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JP 4814789 B2 2011.11.16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
6−ヒドロキシベンズブロマロン又はその塩、及び製薬上許容される担体を含有してな
る、高尿酸血症又は高尿酸血症に起因する疾患の治療・予防のための医薬組成物。
【請求項2】
医薬組成物が、痛風の治療・予防剤である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
医薬組成物が、尿酸排泄促進剤である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
医薬組成物が、キサンチンオキシダーゼ阻害剤である請求項1に記載の医薬組成物。
10
【請求項5】
6−ヒドロキシベンズブロマロン又はその塩を含有してなる、腎臓における尿酸の取り
込み抑制剤。
【請求項6】
腎臓における尿酸の取り込みが、尿酸特異的トランスポーターであるURAT1による
取り込みである請求項5に記載の抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6−ヒドロキシベンズブロマロン又はその塩、及び製薬上許容される担体を
20
(2)
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含有してなる医薬組成物、より詳細には、6−ヒドロキシベンズブロマロン又はその塩、
及び製薬上許容される担体を含有してなる高尿酸血症又は高尿酸血症に起因する疾患の治
療・予防のための医薬組成物、並びに6−ヒドロキシベンズブロマロン又はその塩を含有
してなる、尿酸排泄促進剤、キサンチンオキシダーゼ阻害剤、及び腎臓における尿酸の取
り込み抑制剤に関する。また、本発明は、2−エチル−6−ヒドロキシ−3−(p−ヒド
ロキシ−ベンゾイル)−ベンゾフラン(これらの水酸基は必要により保護されていてもよ
い。)を、ブロム化剤を用いてブロム化し、次いで水酸基の保護基を脱保護することから
なる6−ヒドロキシ−ベンズブロマロンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
10
痛風は、関節炎(痛風発作)、痛風結節、尿路結石などの各種の症状を伴う重篤な病気
である。痛風は生活習慣と深く関わっており、1960年以前では我が国では希な病気で
あったが、経済の高度成長と共に増加し、現在では約60万人以上の患者が居るといわれ
ている。また、痛風発症年齢も従来は50才代であったものが、現在では30才代がピー
クになってきており、発症年齢も若年化の傾向にある。さらに、痛風の基礎病体である高
尿酸血症も増加してきている。血清尿酸値が高くなると、痛風の危険性だけでなく、虚血
性心疾患の危険性も高くなることも報告されている。
【0003】
高尿酸血症の病態には尿酸産生促進型と尿酸排泄抑制型の二種類があり、高尿酸血症患
者全体におけるそれぞれの比率は、尿酸産生促進型が約2割、尿酸排泄抑制型が約6割、
20
両者の混合型が約2割と言われている。現在、前者に対してはキサンチンオキシダーゼ阻
害剤であるアロプリノール、後者に対しては尿酸排泄促進剤であるベンズブロマロンの使
用が推奨されている。両薬剤とも発売から20年以上を経過しており、これまでにアロプ
リノールでは肝障害(劇症肝炎を含む)、骨髄抑制、重篤な皮膚炎等の副作用や、アロプ
リノールの代謝物であるオキシプリノールは透析患者において、体内に高濃度に蓄積する
ことから血液障害、肝障害をきたすことが報告されている。ベンズブロマロンでは肝障害
(劇症肝炎を含む)が報告されており、それぞれ副作用の少ない新たな薬剤の開発が求め
られている。
【0004】
尿酸排泄促進剤としては、ベンズブロマロンのベンゾフラン骨格を残して側鎖部分を各
30
種の化学修飾したものが報告されている(特許文献1∼4参照)。また、尿酸排泄促進剤
として、非ペプチド系アンジオテンシンII受容体拮抗作用を有する化合物を用いるもの(
特許文献5参照)、ジヒドロピリジン誘導体を用いるもの(特許文献6参照)、ヒダント
イン誘導体を用いるもの(特許文献7参照)、ビアリール化合物又はジアリールエーテル
化合物を用いるもの(特許文献8参照)などが報告されている。
また、尿酸産生を抑制するためのキサンチンオキシダーゼ阻害剤としては、ピラゾロト
リアジン誘導体を用いるもの(特許文献9参照)、3−フェニルピラゾール化合物を用い
るもの(特許文献10参照)、1−フェニルピラゾール化合物を用いるもの(特許文献1
1参照)、バラ科の多年草植物のセイヨウナツユキソウ(一般名:シモツケソウ、Filipe
ndula ulmaria)や、それから単離されたケルセチン−4’−配糖体及びケルセチン−3
40
−配糖体を用いるもの(特許文献12及び13参照)、2−フェニルチアゾール誘導体を
用いるもの(特許文献14参照)、ドコウジュ、セキコウジュ、ナギナタコウジュ、レモ
ンバーム、ローズマリー、スペアミント、ペパーミント、ウインターサボリ、キンマ及び
フクマンギから選ばれた植物体及び/又は該植物体の抽出物を用いるもの(特許文献15
参照)などが報告されている。
