平成28年度 産業財産権制度各国比較調査研究等事業 「主要国における

平成28年度
産業財産権制度各国比較調査研究等事業
「主要国における標準必須特許の権利行使の在り方に関する
調査研究」
仕
様
書
特
許
庁
1.件名
平成28年度産業財産権制度各国比較調査研究等事業「主要国における標準必須特許の
権利行使の在り方に関する調査研究」
2.調査研究の目的
第四次産業革命が進展する中、最新技術を標準化して合理的な経済活動を行うに当たり、
標準化された技術に含まれる特許(標準必須特許)の取扱に関して、様々な問題が顕在化
しつつある。例えば、標準規格策定後に当該標準規格に採用された技術に係る特許権が行
使されることで他の事業者による標準規格の利用が妨げられるホールドアップ問題や、法
的性質の不明確なFRAND宣言の効力及びFRAND条件の内容を巡る紛争等、標準必
須特許に特有の問題が挙げられる。特に技術革新のスピードがきわめて速い情報通信分野
においては、事業者は、将来の迅速な製品化やサービス化を見越して標準規格の策定と平
行して多額の開発投資を行い、事前に標準を策定するため、その問題が発生しやすい。
また、特許権者が権利行使する際には被疑侵害品の分析が必要であるところ、標準必須
特許の権利者は、標準規格を採用している製品等であることをもって侵害の主張又は立証
が比較的容易であり、標準規格を採用した事業者を広く標的にしやすいという特徴がある。
そのため、標準必須特許は、他者から特許を入手して自らは特許発明を実施せず、特許権
の行使によって利益を得ることを業とする者の活発な活動を惹起しやすい。現在、この問
題は、対策が進みつつある米国から、欧州や中国、さらには我が国に移りつつある。
このような問題への対応策として、標準必須特許に関する権利行使の在り方について、
差止請求権の制限を中心に複数の調査研究が行われてきた(以下の3.(3)を参照)
。
しかしながら、近年の調査研究では、差止請求権の制限について、司法での手当を主な
論点としており、特許行政機関による対応に着目して検討したものは少数にとどまる。
我が国では第四次産業革命で産業構造が変化し、IoT技術の浸透で標準規格を含む一
製品に集積する特許の数が増加する結果として標準必須特許による産業への影響の拡大が
見込まれ、これまで情報通信分野が関連していなかった自動車や電機分野、建設、電気・
ガス事業といった産業や中小企業に対する訴訟リスクも高まっている。海外に目を向ける
と、米国や欧州のみならず、近年では中国、韓国、インドなどアジア圏でも標準必須特許
に関連する紛争が増加しており、諸外国の情勢も大きく変化している。
したがって、我が国の企業活動が国際化している現状にあっては、我が国と関係の深い
諸外国の標準必須特許の権利行使の在り方に関連した法制度や、国際的な議論の状況等に
ついて網羅的に調査する必要性がある。
このような状況の中、裁判外での紛争の解決手段としては、あっせん、調停、仲裁とい
ったADR制度も知られており、合わせて国内外の制度・状況を比較調査する意義がある。
そこで、本調査研究では、国内外の最新情報を収集し、過去の検討体の議論や調査研究
の報告などこれまでの検討結果も踏まえた上で、①国内外での制度の現状や議論を確認す
ること、②法制上の問題点を明らかとすること、③ユーザーニーズを把握すること等によ
り、標準必須特許における権利行使の在り方を検討する上での基礎資料を作成することを
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目的とする。
3.調査研究内容
(1)調査対象国・地域
以下の国・地域(以下、「調査対象国・地域」と言う)を調査対象とする。
・日本、米国、EU及び欧州主要国(イギリス、ドイツ、フランス、スイス、オラン
ダ)、韓国、中国(香港含む)、インド、シンガポール
(ただし、スイスは3.(3)(ⅱ)の国際標準化機関へのヒアリングのみを対象とす
る。また、シンガポールについては、3.(1)(ⅰ)の国内外公開情報調査のみを対象と
する。)
(2)調査研究項目
国内外公開情報調査、国内外ヒアリング及び報告書の作成は、少なくとも以下の観点と
過去の調査研究の結果を踏まえて整理及び分析を行う。過度の負担が生じない範囲で、ヒ
アリング調査やアンケート調査の結果等を踏まえて、調査項目の追加を依頼する場合もあ
る。
・標準必須特許に関する調査対象国・地域の制度及び議論の状況
(ア) 標準化機関・標準規格の種類(特に、国内におけるデジュール規格の一覧)
(イ) 標準必須特許の国別(企業別)保有件数(例えば通信分野の主要な規格)
(ウ) 標準必須特許(特に情報通信分野)に関する問題事象(の存否)と対応状況(ホー
