笑いか、獰猛な笑みを浮かべて悠然としているというの に、修行の時は何時でも余裕の無い必死の表情。 付き合いはまだ短いもの、恐らくはこの表情を見せるイッセーこそが素であるのだろ うと思っている。 今だってぜぇぜぇとしながらイリナから渡された水を飲んでるし、転生悪魔の頃に戻 りたくないという必死にも思える感情が見て取れてしまう。 俺が言っても全く聞きやしない﹄ ﹃すまんな、このバカは昔からこんな真似ばかりしては死に掛ける。 肩で息をしながら座り込んでる一誠を見かねでもしたのか、その腕に独りでに出現し た赤龍帝の籠手の元ことドライグが私とイリナに声だけながら礼を言ってくる。 ﹁小さい頃はもう少し余裕のある感じだった気がするんだけど﹂ ﹁見れば何となく予想はしていた﹂ 自由と遺恨 219 ﹃その時はまだ、実の親に存在を抹消された挙げ句捨てられる前だったからな。 独りになってからのコイツは、ある目的の為に││﹄ ﹁目的とは何だ ﹂ ﹁生き続けたいんだよ⋮⋮それだけ﹂ したかの様に首を下げて項垂れると、小さくその目標を語りだした。 だが、私とイリナにジッと見られていたのに堪えられなくなったのか、やがては観念 そう言った一誠は明後日の方へと視線を泳がせるだけで言おうとはしない。 馬鹿馬鹿しい目標。 ﹁⋮⋮。別にそんなんじゃない。馬鹿馬鹿しくて話すのが恥ずかしいだけだ﹂ ? ? ﹁私達には言えない事 ﹂ しかし私とイリナは聞き逃す筈も無く、その目的とやらが実に気になってしまう。 ドライグが何かを言おうとした瞬間、一誠の低い声によって憚れる。 ﹁ドライグ、それ以上は言うな﹂ 220 ﹁生きる ﹂ だからこそ俺はその寿命や老いの概念すら力でねじ伏せて超越してやるんだよ。 ﹁そんな事は百も承知さ。 ? ﹂ てしなく無謀な欲望だった。 語られた言葉は、生物が持つ生存本能という言葉では生温く思えてしまう程の⋮⋮果 尽きてしまおうが、ただ⋮⋮俺は俺として生き続けたい﹂ 人類が滅びようが、他の生物が絶滅しようが、この星が朽ち果てようが、太陽が燃え 誰にも邪魔されず、誰にもとやかく言われる事もなく、只ひたすらに生き続けたい。 ﹁生き続けたい。 しかしどうやらその場凌ぎの誤魔化しでは無いらしく⋮⋮。 復唱してしまう。 結構壮大なものかと思っていたら、何というか、普通な答えに思わず目が丸くなって ? ﹁人の寿命は短いぞ 自由と遺恨 221 そして、その事を良しとしない連中を黙らせる為に力を付けたい。人間としてな﹂ イッセーの抱える欲望。 単純に聞こえて、単純では無い絶大な欲。 教会の者達からすれば、悪魔でないにしても業の深い人間として見られるだろう。 イッセーがもし神父で、この願いを暴露すれば直ぐにでも異端者とした見なされるだ ろう。 それほどにまで、語るイッセーの声、目、口元の表情はドス黒く、そして││ 悪魔祓いだった私が何をと自分でも思ったものの、自然と口から出てしまった言葉 何だろ⋮⋮よく分からないけど胸の中にスッと入ってきた気がした﹂ ﹁うん、良い。 あまりにも││魅力的だった。 ﹁それ⋮⋮良いな﹂ 222 に、同じく魅入られた様な表情のイリナが私と同じ様な事を言葉に出しているのを聞 ﹂ き、私だけがおかしくなった訳じゃないと安心する。 ﹁はい 何せ、それを言ったのがこのポカンとしているイッセーなのだから。 てみれば魅力的なのだ。 簡単に聞こえて何よりも難しいその目標が間違えてるという以前に、私やイリナにし ポカンとするイッセーに私とイリナは口々に肯定する台詞を口にする。 は物凄く新鮮な気持ちにさせる﹂ ﹁生きる事が当たり前過ぎたり、主の為に命を放り投げると考えさせられて来た私達に ﹁生き続ける⋮⋮良いじゃないか。シンプルながらも果てしなく大きな道のりだ﹂ ? ﹁それに、その変な奴の一人である私を昔助けてくれたのはイッセーくんだよ ﹂ ﹁変なのは大分昔から自覚したり、周囲にそう言われ続けてるから解ってるさ﹂ ﹁変な奴等⋮⋮﹂ 自由と遺恨 223 ? 良いじゃないか、生き続ける。 老いもせず、死にもせず、三人で生き続ける。 良いじゃないか⋮⋮楽しそうではないか。 それも今更だな﹂ ? 