浜銀総合研究所 調査部 2016年12月26日 調 査 速 報 タイ自動車市場月次統計(2016年11月) 2017 年タイ自動車生産台数は 197 万台と 16 年比微増 を予測:国内で買い替え需要増加も輸出減速が逆風に 主任研究員 深尾 三四郎 045−225−2375 [email protected] 要 約 2016年11月国内生産台数(季調値)は年率193.4万台。16暦年予測は196万台と200万台割れする公算。 同月の輸出台数(季調値)は117.1万台。16年予測は120万台弱と過去最高の15暦年実績を若干下回る。 タイ工業連盟の17年国内生産台数予測は200万台。輸出環境の厳しさ踏まえ、浜銀総研予測は197万台。 2016 年国内生産台数は 200 万台に一歩及ばない状況 タイ工業連盟(Federation of Thai Industries:以下、FTI)が発表した 2016 年 11 月の四輪車総生産台数は、前 年同月比 4.7%増と前年超えし、 季節調整済年率換算値(当社試算、 以下 SAAR)も前月比 2.7%増の 193.4 万 台と増加した。3か月後方移動平均値でみたトレンドは7月以降、減少基調が続いていたが、11 月は久方 ぶりに微増となった(図表1) 。10 月 13 日のタイ・プミポン国王薨去に伴う、消費マインドの低下や販促 活動の自粛により、10 月以降は国内販売が減速しているが、輸出増強で国内生産の底割れを免れている状 況だ。16 年1∼11 月の生産台数の平均 SAAR は 197 万台となった。11 月の国内生産の SAAR が 12 月も 続いたとすると、16 暦年の国内生産台数は 196.4 万台となり、前年実績(191 万台)は上回るものの、残念 ながら 200 万台レベルには届かない状況である。 11 月の総輸出台数は前年同月比 3.1%減と5か月連続で前年割れとなり、SAAR も前月比 3.9%減の 117.1 万台と 120 万台を下回った(図表2) 。国王が薨去した 10 月以降、内需減少を抑えるために輸出生 産を強めていると推察するが、中近東やアフリカでの景気悪化と南米の景気低迷などを背景に、新興国向 けの輸出の弱さが引き続きタイの自動車輸出に強い逆風となっている。16 年1∼11 月の輸出台数の平均 SAAR は 120 万台と前年実績と同水準となっている。 11 月の輸出台数の SAAR が 12 月も続いた場合、 16 暦 年の輸出台数は 119.6 万台となり、過去最高を記録した 15 暦年実績から微減となる見通しである。 11 月の国内販売台数は前年同月比 15.2%減と2か月連続で2桁%の減少となり、SAAR も前月比 2.3% 減の 72.5 万台と4か月連続で減少した(図表3) 。国内販売の SAAR は2か月連続で 70 万台前半の水準 にまで落ち込んでいる。11 月の消費者信頼感指数は2か月連続の下落となっており、消費ムードの減退が 国内販売の足かせ要因のひとつとなっていよう(図表4) 。16 年1∼11 月の国内販売の平均 SAAR は 76 万 台となっている。11 月の国内販売台数の SAAR が 12 月も続くとなると、16 暦年販売台数は 76.1 万台と 図表1 16 年国内生産は 200 万台割れの公算 なり、4年連続の減少となろう。 12 月 21 日、 FTI は 2017 年のタイの国内生産台数が 200 万台、 国 季調済、千台 タイ四輪車総生産台数 内販売台数は 80 万台、輸出台数は 120 万台と予測した。17 年の 増産(16 年 FTI 予測 195 万台)の主因は国内販売の増加として いるが、 5年前にインラック政権によるFirst Car Buyer Programme (初回購入者に一部税還付する自動車購入奨励策)で購入された 1,500 車の買い替え需要が、国内販売を持ち上げることを前提としてい 1,000 る。弊社では足元の輸出環境の厳しさを踏まえ、輸出台数が前年 500 割れするとみており、現時点で 17 年国内生産台数は 197 万台、国 0 1 80 16年11月SAAR 193.4万台 前月比+2.7% 2,500 2,000 内販売 80 万台、輸出台数 117 万台と予測する(図表5) 。 前年同月比、% 100 3,000 60 40 20 0 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 3か月後方移動平均値(左軸) 前年同月比(右軸) 2012年 245万台 2013年 246万台 2014年 188万台 -20 16年1∼11月 平均SAAR 197万台 -40 -60 2015年 191万台 -80 -100 . 12 13 14 15 16 2011年 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。 出所: Federation of Thai Industriesのデータを基に作成 浜 銀 総 研 調 査 速 報 図表2 輸出台数(SAAR)は前月比で減少 図表3 国内販売(SAAR)は減少基調続く タイ四輪車総販売台数 前年同月比、% 季調済、千台 タイ四輪車総輸出台数 季調済、千台 80 1,600 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 1,800 16年11月SAAR 117.1万台 3か月後方移動平均値(左軸) 前月比▲3.9% 60 1,600 1,400 前年同月比(右軸) 1,200 40 1,400 1,000 20 1,200 1,000 0 800 600 -20 16年1∼11月 平均SAAR 120万台 400 200 2012年 103万台 2013年 113万台 2014年 113万台 -40 -80 . 0 2011年 12 13 14 15 0 800 -20 600 2012年 143万台 200 2013年 133万台 2014年 88万台 0 -80 -100 . 12 13 14 15 16 2011年 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。 出所: Federation of Thai Industriesのデータを基に作成 図表4 消費者信頼感指数は2か月連続で下落 タイ四輪車総販売台数(SAAR)と消費者信頼感指数の推移 季調済、千台 2,000 100 1,800 消費者信頼感指数(右軸) 1,600 90 四輪車総販売台数SAAR(左軸) 1,400 1,200 80 1,000 800 70 600 60 400 . 13 -60 2015年 80万台 16 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。 出所: Federation of Thai Industriesのデータを基に作成 2012年 -40 16年1∼11月 平均SAAR 76万台 400 -60 2015年 120万台 前年同月比、% 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 80 3か月後方移動平均値(左軸) 60 前年同月比(右軸) 40 16年11月SAAR 72.5万台 前月比▲2.3% 20 14 15 16 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。 出所: Federation of Thai Industries、University of the Thai Chamber of Commerceのデータを基に作成 2 浜 銀 総 研 調 査 速 報 図表5 浜銀総研は 2017 年国内生産台数を 197 万台と予測 インラック政権 自動車購入支援策実施 タイ自動車市場の長期推移 (1995年∼) 万台 250 生産 国内販売 輸出 200 (11年9月∼12年12月契約車両) 245 タイ大洪水 東日本大震災 リーマンショック 150 188 146 139 113 143 75 アジア通貨危機 50 53 0.7 0 58 59 56 1.4 36 4 16 14 7 33 22 13 41 46 26 30 63 113 100 90 72 68 69 54 63 78 55 44 197 79 120 119.6 117 113 80 103 88 53 42 196 133 119 93 100 191 165 129 57 246 61 80 74 80 76 54 33 15 18 18 24 注: 16年及び17年は浜銀総合研究所予測。 出所: Federation of Thai Industriesのデータを基に浜銀総合研究所が作成 本レポートの目的は情報の提供であり、売買の勧誘ではありません。本レポートに記載されている情報は、浜銀総合研究 所・調査部が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、その正確性、完全性を保証するものではありません。 3 浜 銀 総 研
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