さらに、新しいタイプの高尿酸血症の治療剤として、チアゾリジンジオン化合物などの
インスリン抵抗性改善物質を用いるもの(特許文献16参照)、炭素数20のモノエン酸
及び/又はその誘導体、並びに炭素数22のモノエン酸及び/又はその誘導体を有効成分
として含有する高尿酸性疾患予防治療剤に関するもの(特許文献17参照)、イチョウ葉
抽出物を有効成分とする尿酸値低下剤に関するもの(特許文献18参照)、コンドロイチ
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ン硫酸タンパク複合体を有効成分として含有する、高尿酸血症治療又は予防用組成物に関
するもの(特許文献19参照)なども報告されている。
これらの中で、新規のキサンチンオキシダーゼ阻害剤に関しては、国内および国外にお
いて既にいくつかが開発段階に入っているが、尿酸排他促進剤に関しては世界的にみても
開発される動きは見られず、高尿酸血症患者のQOL向上のために、副作用の少ない新た
な尿酸排泄促進剤の開発が求められている。
【0005】
一方、次式で示されるベンズブロマロンは、
【0006】
【化1】
10
【0007】
ベンゾフラン誘導体の1種であり、その強い尿酸排泄促進作用により長年にわたって広く
20
使用されてきている。ベンズブロマロンの薬物代謝に関しては、1972年のヒトにおけ
る報告(非特許文献1参照)において、ベンズブロマロンは肝臓において脱臭素代謝され
、臭素が1つ取られたブロモベンザロン、あるいは臭素が2つとも取られたベンザロンに
代謝されると考えられていた。しかし、その後の研究によりベンズブロマロンの代謝産物
は脱臭素体ではなく、主にベンゾフラン環の1’位あるいは6位が水酸化された水酸化物
であると報告された(非特許文献2∼6参照)。そして、ベンズブロマンの尿酸排泄促進
作用の持続性に関しては、血中の代謝産物が関与しているのではないかとの示唆も示され
てきた(非特許文献5参照)。
また、ベンズブロマロン、ベンザロン、ベンズイオダロンなどのベンゾフラン誘導体を
服用中の患者において、重篤な肝障害が報告されるようになり、これらに共通の代謝産物
30
が肝障害発現に関与している可能性が指摘されてきた。特にベンザロンはベンズイオダロ
ン及びベンズブロマロンの脱ハロゲン体であることから、ベンザロン自体が肝障害を引き
起こす可能性も未だ完全に否定されていない。
このように、ベンズブロマロン、ベンザロン、ベンズイオダロンなどのベンゾフラン誘
導体の代謝産物や、その副作用について多くの研究がなされてきたが、重篤な肝障害を引
き起こすことなく、安全性が高く、かつ尿酸排泄促進作用の強い高尿酸血症の治療、予防
剤の開発は未だなされていないのが現状である。
【0008】
【特許文献1】特開昭59−73579号
【特許文献2】特開平01−216984号
40
【特許文献3】特開平03−261778号
【特許文献4】特開平06−184132号
【特許文献5】特開平05−25043号
【特許文献6】特開平05−279255号
【特許文献7】WO 97/02033号
【特許文献8】特開2000−1431号
【特許文献9】特開平06−316578号
【特許文献10】特開平10−310578号
【特許文献11】WO 98/18765号
【特許文献12】特開2002−121145号
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【特許文献13】特開2003−171283号
【特許文献14】特開2002−105067号
【特許文献15】特開2003−252776号
【特許文献16】特開平11−255669号
【特許文献17】特開2001−278786号
【特許文献18】特開2002−212085号
【特許文献19】特開2003−335698号
【非特許文献1】Broekhuysen, J., et al., Eur. J. Clin. Pharmacol., 4, 125-130 (1
972)
【非特許文献2】Walter-Sack, I., et al., Eur. J. Clin. Pharmacol., 39, 577-581 (
10
1990)
【非特許文献3】De Vries, J. X., et al., Clin. Investig., 71, 947-952 (1993)
【非特許文献4】De Vries, J. X., et al., Xenobiotica, 23, 1435-1450 (1993)
【非特許文献5】Walter-Sack, I., et al., Eur. J. Med. Res., 1, 16-20 (1995)
【非特許文献6】Walter-Sack, I., et al., Eur. J. Med. Res., 3, 45-49 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、尿酸排泄促進作用が強く、かつ重篤な肝障害を引き起こすことなく、安全性
の高い高尿酸血症の治療又は予防剤、より詳細には、尿酸排泄促進剤を提供することを目
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的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ベンズブロマロンは肝臓において酸化および抱合の2段階の代謝を受けることが報告さ
