再検手順の統一化による再検数削減と検査コスト削減の取り組みについて

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再検手順の統一化による再検数削減と検査コスト削減の取り組みについて
◎濱津 育宏 1)、山田 孝幸 1)、阪本 裕子 1)
独立行政法人 地域医療機能推進機構 人吉医療センター 1)
【はじめに】
51 検体延べ 142 項目であった。再検手順統一
不要な再検を減らす目的で平成 28 年 4 月に再
化後には再検数 43 検体、延べ 116 項目うち不
検データに基づき再検が必要であったかの評
要な再検であったものが 14 検体延べ 30 項目
価を行った結果、初検値で異常値がでた事に
となった。再検手順統一化の前後ともに総検
不安を感じ再検したものと前回値との差が大
体数は約 3500 件と同程度の検査件数であり、
きく再検したものはほとんどが不要な再検で
平均再検率は再検手順統一化前では 1.03%、
あったことが判明した。そこで、今回は精度
再検手順統一化後には 0.28%と再検数自体を
管理体制が充実している事を前提条件として
減少させることができた。
再検手順を統一化することで不要な再検を減
【考察】
らし、コスト削減ができると考えた。
再検手順を統一化する以前は検査システム
【方法と対象】
の再検チェック機能でチェックし、再検指示
期間:再検手順統一化前 平成 27 年 4 月
をする判断は臨床検査技師にゆだねられてい
21 日から平成 27 年 5 月 18 日まで
たため、データに不安を感じた為または前回
再検手順統一化後 平成 28 年 4 月
値との差がある為の不要な再検をしていたと
19 日から平成 28 年 5 月 16 日まで
考える。原因として臨床検査技師経験が浅い、
対象:再検数:128 検体、検査項目 延べ
検体検査担当者でないための不安などが考え
562 項目
られる。再検手順を統一化したことで臨床検
方法:生化学自動分析装置 日本電子 JCA-
査技師の不安やストレスを軽減できたと考え
BM6070(以下 JCA-BM6070)で測定した生化
る。また、コスト面では試薬の定価でひと月
学項目の検体のうち再検を行った項目につい
あたり約 1 万円の削減となった。
て、再検手順統一化の前後で再検数と再検理
臨床検査技師の役割として 1.精度管理を行い、
由の内訳を比較した。再検手順の統一化とし
機器のメンテナンスを確実に実施 2.患者状態
て①生化学担当者が内部精度管理で異常がな
と病態の把握 3.検査歴の監査を行う事で前回
いことを確認していること②測定前に検体状
ME エラー履歴がある場合に検体処理の工夫 況(フィブリン・溶血・乳びの有無)の確認
これらをしっかり行う事で不要な再検は減ら
③電子カルテにて患者情報(病名、病歴等)
すことができると考えられ、臨床検査技師の
の確認④再度測定後に検体状況の確認⑤JCA-
存在価値も高める事ができるものと考える。
BM6070 導入時にされた各測定項目の試薬検討
【まとめ】
で直線性が保たれている値を上限値とし、結
今後の課題は今回実施した再検手順の統一
果値が上限値未満の場合には再検をせずに結
化を継続し不要な再検を減らしていく体制を
果値として報告。
維持していく事でさらなる検査コストの削減
【結果】
につなげていきたい。
検体再検手順統一化前では再検数 85 検体、
延べ 446 項目うち不要な再検であったものが
連絡先 0966-22-2191
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当院採血コーナーにおける待ち時間の現状と課題
◎久住呂 由香 1)、小川 章子 1)、安東 摩利子 1)、久保 恵子 1)、川田 麻世 1)、鈴木 涼 1)、
清水 菜央 1)、濵 晶乃 1)
社会医療法人財団白十字会 佐世保中央病院 1)
【はじめに】
務量が増加したにも関わらず、採血待ち時間
当院で取り組んでいるバランススコアカード
は改善傾向がみられた。その要因として、
(以下 BSC)の臨床検査技術部の目標に、ス
①混雑時に採血台を増設して採血を実施する
ムーズな外来診療の支援があり、その重要成
ように変更した。②車椅子患者のための採血
功要因に採血待ち時間の短縮が挙げられる。
台を増やし、混雑をさけるようにした。③一
採血コーナーでは、毎日の採血待ち時間を算
か所に置いていた手袋を各採血台に設置した。
出し、現状の把握と見直しを行い、待ち時間
④採血コーナーの電話の位置を変え、採血担
の短縮に努めている。平成 26 年度と 27 年度
当者が採血に集中できるようにした、などが
の採血待ち時間を算出したので、現状と課題
考えられる。
を報告する。
【まとめ】
【対象】
混雑時に採血台を増設し、採血担当者以外の
採血コーナーにて採血を実施した患者
技師が採血を行うよう人員配置の調整を行っ
86,156 人(平成 26 年度 42,773 人、27 年度