ルドアップ問題、リバースホールドアップ問題、FRAND条件問題、アウトサイ
ダー・インサイダー問題、ベンチャー・中小企業に特有の問題、悪意あるNPE・
PAEの活動、標準必須特許が原因で標準の策定や普及が阻害された例等)
(エ) 標準必須特許の流通状況と訴訟状況(可能な範囲で調査)
(オ) 標準必須特許におけるFRAND宣言/IPRポリシーの法的性格(誠実交渉義
務・第三者のための契約等)
(カ) 標準必須特許に関するライセンス料の算出方法(特に、各国の裁判例や行政処分等
で判断された実施料率の寄与率(標準規格の貢献部分)、累積上限ロイヤリティ、
特許の価値の評価等を考慮1)、支払い方法及び時期
(キ) 差止請求権の制限に関する制度(特許法等の規定(実施権設定や料率の設定等)、
政府による使用、権利の濫用、競争法による制限、ライセンスオブライト等)
・ 法制度、裁判例、行政処分例等(類型毎の主要な事件概要、実施権設定や料率の設
定等に関する行政処分・司法判断は事件数を含む)
・ 過去の国内(政府・産業界・学会等)での検討経緯及び議論状況(TRIPS協定
等の条約や国際取決めの内容を含む)
(参考) 上池 睦, 他「FRAND をめぐる裁判例にみる標準規格必須特許の実施料算定方法に関する研究」
パテント, Vol.68, No.10, p.119-133 (2015)
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(ク) ADR手続(仲裁、調停、あっせん等)に関する制度
・ 法制度(知財に特化したADR制度の有無、仲裁人・調停人・あっせん人の属性、
判断基準)、裁判例、行政処分例等(知財に特化したADRの類型毎の主要な事件
概要)
・ 利用実態、課題(利用が少ない場合はその理由等)、ADRに対する評価
(3)調査研究方法
上述の3.(2)で挙げた各項目について、政府の各種検討体と少なくとも以下に示し
た過去の調査研究の議論を踏まえながら(i)~(ⅲ)の調査研究を行う。
<標準必須特許の権利行使の在り方に関する過去の調査研究>
(ア) 特許権の効力の例外及び制限に関する調査研究報告書(平成17年3月)
(イ) 特許発明の円滑な利用のための方策に関する調査研究報告書(平成18年3月)
(ウ) 産業の発達を阻害する可能性のある権利行使への対応策に関する調査研究報告書
(平成21年3月)
(エ) イノベーションの創出に資する知的財産権制度の在り方に関する調査研究報告書
(平成22年3月)
(オ) 標準必須規格特許の権利行使に関する調査研究報告書(平成24年3月)
(カ) 標準必須規格特許の権利行使に関する調査研究(II)報告書(平成25年3月)
(キ) 権利行使態様の多様化を踏まえた特許権の効力の在り方に関する調査研究報告書
(平成26年2月)
(ク) 知的財産制度と競争政策の関係の在り方に関する調査研究報告書(平成27年3月)
(ⅰ)国内外公開情報調査
書籍、論文、判例、調査研究報告書、審議会報告書及びインターネット情報等を利用し
て、本調査研究の内容に関する文献等を調査、整理及び分析し、調査対象国・地域の制度・
運用・議論の状況及びそれらに関する諸問題・課題等を明らかにすること。
・国内外公開情報調査は、上述の3.(2)の観点に関連する事項を網羅的かつ広範に調
査すること。・国内外ヒアリング及び国内アンケートにおける調査項目案等の各調査項目
案の作成に用いるために、必要があれば随時、調査結果から必要な事項を抽出し、整理す
ること。ただし、国内外公開情報調査、国内外ヒアリング及び国内アンケートは、調査全
体の合理性を考慮しながら順不同で行うことができるものとするが、国内外公開情報調査
を優先し、国内外ヒアリング及び国内アンケートは国内外公開情報調査で調査が困難な項
目を中心とすること。
・収集した外国語文献については、必要に応じて日本語に翻訳すること。
・報告書に掲載する図面、写真、文章等を他の文献から引用する場合には、報告書に適切
な著作権処理を行い、正当な引用であることを庁担当者に報告すること。
・報告書に掲載する図面、写真、文章等を他の文献から転載する場合には、著作権者から
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転載許諾を得ること。
(ⅱ)国内・海外ヒアリング調査
国内:
・企業(情報通信の企業、中小企業、ベンチャー企業も考慮)、大学・TLO、NPE・
PAE、弁護士事務所・特許事務所、標準化機関(JISC、ARIB、TTC)等から
合計30者程度。ただし、ヒアリング先の選定に当たっては、規模や業種の異なる者から
