鬼子6話 ID:100051

鬼子6話
No.あ
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︻あらすじ︼
矛盾を抱えた存在故に、その矛盾を是とする反矛盾的な在り方│││。それが、魔術
的架空要素、偽りの魔力の本質に他ならない│││
目 次 a │││
1
f i l e 6. l a m u e r t e de Andaluc
í
a
file6. la muerte de Anda
luc
title la muerte de Andaluc
﹁││ひ、まわり畑・・・・・・。﹂
だ、先程まで城の庭園だったそこは│││
a
どこであろうか、この光景をおよそ体現し得るのは少なくとも私の国では恐らく無理
目を開くと眼前には有る筈も無い、少しばかり容認し難い光景が広がっていた。
í
恐ろしくはあったが、その瞬間だけはとても落ち着いていられた気がする。
それは眩しくも暖かく、私を包み込んだ│││。
瞬間、光に包まれた。
í
1
そう、視界全てにその広がりを強調させる向日葵の群、
そこに点々と乱立する風車、流れる小川、その光景はまるで童話やお伽噺に出てくる
ソレのようであった。
見覚えがあった、とても見覚えがあった。それは印象深く頭に残っていた筈なのだ
が、何故か思い出せなかった。││そして、
ガサっ│││
﹂
いきなり物音がしたもので驚いたが、それはあちらも同じ。
﹁な、なんだ・・・これは│││
!?
世界を塗りつぶす心象の具現・・・固有結界だと
先生も私と同様、この理解し難い状況にただただ戸惑っているのだ。
﹁こ、コレは・・・
!?
﹁そうだ、コレが僕の心象にして切り札。﹂
かるはずもない事であったが。
﹂
先生はこの現象の正体を固有結界と呼んだ。ソレは私に全く知る由もないことで、わ
!?
!
陽が照りつけているのに雨が降るなんて、まるで狐の嫁入りのそれを彷彿とさせた。
空から血が降るなんて、趣味が悪い。
ポツポツと、赤い雨が私を濡らす。色と匂いですぐにわかった、コレは血だ。
﹁雨│││、﹂
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2
﹁
│││﹂
いや、驚く所はそこではない。
﹁貴様、何故│││左腕が・・・
吃驚この上ないとはこのこと。
﹂
先程まで姿が見えなかったブラハムが、突如先生の背後にスッと現れた。
!?
﹁馬鹿な
﹂
この短時間で切断した腕の接合など・・・
も程がある
いくら死徒とは言え、早するぎに
!
そう言い、クスッと微笑む。
﹁さぁ、始めようか。﹂
透き通るように鮮やか、しかしどこか静けさを思わせるような、深い蒼。
以前までの彼の目は真紅を映していた│││が、今彼の目に映されているのは﹁蒼﹂。
﹁青い・・・。﹂
が、何故か彼の瞳の色が以前と異なるものになっていた。
ブラハムは答えない、ただ静かに目の前の敵をその眼光で睨みつける。
﹁│││。﹂
!
!?
繋がっているのだ。
先程、先生に切り落とされた筈の左腕が、まるで何事も無かったかのように、見事に
!?
3
ブラハムの挑発じみた態度に苦笑いを浮かべ、空を見上げた。
﹂
﹁ククク・・・減らず口を。固有結界とは言え、私の優勢は揺るがぬぞ。偽りとは言えこ
、、、、、、、、、、、
の日光がある限り、我が剣が貴様の影を捉えるのは時間の問題よ。﹂
?
、、
﹂
!?
どうして
そ
こ
おろか
何故眼前に居るというのに姿を捉えられない・・・
ものだと脳が勝手に解釈してしまう。
しかし何故か、彼の姿を視認する事は疎か、其処に居るはずなのに彼が其処に居ない
!
、、、、、、、、、、、、、
何故なのだ
!?
ちゃんとこの場所に居る事が感じ取れているからだ。
﹁何故だ
!