私は生まれて初めて、イッセーとイリナと同じ様なモノを宿している事に心の底から ﹁そーそー﹂ ﹁もう知ってるだろ ﹁ホント⋮⋮変な二人﹂ から⋮⋮。 少なき同類同士、馬が合う友人同士⋮⋮そして何よりもイッセーを一人にしたくない だから私とイリナもイッセーと同じ目標を抱く。 ﹁良いわね、三人で毎日グデーっと楽しく永遠に生き続けてたいわ﹂ お前を独りにしない為にもな﹂ ﹁決めたぞ、私も生き続けてやる。 224 幸福を覚えた。 それからの三人は、同じ気質を持つ者同士のシンパシーの他に、同じ目的を持つ同志 ﹂ としての面も加わり、更に距離感が縮まったのは云うまでも無かった。 ﹂ だがしかし⋮⋮その分敵を作ってしまったのもまた事実だった。 ﹁白音⋮⋮。アナタを傷つけた奴はきっと私が⋮⋮ お姉ちゃん ﹂ お祖父様、お祖母様 それは、一誠が憎悪した内の一人のただ一人の肉親であったり。 ﹁お、お父様、お母様⋮⋮ まさか、一家全員があの赤龍帝に⋮⋮﹂ ﹁グレモリー家はこれで終わりなのか。 ! ! ! 只一人残されてしまったグレモリー一族だったり。 ! ! ﹁赤龍帝⋮⋮お姉ちゃんを裏切った元眷属の⋮⋮ 自由と遺恨 225 ﹂ ! 算しても足らない程にな ﹂ !? ﹁ソーナちゃん達の居場所はまだなの ﹂ 冥界に存在するほぼ全ての悪魔達だったり⋮⋮。 ! ﹂ ! ! だが⋮⋮。 意味で数ヵ月前と比べるまでも無く広まっていく。 知らない場所で主に悪魔達からのヘイトを集めまくっている兵藤一誠の名前は、ある わざと見捨てた悪魔の身内であったり。 ﹁くっ、ぅ⋮⋮ ていますが、依然として⋮⋮﹂ ﹁も、申し訳ありませんセラフォルー様 ぜ、全力を尽くして禍 の 団のアジトを探し カオスブリケード ﹁サーゼクス様││そしてグレモリー一族を傷つけたという理由がある限り、殺して清 ﹁やはりどんな手を使ってでも赤龍帝は殺すべきだ 226 ﹁良いってば ﹁ダメだ 一人でやれるっての ﹁今更照れなくても良いじゃない。 ﹂ イッセーはそう言っては何時も適当じゃないか ! ﹂ ﹂ つーか、身体くらい自分で洗うからマジやめて 色々と 私かゼノヴィアの胸ガン見してる癖に、変な所で頑なになるなんて変よ ﹂ ﹁気持ちの問題なんだよ 腫れるから ! 多分、今までの人生を振り返るまでも無く今の状況は実に充実していた。 完全に子供扱いされて色々されたりと⋮⋮。 学園では、美少女二人を侍らせてると目の敵にされたり、家では主にゼノヴィアから た。 そんなの全部知らねぇと言わんばかりに、呑気にその日を楽しく人として生きてい ! ! ! ? ! ! ﹁⋮⋮にゅ﹂ ﹁今日も挟んであげるね ﹂ ﹁ほーら、胸だぞイッセー﹂ 自由と遺恨 227 ? だからこそ、イッセーの鍛練はより苛烈と壮絶を極めていた。 悪魔の奴隷から解放される元になってくれた二人を、自分の残した遺恨に巻き込まれ てはならないと、守る為により力を求める。 同じ気質を持つ友達を大切に⋮⋮同じ目標を抱いてくれた仲間を失いたくないから ⋮⋮。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁その時はぎゅってしてあげるからね ﹁⋮⋮。俺は3才児かよ﹂ ? 何者をも黙らす程の領域となる⋮⋮最狂の道へ。 イッセーの進化の元である精神性はより強固なものへと進化する。 ふふふ﹂ ﹁魘されても私とイリナが傍に居る。だから安心しておやすみイッセー⋮⋮﹂ 228 お前を殺す ﹂ 自由の代償は、残した遺恨による恨みだった。 ﹁妹の仇を⋮⋮ はぐれ悪魔とほざけば俺が同情してやると思ったら大間違いだぜクソが ﹁やってみろよ似非猫がァ⋮⋮ 破壊した白猫の妹の復讐へと来た黒い猫。 ﹁なっ う、嘘を言うな 白音がお前なんかにそんな事っ ! ﹂ 俺を無理矢理犯してきたあの白髪のクソガキを思い出させるからかぁ⋮⋮ !! ﹂ ﹂ ﹁おかしいな、昔から極力女は殴らないつもりで居たんだが、そっか⋮⋮テメー見てると !! ! ! ! ! 者同士の戦い。 奇しくも悪魔によって人生を狂わされ、一人は自由へ⋮⋮一人は追われる身となった !? ﹁﹃大人しくなってくれた好きになってあげますから﹄⋮⋮あぁ、今でも頭の中であのク 自由と遺恨 229 ﹂ ソガキの声が残ってるぜ⋮⋮ た状態で俺を⋮⋮俺を 何が好きになってやるだ⋮⋮ ! ﹁う、嘘よ。