Uq(su(2))における対号射について

Uq (su(2)) における対号射について
きよはらメモ 9/13
ここでの量子群は q ̸= 0, ±1 の複素数であるとし、次の交換関係を満たす生成作用素 H 由来の q ±H/2 、L± と 1
を持つ Lie 環である。文献によっては q ±H = K ±1 とする「K 流儀」や q ±H/4 といった「q ±xH 流儀」もある。L±
については sl(2) における生成元 E, F と同じものとみなしてよいだろう。 Uq (su(2)) は一般の su(2) とは既に違
うものであると解釈できる (こうなってくると最早 sl(2) との違いもはっきりとはしないものとなってしまうが)。
[H, L± ] = ±2L± ,
[L+ , L− ] =
q xH − q −xH
q x − q −x
さらに以下の演算を定義することにより量子群 Uq は Hopf 代数 (Uq , ∆, ϵ, S) となる。
Hopf 台数構造:
(余積): ∆(1) = 1 ⊗ 1,
∆(H) = H ⊗ 1 + 1 ⊗ H,
∆(L± ) = L± ⊗ q H/2 + q −H/2 ⊗ L± ,
∆(q ±H/2 ) = q ±H/2 ⊗ q ±H/2
(余単位射): ϵ(1) = 1,
ϵ(L± ) = 0,
(対合射): S(1) = 1,
ϵ(H) = 0,
S(H) = −H,
S(L± ) = −q ±1 L± ,
ϵ(q ±H/2 ) = 1
S(q ±H/2 ) = q ∓H/2
ここで注意しておきたいのは、生成元 H は実際の計算には使われておらず、q
±H/2
における演算を導出するため
の「かませ犬」的な役割に過ぎないという点である。そもそも H の存在にすら実は触れる必要はあまりないのか
もしれない。
ここでは L± 対号射 S(L± ) についてのみ考察する。関係式
m((S ⊗ id)∆(L± )) = u(ϵ(L± )) = m((id ⊗ S)∆(L± ))
が今回の対合射の定義で満たされるかどうかを確認しよう。u(ϵ(L± )) = 0 であるから上式の両端の辺が 0 になる
ことを確認する。
m((S ⊗ id)∆(L± )) = m((S ⊗ id)(L± ⊗ q H/2 + q −H/2 ⊗ L± )) = m(S(L± ) ⊗ q H/2 + S(q −H/2 ) ⊗ L± )
= S(L± )q H/2 + S(q −H/2 )L± = −q ±1 L± q H/2 + q H/2 L±
となる。これ以降の計算を進めていくために重要な関係式として
q H/2 L± q −H/2 = q ±1 L±
を用いる (証明略)。すると
m((S ⊗ id)∆(L± )) = −q ±1 L± q H/2 + q H/2 L± = −q ±1 L± q H/2 + q H/2 L± (q −H/2 q H/2 )
= −q ±1 L± q H/2 + (q ±1 L± )q H/2 = (q ±1 − q ±1 )L± q H/2 = 0
となる。対して
m((id ⊗ S)∆(L± )) = m((id ⊗ S)(L± ⊗ q H/2 + q −H/2 ⊗ L± )) = m(L± ⊗ S(q H/2 ) + q −H/2 ⊗ S(L± ))
= L± S(q H/2 ) + q −H/2 S(L± ) = L± q −H/2 − q ±1 q −H/2 L±
= (q −H/2 q H/2 )L± q −H/2 − q ±1 q −H/2 L± = (q ±1 − q ±1 )q −H/2 L± = 0
となって、関係式を満たすことがわかり、対合射の定義も S(L± ) = −q ±1 L± で問題ないということがわかる。
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