た事などで、待ち時間が短縮された。また、
43,383 人)。採血待ち時間は採血受付から採
採血コーナーでは、年一回患者対応訓練を行
血終了までとした。
って、トラブル等の発生にもスムーズに対応
できるよう取り組んでいる。今後の課題とし
【結果】
て、スムーズな患者対応力、各個人の採血手
1 日の採血者数は、始業開始直後 1 時間が最も
技の向上が必須である。新人研修も含め採血
多く、以降漸減傾向だった。全体の採血者数
トレーニングなどを定期的に行うことが、採
は平成 26 年から 27 年と若干増加がみられた。
血待ち時間の短縮につながり、スムーズな外
来診療の支援に貢献できると考察する。
BSC の採血待ち時間の目標値は、前年度の待
ち時間より算出し、平成 27 年度は 13 分と設
定した。平成 27 年度においては、平均 13 分
を越えた日は 43 日、平成 26 年度は 48 日であ
った。27 年度の平均待ち時間は 10 分、最大待
ち時間は 40 分。平成 26 年度では平均待ち時
間は 10 分、最大待ち時間は 44 分。平均待ち
時間は変わらなかったが、最大待ち時間は4
分短縮された。また平均 13 分を超えた日は
5 日間減少した。平成 27 年 8 月からは、術前
患者の MRSA スクリーニングのための検体採
取を採血コーナーで実施するようになり、業
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DPC データを用いた診療行為分析の試み
誤嚥性肺炎を中心に
◎古賀 秀信 1)
株式会社 麻生 飯塚病院 1)
【はじめに】総人口の減少と少子高齢化が進
率をみた場合、全ての検査において実施率が
む中、誤嚥性肺炎(以下、肺炎)、骨折およ
最も高かったのは 1 日目で、その後は減少す
び脳卒中は今後も増加することが示唆されて
るパターンであった。減少パターンには漸減
いる。一方限られた医療費の中で、質を落と
するパターンと、入院当初(1~2 日目)に実
さずに医療を提供していくことが一層求めら
施後急速に低下するパターンに大別された。
れるが、質を向上させるには過程(プロセス)を
しかし 11 日(期間Ⅱ)以降においても多くの
管理しなければならない。今回 DPC データを
臨床検査が実施されており、漸減パターンを
用いて肺炎症例における臨床検査プロセスを
示す臨床検査の実施頻度は高かった。特に電
調査し、若干の知見を得たので報告する。
解質・腎機能・末梢血液一般の頻度が高く、
【方法】平成 27 年度(2015 年 4 月~2016 年
それぞれ 600 件を超えていた。
3 月)に、最も医療資源を投入した傷病名
【考察】肺炎は嚥下障害により細菌が唾液や
(DPC 病名)が肺炎であった患者について、
胃液とともに肺に流れることで生じる肺炎で
(1)DPC コード毎の該当症例数や平均在院
あり、診断過程(ガイドライン)において臨
日数、(2)入院期間別(期間Ⅰ以内・期間
床検査(CRP ・ CBC)は重要な位置を占めて
Ⅱ以降)における臨床検査の実施状況につい
いる。今回の調査において両検査の実施率は
て検討を行った。用いたデータは様式 1 ・
99%と高く、肺炎診断のための実施率としては
EF ファイルを元に作成した DPC データバンク、
満足できる実施率であると思われた。しかし
ならびに DPC14 桁分析ツール(PRRISM 社)
診療報酬が低下する 11 日以降においても検査
である。
は多数実施されており、頻度の高い項目であ
【結果】(1)肺炎に相当する症例は 269 例
れば1入院で数回検査を行っていることにな
(男 158 女 111、平均年齢 79.1±14.1 歳)で、
る。実際、包括範囲出来高換算に占める検査
平均在院日数は 23.9±15.6 日、中央値[四分位範
の割合は注射(63,207 円)に次いで2番目に
囲]は 21[13, 30]日であった。DPC コード別に見
高く(60,682 円)、肺炎全体の 99.5%の症例
ると、最も症例が多かったのは
は、包括支払いに対してマイナスの入院であ
040081xx99x00x(誤嚥性肺炎 手術なし 手
った。今後ますます高齢者が増え、病院の機
術・処置等 2 なし・副傷病なし)の 212 件で、
能分化と質向上への取組みが推し進められて
在院日数は最も短かった(20.0±11.0 日)。
いく中、無駄を省きながら質を向上させてい
(2)040081xx99x00x おいて、分析ツールで
く上で、DPC データを用いた診療行為の分析
follow し得た 203 名 に着目した場合、入院期
は大変有用であると思われた。
間中の臨床検査の実施率が 90%以上であった
検査は 27 項目で、内訳は生化学・血液ガス
【連絡先】
21 項目、血液(末梢血液一般、血液像)、凝
古賀秀信
固(PT, APTT)および細菌(血液培養、塗
飯塚病院 診療情報管理室・臨床研究支援室
抹・鏡検 S-M)であった。入院期間別に実施
(代表 0948-22-3800)