多様な実情・意見を聴取するように配慮し、必要に応じて、各種の業界団体等にも協力を
依頼するものとする。調査期間の兼ね合い等で調査が困難な場合は、庁担当者と相談した
上で、調査対象者数を調整可能とする。
海外:
・調査対象国・地域ごとに弁護士事務所、特許事務所等(各国・地域あたり1か所程度、
最大12箇所)及び国際標準化機関(ITU、ISO、IEC)。ただし、全ての調査対
象国・地域について必要な情報が洩れなく得られる場合には(例えば欧州各国)、必ずし
も全ての調査対象国・地域・機関を訪問する必要はなく、庁担当者と相談した上で、訪問
する調査対象国・地域・機関を調整可能とする。
・調査項目の設定にあたっては、多様な観点(以下に例示)を的確に把握できるよう、庁
担当者と事前に協議して作業を進めること。
・ヒアリング(特に海外)にあたっては、即答が困難な調査項目は原則として、事前に質
問票を調査先に送付する等して効率的に行うこと。
<調査項目例>
① 標準必須特許(特に情報通信分野)による権利行使の問題点(売買された特許や技術
開発を伴わない特許による権利行使(NPE・PAE等)による産業への影響等)
② 標準必須特許における理想的なライセンス料やその算出方法(FRAND宣言の有無
での違い、実施料率の寄与率、累積上限ロイヤリティ、特許の価値)
③ 標準必須特許に関するライセンス状況(可能な範囲で調査)
④ アップル対サムスン知財高裁大合議事件(平成25年(ネ)第10043号)やマイ
クロソフト対モトローラ米国連邦地裁判決等の標準必須特許の料率の算出方法を示
した判決の評価等
⑤ 行政機関で特許権の差止請求権を調整する制度(実施権設定やライセンス料設定等)
の要望(国内)
⑥ ADR制度(あっせん、調停、仲裁等)による特許紛争解決における行政機関の関与
に対する要望(国内)
・ヒアリング対象案は、理由とともに庁担当者に提示し、承認を得ること。
・ヒアリング対象先との連絡調整を行うこと。
・ヒアリング実施、当日のメモ取り、取りまとめ作業を行うこと。
・原則として、法律事務所等に赴き、ヒアリングを行うこと。外国語の内容については、
日本語に翻訳して整理すること。
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・ヒアリング調査の実施後には、ヒアリング調査結果の詳細な議事録(ヒアリング調査報
告書)を作成し、10実働日以内に庁担当者に提出すること。
(ⅲ)国内アンケート調査
・国内企業(情報通信の企業、中小企業、ベンチャー企業も考慮)、NPE・PAE、大
学・TLO、弁護士事務所・特許事務所、標準化機関等、合計300者程度に対して、国
内アンケート調査を実施すること。ただし、アンケート先の選定に当たっては、規模や業
種の異なる者から多様な実情・意見を聴取するように配慮し、必要に応じて、各種の業界
団体等にも協力を依頼するものとする。
・具体的な質問内容を含む質問票の作成、送付、回収、取りまとめ、分析を行うこと
・質問対象者の案と選定理由を庁担当者に提示し、承認を得た上で決定すること。
・質問票は、簡便な選択式の設問と自由意見を書き込み可能な設問とを組み合わせる等の
工夫をすること。
・調査票の結果は整理・分析後、単純集計を行い、必要に応じてクロス集計をすること。
・調査項目の設定にあたっては、多様な観点(例示はヒアリング項目と同様)を踏まえて
検討を行い、庁担当者と事前に協議して作業を進めること。
4.調査研究報告書の作成
・報告書の表題を「主要国における標準必須特許の権利行使の在り方に関する調査研究」
とすること。
・調査対象国・地域ごとに調査研究の結果を取りまとめる。適切な項目毎に各国の比較結
果(制度、判例、行政処分例等)の相違が確認できる一覧性のある図表を作成する。
・国内・海外ヒアリング調査の結果を整理し、意見をとりまとめる。また、図表を用いて
ヒアリング調査結果全体の概括資料を作成すること。
・国内アンケート調査の結果を整理し、意見をとりまとめる。また、図表を用いてアンケ
ート調査結果全体の概括資料を作成すること。
・報告書の要約(文章及び本調査研究全体を俯瞰する図表)を報告書に含めること。
・著作権の取扱い等について報告書に記載すること。
・参考資料として、各項目例等について、判例、法律、規則、基準などの収集した情報の
抜粋を調査対象国・地域ごとに整理すること。また、英語による情報は日本語の対訳を付
した上で整理し、日本語、英語以外の言語で記載された情報については、日本語で整理す
ること。
・調査結果の分析・取りまとめ、報告書に含める事項・記載ぶりは、庁担当者と事前に協
議して作業を進めること。
5.人的体制
(1)本調査研究の業務責任者(プロジェクトリーダー)のほか、本調査研究に関する専
