夜尿症

夜尿症
専門医セミナー2016 腎臓班
夜尿症の定義
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睡眠中に不随意に尿を漏らす
5歳以降で、1か月に1回以上の夜尿が
3か月以上続くもの
(International Children’s Continence Society 2014)
たかが “おねしょ”、
されど “おねしょ”
夜尿症診療ガイドライン2016
(日本夜尿症学会)
1.
2.
3.
原因、分類
有病率と経過
治療
分類①
一次性夜尿症 (約90%):
これまで夜尿が消失していた時期が
あったとしても6か月に満たない
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二次性夜尿症 (10〜20%):
これまで夜尿が6か月以上消失していた
時期があった
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分類②
単一症候性夜尿
◆
非単一症候性夜尿
◆
(25%)
下部尿路症状を合併
夜尿症の原因
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夜間多尿:主に就眠中の抗利尿ホルモン(ADH)の分泌
低下による
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排尿筋過活動:排尿筋の抑制の異常、睡眠中に膀胱
の収縮の頻度が増加している
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覚醒閾値の上昇:起こしても覚醒しにくい
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遺伝的素因:半数以上は親に夜尿症の既往
遺伝的素因に基づく排尿機構発達の異常
日本の病型分類
正常型
夜尿をきたす器質的疾患
有病率
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有病率
5歳 15%
7歳(小学校入学時) 10%
10歳 5%
15歳 1%
一部は成人になっても継続
小児期の1年後の治癒率
治療未介入 10〜15%
治療介入 50%
←3倍以上 !!
夜尿症の経過
(Yeung CK et al. BJU Int 2006: 97: 1069-1073)
実際に、おねしょを主訴と
した患者がきたら・・・
問診
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一次性か、二次性か
夜尿の頻度、量、時間
夜尿の家族歴
夜尿に対して治療を望んでいるか
夕食時間、就寝時間、起床時間、(入浴時間)
多飲、多尿はあるか、水分摂取の様子
便秘の有無
日中の尿失禁の有無、排尿回数
排尿時痛や排尿の異常はないか(尿意切迫、尿こらえ姿勢)
いびきの有無
UTIの既往歴
診察
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成長障害はないか
高血圧はないか
扁桃肥大
腹部に便塊を触知しないか
仙骨部の皮膚の異常 (皮膚洞、脊髄脂肪腫)
陰部の異常はないか(尿道下裂、包茎、陰唇癒合)
初診時の検査
①検尿 (必須):尿比重、尿定性、尿沈査、
尿浸透圧(早朝尿)
②血液検査:
血算、一般生化(腎機能、電解質、血糖)
③腹部エコー(腎・膀胱):
形態異常、膀胱炎、残尿の有無
(④腹部X線検査:便秘や潜在性二分脊椎の評価)
夜尿ダイアリー
夜尿ダイアリー
次回受診までに調べてもらう
夜尿の頻度、量、(時間)、起床時の尿量
→夜間尿量(夜尿量+起床時尿量)
◆ 昼間のがまん尿量
→膀胱容量
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排便の有無
◆ (排尿回数)
◆ (水分摂取回数、量)
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治療
1)生活指導
◆ 2)薬物治療
DDAVP
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(抗コリン薬、三環系抗うつ薬、その他)
◆
3)アラーム療法
治療開始時期
生活指導は全例に
積極的な治療は6歳以上に
夜尿症に対して治療は必要か
ほぼ毎日夜尿のある小児では、自然に治
癒せず成人まで移行するリスクが高い。
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夜尿症はこどもに精神的外傷を与える。
自尊心が低く、劣等感が強い。
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夜尿のある児とその保護者はQOLが低下
している。
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初期診療
生活指導①
あせらない、おこらない、おこさない
夜尿は長期間かかるもの
◆夜尿をしても怒らない
◆夜尿のない日はほめる、ご褒美を与える
◆夜中トイレに起こさない
◆
(→排尿機構発達を阻害)
生活指導②
規則正しい生活リズムの確立
◆早寝、早起き、決まった時間に食事
→早く寝ることはADHの分泌を促す
飲水量の制限
◆日中は十分に食事、水分を摂取し、夕方
