ブラジル/サン・パウロ (31KB、2011年4月)

ブラジル(サンパウロ)医療情報
以下は必ずしも最新の医療事情ではありません。詳細(特に緊急時対応や予防薬の
服用方法など)については現地医療事情に詳しい医療専門家から常に最新のアドバ
イスを受けるようにしてください。
最新更新履歴:2011 年 4 月更新
1.赴任前の準備
(1)予防接種
入国に際して義務づけられた予防接種はない(小児・妊婦も同様)。ただし、ボリ
ビア、コロンビア、エクアドル、ペルー、パナマから入国する際はイエローカード(黄
熱病ワクチン接種証明書)の提示が必要である。
サンパウロ市内に滞在する限り予防接種の必要性は低いが、長期滞在の場合
は、サンパウロ郊外および他の地域や隣国などに出かける可能性を考慮し、予防
接種(黄熱病、狂犬病、破傷風、A 型肝炎、B 型肝炎)を必ず受けておいたほうが
よい。
小児は基本的な予防接種を済ませておいたほうがよいが、現地でも接種は可能
である。ただし、種類や回数が日本とは若干異なるので、医師に相談したほうがよ
い。
予防接種記録を英語で準備することを勧める。
流行性髄膜炎がはやっている時には、現地でワクチン接種が必要になることも
ある。
(2)その他の準備
歯科治療技術は日本と変わらないと考えてよい。コンタクトレンズ、眼鏡も調達
可能だが、現地で作る場合は眼科医の診断書が必要となるため、予備を携帯する
ほうがよい。また、乾季にはかなり低湿度になる地域もあり、コンタクトレンズが使
用できなくなる人もいるので、眼鏡も携行したほうがよい。
2.医療事情
(1)医療機関
医師は診療室を病院内や他のビル内に設けており、必要時(検査・手術・入院)
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に契約病院の施設を利用するシステムになっている。したがって、受診する際は病
院ではなく、医師の診療室に電話をして受診予約をする。受診料は医師によって違
いがあるが、およそ 100∼350 レアルで、病院ではなく診察した医師に直接支払
う。
検査の場合は医師のオーダーを検査機関に提出し、必要ならば検査予約をとり、
検査代は検査機関に支払う。その検査結果を持参して再度医師の診察を受ける
(医・検査分業)。投薬が必要な場合は、医師の処方箋に基づき薬局で購入する。
救急外来受診や入院が必要な場合、保証金(内科 3.000 レアル、 外科治療
3.000 レアル)ICU (UTI)5.000 レアル の支払いを要求されることがあるが、これは
精算時に療養費と相殺される。保証金は現金で支払う必要はなく、通常は小切手
で支払うことが多い。
ブラジルは日系人医師が多く、日本語が通じる医師も多いので心強い。しかし、
医学用語を日本語で不自由なく読み書きできる医師は少ないので、微妙な事柄に
ついては、日本語とポルトガル語両方で確認するほうがよい。
病院やクリニックでの手続きには、必ず身分証明書の提示を求められるので、留
意すること。
日本人がよく利用する医師、医療機関は次のとおりである。
・サンタ・クルス病院
・日伯友好病院
・サンパウロ日伯援護協会診療所(通称:援協)
なお、サンタ・クルス病院および日伯友好病院は急患を 24 時間態勢で
受け付けている。
入院も可能で、費用は個室が 570 レアル、大部屋が 330 レアルである。
そのほかに、重傷病発生時に高度医療サービスを受けることができる医療機関
として次の病院がある。
・Hospital Israelita Albert Einstein
・Hospital SirioLibanes
・富重チヅル医院
・チェックアップ・サンタクルース
(2)緊急時の対応と措置
緊 急 時 に は 主 治 医 に 連 絡 を と っ て 診 療 し て も ら う か 、 総 合 病 院 の Pronto
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Socorro(救急外来)へ行く。救急車を手配する時は私立の移送会社に依頼する。
これらの救急車は、指定した病院へ移送してくれる。救急車のタイプはシンプル(救
助人と看護人の 2 名同乗)と、UTI(集中治療機器搭載。救助人、看護人、医師の 3
名同乗)の 2 種類である。
<救急移送会社>
・ RemoçõesAsas (11-6965-5366)
・Promedi (11-3826-1010)
・APS (11-3048-1422)
・Bandeirantes (11-3841-7600)
サンパウロ市内であれば、サンタ・クルス病院および日伯友好病院には救急車
があるので、病院に直接連絡し、救急車を依頼することも可能である。また、消防
隊の救急車(電話:193)を呼び(無料)、最寄りの医療機関へ移送してもらう方法も
あるが、混雑している可能性が高いのであまり勧められない。
緊急移送が必要な場合は、AXA 社(場合によってはインターナショナル SOS 社)
の緊急移送サービスを利用する。国内移送の場合でも、原則として同社にコーディ
ネートを依頼するが、状況によっては現地の移送会社を利用することもある。
国内旅行時などの事故や病気を想定し、緊急連絡先、血液型、アレルギーの有
無など、基本的な情報を記入した緊急連絡カードを、常時携行することを勧める。
3.医薬品、衛生用品
(1)携行することが望ましい医薬品
常備薬は現地でも調達可能だが、風邪薬、胃腸薬、「トクホン」「パテックス」など
の湿布剤、目薬(目が乾燥しやすいため)、レスタミン軟膏などの虫刺されやアレル
ギー時のかゆみ止めなど、使い慣れているものは持参したほうがよい。
(2)現地で調達できる医薬品
湿布剤(「パテックス」など)、「キンカン」「オロナイン」軟膏などを除けば、たいて
いのものは購入可能である。ただし、ブラジルの薬剤法では、多種の薬剤を混ぜて
1 つの薬として販売することを制限しているため、日本のような総合感冒薬、胃腸