れている。第一層の代謝は、薬物代謝酵素であるP450による酸化反応であり、これに
より、ベンズブロマロンは主に6‐ヒドロキシベンズブロマロンに変換される。第二層の
代謝は、抱合酵素による抱合反応であり、6‐ヒドロキシベンズブロマロンは、この反応
により抱合体を形成し胆汁あるいは尿中に排泄される。ベンズブロマロンによる副作用は
、この第一層の反応において未知の毒性代謝物が産生されることが原因であると推察した
。
30
そこで、本発明者らは、ベンズブロマロンの第一層の代謝産物である6−ヒドロキシベ
ンズブロマロンに着目した。仮にこの物質が尿酸排泄促進活性を有しているならば、ベン
ズブロマロンの第一層の反応における未知の毒性代謝物の産生を抑制することができ、副
作用の少ない安全性の高い尿酸排泄促進剤を開発することが可能となると考え、6−ヒド
ロキシベンズブロマロンの生理活性を検討したところ、従来注目されていなかった6−ヒ
ドロキシベンズブロマロンに腎臓における尿酸の取り込みの強い抑制作用があること、及
びアロプリノールの代謝産物であるオキシプリノールと同様なキサンチンオキシダーゼ阻
害作用があることを見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明は、6−ヒドロキシベンズブロマロン又はその塩、及び製薬上許容される担体を
40
含有してなる医薬組成物、より詳細には、高尿酸血症又は高尿酸血症に起因する疾患の治
療・予防剤である医薬組成物に関する。
本発明は、6−ヒドロキシベンズブロマロン又はその塩を含有してなる尿酸排泄促進剤
に関する。また、本発明は、6−ヒドロキシベンズブロマロン又はその塩を含有してなる
キサンチンオキシダーゼ阻害剤に関する。さらに、本発明は、6−ヒドロキシベンズブロ
マロン又はその塩を含有してなる、腎臓における尿酸の取り込み抑制剤に関する。
本発明は、高尿酸血症又は高尿酸血症に起因する疾患の治療・予防のための医薬組成物
の製造のための、6−ヒドロキシベンズブロマロン又はその塩の使用に関する。
また、本発明は、高尿酸血症又は高尿酸血症に起因する疾患の患者に、有効量の6−ヒ
ドロキシベンズブロマロン又はその塩、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組
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成物を投与することからなる高尿酸血症又は高尿酸血症に起因する疾患の治療又は予防方
法に関する。
さらに、本発明は、2−エチル−6−ヒドロキシ−3−(p−ヒドロキシ−ベンゾイル
)−ベンゾフラン(これらの水酸基は必要により保護されていてもよい。)を、ブロム化
剤を用いてブロム化し、次いで水酸基の保護基を脱保護することからなる6−ヒドロキシ
−ベンズブロマロンを製造する方法に関する。
【0012】
本発明の6−ヒドロキシベンズブロマロンは、次式、
【0013】
【化2】
10
【0014】
で示される2−エチル−6−ヒドロキシ−3−(3’,5’−ジブロモ−4’−ヒドロキ
シ−ベンゾイル)−ベンゾフランである。本発明の6−ヒドロキシベンズブロマロンの塩
20
としては、製薬上許容される塩が好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙
げられる。
【0015】
本発明の6−ヒドロキシベンズブロマロンは、各種の方法により化学合成することがで
き、例えば、必要により水酸基が保護されている2−エチル−6−ヒドロキシ−3−(p
−ヒドロキシ−ベンゾイル)−ベンゾフランを、N−ブロモサクシンイミドなどのブロム
化剤を用いてブロム化し、次いで水酸基の保護基を脱保護することにより製造することが
できる。水酸基の保護基としては、ペプチド化学における各種の公知の保護基を使用する
ことができ、例えば、メチル基、エチル基、t−ブチル基などの低級アルキルでエーテル
化する方法、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基などの
30
低級アシル基でエステル化する方法などが挙げられる。
原料となる2−エチル−6−ヒドロキシ−3−(p−ヒドロキシ−ベンゾイル)−ベン
ゾフランは、必要により水酸基が保護されている2−エチル−6−ヒドロキシ−ベンゾフ
ランと、p−ヒドロキシ−安息香酸の酸ハロゲン化物などの反応性誘導体とを反応させて
製造することができる。この際の原料となる2−エチル−6−ヒドロキシ−ベンゾフラン
は、必要により水酸基が保護されている2−アセチル−6−ヒドロキシ−ベンゾフランの
カルボニル基を還元して製造することができる。
【0016】
本発明の6−ヒドロキシベンズブロマロンの好ましい製造例としては、例えば、2−ア
セチル−6−メトキシ−ベンゾフランをヒドラジンを用いて還元して、2−エチル−6−
40
メトキシ−ベンゾフランとし、これに4−メトキシ−安息香酸の酸塩化物を四塩化スズの
存在下に反応させて、2−エチル−6−メトキシ−3−(p−メトキシ−ベンゾイル)−
ベンゾフランとし、次いでエタンチオールナトリウム塩の存在下でベンゾイル基のメトキ
シ基を選択的に脱保護して2−エチル−6−メトキシ−3−(p−ヒドロキシ−ベンゾイ
