OPEC減産合意に対する見方とMLP市場の見通し

Column
ご参考資料
「投資のヒント」
2016年10月7日
※以下、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社(以下、GSAM)提供のレポートを紹介します。
OPEC減産合意に対する見方とMLP市場の見通し
概要
 2016年9月28日のOPEC(石油輸出国機構)減産合意は、短期的に原油価格の下支え要因になるも、中長期的な実効
性は不透明
 OPEC減産有無にかかわらず、足もとの世界の原油市場は供給過剰の解消が着実に進展。原油価格は米国シェールの
損益分岐原油価格に収れんする形で、2017年以降に1バレル50ドル台前半で安定化すると予想
 MLPのバリュエーションは依然として魅力的。資金調達環境が改善したことで、今後M&Aや業界再編が活発化する見込
み
OPECの減産合意と原油市場の見通し
MLPおよび原油価格の推移(年初来)
OPEC 8年ぶりの減産で合意
2016年9月28日、アルジェリアで開催されたOPEC臨時総会
において、加盟国の原油生産量を日量3,250-3,300万バレ
ルに削減することで合意したと発表されました(2016年8月
時点で3,369万バレル)。会合直前まで「増産凍結」の合意
すら困難とみられていたところ、結果的に「減産」まで踏み
切ったことで、金融市場にはポジティブ・サプライズとなり、
同日の原油価格(WTIスポット)は前日比+5.3%と急反発し
ました。
OPEC減産合意に対するGSAMの⾒⽅
今回のOPEC減産合意が原油相場に与える影響につい
て、短期的には、原油価格の下支え要因になるとみていま
す。しかし、中長期的な実効性は、以下の理由から不透明
と考えています。
①イラン、リビア及びナイジェリアは減産免除とされる可
能性が高く、その他加盟各国の減産規模など詳細の決定
は11月30日開催のOPEC総会に先送りされ、減産そのも
のの実現性が依然として不透明であること。
②仮に減産が実現したとしても、中長期的には米国の
シェア拡大に帰結する可能性が高く、減産による効果の
持続可能性に疑問が残ること。
(2015年12月31日~2016年9月30日、日次)
(米ドル/バレル)
1,400
1,300
55
1,200
50
1,100
45
1,000
40
900
35
800
30
700
15/12
16/3
25
16/9 (年/月)
16/6
※MLP: アレリアンMLP指数(配当込み)、原油価格:WTIスポット価格
(共に米ドルベース)
出所:ブルームバーグ
原油価格およびOPEC加盟国原油生産量の推移
(2012年12月31日~2016年9月30日、月次)
(米ドル)
120
2014/11
原油価格(左軸) OPEC総会
(万バレル/日)
2016/9
3,400
OPEC臨時総会
生産合意レンジ
100
3,300
80
3,200
⽣産世界の原油需給⾒通し
GSAMでは、OPECによる減産の実現可否にかかわらず、
足もと世界の原油市場は供給過剰の解消に向かいつつあ
るとみています。2014年末以降の原油価格急落は、世界の
原油開発プロジェクトを凍結させ、米国をはじめとする非
OPEC諸国では減産の動きが広がってきました。
60
MLP市場(左軸)
原油価格(右軸)
OPEC加盟国
原油生産量
(右軸)
60
3,100
3,000
40
20
12/12
13/12
14/12
15/12
2,900
16/12
(年/月)
※OPEC加盟国原油生産量は2016年8月まで、原油価格:WTIスポット
出所:ブルームバーグ
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料はゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの情報を基に三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、
金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。
当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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ご参考資料
加えて、2016年にはカナダの大規模な山火事に始まり、ナイジェリアの反政府組織による石油施設攻撃やリビアの内紛に
よる港湾施設封鎖など、原油供給が一時的に停止する事象が頻発し、足もとの原油需給は急速にタイト化に向かったとみ
られますが、これらの一時的な供給停止はいずれ再開される見通しです。
中長期的には、産油国による増産投資が大幅に削減されたため、既存油井では経年による生産減(通常年率4-5%程度)
が続く一方、世界経済成長に伴う需要増(通常年率1%強)が見込まれるなか、原油市場はむしろ供給不足となる可能性す
らあると考えています。
世界の原油需給の推移(予想)
原油市場を事実上動かす⽶国シェール
GSAMでは、OPECによる減産が実現しないとの前提に立っ
ても、世界の原油需給のタイト化を背景に、原油価格は
徐々に下値を切り上げる形で安定化するとの見方を維持し
ます。具体的には、2017年の平均原油価格(WTIスポット)を
52.5米ドル、2018年以降は同55.0米ドルと予想しています。
(2014年1-3月期~2017年10-12月期、四半期)
(百万バレル/日)
2.5
予想
2.0
1.5
1.0
米国シェールは、投資から生産に至るまでに必要な時間が
在来型原油と比べて著しく短いことなどから、原油価格が回 0.5
復する局面ではいち早く生産を再開させることが可能です。 0.0
技術革新等により生産性を大きく向上させた米国シェール ‐0.5