白音はそんなこと⋮⋮言わない⋮⋮﹂ !! ボスの弟子だぁ ﹂ それは余りにも⋮⋮残酷だった。 ﹁あぁ ? 無理矢理縛り付け ! ﹁しょうがねーだろ、付いて来ると聞かなかったんだから⋮⋮﹂ ﹁おいアザゼル、何でアイツまで連れてきたんだ﹂ エ﹂ ﹁⋮⋮。ほっほーう、半分悪魔って時点で理由としては充分ですなぁ わ、コカビエルの弟子気取りでムカつくから是非戦おうとね﹂ 上等だぜオマ そうだ、俺は白龍皇にてコカビエルから教えを貰っていた者だ。キミとは色々と被る ﹁コカビエルから聞いてないのか。 ? その裏で、白夜と白龍がバチバチと火花を散らしてたのだとしても⋮⋮残酷は残酷な ? 230 のだ。 本 当 に コ カ ビ エ ル み た い な 奴 だ ⋮⋮ ﹁白龍皇か。何だよ、やり合うってなら上等だぜこっちは﹂ ﹁っ ⋮⋮ こ の 前 か ら 更 に 強 く な っ た の か ⋮⋮ ! 生まれも育ちも関係ない ﹂ そいつは確かにハーフ悪魔だが、決してお前の思ってるような││﹂ ! ! ﹂ これは俺の宿命だ ! ﹁よせ赤龍帝 ﹁黙ってろアザゼル ﹂ ﹁⋮⋮。気を付けろよ ﹂ ﹂ ﹁怪我はしないで⋮⋮ 以上、似非予告 ﹁⋮⋮ふふん、承知 ? ﹁⋮⋮。だそうだから、ゼノヴィアとイリナは離れててくれ﹂ ! ! ! ? 自由と遺恨 231 集える同類達 故に俺は殺るのさ。 ? 誰だそりゃあ ? その日、一誠は何時もの通りそれなりに学業に励み、放課後となればゼノヴィアとイ それが俺の生き続ける為に必要な今の流れだから。 誰だろうと、何であろうと⋮⋮蚊であるのなら潰して殺す。 ﹁⋮⋮。嫌でも思い出させるつもりだよ⋮⋮地獄でね﹂ ﹁白音 ﹂ というか、それを承知で奴等を潰した。 それくらい俺にだって分かっている。 報復は報復を呼び、下手な情を挟めばそれが禍根を残す。 報復が報復を⋮⋮ 232 リナと共に帰るつもりだった。 しかしこの日の一誠は少し違う道を辿った。 ﹁あ、ごめん⋮⋮先生に呼ばれてたから先に帰ってて﹂ ﹁む⋮⋮﹂ ﹁呼ばれた、ね﹂ 正門を出るや否や、まるで今思い出したかの様にそう言って家の鍵を渡した一誠に、 ﹂ イリナとゼノヴィアは若干目を細めて数秒程一誠を見つめた。 ﹁⋮⋮。わかったが、頼むからちゃんと帰って来てくれよ ? く。 を受け取ると、まるで世話を焼く姉か何かみたいな台詞を残して一足早く帰宅してい だが敢えて二人は﹃何も知らないフリ﹄をして一誠の言葉を信じた様に振る舞って鍵 ﹁ご飯作って待ってるから﹂ 報復が報復を…… 233 ﹁あぁ、直ぐに帰るさ﹂ そんな二人の背を穏やかな表情で見ながら、小さくそれだけを呟くと、正門に回れ右 ﹄ ││をでは無く二人とは正反対の道を一人で歩き始める。 ﹃おい、殺るのか 俺を殺りたければとっとと来な﹂ ﹁さてと、此処でなら死体も発見されにくい。 近使用する修行場の山林地帯へと辿り着くと⋮⋮。 ⋮⋮そして獣道へと変わり││霊だなんだと騒がれて全く人が近寄らない、一誠達が最 やがて人通りの少ない道も砂利の道となり、砂利の道は木々の集まる山道へとなり 己の中に宿る神器と会話をしながらひたすらに人通りの少ない道を歩き続ける。 閑静な住宅街を通り抜け、人通りの少ない公園を横切り、郊外へと抜けて行く一誠は、 ︵当然。寧ろ今まで来なかったのが不思議なくらいだったんだ⋮⋮くくく︶ ? 234 半径数十メートル範囲で木の生えていない⋮⋮やり合うのなら絶好の場所にて一誠 はやっと、声を出した。 ﹁⋮⋮﹂ んて止めようぜ﹂ それは、今朝から感じる殺意が、一誠の中で﹃己を報復か ﹁おいおい、わざと隙晒してやったのに首も跳ねやしなかったんだ。今更かくれんぼな 何故一人でこの場所に 影からぬっと姿を現した。 を更に膨らましたその気配の主は、一誠の立つ場所から二十メートル程先にある大木の だに他ならず、両手を広げながらニヤつくという一誠のあからさまな挑発に対し、殺意 何かで殺しに来た悪魔の手先﹄と思わせ、それを一人で片付ける為に此処まで誘い込ん ? 