DPC データを用いた診療行為分析の試み

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DPC データを用いた診療行為分析の試み
誤嚥性肺炎を中心に
◎古賀 秀信 1)
株式会社 麻生 飯塚病院 1)
【はじめに】総人口の減少と少子高齢化が進
率をみた場合、全ての検査において実施率が
む中、誤嚥性肺炎(以下、肺炎)、骨折およ
最も高かったのは 1 日目で、その後は減少す
び脳卒中は今後も増加することが示唆されて
るパターンであった。減少パターンには漸減
いる。一方限られた医療費の中で、質を落と
するパターンと、入院当初(1~2 日目)に実
さずに医療を提供していくことが一層求めら
施後急速に低下するパターンに大別された。
れるが、質を向上させるには過程(プロセス)を
しかし 11 日(期間Ⅱ)以降においても多くの
管理しなければならない。今回 DPC データを
臨床検査が実施されており、漸減パターンを
用いて肺炎症例における臨床検査プロセスを
示す臨床検査の実施頻度は高かった。特に電
調査し、若干の知見を得たので報告する。
解質・腎機能・末梢血液一般の頻度が高く、
【方法】平成 27 年度(2015 年 4 月~2016 年
それぞれ 600 件を超えていた。
3 月)に、最も医療資源を投入した傷病名
【考察】肺炎は嚥下障害により細菌が唾液や
(DPC 病名)が肺炎であった患者について、
胃液とともに肺に流れることで生じる肺炎で
(1)DPC コード毎の該当症例数や平均在院
あり、診断過程(ガイドライン)において臨
日数、(2)入院期間別(期間Ⅰ以内・期間
床検査(CRP ・ CBC)は重要な位置を占めて
Ⅱ以降)における臨床検査の実施状況につい
いる。今回の調査において両検査の実施率は
て検討を行った。用いたデータは様式 1 ・
99%と高く、肺炎診断のための実施率としては
EF ファイルを元に作成した DPC データバンク、
満足できる実施率であると思われた。しかし
ならびに DPC14 桁分析ツール(PRRISM 社)
診療報酬が低下する 11 日以降においても検査
である。
は多数実施されており、頻度の高い項目であ
【結果】(1)肺炎に相当する症例は 269 例
れば1入院で数回検査を行っていることにな
(男 158 女 111、平均年齢 79.1±14.1 歳)で、
る。実際、包括範囲出来高換算に占める検査
平均在院日数は 23.9±15.6 日、中央値[四分位範
の割合は注射(63,207 円)に次いで2番目に
囲]は 21[13, 30]日であった。DPC コード別に見
高く(60,682 円)、肺炎全体の 99.5%の症例
ると、最も症例が多かったのは
は、包括支払いに対してマイナスの入院であ
040081xx99x00x(誤嚥性肺炎 手術なし 手
った。今後ますます高齢者が増え、病院の機
術・処置等 2 なし・副傷病なし)の 212 件で、
能分化と質向上への取組みが推し進められて
在院日数は最も短かった(20.0±11.0 日)。
いく中、無駄を省きながら質を向上させてい
(2)040081xx99x00x おいて、分析ツールで
く上で、DPC データを用いた診療行為の分析
follow し得た 203 名 に着目した場合、入院期
は大変有用であると思われた。
間中の臨床検査の実施率が 90%以上であった
検査は 27 項目で、内訳は生化学・血液ガス
【連絡先】
21 項目、血液(末梢血液一般、血液像)、凝
古賀秀信
固(PT, APTT)および細菌(血液培養、塗
飯塚病院 診療情報管理室・臨床研究支援室
抹・鏡検 S-M)であった。入院期間別に実施
(代表 0948-22-3800)