から制限
◆夕食は寝る2(〜3)時間前にすませ、その後
は飲食しない、飲んでも200mlまで
◆夕食に汁物、果物はやめる
生活指導③
塩分、たんぱく質・牛乳、カフェインの
(過剰)摂取は避ける
◆
Na、尿素、Caの排泄が増加→多尿
カフェイン→多尿、過活動膀胱
寝る前にトイレに行く
◆睡眠中の寒さや冷えから身体を守る
◆
・夕食後に入浴、湯船に浸かる、その後すぐに就寝
・足元を温める、靴下を履く
夜尿日誌をつける
◆
薬物療法①
デスモプレシン
(1-deamino-8-D-arginine-vasopressin:DDAVP)
バソプレシン(AVP)の誘導体
◆V2受容体に高い選択性を有し、昇圧作用を
ほとんど有さず、容量に依存して抗利尿作用
が長時間持続
◆有意に夜尿回数を減少させたという多くの報
告がある
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薬物療法①
デスモプレシン(DDAVP)
1. 口腔内崩壊錠(ミニリンメルト)
120μgから開始
2. 点鼻薬(デスモプレシンスプレー)
10μg(1噴霧)から開始
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2週間程度見て効果不十分、または起床時尿浸透圧の上昇
が不十分な場合には倍量に増量可
【副作用】水中毒(浮腫、頭痛、嘔気など)
就寝前2時間以内に200ml以上の水分を摂取したら、使用
しない
薬物療法②
抗コリン薬
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昼間尿失禁を伴う例や治療抵抗例にDDAVPと併用
睡眠中の膀胱容量を増大させる
排尿筋の過活動を抑制する
副作用:便秘、残尿の増加、中枢神経系
眼球の乾燥、口渇
・ソリフェナシン(ベシケア) 成人5mg
・オキシブチニン(ポラキス) 1〜3mg
・プロペビリン(バップフォー) 成人20mg
分1就寝前
薬物療法③
三環系抗うつ薬
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他の治療で効果が得られなかった例に併用
致死的不整脈等の副作用あり
・アナフラニール、トフラニール
漢方薬
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軽症の症例
他の治療である程度改善した例に併用
アラーム療法
アラーム療法
睡眠中の排尿を気づかせ、覚醒してトイ
レに行くか我慢できるようにする
◆夜間の膀胱の蓄尿量が増えると考えられ
ている
◆週に3回以上の夜尿がある例に効果が高い
◆患者を完全に覚醒させることが成功の鍵
◆適応例が限られる、ドロップアウトが多
い
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夜尿症の治療
DDAVP、アラーム療法のどちらかを第一
選択として使用
◆夜尿がほぼ毎晩ある場合、治療しても治
癒まで2〜3年かかることも多い
◆3〜4ヶ月治療しても効果がない場合はだ
らだらと治療せず
→ 一旦中止して再開
→ 難治の場合は基礎疾患がある可能性
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期待膀胱容量(EBC)
小学校1年生:150ml以上
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2年生:200ml以上
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3年生以降:250ml以上
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日本では 標準体重(kg) ×7〜8 ml、25×(年齢+2) ml
ICCSでは 30×(年齢+1) ml
低膀胱容量:日本では 5ml/kg以下
ICCSでは EBCの65%以下
正常の夜間尿量
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小学校1~3年生:200ml 以下
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小学校4年生以降:250ml 以下
夜間尿量 = おむつ尿量 + 起床時尿量
夜間多尿 日本では0.9ml/kg/h以上
ICCSではEBCの130%以上
続発性夜尿症
尿崩症(中枢性、腎性、心因性)
◆ 慢性腎不全、腎・尿路系の異常(尿道狭
窄、後部尿道弁)、過活動膀胱、尿路感
染症
◆ 脊髄疾患(神経因性膀胱、腫瘍)
◆ てんかん、けいれん
◆ ADHD
◆ 心因性
◆ その他
便秘、睡眠時無呼吸症候群
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必要に応じて行う検査
難治例、神経因性膀胱が疑われる症例に
◆ ①膀胱造影(VCG)
◆ ②腰椎MRI
◆ ③頭部MRI
◆ ④脳波検査
◆ ⑤尿流測定、侵襲的尿流動態検査
(→泌尿器科)
宿泊行事への対応
寝る前に排尿、夕食以降の水分制限
◆他の子に知られないように夜間、早朝に
先生に起こしてもらう
◆別の部屋でおむつをつける、着替えさせ
てもらう
◆寝静まってから別の部屋に移してもらう
◆パジャマのズボンの色は黒・紺などの濃
色に
◆パンツに薄いパッドを縫い付けておく
◆