ル)−ベンゾフランとし、これをジメチルスルフィドの存在下でナトリウム−N−ブロモ
サクシンイミドによりブロム化して、2−エチル−6−メトキシ−3−(3’,5’−ジ
ブロモ−4’−ヒドロキシ−ベンゾイル)−ベンゾフランとし、次いで塩化アルミニウム
の存在下で6位のメトキシ基を脱保護して製造することができる。
【0017】
本発明の6−ヒドロキシベンズブロマロン又はその塩は、通常の製薬上許容される各種
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の担体と共に、医薬組成物とすることができる。製薬上許容される担体としては、製剤化
のために通常使用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、稀釈剤などが挙げられる。本
発明の医薬組成物は治療目的に応じて各種の投与形態を選択でき、例えば、経口投与、経
粘膜投与、非経口投与などにより投与することができる。これらの投与形態に応じて、錠
剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)
などに製剤化することができる。錠剤、顆粒剤などの経口投与製剤とする際には、担体と
しては、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシ
ウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチ
ン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、
ポリビニルピロリドンなどの結合剤、デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン未、炭
10
酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、乳糖などの崩壊剤、精製タルク、ステアリン酸塩、
ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤などが挙げられる。これらの担体を用い
て公知の手法により各種の剤型に製剤化することができる。
本発明の医薬組成物中に含有される6−ヒドロキシベンズブロマロン又はその塩の量は
、広範囲に選択されるが、通常は組成物全体の1∼80重量%、10∼70重量%程度と
することができる。
【0018】
本発明の医薬組成物の投与量としては、患者の年齢、性別、症状、疾患の程度などによ
り適宜選択することができるが、通常は一日当り、体重1kg当り0.01∼500mg
、好ましくは0.1∼100mg、0.1∼50mg程度とするのがよく、1日に2∼4
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回に分けて投与するのが好ましい。
【0019】
本発明の6−ヒドロキシベンズブロマロン又はその塩は、尿酸排泄促進作用及びキサン
チンオキシダーゼ阻害作用を有し、高尿酸血症又は高尿酸血症に起因する疾患の治療や予
防に有効である。高尿酸血症に起因する疾患としては、痛風、尿酸(塩)結晶沈着症、関
節炎(痛風発作)、尿路結石、虚血性心疾患などが挙げられる。また、これらの疾患に伴
う肥満症、高血圧、高脂血症などの各種の合併症の治療や予防も包含される。
【0020】
本発明の尿酸排泄促進剤、キサンチンオキシダーゼ阻害剤、及び腎臓における尿酸の取
り込み抑制剤は、それぞれ医薬組成物として使用されるのが好ましいが、これに限定され
30
るものではなく、各種の試験に使用される試薬としての使用や、食品に添加される食品添
加剤としての使用なども包含される。
本発明の腎臓における尿酸の取り込み抑制剤は、より詳細には、腎臓における尿酸の取
り込みに関与している尿酸特異的トランスポーターであるURAT1(Atsushi, E., et
al., Nature, 417(6887), 447-452 (2002))による取り込みの抑制が挙げられる。
【0021】
次に本発明の6−ヒドロキシベンズブロマロン又はその塩の作用について説明する。
本発明者らは、6−ヒドロキシベンズブロマロン、及び従来から高尿酸血症の治療剤とし
て使用されているベンズブロマロンの、腎臓における尿酸の取り込みに関与している尿酸
特異的トランスポーターであるURAT1(Atsushi, E., et al., Nature, 417(6887),
40
447-452 (2002))に対する作用を検討した。
MDCK細胞にURAT1のcDNAを導入し、安定発現細胞(MDCK−URAT1
)を作出した。この細胞を用いて、100μMの[14C]尿酸を含有するダルベッコ修
飾PBS液に種々の濃度の6−ヒドロキシベンズブロマロン又はベンズブロマロンを含む
溶液を加えて後、液体シンチレーションカウンターで細胞内に取り込まれた[14C]尿
酸のdpmをカウントした。それぞれ3回実験を行い、IC50の値をプロフィット(pr
ofit)で解析した。
6−ヒドロキシベンズブロマロン、及びベンズブロマロンの結果をそれぞれ図1及び図
2にグラフで示す。図1及び図2の縦軸は尿酸の取り込み量(pmol/mgタンパク質
/分)を示し、横軸はそれぞれの濃度(μM)を示す。図1の場合のIC50の値は0.