同感、ブラハムは確かに其処にいる。
﹂
そ ん な 事 は 先 生 も 充 分 理 解 出 来 て い る 筈 だ。│ │ │ な に せ、私 で あ っ て も 彼 が
無論、ブラハムは消えた訳ではない、我々の視界から突如姿を消しただけである。
、、、、、、、、
その呟きは的確で、実によく的を得ていた。
﹁き・・・消えた・・・・・・・だと・・・・・・・・・・っ
先生の顔色を伺うに、ソレは私と全く同じ心境であろうと確信できた。
それはどうやら私だけではないようで
﹁な│││﹂
瞬間、しつこいとばかりに再び、理解し難い現象を目の当たりにする。
﹁そうだね、でもそれは、君の目に僕の影が映れば・・・の話だろう
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4
わ
かっ
て
い
る
それは、例えるならまるでトリックアート。
、、
思わず、何故か、例えそれがコンマを数える刹那の間に
タネも仕掛けも最初から了知っている、しかし、いざ対象の拝観を試みる。
│││するとどうだろう
に付けてないし、好きに呼べば
﹂
た
﹁ならば・・・その左腕はどう説明を付ける
﹂
ノ ウ ブ ル カ ラー
方であるはずの私でさえそう感じるのだ、そうとうなショックを受けているだろう。
その一言で、先生の疑問を一蹴してしまったのだ。いや、これは流石に酷い。彼の味
﹁やっぱり君、馬鹿じゃないのか
﹂
これはね、僕の魔眼。視覚支配を可能とする幻覚の魔眼の亜種。まぁ、名前なんて別
ア イ・ジ ャ ッ ク
﹁別に。君に教えてやる筋合いは無いけど、特別に教えてあげるよ。
そして、彼の眼にその秘密が存在したのだ。
あっ
案の定それはその通りで、それを可能とする能力。
私は直感的にそれと同一な技術であろうと悟った。
報を送り込む技術。
それはまさしく芸術の結晶と言えよう。人の視覚をこうも自在に操り、脳に偽りの情
あったとしても、我々の脳はつい騙されてしまっている。
?
たかだか数秒、数十秒の間を以ていかにその傷を修復したと言うのだ・・・
!?
?
?
!?
5
﹁左腕も同じトリックだとは思わないのかい
ソレには私も気づけなかった│││と言うことは私も彼の言う馬鹿ではないか。
ら。﹂
既出の僕の能力から考えて、それが最も理にかなった方法だと考えるけどね、僕な
?
﹂
思わず口から﹁ム、﹂と一言。意識した訳では無いが、つい一言だけ零れた。
?
かべる他あるまい。
案の定、それは正しかったようだ。
﹁おのれ・・・貴様、どこまで私を侮辱するつもりだ・・・・・・・・
ドスの効いた声色でそう吐き捨てる。
!
﹁そうだね。君ほどの吸血鬼だ、近づけばどれだけ姿を消そうとも気配で察知されるだ
らな﹂
﹁姿が見えずとも関係ない。なにせ、貴様に私を打倒しうる算段など存在しないのだか
そして、己が手に握る得物を構える
﹂
おちょくっているのか、天然なのか、どちらにせよ、これには先生も憤怒の気色を浮
いや、私が言うのもなんだけど、コイツ性格悪いわね。
と、手のひらを返すかの如く先程自分で述べた意見を用意に覆してみせたのだ。
﹁まぁ、実際には違う能力なんだけどね
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6
ろうし。ここから君を攻撃したとして、投擲により僕の位置がバレてしまう﹂
﹂
?
﹁﹃血液操作﹄という魔術特性を持った男が居てね。その男は霊長類全ての血液を自在に
的に魔力を込められる場合もあるが、それを永続的に保存する事は不可能に近い筈だ。﹂
しかし不可能だ、血液は宝石の特性とは異なる。たしかに血液には短時間ながら一時
用いたものか・・・。
なるほど・・・宝石や鉱物などに魔力を宿す魔術があると聞く。これはソレを血液に
﹁たしかに、これは魔力。
ける。
まるでソレを確認するかのように、身体を濡らしている血を拭い鋭い眼差しで睨みつ
﹁うん。この血だよ、この降り頻る血液の雨こそ魔力そのものに他ならない。﹂
﹁魔力・・・・・・だと
い、どこか哀れみを帯びた眼差しで空を見つめた。
得意げに言い放ったブラハムは姿を顕にして空を見つめる。血の雨で濡れた顔を拭
あらわ
もう丁度いいくらいに魔力は満ちてきたし。﹂
﹁そうだね。でもそうはならないから、
そうなってしまえば今度こそ本当に私の勝利よ。﹂
﹁左様だ。そして、この膠着状態が続いてしまえば、いずれこの固有結界も消え失せる。
7
操る権利を持っていた。無論、血液に魔力を宿すことも容易かっただろう。聖堂教会に
おける司祭の1人であった、名前を﹃ゼフェル・フェリオ・エル・エルカブラ﹄と言う。﹂
その名前を聞いた瞬間男の表情が一変した。
それは驚愕と言う言葉を表情として体現したら完璧に近い顔だった。顔からは大量
﹂
?