姿を現した気配の主に対し、一誠は別段驚くでも無くただ思った事をそのまま、ゆっ ﹁へぇ、何だ⋮⋮女かよ﹂ ﹁⋮⋮﹂ 報復が報復を…… 235 くく、どこぞの悪魔 くりと殺意を研ぎ澄ませ、眼光鋭くさせて近づいてくる女性に対し言う。 ﹁さてと、そんな殺気丸出しでほんわか会話って訳でもねーだろ の命でやってきた殺し屋﹂ こうなる事は最初からわかっていた。 ﹂ ? アイツラ 研ぎ澄ませた感覚を一瞬ながら削ぐ言葉を低い声で言った。 だが、殺意をより鋭く、憎悪する様な眼光で睨み付けてくる黒髪の女は一誠にとって ﹁あ ﹁違う。悪魔は関係ない﹂ する為に感覚をより研ぎ澄ませている。 だからこそ、口や表情ではヘラヘラしている一誠だが、内面は既に目の前の女を始末 る訳も無いことを。 大貴族のグレモリー一族を再起不能にしてやった時点で、悪魔達が大人しく引き下が ? 236 ﹁あ テメーは感覚的に転生悪魔だろ 一応元転生クソ悪魔であったからそれと同 ﹂ おいおい、悪魔にご迷惑でもお掛け 忠義心に泣けるなぁ じクソみてーな感覚をテメーから感じるんだが したくございませんってか ? ? ﹂ どうせやることは決まってるんだからよ ﹁まあ、どっちでも良いぜ。 ! その為にはこの邪魔で、何処か憎悪を煽る容姿をする転生悪魔の女を始末する為に、 る。 約束通りにスパッと終わらせ、スパッと家に帰ってゼノヴィアとイリナとご飯を食べ 故に時間も掛けない。 ! ﹂ 一誠にしてみれば見え透いた嘘でしか無い。 ら感じる気配は同じなのだ。 た転生悪魔時代に己の中を浸透していた転生悪魔としての感覚と、今嘯いた黒髪の女か だが一誠はそんな戯言を信じるつもりは無い。奴隷の如く尊厳を踏みにじられてい ? ? ? ﹁⋮⋮ 報復が報復を…… 237 そんな力で私の妹をっ 引っ込めていた殺意を剥き出しにする。 ﹁その力で白音を傷付けた⋮⋮ ﹂ ! ﹁⋮⋮白音 誰だそりゃ ﹂ ﹁嫌でも思い出させるつもりだよ⋮⋮地獄でね ? かかる。 ﹂ 聞き覚えが無いとばかりに首を傾げる一誠に更なる殺意を孕ませた怒声と共に飛び !! ? まれて堪るかと叫び内包していた全ての力を捻り出す。 るのだが、それでも女は自分以上に荒れ狂う殺意を剥き出しにした一誠の威圧に飲み込 それは、転生悪魔である上でとある種族でもある女に対してもその本能を刺激してい アという鳴き声と共に散らせていく。 その圧力は周囲に居た様々な鳥達やら動物達を本能的な危険を感じさせ、ギャアギャ 果てしない憎悪から湧き出る果てしない一誠の殺意。 ! 238 ﹁思い出させるね⋮⋮ククク、どーでも良いな。 だってテメーが死ねば思い出す必要もねぇし。ぐげげげげ ﹁おいアルビオン、ここら辺で確かに間違いないんだよな ﹃間違いない。 ﹂ ﹂ その証拠に山であっただろう場所が更地になっているだろう 堕天使に育てられしハーフ悪魔。 名をヴァーリであるこの少年は、現在の白龍皇である。 ﹄ それが、背景を知らないまま始まる殺し合いのコングだった。 !! 中に宿す白い龍に導かれる形で人間界のとある山││だった場所に居た。 暗めの銀髪と碧眼⋮⋮とある血族の遺伝を受け継いだ容姿を持つこの少年は今、己の ? ? ﹁更地となった範囲は小規模だが、残留している力は確かに奴のものだな﹂ 報復が報復を…… 239 ﹃うむ、間違いなく赤いのの宿主のだ﹄ 自然に囲まれていた筈だったろう場所に降り立ったヴァーリは、白い龍ことアルビオ ンと意識のやり取りをしつつ、先程まで誰かとやりあっていただろう宿敵が残した残留 思念とも云うべき力を調査しようと、そこら辺を歩き回ってみる。 ﹁確かに厄介。 通り更地となった場所が﹃壊されてしまった﹄事に戦慄が止まらない。 ており、テクテクと軽く目を閉じながら生命の一つでも無いかと探るヴァーリは、文字 範囲としては50メートル程だが、その範囲内全てが緑すら失われた屍の大地と化し チッ、面倒な奴を宿主にしたものだぞ赤いのも﹄ ﹃デタラメでは無い⋮⋮ということか。 命力を感じられない﹂ 復しない﹄と、宣っていたが││││なるほどな、この更地となった場所からまるで生 ﹁例の夜の時に、ハイになってた兵藤一誠が﹃自分が壊したものは何であろうと二度と修 240 しかし、それでこそ心踊るという奴だ。 ⋮⋮⋮⋮。おめおめと逃げ帰った奴が口にする台詞では無いが﹂ ﹃寧ろ英断だろ。あの宿主の小僧は俺ですらおぞましさを覚えたのだからな﹄ ﹁だからといって尻尾を巻いて逃げ帰った時点で俺は腰抜けだよアルビオン││む た赤龍帝の籠手の元ことドライグが私とイリナに声だけながら礼を言ってくる。 ﹂ その全てが元主であるリアス・グレモリーやその仲間達に向けられ勝手に腕に出現し 圧倒的な暴力、圧倒的な力、圧倒的な殺意。 も恐怖が勝り、おめおめと逃げ帰った時の屈辱は今でもヴァーリの中に残っていた。 力を取り戻した直後で、色々とハイになっていた一誠を見て、戦う事への楽しみより ? ていたからこそ、鮮明にあのおぞましさと極悪さをキャッチ出来たのはある意味幸運 ともいうべきものなのかもしれない。 ﹂ ﹄ ﹂ そしてその幸運を後押しする更なる幸運もまたヴァーリへと振り向くのだ。 ﹁ぁ⋮⋮う⋮⋮く⋮⋮ ﹁む⋮⋮何だこの女││││っ、転生悪魔かっ⋮⋮ !? ! ﹃虫の息だが、まさか赤いのの宿主とやりあったのか ? 報復が報復を…… 241 それは唐突だった。 破壊された更地を調査している内にヴァーリの目の前に現れた、ボロボロとなった女 性。 アルビオンの言うとおり、身体中が傷だらけで虫の息状態で倒れているその女性を目 にして一瞬で転生悪魔と││そしてこの更地となった場所の当事者の一人である事を 見抜いたヴァーリは、うつ伏せに倒れる女性の容態を見ようとまずは仰向けにさせる。 ﹁手酷いな⋮⋮だがおかしいぞ。 手酷いのは事実だが、何故この程度で済んでいる 奴は悪魔というだけで即殺す程 憎悪を募らせてる筈なのに⋮⋮﹂ ﹁ぅ⋮⋮くぅ⋮⋮﹂ 至るところが傷だらけ、顔まで腫れている。 程度で済んでるどころか、生きてまでいることに。 しかしそれでも直接悪魔を破壊していた姿を見ていたヴァーリは解せない││この 男女関係なく悪魔であるなら容赦しない一誠なら納得出来る女性の状態。 ? 242 ﹁し、ろ⋮⋮ね⋮⋮ ﹂ ﹁む、おい何を言っている ﹃ほう ﹄ ﹂ もしかしたら赤龍帝の攻略に繋がる情報が得られるかもしれないし⋮⋮﹂ ﹁チッ、仕方ない、生きているなら出来るか解らんが回復させて話を聞くか。 しそうに顔を歪ませながら同じ言葉をつぎはぎに発している女性にヴァーリは││ しかし生きているとはいえ死にかけている事に変わりは無く、事情を聞こうにも、苦 ? ! ﹃それが本命だろ。お前はコカビエルばっかりだからな﹄ ﹁それに⋮⋮多分コカビエルだったら間違いなく助けるだろうしな﹂ ? ⋮⋮⋮。これが運命的な事へと繋がるとは知らずに。 を後にした。 苦しそうに呻く黒髪の女性を横抱きに抱え、アルビオンにからかわれながらもその場 ﹁うるさいぞアルビオン﹂ 報復が報復を…… 243 妹を壊した男。 あの白髪クソガキの姉なんだからよぉ ﹄ ﹄ テメーはそういう事だったのか なるほど、だからさっきから その男に報いを受けさせる為に私は挑んだ。 ﹃くく、くはははっ イライラが止まらねぇ筈だぜ けど待っていたのは⋮⋮只の絶望。 ﹃そういえば言ってたぜあのガキ。 私には姉が居て、色々あって疎遠になってたってよ。 そして、今なら姉と向かい合えるなんてともなぁ⋮⋮ 知りたくなかった現実。 ﹃俺から力を吸い取って随分と自信を付けてた様だぜあのガキは。 !! ! ! ! ! 244 ﹄ くく、弱りきって抵抗しても無駄だった当時の俺を無理矢理犯しまくってたからそ りゃあ自信も付くわなぁ 信じたくもない話。 ﹃嘘だって !! ﹄ ! 絶望と同時に悔しさを募らせていく。 ﹄ 答えはNOだぜクソボケ ﹄ ! ﹃ぐぅっ だからこそ私は自分でもわからかい奇跡を起こしてしまった。 !? ? 私の力をフルにぶつけても平然とその遥か上から叩き潰すかの如く極悪ななにかは、 そして、暴力的なまでの差。 ら、続きはあのガキに聞くんだな くく、じゃあその妹とお揃いに同じ箇所をぶち壊してから冥界に送りつけてやるか ? ﹃はぐれ悪魔だからと同情してやれるか 報復が報復を…… 245 ︶ !! ﹁う⋮⋮ぅ⋮⋮ ﹂ ﹁⋮⋮。む、気が付いたか ﹂ ? ? ? アナタは⋮⋮ ? 