調 査 速 報 タイ自動車市場月次統計(2016年9月)

調 査 速 報
浜銀総合研究所
調査部
産業調査室
2016.10.31
タイ自動車市場月次統計(2016年9月)
輸出減速に国王薨去に伴う内需停滞リスクが加わり、国内生産への下方圧力強まる
○輸出減少の継続により、国内生産の基調は下向いたまま
・タイ工業連盟
(Federation of Thai Industries)
が発表した 2016 年9月の四輪車総生産台数は、
前年同月比 0.9%増と3か月ぶりに前年比プラスとなった。季節調整済年率換算値(当社試
算、以下 SAAR)も前月比 1.8%増の 194.2 万台と4か月ぶりに増加したが、3か月後方移
動平均値でみたトレンドは下向いたままであり、軟調に推移している(図表1)
。輸出の
減速が足を引っ張る状況が続いている。国内販売は年率 70 万台後半の水準で安定推移し
ているが、10 月 13 日のタイ・プミポン国王薨去に伴う、消費マインドの低下や販促活動
の自粛により、10 月以降の販売は当面、停滞する可能性が高い。16 年1∼9月の生産台
数の平均 SAAR は 198 万台と、引き続き前年実績 191 万台を上回っているものの、減速が
続く輸出に加え、下振れ懸念が発生した国内販売の停滞も生産の足かせになる公算であり、
16 暦年の生産台数が 200 万台に回復するのは厳しい状況となってきた。
・9月の総輸出台数は前年同月比 9.9%減と3か月連続で前年割れとなり、SAAR も前月比
4.6%減の 110.1 万台と4か月連続で減少した(図表2)
。原油及び資源価格の下落を起因
とした中近東及びアフリカでの景気悪化と南米の景気低迷が、タイの自動車輸出に強い逆
風となっている(図表3)
。16 年1∼9月の輸出台数の平均 SAAR は 120 万台と、前年実
績 120 万台と同水準となっているが、直近の SAAR は3か月連続で 120 万台を下回ってお
り、足元の減速基調が続き、16 暦年の輸出台数が 120 万台を割る可能性が高い。
・9月の国内販売台数は前年同月比 2.9%増と2か月連続で前年超えとなった一方で、SAAR
は前月比 0.9%減の 78.2 万台と2か月連続で減少した。
(図表4)
。16 年1∼9月の国内
販売の平均 SAAR は 77 万台と 15 暦年実績(80 万台)を下回っており、直近の9月の販売
台数には一服感もみられているが、年率 70 万台後半で底堅く推移している。9月の消費
者信頼感指数は3か月連続で上昇しており、景況感の改善が国内販売の下支え要因のひと
つとなっている(図表5)
。
図表1 国内生産は減少基調が続く
・5年前にインラック政権による First
Car Buyer Programme(初回購入者に一
部税還付する自動車購入奨励策)で購
入された車の買い替え需要が、本年9
月以降に国内販売を押し上げていく
と予想していたが、国王薨去に伴う消
費活動の低迷が下押し要因となる公
算大である。国内販売への影響がいつ
まで続くかは予測不可能だが、国内販
売と国内生産での先行き不透明感が
強まっている。
季調済、千台
タイ四輪車総生産台数
前年同月比、%
100
3,000
80
16年9月SAAR 194.2万台
前月比+1.8%
2,500
60
40
2,000
20
1,500
0
1,000
500
季節調整済年率換算値:SAAR(左軸)
3か月後方移動平均値(左軸)
前年同月比(右軸)
2012年
245万台
2013年
246万台
2014年
188万台
-20
16年1∼9月
平均SAAR
198万台
-40
-60
2015年
191万台
-80
-100
0
.
12
13
14
15
16
2011年
注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。
注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。
出所: Federation of Thai Industriesのデータを基に作成
1
図表2 輸出台数(SAAR)が4か月連続の減少
前年同月比、%
タイ四輪車総輸出台数
季調済、千台
80
1,600
季節調整済年率換算値:SAAR(左軸)
16年9月SAAR 110.1万台
3か月後方移動平均値(左軸)
前月比▲4.6%
60
1,400
前年同月比(右軸)
1,200
40
1,000
20
0
800
600
-20
16年1∼9月
平均SAAR
120万台
400
200
2012年
103万台
2013年
113万台
2014年
113万台
-40
-60
2015年
120万台
-80
.
0
12
2011年
13
14
15
16
注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。
注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。
出所: Federation of Thai Industriesのデータを基に作成
図表3 中南米、中近東、アフリカ向け輸出減少が足を引っ張る
仕向地別輸出台数の推移
千台
400
350
300
250
200
150
100
50
0
307
288
5
4
18
15 253 20
21 2
13
29 19 44
30
62
71
68
84
64
79
281
0
14
19
43
292
8
17
22
34
59
58
59
71
67
54
79
87
269
13
13
21
28
54
328
16
289
279 17 12
11
39
13 14
23 30 39
34 27
74
60 70
329
22 300 308
11
11
18 9
248 40 7 36
31
12
9 41 26 29
36
25 77 75 80
69
68
69
66
75
81
76
72
69
65
73
32
57
68
56
仕向地別輸出台数の推移
(前年同期間比)
前年同期間比、%
80
60
306
287 30
28 6
6 39
38
30
24
40
全世界
中近東
アジア
豪州・オセアニア
中南米
欧州
アフリカ
20
83
86
72
83
-20
36
34
-40
87
66
82
中近東
アジア
豪州・オセアニア
中南米
欧州
アフリカ
北米他
0
2014 Q2
Q1
Q3
Q4 2015 Q2
Q1
Q3
Q4 2016 Q2
Q1
Q3
Q4
中南米
中近東
アフリカ
2013 Q2 Q3 Q4 2014 Q2 Q3 Q4 2015 Q2 Q3 Q4 2016 Q2 Q3 Q4
-60
Q1
Q1
Q1
Q1
出所:Somboon
Advance Technology社公表資料を基に浜銀総合研究所が作成
出所:Somboon Advance Technology社公表資料を基に浜銀総合研究所が作成
2
図表4 国内販売(SAAR)70 万台後半で安定推移
タイ四輪車総販売台数
季調済、千台
1,800
前年同月比、%
季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 80
3か月後方移動平均値(左軸)
60
前年同月比(右軸)
40
16年9月SAAR 78.2万台
前月比▲0.9% 20
1,600
1,400
1,200
1,000
0
800
-20
600
-40
16年1∼9月
平均SAAR
77万台
400
2012年
143万台
200
2013年
133万台
2014年
88万台
0
-60
2015年
80万台
-80
-100
.
12
13
14
15
16
2011年
注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。
注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。
出所: Federation of Thai Industriesのデータを基に作成
図表5 消費者信頼感指数は3か月連続の上昇
季調済、千台
タイ四輪車総販売台数(SAAR)と消費者信頼感指数の推移
2,000
100
1,800
消費者信頼感指数(右軸)
1,600
90
四輪車総販売台数SAAR(左軸)
1,400
1,200
80
1,000
800
70
600
400
60
.
2012年
13
14
15
16
注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。
注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。
出所: Federation of Thai Industries、University of the Thai Chamber of Commerceのデータを基に作成
担当:調査部 産業調査室 深尾三四郎
Tel: 045-225-2375
Email: [email protected]
本レポートの目的は情報の提供であり、売買の勧誘ではありません。本レポートに記載されている情報は、浜銀総合研究所・調査部が
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