薬などは入手しにくい。
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(3)現地で調達できる衛生用品
質にこだわらなければ、水まくら、湯たんぽ、生理用品、ガーゼ、脱脂綿、救急絆
創膏など、すべて調達可能である。
(4)薬局
医薬分業が実施されており、医薬品の購入には医師の処方箋が必要である。一
般的な薬(解熱剤、鎮痛剤、抗炎症剤、胃痛止め、基本的な抗生物質、各種軟膏、
目薬など)は処方箋なしで購入できるが、効果が強い場合や体質に合わない場合
があるので、薬局で薬を選んでもらうより医師の処方箋で購入するほうが安全であ
る。
薬の有効期間は、それぞれ明記されているので確認すること。また、服用前に説
明書、特に分量(Posologia)、副作用、禁忌についてはよく読んで確かめること。
日本人が利用する主な薬局は以下のとおりである。
・DrogariaBueno de Andrade
4.妊娠、出産、育児
(1)妊娠した場合の対応
普通・異常分娩ともに対応は可能(帝王切開率は日本より高い)であるが、コミュ
ニケーションの問題、医療習慣の相違から考慮すると本邦での出産を勧める。専
門医の指示に従って定期健診を受けること。早産の可能性がある場合は NICU(新
生児集中治療室)のある病院で出産するほうがよい。人工妊娠中絶は原則的に禁
止されている。
(2)出産後の対応
母子検診は専門医の指示に従って行うこと。なお、予防接種についても医師の
指導に基づいて行うことを勧める。
(3)育児
育児用品は薬局、スーパーなどで容易に入手できる。
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5.手術
(1)現地で可能な手術
医療機関を選べば、あらゆる分野の手術が可能である。ただし、コミュニケーショ
ンの問題、医療習慣の違い、医療スタッフのレベルなどの問題もあり、特に緊急の
場合を除き、日本での手術を勧める。
(2)手術設備の状況
設備・医療スタッフのレベルともに充実した病院は数カ所しかないので、担当医
師と相談の上、病院を選択する必要がある。
(3)その他の留意点
輸血に際しては、HIV、梅毒、シャーガス病、B 型・C 型肝炎、白血病ウイルスな
どを調べているが、事前検査の厳重な病院を選ぶこと。
病院給食制で各種病人食もある。基本的に付き添い人 1 人をつける必要があり、
希望すれば付き添い人用の給食、寝具なども用意できる。
6.現地での傷病
(1)一般の疾病
気温の著しい変化や大気汚染のために、風邪やインフルエンザなどによる呼吸
器疾患には注意が必要である。そのほかには、皮膚病、アレルギー(石鹸、シャン
プー、乳液類の含有成分に日本とは違いがあり、アレルギーを起こすことがある)、
下痢にも注意を要する。
紫外線が強く、長く浴びると皮膚疾患を起こしたり、目を痛めたりすることがある
ので、紫外線予防のクリームを塗る、紫外線予防効果のあるサングラスをかけると
いった対策が必要。
また、一日の気温差が大きく、体調を崩す原因となりやすいので、ジャケットなど
で調節することを勧める。
(2)風土病、感染症
特に注意すべきものは、2002 年ごろから増加傾向にあるデング熱およびデング
出血熱である。デング熱を媒介するネッタイシマカはどこにでも生息するので注意
が必要である。住居内では、生花や鉢植えを飾る場合は、水をこまめに換える、水
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がたまったままで放置しないなど、蚊の生息しやすい環境をつくらない。屋外では
水のよどんでいる場所は避け、蚊に刺されないように注意する。
寄生虫症は、サンパウロ市内のみでの生活であれば、感染はほとんど見られな
いが、郊外では注意を要する。
そのほか、邦人の罹患はほとんどないが、ブラジルにおける風土病および感染
症としては、性病、エイズ、A 型肝炎、リーシュマニア症、破傷風、狂犬病、黄熱病、
流行性髄膜炎、コレラ、ジフテリア、シャーガス病、ハンセン病、オンコセルカ症、ワ
イル病などが挙げられる。マラリアはアマゾン地域全体が流行地で、80%が三日
熱マラリア、20%が熱帯熱マラリアである。
また、下水設備が十分でないために、排水に含まれる細菌が原因となるレオプト
ピローゼ(Leoptospirose)という感染症が、大雨のあとに発生することが多い。
道路を流れる排水や水たまりに入ったりして傷口に排水がかかった場合は感染
する恐れがあるので、気をつけること。
(3)有害動物、病害虫
サンパウロ市内は、一般的に衛生状態は良好であり、通常の場所ではダニ、シ
ラミなどの心配はない。
郊外には毒蛇、毒グモ、サソリ、ムカデ、砂ノミ、ノミ、シラミ、ダニなどがいる。ま
た、人を刺すエイ(刺されると強い痛みを伴う)も生息するので、川遊びには注意を
要する。
7.保健衛生
(1)飲料水
飲用にはミネラルウオーターを用いる。水道水を飲用する場合は 10 分程度煮沸
したほうがよい。歯磨きや、野菜を洗う時などは水道水を直接使用しても問題な
い。
濾過器を利用する場合は、フィルターの交換、清掃を怠らないこと。
(2)濾過器の入手
濾過器はスーパーなどで購入可能である。
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(3)その他の留意点
自宅でよく洗えば野菜の生食は可能である。外食の場合は、衛生状態のよさそ
うな店を選ぶこと。
一般にブラジル食は、高カロリー、高塩分なため、生活習慣病の持病がある場
合は悪化する危険があるので、注意を要する。また、気候的に体内の水分が失わ
れやすいので、日本にいるときよりも水分は多めにとったほうがよい。
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