確 実 に 赤 龍 帝 と 戦 闘 を し、生 き て い る と い う だ け で も 驚 く に 値 す る と い う の に だ 驚いたどころじゃない。 私はしてやったんだ⋮⋮白音の仇であるあの男に対して。 ﹁こ、ここは ﹂ それも、再起可能な生還を││ でも確かに私はボロボロになったけど生きている。 それが何かなのかは私にだってわからない。 中で何かしらの奇跡を起こした。 本能的に傷付けばその時点で二度と直らない攻撃を受けるその間際⋮⋮私は自分の ︵一撃も当てられてないのに⋮⋮死んで堪るか 246 ⋮⋮。 ﹁傷が⋮⋮﹂ ﹁見事なまでにボロボロだったのでな。下手なりの応急処置だ﹂ 意識を取り戻し、身体を起こして自分の身を確認しているこの女の傷が治療できる傷 ﹂ であった事に、俺とアルビオンは何よりも驚いた。 ﹁アナタが助けてくれたの ? だからこそ女の質問に肯定だけしつつ、聞かなければならない。 れていたというのに肝心のこの女の受けた傷はちゃんと癒す事が可能。 この女が戦い、更地と化したあの場所は二度と元には戻らないだろうダメージが残さ まさに奇跡。いや⋮⋮それ以上に不可解。 結果的にはそうなるのかもしれないが、理由はちゃんとある﹂ ﹁助けたか⋮⋮。 報復が報復を…… 247 ﹁お前、どうやら転生悪魔である様だが、その身で赤龍帝と戦って何故生き延びられた ﹂ ﹂ ? 事前に知っていた筈だ﹂ ﹁さぁ⋮⋮って事は無いだろう ﹁うん、それは知ってたよ。 そもそも戦いを挑んだ時点でお前だって奴の実力を しかし、返ってきた言葉は落胆してしまうものだった。 ﹁さ、さぁ ﹁⋮⋮⋮。さぁ﹂ それは最早疑いようも無い事であり、俺は率直に聞いた。 この女の持つ経験が、対赤龍帝の役に立つ。 ? ﹁にゃ、にゃんって⋮﹂ でも私にもよくわからないにゃん。こうして生きてられてるのも﹂ ? 248 顔色を見る限り嘘じゃないのだろう。 だからこそ余計に落胆してしまうというか⋮⋮。 ﹁そんな事より助けてくれてありがとう。 あのままだったら死んでたと思うから⋮⋮﹂ ﹁別にそんな礼は要らん。 元々目的はお前から赤龍帝との戦闘状況を聞きたかったからだし⋮⋮くそ﹂ いや、八つ当たりしても仕方ないか。 この女だってまさか自分が生きてるとは思っても無かっただろうしな。 ﹁しかし不思議だ。確かに悪魔は手酷く兵藤一誠にやられはしたが、報復するならもう ﹂ 少し数多くの兵隊でもぶつけると思っていた﹂ ﹁お前、一体誰の眷属だ 結局分からないというままのオチだったと少々ガッカリしたが、現状の兵藤一誠に挑 ? ﹁⋮⋮⋮﹂ 報復が報復を…… 249 むにはあまりにも無謀である事を改めて思い知らされたってだけでも良しとしよう ⋮⋮と、ポジティブに考えようと努める事にして、俺はあの更地から数キロ程離れた場 所にポツンと立っていた小屋まで運んで治療をしてやった長い黒髪の女の身元を何と なく聞いてみる。 何分、奴を知ってるのであれば一人で挑むなんて輩は余程の自信家か何かとしか思え ないけど、この女から感じるのはそういった類いのものでは無いのだ。 ﹁アナタがはぐれ狩りをしてる人なら、わざわざ助けて治療なんかしないと思ったから うのが﹂ しかし解せないな⋮⋮俺が誰かも分からないのに、はぐれ悪魔である事を話してしま ﹁はぐれ悪魔か⋮⋮なるほどな。だから一人で無謀に挑んだわけだ。 俺は何となくそんな声が自然と出てしまう。 狭苦しい小屋の隅で、壁に背を預けて座る俺から若干目を逸らしながらの女の言葉に ﹁ほう⋮⋮﹂ ﹁居ない。私、はぐれ悪魔だもん﹂ 250 ⋮⋮﹂ ﹁わからんぞ 治療をしたのはお前から情報だけを聞き出し、その後始末する為かも しれない﹂ うか。 ﹁それにアナタも悪魔みたいだけど、悪魔達とは気配が全然違うにゃ﹂ ア イ ツ ラ 何と言うか、あの男に挑んで生還したにしては肩透かしを食らう気分と言うか何と言 フッと笑みを見せる女を見て肩の力が抜けてしまう。 キミにはずっと殺気を感じない。私はそういうのき鼻が利くにゃ﹂ ﹁それは││うん、無いよ。 ? ら、次にこんな質問をしてみた。 勘でしか無いが、この女は恐らく前者に当たるだろうな⋮⋮なんてぼんやり考えなが 主に対してやらかしたからか、それとも力に溺れただけか。 