門的な知見を有する者2名を主担当研究員として配置し、各項目に係る作業を分担
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する。
(2)当該(1)の業務責任者又は主担当研究員のうち、少なくとも1名を庁担当者から
の連絡・調整担当とし、庁担当者からの問い合わせ等に直接的、迅速かつ的確に対
応できる体制を整備すること。
6.調査研究に当たっての留意事項
(1)調査研究開始日から納入日までの本調査研究にかかる全体スケジュール、調査研究
実施機関の調査研究体制・連絡体制等について、契約締結後、速やかに庁担当者に
書面にて説明し、承認を得ること。
(2)調査研究の進捗は、庁担当者の指示する方法、頻度で報告すること。場合により、
庁内関係者に対する中間的な報告を求めることもある。
(3)調査研究の進め方については、庁担当者と十分な打ち合わせを行うこと。
(4)調査研究を進めるに際し、各種資料の案を作成し、必ず庁担当者の承認を得ること。
変更が生じた場合は、速やかに報告し、庁担当者の指示に従うこと。
(5)調査研究に係る庁担当者との打合せ場所については、庁担当者の承認を得ること。
(6)調査研究報告書及びその他の成果物の著作権は、納入時から特許庁に帰属するもの
とするが、調査研究報告書を執筆した者については、出典を明記することを条件に
執筆部分に限り複製、翻訳、翻案等の形で利用することを可能とする。
(7)報告書の納入前において、本調査研究で得られた情報について、庁担当者が、施策
検討の参考資料として使用の必要があると判断する場合には、その指示に従い、必
要なデータを庁担当者に提供すること。
(8)調査研究報告書及びその他の成果物に他人の著作物(図面、写真、文章等)を利用
する場合には、出典を明記するとともに、著作権者から当該著作物の利用許諾を得
ること。利用許諾を得た図面、写真、文章等の情報は、一覧表にまとめ、利用許諾
契約書の写しとともに、特許庁に提出すること。また、報告書に掲載する図面、写
真、文章等を他の文献から引用する場合には、適切な著作権処理を行い、正当な引
用であることを庁担当者に報告すること。なお、これらに拠りがたい場合には、庁
担当者に報告し、承認を得ること。
(9)調査研究により知り得た情報について、外部への漏洩、目的外の利用を行わないこ
と。
(10)報告書の納入前において、調査研究で得られた情報について、庁担当者が、産業
構造審議会等での検討及び施策検討の参考資料として使用の必要があると判断する
場合には、その指示に従い、必要なデータを庁担当者に提供すること。
(11)調査の過程で、各資料の公表の可否について確認し、公表できない資料が含まれ
る場合には、その旨を庁担当者に報告すること。また、電子ファイルについて公表
できる内容のみの場合と、公表できない内容も含む場合とで、2種の調査結果を納
入すること。
(12)納入物等を作成する際、「環境物品等の調達の推進に関する基本方針(平成27
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年2月3日変更閣議決定)」に配慮すること。
(13)その他、詳細については、庁担当者の指示に従うこと。
7.提出物
(1)著作物利用許諾情報一覧及び著作物利用許諾契約書の写し
著作権者から許諾を得る必要があった場合のみ提出すること。
・紙媒体 1部
・電子ファイル(CD-R又はDVD-Rのいずれかの媒体に収納した電子データ)PD
F形式 2部
(2)各調査の調査結果等
庁担当者の求めに応じ、各調査の調査結果等を電子データ(MS-Word形式、M
S-Excel形式等)で提出すること。(提出方法については、庁担当者の指示に従
うこと。)
また、本調査研究で利用したウェブサイトや文献の一覧と、そのアクセスリスト(ア
クセス先のURL、最終アクセス日時を記載したリスト)を電子データ(MS-Wor
d形式)で提出すること。(提出方法については、庁担当者の指示に従うこと。)
8.納入物
(1)調査研究報告書
・紙媒体(両面印刷A4、くるみ製本)
100部
・電子ファイル (CD-R又はDVD-Rのいずれかの媒体に収納した電子データ)
MS-Word形式、PDF形式の両方
一式
※納入に当たっては、テーマ名(件名)を報告書(表紙及び背表紙)、電子ファイルに記
載すること。
・報告書案を納入期限の2週間前(平成29年3月15日(水))までに提出すること。
9.納入期限
平成29年3月31日(金)
10.納入場所
特許庁総務部国際政策課国際班
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