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13μMであり、図2に場合のIC50の値は0.031μMであった。
3回の実験の結果、6−ヒドロキシベンズブロマロン及びベンズブロマロンはいずれも
濃度依存的に尿酸の取り込みを抑制し、3回の実験の結果、6−ヒドロキシベンズブロマ
ロンのIC50の値は0.20±0.06μMであり、ベンズブロマロンのIC50の値
は0.0345±0.003μMであった。このことは、6−ヒドロキシベンズブロマロ
ンは、ベンズブロマロンと同様に濃度依存的に尿酸の取り込みを抑制し、尿酸排泄促進作
用を有していることを明らかにするものである。そして、その強さはベンズブロマロンの
約1/6であるが、かなり強い尿酸排泄促進作用を有していることがわかった。
【0022】
次に、6−ヒドロキシベンズブロマロンのキサンチンオキシダーゼ阻害活性を検討した
10
。 ウシミルク由来のキサンチンオキシダーゼの活性を、100μMのキサンチンを基質
にして、0.1Mリン酸緩衝液を半分の量の水で希釈した1/15Mリン酸緩衝液(pH
7.4)中で、37℃で生成する尿素の吸光度(292nm)を経時的に測定する系を用
いて、6−ヒドロキシベンズブロマロン、又はアロプリノールの代謝産物であるオキシプ
リノールの阻害活性を測定し、IC50を解析した。この結果、6−ヒドロキシベンズブ
ロマロンのIC50の値は68μM、オキシプリノールのIC50の値は13μMであっ
た。この結果、本発明の6−ヒドロキシベンズブロマロンは、オキシプリノールの約1/
5のキサンチンオキシダーゼの阻害活性を有していることがわかった。
【0023】
次に、ベンズブロマロンの健康成人男性における単回経口投与した場合の臨床薬物動態
20
試験を行った。投与後の6−ヒドロキシベンズブロマロン又はベンズブロマロンの血漿及
び尿中の濃度をLC/MS/MSを用いて測定した。
血漿についての結果を図3に、尿についての6−ヒドロキシベンズブロマロンの結果を
図4にそれぞれ示す。図3の縦軸は血漿中の濃度(ng/mL)を示し、横軸は時間(時
間)を示す。図3中の点線でのバツ印(×)は6−ヒドロキシベンズブロマロンの場合を
示し、白三角印(△)はベンズブロマロンの場合を示す。図4の縦軸は尿中の濃度(ng
/mL)を示し、横軸は時間(時間)を示す。
この結果、血漿中のベンズブロマロンの濃度は、投与後速やかに上昇した後、徐々に減
少して投与48時間後には消失した。一方、6−ヒドロキシベンズブロマロンはより長く
血漿中に存在し、投与72時間後においても平均約110ng/mLが検出され、AUC
30
もベンズブロマロンに比べて2倍以上高い値を示した。尿中にはベンズブロマロンはほと
んど検出されなかったのに対して、6−ヒドロキシベンズブロマロンは投与72時間後に
おいても平均約170ng/mLが認められた。
【0024】
以上のことから、6‐ヒドロキシベンズブロマロンは、トランスポーターURAT1に
よる尿酸の取り込みを、ベンズブロマロンとほぼ同程度に阻害する事が明らかになり、ベ
ンズブロマロンと同様に尿酸排泄促進効果を示すことが示された。URAT1は腎尿細管
上皮細胞の管腔側に存在していることから、尿中の6−ヒドロキシベンズブロマロンがU
RAT1による尿酸の再吸収の阻害に寄与していることが示された。
また、ベンズブロマロンのヒト臨床薬物動態試験の結果、ベンズブロマロンを単回経口
40
投与した健康成人男性において、尿中にはベンズブロマロンはほとんど認められず、一方
、投与72時間後まで、尿中に高い濃度の6‐ヒドロキシベンズブロマロンが検出された
。
さらに、6−ヒドロキシベンズブロマロンがキサンチンオキシダーゼを阻害することが
明らかとなったことから、6‐ヒドロキシベンズブロマロンは尿酸産生促進型の病態に対
しても有効であることが示された。
【発明の効果】
【0025】
本発明の6−ヒドロキシベンズブロマロン又はその塩は、強い尿酸排泄促進作用と共に
、キサンチンオキシダーゼ阻害作用も有しており、高尿酸血症及び高尿酸血症に起因する
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疾患に治療や予防のための有効成分として有用であるだけでなく、本発明の6−ヒドロキ
シベンズブロマロン又はその塩は、肝臓での代謝を受けにくく従来の尿酸排泄促進剤のよ
うな重篤な肝障害などの副作用が無く、長時間にわたって血中濃度を高く維持することが
でき、さらに、毒性が低く、安全係数が大きいことから、極めて安全性の高いものである
。本発明の医薬組成物は、尿酸排泄促進作用が強く、かつ重篤な肝障害を引き起こすこと
なく、安全性の高い高尿酸血症の治療又は予防剤、より詳細には、尿酸排泄促進剤を提供
するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、URAT1による尿酸の取り込みにおける、本発明の6−ヒドロキシベ
10
ンズブロマロンの取り込み抑制作用の実験結果を示すグラフである。
【図2】図2は、URAT1による尿酸の取り込みにおける、ベンズブロマロンの取り込
み抑制作用の実験結果を示すグラフである。
【図3】図3は、健常人男性におけるベンズブロマロンの臨床薬物動態試験の結果におけ
る血漿中の6−ヒドロキシベンズブロマロン(点線×印)及びベンズブロマロン(△印)
の濃度(ng/mL)を示すグラフである。