はぐれか。 ﹁⋮⋮。烏合の衆共とは一緒にしないで貰いたいね﹂ 報復が報復を…… 251 ﹁お前は何故赤龍帝に挑んだ ﹂ ﹁まさか知らないで挑みましたなんて台詞は言わせないぞ ﹁⋮⋮⋮﹂ ﹂ 兵藤一誠に一人で挑んだ理由が助けてやったついでに聞いてみたくなる訳で。 ある意味知りたい挑んだ理由。 ? ﹂ ? ⋮⋮。なるほど、結構まともな理由だな。 ﹁妹 ﹁アイツが妹を壊したから⋮⋮﹂ り締めながら、恐怖││では無く悔しさに震えて俯き、怒りを堪えるような声で言った。 そう思ったからこその俺の質問に対し、女は掛けてやった俺の上着の端を思いきり握 何か理由があるからこそ、死を覚悟で挑んだに違いない。 ? 252 ﹂ しかしコイツ、妹と言ったが一体誰の姉だ 転生悪魔ということは元の種族を聞け ば分かるかもしれないが⋮⋮。 ﹁少し前にリアス・グレモリーが眷属達ごと壊されたって話は知ってる ? ? 考えられん。 いう事を踏まえて戦車の⋮⋮確か相当に兵藤一誠から痛め付けられたあの猫妖怪しか はバラキエルの娘と戦車だが、この場合行き着くのはバラキエルは一人娘しかいないと 妹という時点で騎士の少年、純血一族であるリアス・グレモリーは無いとして、残る 車の少女の四人。 ふむ、確かあの場に居たのはリアス・グレモリー、騎士の少年、バラキエルの娘、戦 のリアス・グレモリーの眷属の中にこの女の妹が居た訳だ。 果があの夜の惨劇に繋がったという、聞けば自業自得な末路なのだが⋮⋮なるほど、そ それに加えて随分と﹃可愛がられた﹄らしく、憎悪をより膨れ上がらせてしまった結 置かれ、更に言えば元々あったあの力まで無理矢理抑制されていた。 コカビエルとアザゼル曰く、兵藤一誠は少し前まではリアス・グレモリーの支配下に ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮。納得したよそういう事か﹂ 報復が報復を…… 253 ﹂ ! ⋮⋮⋮⋮⋮。まあ俺もだけど﹂ ﹁わかってるよ⋮⋮でも、それでも仇を取りたいにゃ﹂ 立ちしても奴には勝てないぞ ? な、何でキミがそれを⋮⋮ ﹂ ﹁兵藤一誠が何故お前の妹を壊したのかという理由を知ってもか ﹁っ ! ていた俺としても、聞いてて吐き気のする話だったからな。 兵藤一誠も無意味に破壊した訳じゃあ無い⋮⋮と、コカビエルとアザゼル経由で聞い ? ? ⋮⋮。この反応はどうやら奴から直接聞いたらしいな。 !? ﹂ ﹁理由はわかったが、どうするつもりだ ハッキリ言ってしまえば今のお前じゃあ逆 中々どうして⋮⋮世知辛いな。 兵藤一誠の報復が、更なる報復を呼び寄せた結果がこの女。 猫妖怪の姉か。 い果たしても傷の一つすら付けられなかった⋮⋮ ﹁妹の仇を取る為に挑んだ。けど、結果は何にも出来なかった。私の持つ全ての力を使 254 ﹂ ﹂ 白音がそんな事する ⋮⋮。とはいえ、身内がそんな真似をしていたなんて姉としては信じられないだろう が。 ﹂ ﹁っ⋮⋮あ、あんなの⋮⋮あんな奴の言葉なんて信じられない なんて⋮⋮ くっ、キミはさっきから何が言いたいの ﹁⋮⋮。はぐれ悪魔という事から察するに、妹とは随分会ってなかった様だが ﹁っ⋮⋮そ、それは⋮⋮色々あって⋮⋮ ただ、そんな事をしない筈の妹をそこまで壊したからには、相当な恨みで ? ! ? けど、奴から受けた言葉もまた心の何処かで嘘だとハッキリ否定できる材料が無い。 ⋮⋮。多分、女も自分の妹を信じたいんだろう。 ぐっと唇を噛み締めながら再びうつ向いてしまう女。 ﹂ ﹁そ、それは⋮⋮﹂ わかる事だ﹂ いずれにせよ、お前の妹は生きてはいる様だし、その記憶を覗けば本当か嘘かは直ぐ も奴にはあったんだろうよとね。 ﹁いや別に ! ? ! ? ﹁できないか 報復が報復を…… 255 だからこそ今迷いが生じている。 ﹂ ! ﹁そうかい。そうか⋮⋮﹂ 仇を討ちたい ﹁勝って、アイツを這いつくばらせて、それが真実だとしても私は妹を││白音を壊した 砕けそうな心を持ち直させるには恐らく十分。 ﹁悔しいよ⋮⋮。アイツに勝ちたいにゃん⋮⋮﹂ 無いが⋮⋮。 故にこの言葉に意味なんてのは無い。 