企業の足もとの平均的な損益分岐原油価格は1バレル50‐1.0
60米ドル程度とみられます。原油価格が1バレル55米ドル以
14/1Q
15/1Q
16/1Q
17/1Q (年/期)
上に上昇すると過半のシェール油井が再稼働すると予想さ
れ、これが原油価格の事実上の上値になり得るとの見方で
※2016年5月15日時点予想、 2016年第1四半期以降は予想
※1Qは1-3月期を意味し、例えば14/1Qは2014年1月から3月の3ヵ月間を
す。米国シェールは、世界の原油市場を事実上主導する生
示す
出所:IEA(国際エネルギー機関)、ゴールドマン・サックス・グローバル投資
産主体と言えます。
調査部、GSAM
MLPのファンダメンタルズ見通し
キャッシュフローは、⾼⽔準の成⻑が続く
探鉱・生産等を営む川上セクターの設備投資削減により、
当面はインフラ運営を行うMLPの設備投資も減少傾向が続
く見通しです。2015年には川中セクター全体で460億米ドル
もの設備投資を行いましたが、2018年には300億米ドル未
満まで縮小するとみられています。その一方、過去に投資
したプロジェクトの稼働開始等に伴い、キャッシュフローの
拡大基調は持続すると見られています。2015年から2018年
の3年間のEBITDA * の年平均成長率は+11.2%となる見込
みです。
*EBITDA:財務分析をする上での指標の一つ。税引前利益に、特別損
益、支払利息、および減価償却費を加算した値。
MLP キャッシュフロー(調整後EBITDA)の推移(予想)
(2015年~2018年、年次)
(億米ドル)
900
予想
800
700
600
財務基盤の強化で、中⻑期の配当成⻑⼒も拡⼤
足もとでは保守的な運営をするMLP経営陣が多く、増大す
るキャッシュフローは財務基盤の強化が優先され、配当成
長は一時的に減速する見込みです。2016年の配当成長は
+3-5%程度に止まるとみられますが、2017-18年以降には
長期的な実績配当成長率である+7-8% * 程度に回帰する
可能性が高いと考えています。
500
2015
2016
2017
2018 (年)
※2016年10月4日時点、2016年以降はブルームバーグ予想
※GSAMの定義するMLPユニバース(MLP関連証券含む)のうち、時系列
データが取得可能な67銘柄の調整後EBITDA合計値
出所:ブルームバーグ、GSAM
*1999年~2015年の平均値。
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料はゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの情報を基に三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、
金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。
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MLP市場の見通し
MLP実績配当利回りと米国10年国債利回りの
スプレッド推移
依然として魅⼒的なバリュエーション
MLPが堅調なファンダメンタルズを維持するなか、足もとの
バリュエーションは依然として極めて魅力的です。MLPの配
当利回りは7%台で高止まりしており、低水準で推移する米 12%
国10年国債利回りとのスプレッド(利回り格差)は、金融危
10%
機以来の水準で高止まりしています。
資⾦調達環境が回復
8%
巨額の設備投資を必要とし、キャッシュフローの多くを投資
家に還元するビジネスモデルを有するMLPにとって、健全
な資金調達環境は、事業運営に必須のものです。MLP市
場のセンチメントが最も悪化した2015年末から2016年初に
かけて、資本市場による資金調達は事実上殆ど閉ざされた
状態に陥りました。しかし、市場が落ち着きを取り戻し始め
た2016年4-6月期以降、公募増資や起債による資金調達
は徐々に増加しつつあり、9月14日には、1年3ヵ月ぶりに
IPO(新規株式公開)が成功し、資金調達機能がより一層健
全化した証左となりました。
6%
(2006年6月末~2016年9月末、月次)
MLP
実績配当利回り
10年国債利回り
スプレッド長期平均*
4%
2%
スプレッド(MLP実績配当利回り-10年国債利回り)
0%
06/6
08/6
10/6
12/6
14/6
16/6
*スプレッド長期平均:2006年6月末から2016年9月末までの平均値
※MLP: アレリアンMLP指数
出所:ブルームバーグ、GSAM
(年/月)
MLP 資本市場からの資金調達額の推移
活発化するM&Aと業界再編への期待
(2015年1-3月期~2016年4-6月期、四半期)
(億米ドル)
MLPのバリュエーションが割安な中、資金調達環境が回復
したことは、M&Aが活発化する条件を満たした形となります。 250
実際に9月6日、カナダのMLP投資会社エンブリッジが米国 200
のMLP投資会社スペクトラ・エナジーを2.9兆円で買収するこ
とを発表しました。このM&Aは、両社の株価が大幅上昇する 150
など市場に好感され、今後の更なる業界再編への期待値を
100
高める形となりました。
228.3
166.5
120.2
56.4
50
42.1
52.2
15/4Q
16/1Q
0
15/1Q
15/2Q
15/3Q
16/2Q
(年/期)
※1Qは1-3月期を意味し、例えば15/1Qは2015年1月から3月の3ヵ月間を
示す
出所:ブルームバーグ、バークレイズ、UBS、US Capital Advisors、GSAM
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