【図4】図4は、健常人男性におけるベンズブロマロンの臨床薬物動態試験の結果におけ
る尿中の6−ヒドロキシベンズブロマロンの濃度(ng/mL)を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の6−ヒドロキシベンズブロマロンの1H−NMR(300MH
z、重クロロホルム)のチャートである。
20
【図6】図6は、S2細胞における、ヒトOAT4(ヒト有機アニオントランスポーター
4)による、ベンズブロマロン及び6−ヒドロキシベンズブロマロンの存在下における基
質3H−硫酸エステロン(estrone sulfate)の取り込み阻害作用を測定した結果を示す
ものである。
【図7】図7は、S2細胞における、ヒトOAT3(ヒト有機アニオントランスポーター
3)による、ベンズブロマロン及び6−ヒドロキシベンズブロマロンの存在下における基
質3H−硫酸エステロン(estrone sulfate)の取り込み阻害作用を測定した結果を示す
ものである。
【図8】図8は、ヒトOAT3(ヒト有機アニオントランスポーター3)における、6−
ヒドロキシベンズブロマロンの基質3H−硫酸エステロン(estrone sulfate)の取り込
30
み阻害作用の定数(Ki値)を分析した結果を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何
ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
6−ヒドロキシベンズブロマロンの製造
(1)2−エチル−6−メトキシベンゾフランの調製
2−アセチル−6−メトキシベンゾフラン(3.30g、17.3mmol)のジエチ
40
レングリコール溶液にヒドラジン(4.11g、69.4mmol、∼55%、オルドリ
ッチ)を添加した。この混合物を190℃まで加熱し、10分間撹拌した。常温まで冷却
後、水酸化カリウム(2.92g、52.1mmol)を添加し、120℃∼130℃に
て6時間撹拌した。その後、その反応液を水に投入し、ジクロロメタンで抽出し、MgS
O4で乾燥し、減圧下で濃縮した。残留した油分をHPLC(シリカゲル、CHCl3)
にて精製し、目的の生成物(2.98g、16.9mmol、97%)を得た。
【0029】
(2)3−(p−アニソイル)−2−エチル−6−メトキシベンゾフランの調製
2−エチル−6−メトキシベンゾフラン(2.76g、15.6mmol)及びp−ア
ニソイルクロライド(3.48g、20.3mmol)の乾燥二硫化炭素(20ml)溶
50
(9)
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液を氷冷し、これに、塩化スズ(IV)(5.25g、20.3mmol)を撹拌下に滴下
した。この混合物を5∼10℃で3時間撹拌し、水に投入した。有機層を希塩酸と水とで
洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。この粗製生成物をHPLC(シリカゲ
ル、酢酸エチル:ヘキサン=2:8)にて精製し、淡黄色油状の目的の生成物(2.98
g、9.60mmol、58%)を得た。
【0030】
(3)2−エチル−3−(p−ヒドロキシベンゾイル)−6−メトキシベンゾフランの調
製
3−(p−アニソイル)−2−エチル−6−メトキシベンゾフラン(2.39g、7.
7mmol)及びエタンチオールナトリウム塩(971mg、11.5mmol)のジメ
10
チルホルムアミド溶液を80℃にて4時間撹拌した。この反応をNH4Cl溶液を用いて
終了させ、クロロホルムで抽出した。抽出物を水と食塩水で洗浄し、Ma2SO4で乾燥
し、減圧下で濃縮した。その残留物をHPLC(シリカゲル、酢酸エチル:ヘキサン=2
:8)にて精製し、目的の生成物(2.28g、7.70mmol、100%)を得た。
【0031】
(4)6−メトキシベンズブロマロンの調製
N−ブロモサクシンイミド(12.0g、67.5mmol)のジクロルメタン溶液に
ジメチルフィド(5.0ml、68mmol)を氷と食塩の浴の冷却下に、添加した。1
0分間撹拌後、2−エチル−3−(p−ヒドロキシベンゾイル)−6−メトキシベンゾフ
ラン(2.00g、6.75mmol)のジクロルメタン溶液を同温度で添加した。この
20
混合物を常温で15時間撹拌した。この反応液に水を添加し、有機層を単離し、水と食塩
水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。その残留物をHPLC(クロロホ
ルム)にて精製し、目的の生成物(1.70g、3.74mmol、55%)を得た。
【0032】
(5)6−ヒドロキシベンズブロマロンの調製
AlCl3(2.346mg、17.6mmol)にエタンチオール7mlを氷浴下に
滴下した。この溶液を6−メトキシベンズブロマロン(1.70g、3.74mmol)
のジクロルメタン溶液(35ml)に添加した。同温度で10分間撹拌後、水を添加し、
1N HCl溶液を添加した。その有機層を単離し、水層を酢酸エチルで2回抽出した。
合わせた有機層を食塩水にて洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物を
30
HPLC(シリカゲル、CHCl3:MeOH=30:1)にて精製し、イソプロピルエ
ーテルから再結晶し、目的の生成物1.00g(2.35mmol、63%)を得た。