他人でしか無い俺が言った所で、それは他人だからこその意見だ。 ﹁⋮⋮⋮﹂ ﹁迷うくらいなら赤龍帝を倒した後にでもゆっくり真実を探るね、俺なら﹂ 256 コカビエルは言っていた。 ﹃一度決定的な挫折を味わった者が進む道は二つ。一つはそのまま腐り果てるか。も う一つはその屈辱を受け入れた上で這い上がろうとするか﹄ かつて俺が教えられた精神の一つ。 挫折したまま終わるか、挫折をバネに這い上がるかの二つに一つ。 俺はその言葉を何時でも忘れない。 ハーフ悪魔だから、白龍皇だから⋮⋮ルシファーの血を持つ者だからと何処に居ても 腫れ物扱いされ、父親に毎日殴られ続けた挙げ句、あの男に殺されて腐りかけていた俺 に手を差し伸べてくれた師の言葉を。 ﹃小僧、強くなれ。 お前の流れる血なんかまるで関係ないと胸張って言える強さを持て。 その時までは、俺がお前の師だ﹄ 挫折から這い上がり、超越した尊敬する男⋮⋮。 ﹁俺は赤龍帝と宿命の繋がりを持つ者、だから何れは戦うつもりだ。 報復が報復を…… 257 だが、今のままではどう足掻いても勝てない。どう足掻いても捻り潰される。 けど、そんな差を知った所で俺は元々諦めが悪い性格でね。﹃はいそうですか﹄なんて ﹂ 言えやしない﹂ ﹁え⋮⋮ ジしたがる無謀な輩が必要だ。 故に俺は言う⋮⋮⋮お前、俺と強くなって赤龍帝をぶち倒さないか ? なれる確信を持てる仲間を作る。 コカビエルが背を預けられる種族を越えた仲間を作った様に、俺も⋮⋮今以上に強く ﹂ となれば、俺としても一人で挑むのは無謀だし、赤龍帝の強さを知った上で尚リベン ﹁赤龍帝は同類の仲間を二人持つ。 だから⋮⋮。 ない。 そして、今俺に見せた這い上がりの精神を示したこの女には敬意を払わなければなら その師から教えは守る。 ? 258 形だけじゃない最強のチームを。 ﹂ ? ナンパだってよヴァーリ ﹁えっと⋮⋮⋮これってナンパにゃ ﹄ クハハハハ ︶ お前は肝心な所で何時も締 ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ まらんなぁ ﹃ぶふぅっ ︵うるさい !! アとイリナにも一発で見抜かれてしまった。 しかし、その表情はとてつもなく難しい顔であり、家に帰って出迎えられたゼノヴィ 小猫の姉の襲撃をぶち壊した一誠。 ⋮⋮⋮⋮。まだまだ師の様にはいかないみたいけど。 ! !! ! ﹁⋮⋮⋮。確かに後腐れ無くトドメを刺したつもりだった。けど、その瞬間俺は完全に 報復が報復を…… 259 見逃してしまった﹂ ﹂ ? ら感じた⋮⋮﹂ それだけなら何かしらの能力で片付けられけど、俺は確かにあの時一瞬だけあの女か た。 あの女に加えた攻撃の半分程に手応えが無くて、﹃まるですり抜ける様に﹄避けられ ﹁トドメを刺そうと⋮⋮いや、その前からだった。 すると、聞かされたのは最も驚く事実。 この話を受けた二人は驚きつつも、一誠の話を聞いていく。 しかし失敗した。 小猫の姉を確かに始末しようとした。 ﹁じゃあどうして⋮⋮﹂ ﹁うん⋮⋮ドライグにも言われたが、それは無い﹂ ﹁手心を加えたつもりとはでは無いんだな 260 ﹁俺やイリナやゼノヴィアと﹃同じ﹄感覚を﹂ 小猫の姉⋮⋮黒歌と名乗った女から自分達と同じものを感じた。 ﹂ 一誠のこの言葉にイリナとゼノヴィアは目を見開いた。 ﹁そんな⋮⋮間違いないのか ﹁うん⋮⋮﹂ のを止めた。 その力を自分達以外の者で持つ者が居たという話に、イリナとゼノヴィアは楽観する 言うなれば能力であり、精神をそのまま具体的にしたもの。 スキル 神器でもない、種族としての力でもない。 ﹁や、やっぱり私達だけじゃないんだね⋮⋮この力って﹂ ? だからこそ強くなろう﹂ ﹁イッセー⋮⋮目標はやはり遠いみたいだ。 報復が報復を…… 261 ﹁私もゼノヴィアもこれまで以上に頑張るから、イッセーくんも一緒に⋮⋮ね ﹂ ! ﹂ ? わすのだった。 三人の心はより一つとなり、その証だとばかりに部屋の真ん中でガッチリと包容を交 より強くなる。 ﹁⋮⋮。おう、二人に言われると頑張れちゃうぜ⋮⋮ 262
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