貴様ソレはどういう│││﹂
?
﹂
地震、では無いだろう。地鳴りの感覚はあるが、実際には揺れていない。
◇
最後まで喋ることなく、ソレは起きた。
﹁再現・・・だと
方が手っ取り早かったかな
その表情から察するに、奴とやり合った事もあるようだね。なら、
﹃血海﹄を再現した
けっかい
たしかにそれは9位の姫の側近・・・
﹃血操者﹄の名前・・・・・・いや、
の汗、唇はプルプルと震え、何かに怯えているようにも見えた。
しかし何故ソレを、貴様が同じく可能としているのだ・・・
!
﹁なんだ、知ってたんだ。
!?
﹁貴様・・・
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8
そして、先程まで地を濡らしていた血の雨が、独りでに空へと昇っていくのだ。
有り得ないが、その光景はまさに神秘。その1粒1粒が、それぞれ異なった赤い軌道
を描く。
その奇跡に当てられ、思わず空いた口が塞がらない先生を他所に、ブラハムはこの戦
いにおける勝利を確信していた。
こ
あ
り
え
ら消え去った。
な
い
ニ
カ
その瞬間、向日葵畑から血の雨は一切消失した。魔力と呼ばれるそれが、この世界か
﹃│││故に、一を以て有を全とす。﹄
、、、、、、、、、
には全てが遅かった。いや、最初から止めることなど不可能。
ようやく正気を取り戻した先生が、ブラハムの行おうとするソレに気づくが、その時
﹃其は一にして全、全にして一。│││故に、﹄
そ
無くなり始めたのだ。
と呼ばれる類のものなのだろう、一般人である私が感じ取れたほどの量のソレが、急に
先程まで場を満たしていた違和感が、急に消失し始めたのがわかる。おそらく、魔力
ナ
ブラハムがソレを読み始めてからの変化は明らかだった。
又 之は存在しない有の具現。﹄
そして こ
﹃之は全なる意志との疎通。
9
その現象を悟った先生が更に驚愕の顔色を浮かばせる。
ナ
世界からの修正、魔力なしで世界を維持できる筈が無い
マ
どういうこ
魔力の消失は魔術の消失を意味する。それは固有結界であるこの世界も例外
﹂
!!
本質が異なる物を、幾らソレとして偽ってもその本質が変わる事はない。ならば、ブ
緒だろう。
例えるなら、鉛筆を消しゴムと偽り、いくら擦っても字が消えない。│││これと一
魔力でない魔力、そんなものは魔力とは呼べない。それはそうだ
そんなもので魔術の発動などは皆無。﹂
﹁馬鹿な、魔力でない魔力など、そんなもの魔術世界において魔力とは認めない。無論、
そもそも、真っ当な魔力でもないわけだし。﹂
、、、、、、
﹁君が感知出来ないのも無理は無いよ。出来るわけないし、
それを証明するかのように掌で炎を生み出す、ちょっとした魔術を披露してみせた。
﹁魔力なら有るじゃないか、ホラ。﹂
となのだ
では無いはずだ
!?
!?
!
﹁馬鹿な
そして、それを矛盾として現実に為す異端がここには居た。
魔力が消えた。ソレが意味するのは、この場所での魔術行使が不可能だという事。
﹁結界内の魔力が消えた・・・・・・。﹂
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ラハムが言っている事はおかしい、有り得ない事だ。
│││しかし、私はこの数日で、有り得ない事などこの世には無いのだと学んだ。
ソレを私に教えたのは他の誰でもないブラハムだ。彼と出会ってからこの数日、驚き
の連続なのだ。
だ。﹂
﹁│││
マ
ナ
オ
ド
笑わせるな、魔術の起動を可能とするのは大源と小源のみ。この世
まさか・・・﹂
、
、
あ
﹂
り
え
な
い
﹁君、魔術属性における﹃虚﹄﹃無﹄を知っているかい
!?
◇
﹂
﹁結界内のマナ、大源の消失を以て、﹃存在しない筈の魔力﹄を具現したのさ。﹂
そう││、そのまさか。
!?
?
力貯蔵量はそれほどのモノなのか・・・
界におけるマナは消失した、にも拘らず心象風景を具現し続けるのは矛盾だ。貴様の魔
﹁偽りの魔力だと
?