得られた6−ヒドロキシベンズブロマロンの純度は、HPLCにより99.8%であっ
た。このものの1H−NMR(300MHz、重クロロホルム)のチャートを図5に添付
する。
【実施例2】
【0033】
MDCK細胞に哺乳類発現ベクターpcDNA3.1にURAT1のcDNAを組み込
んだもの、あるいはpcDNA3.1を遺伝子導入して、安定発現細胞(MDCK−UR
AT1)及びmock細胞を作出した。
40
このMDCK−URAT1を5%仔牛胎児血清及び400μg/mLのゲネチシン(ge
neticin)を含む最小必須培地(minimal essential medium)で培養し、24穴のディッ
シュの1穴当たり105個の細胞を植え込んで2日培養した。その後、ダルベッコ修飾P
BS(Dulbecco modified PBS)液で洗い、その後ダルベッコ修飾PBS液中で10分間
プレインキュベートした。
その後、100μMの[14C]尿酸を含有するダルベッコ修飾PBS液に種々の濃度
の6−ヒドロキシベンズブロマロン又はベンズブロマロンを含む溶液を加えて、37℃で
2分間インキュベートした。その後、ダルベッコ修飾PBS液で3回洗浄後、0.1Nの
NaOHで細胞を回収した。そして、シンチレーションカクテル(scintillation cockta
il)を加えて、液体シンチレーションカウンターで細胞内に取り込まれた[14C]尿酸
50
(10)
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のdpmをカウントした。IC50の値はプロフィット(profit)で解析した。
結果を図1及び図2に示す。3回の実験の結果、6−ヒドロキシベンズブロマロン及び
ベンズブロマロンはいずれも濃度依存的に尿酸の取り込みを抑制し、3回の実験の結果、
6−ヒドロキシベンズブロマロンのIC50の値は0.20±0.06μMであり、ベン
ズブロマロンのIC50の値は0.0345±0.003μMであった。
【実施例3】
【0034】
ウシミルク由来のキサンチンオキシダーゼの活性を、100μMのキサンチンを基質に
して、0.1Mリン酸緩衝液を半分の量の水で希釈した1/15Mリン酸緩衝液(pH7
.4)中で、37℃で生成する尿素の吸光度(292nm)を経時的に測定する系を用い
10
て、6−ヒドロキシベンズブロマロン、又はオキシプリノールのそれぞれ0.0μM、0
.1μM、0.3μM、1.0μM、3.0μM、10.0μM、30.0μM、100
μM、及び300μMの濃度での阻害活性を測定し、IC50を解析した。
この結果、6−ヒドロキシベンズブロマロンのIC50の値は68μM、オキシプリノ
ールのIC50の値は13μMであった。
【実施例4】
【0035】
年齢20∼27歳の健常人男性6名を対象に、ユリノーム2錠(登録商標)(ベンズブ
ロマロンとして100mg)を空腹時に水180mLと共に単回経口投与し、以後、72
時間後まで、経時的に採血および蓄尿を行った。得られた血漿及び尿について、LC/M
20
S/MSを用いてベンズブロマロン、6−ヒドロキシベンズブロマロン、ブロモベンザロ
ン及びベンザロンを測定した。なお、6名の被験者については、事前にベンズブロマロン
の代謝に関与するCYP2C9に遺伝子変異(CYP2C9*3)がないことを確認した
。
結果を図3及び図4に示す。
【実施例5】
【0036】
ベンズブロマロン及び6−ヒドロキシベンズブロマロンの単回投与薬物動態試験
ベンズブロマロン及び6−ヒドロキシベンズブロマロンを、それぞれ100mg/kg
の用量でラットに単回投与した結果、ベンズブロマロンのCmax、及びAUC0−24
30
hrは、それぞれ90.19μg/mL、886.56μg・hr/mLであったのに対
して、6−ヒドロキシベンズブロマロンのCmax、及びAUC0−24hrは、それぞ
れ34.55μg/mL、290.80μg・hr/mLであった。
この結果、6−ヒドロキシベンズブロマロンは、ベンズブロマロンと同様に経口投与に
より良好に消化管から血中に吸収されることがわかった。したがって、6−ヒドロキシベ
ンズブロマロンは経口投与後、血中に吸収された後、尿中に排泄され、近位尿細管上皮細
胞の管腔側膜に存在するURAT1を阻害し、尿酸の再吸収を阻害すると考えられる。
【実施例6】
【0037】
ベンズブロマロン及び6−ヒドロキシベンズブロマロンの2週間反復投与毒性試験
40
ベンズブロマロン及び6−ヒドロキシベンズブロマロンをそれぞれ100mg/kg/
dayの用量でラットに14日間投与した結果、ベンズブロマロン投与群では肝臓重量の
増加(13.59g)が認められ、一方、6−ヒドロキシベンズブロマロン投与群では薬
物投与による肝臓重量の増加は認められなかった(9.90g)。なお、正常対照群の肝
重量は、9.43gであった。
上記の結果から、6−ヒドロキシベンズブロマロンは、ベンズブロマロンよりも肝臓に
対する影響が少ないものであることがわかった。
【実施例7】
【0038】
OAT4(有機アニオントランスポータ)による作用機序の試験結果
50
(11)
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OAT4(有機アニオントランスポータ)は近位尿細管管腔側膜に存在し、尿酸などの
有機アニオンを細胞内に取り込む有機アニオントランスポーターであり、その代表的な基
