高等学校への巡回相談を通して(PDF:180KB)

私の実践紹介
高等学校への巡回相談を通して
県立鹿屋養護学校
はじめに
教諭
西
育子
「“注視―復唱”話形」が,Dさんの理解や記憶,
安心感を促していくと思います。また,「“注視―
「いろいろ分からなかった自分のことが分かり, 復唱”話形」は,Dさんだけでなく他の生徒さんに
だいぶ楽になりました。」と,Aさんの年賀状には も有効な支援となるでしょう。特に“復唱”の効
ありました。B高校に通うAさんは学校生活で苦戦 果はかなりあると思います。
が続き,特別支援教育コーディネーターである養
護教諭のC先生の勧めで,巡回相談で知能検査(WA
説明に「順番ことば」「数ことば」
IS-Ⅲ)を受けました。Aさんが検査を受けて楽に
視覚情報に強いEさんには,視覚支援をお願いし
なったと聞き,C先生も私も安堵しました。
たいところですが,視覚支援がいつもできるわけ
でもありません。そんなときには言葉だけで理解
実践の内容
する負担を減らせるよう,“まず・それから・最
後に”などの「順番ことば」や,“1番目に~・2
高校でできる支援
番目に~”などの「数ことば」を意識的に使って
検査実施に当たり,C先生は検査を「生徒自身が 短文で説明するとよいと思います。もちろんこれ
自分を知り,自己の良さを見つけるツール」と捉 も他の生徒さんにも効果的です。
え,結果の説明を本人・保護者・担任に丁寧に行
いました。数字(結果)が一人歩きしないよう御
課題は「小分け」と「繰り返し」
協力くださったのです。加えて本人や保護者の了
Fさんは集中が続かないというより,短期決戦
承のもと,検査結果や支援案を職員会で提案し, 型と言えそうです。一度に提示する課題は短時間
特別支援教育を理解してもらうための労力を惜し でサッとやれる“小分け課題”にし,それを繰り
みませんでした。
返します。例えば1枚に載せる問題を10問から5問
その後,私はA高校で20人の生徒の検査をするこ にし2枚でやってもらう。これにより「2枚頑張っ
とになるのですが,どの事例においても検査報告 た」という達成感も得られます。課題や情報は「小
書には,生徒や保護者へ
分け&繰り返し」で,Fさんの良さを生かす支援
のコメントだけでなく,
になると思います。
職員会の資料となるよう
な「高校でできる支援」
ほめるのは「していいこと」を示すため
を具体的に記入すること
行動面や生活面の指導は,学習指導と違い“場
を求められました。
の指導”の方が身につきやすいものです。自分の
私は,C先生やA高校の
行動は本人には見えにくいだけに,ほめることで
先生方との出会いにより,
「今の行動はよかった」と具体的に伝えることが
ときに厳しい御指摘もい
できます。叱るだけでは「していいこと」を伝え
ただきながら,巡回相談
る具体性に欠けるとも言えます。「していいこと」
員として育てていただい
をその場で確実に伝えるためにほめましょう。
たと感謝しています。
以下,A高校で実施した検査の報告書により,提
終わりに
案した支援案をいくつか記します。
今年度は異動に伴い,巡回相談から離れ担任とし
復唱を促す話形
て毎日を送っていますが,巡回相談で学んだこと
言語力に課題が見られるDさん,高校生といえど を生かせることが多く感謝しています。これから
も話の内容をしっかり伝える工夫が必要です。特 も周りの先生方から多くを学んでいくつもりです。
に集団の場面では,話す前に注視を確認し,話し
巡回相談でお世話になったすべての先生方に敬
た後には先生が言ったことを復唱させるという,
意と感謝をこめて,結びにしたいと思います。