骨子1 - 海洋底科学部門

プレートテクトニクス 2016-1 講義骨子メモ 1.
プレートテクトニクス:成立過程と概念
1.1 先駆者達の発想
1.1.1 大陸は移動する
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Francis Bacon “Novum Organum” (1620) •
当時の航海者達による世界地図を示し、アフリカと南アメリカの海岸線の類似が偶然
では考えにくいとの見解
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Edward Swess (1831-1914) :
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大陸が水平に移動するアイディアの提示
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古生代末期の超大陸の存在を提唱し、Gondwana landと命名 (ゴンド族の土地)
Alfred Wegener (1880-1930)
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大陸と海洋の起源(1915-1929) : continental drift hypothesisの提唱
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異なる大陸間で見つかる過去の気候を示す地質学的証拠は、大陸がかつては現在
と異なる配置であったと考えるとうまく説明できる
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石炭紀の石炭(湿潤気候)の分布
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石炭紀、ペルム紀、始新世などの石膏・岩塩(乾燥)気候
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大陸(Sal)が大洋(Sima)をかきわけ移動する
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超大陸パンゲア、超海洋パンサラサの提唱
大陸移動の原動力・メカニズムについての言及なし←地球物理学者からの批判
1.1.2 地球深部の構造とマントル対流
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Arthur Holmes(1890-1965) •
マントル対流の先駆的なアイディアの提示
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1.2 地球表面の玄武岩層がその下の対流層の上を運ばれる
となる観測事実の進展
1.2.1 グローバル地震学の発展
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地震の大部分は地球上の限られた狭い帯状の地域に起こり、多くの場合火山活動帯を伴う
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環太平洋
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アルプス∼ヒマラヤ
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大洋底に連続する海底山脈沿い
深発地震はさらに限られた場所にしか起こらない
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深発地震面(和達ベニオフ面)の発見
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和達清夫による先駆的な報告(1935)
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Benioffによるグローバルな解析(1954)
震源は海溝に沿って分布し、かつ海溝から遠ざかるにつれて深くなる=slab状
1.2.2 海底山脈の発見
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全球的な海底地形図の刊行
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世界大戦時に発展した音響測深技術
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世界初の高域地形図:北西太平洋 Heezen, Tharp and Ewing (1959)
大洋底に連なる海底山脈の発見 oceanic ridge 海嶺
プレートテクトニクス 2016-1 講義骨子メモ •
周囲の海洋底からの比高 3000m
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世界の大洋を70,000kmを越えて連なる
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頂部に堆積物がない
1.2.3 海陸の地磁気研究の発展
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地球磁場の反転
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松山基範 逆帯磁した火山岩の発見(1929)
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更新世初期以前の岩石のかなりの割合が現在の地球磁場から予測されるものとは
ほぼ180度海底した方向に磁化している(日本・韓国等のデータ)
A. Cox “reversals of the earth’s magnetic field” (1964)
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地球磁場はある時間間隔をおいて不規則かつ突然にその極性を変える
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現在と同じ極性であった正磁極期(normal epoch)と、現在と極性が逆の逆磁極
期(reverse epoch)が繰り返す
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350万年前意向の地磁気の反転史の提案 •
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Brunhes (n) , Matsuyama (r) , Gauss (n) , Gilbert (r)
みかけの極移動(apparent polar wander)
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現代の命名法 (ATNTS 2004)
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現在がchron 1 (C1)で過去に向かって数字を大きくする
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正磁極期と逆磁極期で1 chron (C1n + C1r)
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中生代は新たにM1から振り直す
海底磁気縞異常の発見
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1950年代に科学目的の海底磁気探査が開始:曳航式磁力計
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観測された磁場の強弱が縞模様を示す
地磁気縞異常 magnetic lineation (stripe)
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縞模様は海嶺に平行かつ海嶺軸に対してほぼ線対称
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縞模様は何千kmにわたって連続
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海嶺山頂部では特に強い磁場を観測
海洋底拡大説 seafloor spreading (tape recorder) hypothesis
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Vine and Matthews (1963), Vine (1966): spreading of the ocean floor
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海洋性地殻は海嶺で生産され、その時の地球磁場を記録するように磁化する
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磁化した地殻は海嶺から広がり離れていく
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正磁極期に生産された海洋底は観測磁場を強めるように働き、逆磁極期に生産さ
れた海洋底は観測磁場を弱める(現在の地球磁場と海底のつくる磁場が打ち消し
あう)ように働く。その結果として地磁気縞異常が観測される
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実証:深海掘削による岩石サンプルの年代決定(1970)
1.2.3 計算機の発展
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より精密な大陸位置の復元:海岸線の一致
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Bullard et al. (1965) :大西洋の両側の海岸線は500fathomsの等深線で一致
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Smith and Hallam (1970) : ゴンドワナランドの復元
1.3 プレートテクトニクスの成立まで
1.3.1 先駆的なプレートの概念
プレートテクトニクス 2016-1 講義骨子メモ •
Heezen (1960) •
地球の表面は縫い目線で分けられたいくつかの断片に分けられる
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海嶺はその縫い目であり、マグマが上昇してくる場所である
Hess “History of Ocean Basins” (1962)
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地球内部の層構造モデルの提唱
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マントルは1cm/yrのオーダーで対流している
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対流セルの上昇域が海嶺にあたり、そこでマントル物質が表層にもたらされる
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大洋底はのちに実質的には一掃されて対流セルの下降域で地球深部に向かって曲がる
1.3.3 新しいプレートの概念
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Wilson (1965): プレートの概念と “new class of faults” の提唱
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地球上の変動帯(海嶺や断層)は地球表面をいくつかの大きな剛体の板に分けている =rigid plate
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変動帯の末端では、構造は別の構造へと変化する = transform
1.3.3 プレートテクトニクスの成立 Plate Tectonics: 板状造構論
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Morgan (1968) プレート運動論
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プレート境界の類型化
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球殻上のプレート運動論
Le Pichon (1968) 最初のグローバルプレートモデルの提案
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6つの主要なプレートを定義し、その運動を数学的に記述
プレートテクトニクスの基本概念
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地球の表面はいくつかの硬いプレート(lithospheric plate)に分かれている
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プレートは互いに運動する
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地表の地質現象の大半はプレート境界で起こる
プレートテクトニクスは考えかたの枠組み(パラダイム)