質として硫酸エステロン(estrone sulfate)が知られている。そこで、OAT4を発現
しているS2細胞を用いて、ベンズブロマロン及び6−ヒドロキシベンズブロマロンの、
OAT4による硫酸エステロン(estrone sulfate)の取り込みの阻害作用を実験した。
ベンズブロマロン及び6−ヒドロキシベンズブロマロンが、それぞれ0.01μmol/
L、0.1μmol/L、1μmol/L、及び30μmol/L存在下における3H−
硫酸エステロン(estrone sulfate)(50nmol/L)の取り込み量を測定した。こ
の結果を図6に、なにも存在しないときの3H−硫酸エステロン(estrone sulfate)の
取り込み量(control)を、100%としたときの相対値として示した。
10
この結果、OAT4における、3H−硫酸エステロン(estrone sulfate)の取り込み
を6−ヒドロキシベンズブロマロンは用量に相関して阻害し、そのIC50は3.2μm
ol/Lであった。また、ベンズブロマロンのそれは、5.4μmol/Lであった。
この様に6−ヒドロキシベンズブロマロンはOAT4における基質の取り込みに対して
阻害作用を有していることから、生体中の6−ヒドロキシベンズブロマロンはOAT4に
よる尿酸の再吸収を阻害し、尿酸の排泄を促進するものと考えられる。
【実施例8】
【0039】
OAT3(有機アニオントランスポータ)による作用機序の試験結果
OAT3(有機アニオントランスポータ)は近位尿細管基底側(血管側)膜に存在し、
20
尿酸などの有機アニオンを細胞内に取り込む有機アニオントランスポーターであり、その
代表的な基質として硫酸エステロン(estrone sulfate)が知られている。そこで、実施
例7と同様にして、OAT3を発現しているS2細胞を用いて、ベンズブロマロン及び6
−ヒドロキシベンズブロマロンの、OAT3による硫酸エステロン(estrone sulfate)
の取り込みの阻害作用を実験した。ベンズブロマロン及び6−ヒドロキシベンズブロマロ
ンが、それぞれ0.01μmol/L、0.1μmol/L、1μmol/L、及び30
μmol/L存在下における3H−硫酸エステロン(estrone sulfate)(50nmol
/L)の取り込み量を測定した。この結果を図7に、なにも存在しないときの3H−硫酸
エステロン(estrone sulfate)の取り込み量(control)を、100%としたときの相対
30
値として示した。
3
この結果、OAT3による
H−硫酸エステロン(estrone sulfate)の取り込みを6
−ヒドロキシベンズブロマロンは用量に相関して阻害し、そのIC50値は0.3μmo
l/Lであった。また、ベンズブロマロンのそれは、0.7μmol/Lであった。
この様に6−ヒドロキシベンズブロマロンはOAT3における基質の取り込みに対して
阻害作用を有している。
【0040】
また、OAT3による3H−硫酸エステロン(estrone sulfate)の取り込みにおける
6−ヒドロキシベンズブロマロンの阻害作用を分析(Ki値)した。結果を図8に示す。
図8の横軸は1/S(L/mmol)であり、縦軸は1/V(mg蛋白/μM・分)であ
り、黒四角印(■)は6−ヒドロキシベンズブロマロン(0.3μM)の場合を示し、白
40
四角印(□)は対照(control)を示す。その結果、その阻害様式は競合阻害と非競合阻
害の混合型であった。それぞれのKi値は、1.0μM(競合阻害)、0.7μM(非競
合阻害)であった。
したがって、血中の6−ヒドロキシベンズブロマロンの一部は、OAT3によってOA
T3の基質と競合して、近位尿細管上皮細胞内に取り込まれ、細胞内部からURATを阻
害し、尿酸の再吸収を阻害すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、尿酸排泄促進作用が強く、かつ重篤な肝障害を引き起こすことなく、安全性
の高い高尿酸血症の治療又は予防剤、より詳細には、尿酸排泄促進剤を提供するものであ
50
(12)
り、医薬産業において極めて有用である。
【図1】
【図4】
【図2】
【図5】
【図3】
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(13)
【図6】
【図7】
【図8】
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(14)
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フロントページの続き
(56)参考文献 European Journal of Medical Research,1995年,vol.1,pp.16-20
Xenobiotica,1993年,vol.23, No.12,pp.1435-1450
Archives Internationales de Pharmacodynamie et de Therapie,1967年,vol.165, No.1
,pp.25-29
(58)調査した分野(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/343
A61P 19/06
A61P 43/00
C07D 307/80
CAplus(STN)
MEDLINE(STN)
BIOSIS(STN)
EMBASE(STN)
CAold(STN)
10