カリフォルニア大学留学体験記 平成26年度カリフォルニア大学1年留学プログラム参加者 留学時所属学部学科:工学部機械工学科 留学期間:平成26年度3月末~平成27年3月末 留学を決意した経緯 大学に入学した頃,それまで勉強もろくに せず,のめり込んだことは野球くらいであっ でもあるが,多くの経験は,今後直面する問 題を解決する際に必ず自分を救ってくれる武 器になると考えたためである。 た筆者は,将来何も特徴がなく平凡な人間に 3つ目は,英語力の底上げである。生きた なってしまうと人生への危機感を感じ,経験 英語に毎日のように年若いうちに触れること 豊かな深みのある人間になりたいと考えた。 で,効率良く実践的な英語を身につけられる そこで,言葉や文化の異なる海外に留学をす と考えた。 ることによってさまざまな経験ができると考 え,本学のカリフォルニア1年留学プログラ 留学中の住まい ムを現実的に考えるようになった。最終的に 筆者は,1年の前半をホームステイ,後半 このプログラムに参加することを決めた理由 を2人の友人とシェアハウスをして過ごし は,大きく分けて3つある。 た。特に後半の,友人と一緒に過ごした日々 1つ目は,今までとは全く異なる環境・場 所で生活をしてみたかったことである。この ことにより,さまざまな状況においても対応 できる力がつくと考えた。 は,かけがえのない宝である。ここで,シェ アハウスに関する話を紹介する。 留学生活が始まってすぐに親しくなった中 国人の友人と,夏頃から Uloop というサイト 2つ目は,1つ目と重なる部分もあるが, などを利用してシェアハウスをする家を探し 多種多様な経験ができることである。これは 始めた。サブリースの情報を提示している学 冒頭でも述べた,留学を考え始めたきっかけ 生に何度もコンタクトを取ったが,希望のア パートが見つからず,最終的には大学のある デイビス北部のアパート密集地帯を直接まわ り,2人の希望に合ったアパートを見つけ た。しかし,1ヵ月の家賃が1人約750ドル (約9万円) と高いため,もう1人シェアを してくれる人を探し,3人で住むことを考え た。すると直ぐに2人の共通の中国人の友人 が,住む場所を探しているという情報を聞 き,その友人とシェアハウスをする話を進め た。 住むことに決めた部屋の中にはいくつかの ハウスメートと共に 筆者は手前右 個人部屋があり,その大きさの違いなどか 旅行の宿泊先で仲良くなった人たちと 筆者は中央 アンテロープキャニオンにて 筆者は右から2番目 ら,それぞれの部屋で生活する人の家賃を3 らない人が多く,授業中の学生の質問は,正 人で決定し,準備は整ったと思われた。しか 直最後まであまり理解できなかった。 し,契約が始まる直前で,3人目の友人がま 課題も多く出され,特にプロジェクトと呼 さかのドタキャン。残された2人は絶望感や ばれる,約1ヵ月かけて行うものなど,かな 怒りを抑えながら,サイトなどを通じて,新 り重いタスクも出された。特に覚えているの たな人を探し始めた。その後,数人と実際に が,振動学という授業の,MATLAB という 会ったが,交渉が上手くいかない日々が続い 数値解析ソフトを用いた,洗濯機の振動の解 た。そのような苛立ちを覚える状況の中,秋 析のプロジェクトである。課題が書かれた用 学期からデイビスに来た台湾からの留学生と 紙が配られたのだが,問題の意味すら全く分 仲良くなり,幸運にもシェアハウスをしてく からず,自分一人の力では何もできないと感 れることが決定した。3人は気が合い,ほぼ じた。 毎週末,友人を呼んでホームパーティーをし そこで,まず問題を理解するため,オフィ たり,一緒に旅行に行ったりと,多くの時間 スアワーという(TA や先生が研究室で,学生 を共に過ごした。アパート暮らしは,ガスや 電気の開始や,Wi-Fi の設置などをすべて自 からの質問を受けつけている時間) を利用し た。他の学生も質問をしようと待機している 分たちで行わなければいけないため,大変な ため,彼らの前で質問しなければならず,最 面もある。しかし,最高のハウスメートのお 初は英語のミスを恐れて簡単な質問しかでき かげで,非常に貴重な経験ができた。 なかったため,得たいことが得られなかっ た。しかし,この場は英語の授業ではなく, 学習面 1人のアジア人が変な英語で質問していよう 筆者は,夏学期から現地の学生に混じって が誰も気にしないし,授業の課題に関する疑 自分の専門科目の授業を受けた。授業は, 問を解決することが目的だと割り切って,徐 100人以上の生徒が受けているものから,10 々に積極的に質問するようになれた。その後 人程度の小さいものまであり,進め方も先生 もオフィスアワーをほぼ毎回利用して,質問 によってさまざまである。先生は,生徒に内 や相談を重ねた。そのような甲斐もあり,自 容を伝えようと丁寧に話す方が多く,聞き取 分にとっては困難であったプロジェクトをな ることに困ることはあまりなかった。しか んとか乗り越えることができた。 し,学生が話す英語となると,はっきりと喋 その他に,2人でペアになって取り組むプ ホームパーティー 筆者は手前右 よく旅行に行ったメンバー 筆者は最後部 ロジェクトも出された。周りに知り合いがい 何より,専門的な内容を英語で議論している なかった自分は,その授業の質問などができ ときは,日本ではなかなかできないことをし るサイトを利用して,パートナーを見つけ ているのだと満足感が得られた。 た。2人で役割を分担して取り組もうとした 1年もいると,いつも友人と上手くやって が,あまりやる気があるパートナーではなか いたわけではなく,時には言い争いをしたこ ったため,多くのことを自分が行った。