目線は2017年に 藤代 宏一

Market Flash
目線は2017年に
2016年10月11日(火)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・9月米雇用統計によると雇用者数(NFP)は前月比+15.6万人と市場予想(+17.2万人)を僅かに下回
ったものの、より重要な民間部門に限ってみれば+16.7万人と市場予想(+17.0万人)に概ね一致してお
り内容は良い。失業率は5.0%へと0.1%pt上昇したが、家計調査ベースの就業者数が+35.4万人増加し、
就業率が59.81%へと伸び、労働参加率も上昇(59.72%→59.81%)していることから、労働市場の悪化を
示すものではない。これら指標は寧ろ労働市場の厚みが増したことを示している。注目の平均時給は前年
比+2.6%と8月から0.2%pt加速して市場予想に一致。均してみれば加速しているとはいえ、そのモメン
タムはインフレの驚異を意識させるには程遠い。
雇用統計
(NFP変化、千人)
(失業率、%)
400
350
10
失業率(右)
3MA
300
9
12MA
8
250
(%)
労働参加率・失業率
65
66
63
65
就業率(右)
7
200
6
150
5
63
50
4
62
12
13
14
15
16
17
59
労働参加率
05 06 07 08 09 10 11 12
(備考)Thomson Reutersにより作成
(備考)Thomson Reutersにより作成
61
64
100
11
(%)
67
13
14
57
15
16
17
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・10日の米国株は反発。雇用統計を通過して様子見姿勢が強まるなか、原油価格上昇がエネルギー株の追い
風に。大統領選を巡るテレビ討論でクリントン候補が優位を保ったとの見方が支配的になったことも、政
策不透明感の後退を通じてリスク選好を促した。WTI原油は50.44㌦(+0.61㌦)で引け。米石油稼動リ
グ数が増加基調にあるものの、OPECを中心とする産油国の減産観測が相場の牽引役となっている。
・10日のG10 通貨はJPYが最弱で反対に資源国通貨(NZD、AUD、NOK)が堅調。USD/JPYは7日発表の米雇用
統計を受けて103を割れた後に再び103後半へと切り返し、下落の大半を埋めた。EUR/USDも同様の展開で
1.11前半へと水準を切り下げている。
・10日の米債市場はコロンバスデーのため休場(株式市場はオープン)。欧州債市場(10年)は総じてみれ
ば軟調。ドイツ(0.056%、+3.6bp)、イタリア(1.396%、+1.3bp)、スペイン(1.027%、+1.2bp)
が揃って金利上昇。他方、ポルトガル(3.437%、▲14.2bp)は金利低下。周縁3ヶ国加重平均の対独スプ
レッドはタイトニング。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株はUSD/JPY上昇が好感され米株高に追随、日経平均は約1ヶ月ぶりに17000を回復(10:00)。
・8月国際収支統計によると経常収支(季節調整済み)は1.98兆円と2008年3月以来の高水準に到達。主要
項目の貿易収支、サービス収支、第1次所得収支は何れも振れが大きいが、それらがタイミング良く増加
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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したこともあって収支が著しく改善した(※第一次所得収支については本邦通信会社による海外企業の買
収に伴う資金フローの影響で数値が嵩上げされている可能性がある)。円建てエネルギー価格の下落によ
って輸入金額が抑制される下、高水準の投資収益(直接投資、証券投資)、サービス収支(知的財産権等
使用料、旅行)が黒字幅拡大に寄与している。なお、訪日外国人の消費動向を映し出す旅行収支受取額
(季節調整済み)は2768億円となった。前年比の伸び利率は1桁台まで低下しているものの、依然として
高水準を維持。年初からの円高で一人当たり消費額は減少傾向にあるが、訪日外客数の高水準維持がそれ
を補っている。
経常収支
(兆円)
万
(億円)
訪日外客数・旅行収支受取額
(万人)
3
2500
3500
2.5
旅行収支(受取額)
2000
2
3000
2500
1.5
1500
2000
1
1500
1000
0.5
訪日外客数 1000
0
500
500
-0.5
-1
0
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
0
00
02
04
06
08
10
12
14
16
(備考)訪日外客数は季節調整済み年換算、当社作成 3ヶ月平均
16
(備考)Thomson Reutersにより作成 季節調整値
・同時に発表された対外・対内証券投資(月次ベース)によると8月に海外投資家は本邦株式を1.3兆円売り
越した。11ヶ月連続の売り越しで、その規模は年初からの累計で8.2兆円に達する。
1
海外投資家による国内株の売買動向(2016-)
(兆円)
万
(兆円)
0
海外投資家
日本株売買動向
2013
2014
15
-1
10
-2
-3
5
-4
-5
0
-6
-7
-5
-8
-9
16/01
16/03
16/05
16/07
-10
16/09
2012
(備考)Thomson Reutersにより作成 4週平均
(備考)Thomson Reutersにより作成
2015
2016
四週平均
<追加利上げ#12月既定路線#USD/JPY#2017年2回>
・9月雇用統計を通過して市場が織り込む12月の追加利上げ確率は67.6%へと上昇。このまま偶発的な悪材
料に見舞われなければ、という前提条件付きながら12月FOMCにおける追加利上げは既定路線だろう。実質
GDP成長率でみた米経済は利上げを促すほどの強さではないものの、最近の失業保険申請件数の著しい
低下基調などを踏まえると、完全雇用の状態に近づきつつあることに疑いの余地はなく、追加利上げが正
当化される状況にある。また、12月FOMCが開催される13-14日はクリスマスシーズンで薄商いという問題点
があるにせよ、大統領選を通過して政治的配慮の必要性もなく、理想的なタイミングと言えよう。
・米追加利上げは言うまでも無く、理論上は日米金利差拡大を通じたUSD/JPY上昇要因である。実際に利上げ
が決定されれば、少なくとも初期反応はセオリーどおりにUSD買い・JPY売りとなりそうだが、その持続性
を判定する上で、最も重要視すべきは2017年の利上げ計画だろう。だが、最新のドットチャートが示す17
年の利上げ計画は2回と既に慎重。この慎重なパスさえ揺らぐようだとUSD/JPYの上昇基調は揺らぎ、100
割れの可能性が現実味を帯びる。12月FOMCにおける追加利上げの有無も確かに重要だが、それが“Sell
the Fact”に変わる前に2017年の軌道を見極める必要があるだろう。筆者は17年の利上げパスを予想する
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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上で平均時給が最も重要な指標であると考えており、その先行指標の自発的離職率に注意を払っている。
2016年9月FOMC
5
(%)
中央値
4
2.6
中央値
3.5
2.2
離職率
2
中央値
2.5
4
2.4
中央値
3
2
自発的離職率
2.8
4.5
3
1.8
中央値
1.6
1.5
2
1.4
1
1.2
0.5
平均時給(右)
1
1
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
0
2016
2017
2018
2019
Longer
Run
(備考)FRBより筆者作成
One participant did not submit longer-run projections.
(備考)Thomson Reutersにより作成
(平均時給、%)
4.5
4
3.5
y = 1.9466x - 0.8545
R² = 0.5334
3
2.5
2
1.5
(離職率、%)
1
1
1.5
2
2.5
3
(備考)Thomson Reutersより作成
データは:2001年以降、平均時給(生産従事者)18ヶ月先行
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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