英国不動産はBrexitで暴落?

リサーチ TODAY
2016 年 10 月 21 日
英国不動産はBrexitで暴落?
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
6月の英国のEU離脱の国民投票直後、英国不動産市場はその行方が懸念された。不動産投資ファンド
の解約や解約停止が生じ、REIT指数は一時大幅に下落した。下記の図表にも示されるように、英国の不
動産は海外からの資金流入に依存してバブル的様相を示していたため、いよいよバブル崩壊との見方が
生じた。先般英国を訪問し不動産関連のヒアリングを行った結果、いまのところ大きな不安はない。その一
因には、英国特有の賃貸借慣行(長期契約、解約不可、賃料のアップワードオンリー)によって既存テナン
トからのキャッシュフロー低下までには時間を要するため、不動産業界がすぐに収益面での影響を受けにく
い点がある。また、短期的にはポンドの大幅安に伴う景気の回復から企業収益等の改善期待もあり、街中
はにぎわう状況にあることも不動産市場の支えになっている。なかでもポンド安で海外観光客の増加が生じ
ており、ホテルは好調である。海外からの投資マネーは、価格下落とポンド下落で割安になった不動産の
投資対象に中国を中心に底値買いを行いたいとの意識になっている。
■図表:英国の住宅価格推移
(2007/1=100)
(倍率)
120
住宅価格(Halifax)
115
住宅価格(Nationwide)
110
年収倍率(右目盛)
6.0
5.8
5.6
5.4
105
5.2
100
5.0
95
4.8
4.6
90
4.4
85
80
2007/8
4.2
08/8
09/8
10/8
11/8
12/8
13/8
14/8
15/8
4.0
16/8
(年/月)
(資料)Halifax、Nationwide よりみずほ総合研究所作成
次ページの図表は英国の住宅価格と問い合わせDIの推移であるが、国民投票の直後は先行き不安か
ら、問い合わせDIが大きく低下したが、その後足元においてDIの水準が戻る状況にあり、不安は大きく後
退している。
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2016 年 10 月 21 日
■図表:英国住宅価格と問い合わせDI推移
25
(問い合わせ増加―減少、DI%pt)
80
20
60
(前年比、%)
15
40
10
5
20
0
0
-5
-20
-10
-15
-20
-25
2004/8
06/8
08/8
住宅価格(Nationwide)
-40
新規購入問い合わせDI(右目盛)
-60
10/8
12/8
-80
16/8 (年/月)
14/8
(資料) Nationwide、RICS よりみずほ総合研究所作成
2013年以降、英国は世界のセーフヘイブンとして位置付けられ不動産投資が集中してきた。英国のソフ
トパワーは今後も続くため、投資対象としての価値は続くと展望される。ただし、今後考慮に入れるべき論
点は、Brexitに伴い欧州拠点をEU加盟国に分散させることを検討する企業の増加度合いである。この結果、
将来的にキャップレートの上昇が予想され、商業用不動産については、先述の住宅のような堅調さはない。
次の図表は英国のREIT指数の推移である。英国の不動産は海外からの資金流入に依存してバブル的様
相を示していただけに、2008年を底にした長期的な上昇トレンドが、今回の国民投票によって、本当に変
わるかどうかの見極めが重要だろう。
■図表:英国REIT市場推移
140
(2007/1=100)
120
100
80
60
40
20
2007/9
08/9
09/9
10/9
11/9
12/9
13/9
14/9
15/9
16/9 (年/月)
(資料) Bloomberg よりみずほ総合研究所作成
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