結果 ともあったが,帰国した後もメールや手紙, 的に,90点近い点数をもらえたため,かなり 電話のやりとりをするほどの友人ができ,そ 感謝されたのを覚えている。 れだけで留学に価値があったと感じている。 ここで紹介したこと以外にも,授業に関し てさまざまな困難があったが,それらを乗り 越えて良い成績をもらえたときは,かなりの 達成感を得ることができた。 旅行 課題などに追われていない,比較的時間が ある週末や,学期と学期の間の長期休みは, さまざまな場所に旅行に行った。アメリカで 友達 は,遠出をする際に重要となるのが車であ 留学先でできる友達は,留学の充実度を決 る。国土面積が日本とは比較にならないほど 定する重要な要素の1つであると思う。幸運 大きいアメリカでは,車が運転できると非常 にも,筆者は友人に恵まれた。上で述べたハ に行動範囲が広がる。筆者は,滞在中にカリ ウスメートの他,自分の留学生活を最高のも フォルニア州の免許を取得し,サンノゼやサ のにしてくれた友達ができた。アメリカには ンディエゴ,LA,モントレーなどに旅行に さまざまな人種の人たちがいるが,自分はそ 行った。飛行機を使って,イエローストーン の中で台湾,韓国などの日本に近いアジア人 国立公園にも訪れた。冬には,レイクタホと と気が合いやすいと感じた。また,日本語を いう場所へ行きスキーをした。旅行は当然お 学んでいる現地の学生とも交流する場があ 金がかかるが,日本からアメリカのさまざま り,仲良くなりやすかった。 な場所に旅行に行くよりは,アメリカに滞在 また,同じ授業を取っている友達ができる とかなり充実度が増す。筆者は,自動制御と している間に行った方が安いと考え,できる だけ多くの場所を訪れた。 いう授業を毎日一緒に受ける友人ができ,課 道路や,見える景色が広いアメリカでの運 題やテスト対策など,お互いを助け合った。 転はとても気持ちよく,また旅行先でもさま ざまな出会いがあり,充実した休日を過ごせ で,意味を知らないと分かりづらい,面白い た。 表現だと感じたものをいくつか紹介する。 留学を通して学んだこと,得たこと る。これは,サンディエゴへ旅行に行き,ホ 1つ目は “What brings you here ?” であ 1年間の留学生活を通して学んだことの1 テルでチェックインをしている際に,受付の つは,何かをやってみる,始めてみることの 方に言われたフレーズで,「どうしてここに 大事さである。 来たのですか?」という意味である。筆者は ここで1つ例を紹介する。夏頃,キャンパ 当時,この表現を知らなかったため,変な雰 ス内のとあるパーティーで知り合った韓国人 囲気になってしまったのを鮮明に覚えてい の男性と連絡先を交換した。しかし,特に連 る。 絡をすることも会うこともなく月日が流れ 2つ目は “go Dutch”。意味は,「割り勘に た。秋学期が終了する頃,その男性のことを する」である。友人とご飯を食べて,会計の ふと思い出し,夕食に誘ってみることにし 際に言われたのだが,知らないと全く意味が た。久しぶりに再会し,いろいろと話してい 分からない表現であり,興味深いと感じた。 くうちに,意気投合し,親しくなれた。ま また,アメリカではビリヤードのことを た,幸運なことに,その男性はかなり友人の “pool” と呼ぶということも学んだ。このよ 輪が広く,彼の紹介でいろいろな人と友達に うに,海外に長期滞在をしていると,日本で なれた。さらに,彼と彼の紹介で知り合った 英語を勉強していて出合うことのなかった表 方と,3人で旅行に行くほどの仲になった。 現に出合えることがあり,これも海外留学の 一緒にいて心から楽しめる友達ができたこと 大きな魅力だと感じた。 に加え,彼の紹介で友人の輪が広がったこと は,彼を夕食に誘ったことがきっかけであ 最後に り,何かをやってみることで想像もしていな アメリカに滞在した1年は,想像を遥かに かったことが起きるのだと実感した。今回の 超える楽しさと価値があった。思い出作りの 夕食に誘うことのように小さなことでも,行 ための留学ではなかったが,さまざまなこと 動する勇気が大事なのである。 を経験できた1年というだけではなく,人生 また,留学を通して精神的なタフさや,自 信を得ることができたと感じている。上でも で最も楽しい1年になったというおまけが付 いてきた。 述べたが,方法を模索しながら難解なプロジ アメリカの学生は授業中によく質問をし, ェクトを乗り越え,必死に毎週の小テストや 議論をする。本当に多くの学生が意欲を持っ 期末テストの対策を行ったことで,最終的に て授業に参加する。これはとても素晴らしい はすべての科目で良い成績がもらえた。さら ことで,日本の大学ではあまり見られないこ に,2つの科目においてクラスのトップの成 とかもしれない。しかし,彼らにはない,日 績を得ることができた。母国語ではない難し 本人の良さもたくさんあると感じた。日本の い環境の中,ネイティブたちを成績で上回れ 接客業は比べ物にならないほど丁寧で親切だ たことで,今後のあらゆる困難でも自分なら と思うし,時間を守る人も多い。世界にはさ 乗り越えられるという大きな自信に繋がっ まざまな人がいるが,日本人は日本人らしさ た。 を失わないように,自信を持って生きるべき また,現地での生活によって生の英語に触 れることで多くの英語表現を覚えた。その中 だと思う。
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