この魔力は魔力と呼ぶのも烏滸がましい、偽りの魔力と呼んでもいい、そんなモノ
﹁魔力でない魔力、その表現はとても適切だ。実際そうだし。
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スッ││と、ブラハムが左腕を威風とし、高らかに空へと伸ばしてみせた。
架空要素、偽りの魔力の本質に他ならない。﹂
﹁矛盾を抱えた存在故に、その矛盾を是とする反矛盾的な在り方│││。それが、魔術的
わざるを得ない。
いや、正確には全然違った物質や要素ではあるが、その在り方としては似ていると言
ある。
そういった矛盾を是として成立しうる存在こそ、まさしく、偽りの魔力の正体なので
有り得るが、有り得ない。
有り得ないが、有り得る。
そして、第五仮説要素然り。
これらは魔術属性と呼ばれる、魔術師における魔術特性を定める要素。
﹃無﹄│││それは﹁有り得ないが物質として成立するモノ﹂。
﹃虚﹄│││それは﹁有り得るが物質界に存在しないモノ﹂。
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その様子を見た先生も空を見上げる。
マジックサーキット
そこで、恐ろしい光景を目にするとは予想していなかっただろう。
﹁な│││﹂
自身の遥か上空を望むは巨大な魔 方 陣。
全長は百メートルにも及ぶであろうソレは、あろう事か未だ広がりつつあり、同時に
数を増やしては、起動までの時を刻一刻と数える始末。
有り得ないぞ
﹂
神代の魔術師ですらここまでの超必は不可能だっただろう・・・
このような大魔術の同時行使、瞬間魔力出力の5000や10000
﹁有り得ない、有り得ない・・・これは、有り得ない
でも不可能なレベルだ
一体、何がどうなっているのだ
!?
!
!
﹁それが不可能だと言っているのだ
魔力の出力は魔術師の実力に比例する、突飛に強
を、未だ受け入れる事が出来ずにいた。
しかし、如何せんその事実とは裏腹に、矛盾を肯定出来ない男にはこの事象そのもの
た。
魔術的能力の向上、それが意味する事象は現在空に浮かぶソレを見れば決定的であっ
簡単な話、僕の魔術的能力を一時的に超向上させてるんだよ。﹂
﹁さっきも言っただろう、この架空魔力はあらゆる矛盾を是とする、と。
!
!!
13
!
化出来るようなものではない
﹂
!
グシャっ、
、、、、、、
先生は怒号をあげながら滅びを待つだけだった。│││筈なのだが、
空を仰ぐ魔方陣の数々。当然その全てが起動。
味する。
質問への回答とともにブラハムは左腕を振り下げた。そしてソレは先生の破滅を意
﹁通常の二乗。普段が800弱くらいだから、ざっと650000ってとこだろうね。﹂
﹁│││ならば、それが事実だとして、貴様、今の瞬間魔力出力は最大で幾らだ。﹂
認しなければならない。
当然だろう。如何に容認しがたい事象でも、それが事実である以上、我々はそれを容
認めたくはないが、認めざるを得ない。そんな表現だ。
﹁│││。﹂
いと軽く吐き捨てるブラハム、それだけで彼が最早別格だということが伺える。
等価交換で成り立つ魔術世界において、ソレを無視するなど言語道断。それをせいぜ
んでもは言い過ぎだね。せいぜい等価交換の無視程度だよ。﹂
﹁これだから堅物は困るなぁ。この架空要素はその性質上、事実何でも出来る。まぁ、な
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と、鈍い音が響く。
血の一切が消え去った花畑に再び血が流れる。
それは先生の手による先生の血液であった。
そして、あろう事か先生は自らの首を手に持った得物で切り落としたのだ。
まさかその手を使うとはね、予想外だったよ・・・・・・。﹂
!
であった。
はし
│││それから数日後、先生の死を知ったのはまた別の形で、また別の人物の口から
場には、手応えのない派手な爆発音と、その衝撃が奔るだけであった。
す事が出来た。
魔方陣の起動から実に一秒、先生は奥の手という危険な最終手段を選び、見事逃げ仰
﹁くそっ・・・
の中へと溶け込んで行く。
それだけではない、肉体が流動性を増し、まるでスライムの如く黒い物体とかし地面
ブラハムが気づいた頃にはもう遅く、先生の身体は黒く変色していく。
﹁しまった│││﹂
15