平成28年度九州地区森林技術者講習会

九州各県から技術士など約100人参加
里山支援や熊本地震の被災等
―太良町200年の森構想も―
九州地区森 林 技 術 者 講 習 会
平成 28 年度九州地区森林技術者講習会
(日本技術士会九州本部主催)が 7 日、佐
賀市のアバンセで開催された。九州各県の
技術士やコンサルタント、県職員など約
100 人が参加。熊本地震の被災状況や里山
保全、県産木材の利用拡大、太良町森林組
合の取組みなどが報告された。毎年、各県
持ち回りで開催しており、佐賀県では初開
催。森林・自然環境技術者教育会の共催。
根橋 森林・自然環境技術者教育会事務局長
五十嵐 佐賀大教授
森林・自然環境技術者教育会の根橋達三事務局長と日本
技術士会九州本部の長野義次副本部長が冒頭あいさつで、
「地方と中央のバランスにおいて、地方では農林水産業の
振興が欠かせない。その意味で我が国の森林経営の合理化
は極めて重要。森林技術を磨き続けてください」などと述
べた。
講演では、まず九州森林管理局治山課の川上伸一課長が
熊本地震の被災状況と対応を話した。林野関係の被害額は
395.4 億円。4 月 14 日の前震直後には山地崩壊はほとん
どなく、同 16 日の本震後に数多くの崩壊を確認。6 月の
豪雨で拡大崩壊した。杉の人工林で巨石が止まっている箇
所も。民有林の被害が多く、県知事の要請で 17 カ所の直
轄代行を実施中。南阿蘇など谷止工が土砂で埋まり、航空
レーザー計測で崩壊危険箇所を調査した。川上課長は「初
動の遅れが全体に影響する。出来ることを迅速に行う事が
大切だ」と話した。
次いで、五十嵐勉佐賀大教授が「里山保全と農山村の活
性化」について講演。10 年以上関わっている唐津市相知
村井 太良町森林組合長
町の蕨野の棚田では、杉の人工林を伐採し、落葉・常緑広
葉樹などを植樹。本来、農林業と結びついていた棚田が農
業と切り離されている現況下、文化遺産や福祉との連携な
ど新たな方向付けが必要と説いた。また、高齢化で限界集
落化しつつある富士町苣木での調査支援やミャンマーでの
アボガドなど当地に合った木々の植樹支援など多様な生態
系サービスの実践活動を報告した。
また、佐賀県林業課の吉良孝広副課長が県産木材の利用
拡大について報告。最後に太良町森林組合の村井樹昭組合
長が同町の 200 年の森構想などについて話した。多良岳
材として市場での高評価や森林保全の効果で大雨の際にも
周辺市町と比べ被害が少ないなど山づくりの自負を披露。
また、樹齢 40 ~ 50 年で伐採するのは人間の都合で、大
人になるまで 200 年育てる構想を披露。樹高が高くなる
ため台風への対応や樹間の距離などを述べ、「生産コスト
だけでない林業で、雨水の遮断や浸透機能という森林の機
能を壊さない日本の国土に合った山作りを行っていく」と
力強く語った。 【10 月 11 日HP掲載】