【 2016年9月30日公開】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ ■ 【西原氏スペシャルレポート】 『日銀金融政策で「米ドル/円」 99-100円のサポート強化』 執筆者:株式会社CKキャピタル 代表取締役CEO ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 1)日銀の決定はテーパリング1 への道なのか? 全世界が注目を集める日銀の新たな緩和策について、ここで確認したい。 今回の緩和策の名称は「長短金利操作付量的質的金融緩和」 決定を要約すると、 【日銀①】2%目標実現へ、これを安定的に持続するために必要時点まで継続 【日銀②】マネタリーベースは安定的に物価上昇率が 2%超まで拡大 【日銀③】金融市場調節方針は、長短金利の操作について方針示す 【日銀④】長短金利の操作を行うイールドカーブ2 ・コントロールを導入 【日銀⑤】平均残存期間の定めは廃止する-長期国債買い入れ イールドカーブ・コントロールの導入がはいっていて、金融機関への配慮を示している。 加えて買い入れの上限を撤廃して 2%まで買うという意味。 この決定に対して、日本の参加者の大多数は、あきらかに「テーパリングである」と認識して いる。 大多数の意見をまとめると、 今回の枠組みが日銀版テーパリングへ道を開くものであり、現時点ではマーケットがそれを十 分に理解していない。 その理解が浸透するにつれて、円高圧力は強まり、100 円割れはもちろん、更なる円高は避け られない、といったところ。 1 2 金融政策において、量的金融緩和の縮小のこと 利回りと残存年数の関係を表す利回り曲線のこと これまでの日銀の QQE(質的・量的金融緩和)に対して、市場参加者はラフにいってしまえば 「量の拡大=円売り」と反応していたわけなので、今回の決定が「量の縮小」であれば、マー ケットの最初のリアクションは「円高」に振れても当然といったところ。 加えて、ドイツ銀行株の急落の悪影響もあり、 「米ドル/円」の 100 円割れは必至で、 「米ドル/ 円」は 95 円へと急落するというのがコンセンサスになりつつある。 ただ、多くのエコノミストがいうようにこれは本当に「テーパリングへの道を開いた」といえ るのか? 2)日銀政策「ヘリマネに似ている」前 FRB 議長が指摘 一方、今回日銀が導入した政策に対して肯定的な意見もみられる。 アライアンス・バーンスタインの マーケット・ストラテジストである村上尚己氏の見解によれ ば、 10 年国債金利をゼロに誘導するイールドカーブ・コントロールを実践するには、これまで通り 日銀が国債購入を続ける必要があることには変わりない。実際に、年間 80 兆円規模での国債購 入が続くことは明記されている。より重要な点は、 「2%インフレ率をオーバーシュートする」と いう高いハードルを自ら新たに課して、強力な金融緩和を続けるということである。 金融緩和がしっかり機能していた 2014 年初頭までのように、 2%に向かって多少インフレ率が高 まっても、10 年国債金利をゼロ近傍に安定させ続けるために、日銀はこれまで以上に国債購入 を拡大させる可能性が十分ある。これを正確に理解すれば、今回の日銀の政策フレームワーク 変更が、量的金融緩和の手じまいが前倒しになることを意味しないことは明らかである。 (出所:東洋経済オンライン) つまり市場のコンセンサスとなりつつある「日銀の金融緩和は限界」とする見解は全くの誤解 であると主張。 加えてバーナンキ前 FRB 議長が日銀政策は「ヘリマネに似ている」とした報道が流れた。 ■日銀政策「ヘリマネに似ている」 前 FRB 議長が指摘 日本銀行が新たに導入した長期金利を「0%程度」とする目標について、米連邦準備制度理事会 (FRB)のバーナンキ前議長がブログで、政府の借金を中央銀行が直接引き受ける「ヘリコプタ ーマネー政策」に似ているとの見方を示した。 バーナンキ氏は、日銀の新たな金融政策の枠組みについて「市場の反応はまちまちだった」と したが、 「デフレを終える目標への新たな決意が含まれていて、おおむね良いニュース」と評価 した。 (出所:朝日新聞) バーナンキ氏の主張が正しければ、 「米ドル/円」相場は早晩、底打ちし、反発に転じる可能性が 高まっていることになる。 3) 「テーパリングへ道」というコンセンサスにも関わらず、99~100 円のサポート を割り込めず、 「米ドル/円」が反発する可能性の高まり 前述の村上氏、バーナンキ氏のように「テーパリング一辺倒」ではない意見も散見される。 「米ドル/円」マーケットを振り返ってみれば、今年最大のリスクといわれた Brexit 時の安値 が 99.02 円。 今回の黒田日銀の決定が「Brexit」を超えるショックをマーケットに与え、更なる円高のトリ ガーをひくという相場展開は想像しづらいところ。 ●注目は 75 日単純移動平均(青色) 2016 年の「米ドル/円」はこの 75 日移動平均線がずっと上値を抑えて続落。 しかし「円高派」が多数を占める環境の中、99~100 円レベルで「米ドル/円」が当面サポート され続ければ、次第にこの 75 日移動平均線をブレイクする可能性も高まる。 今回日銀が導入した「長短金利操作付量的質的金融緩和」に対し、圧倒的に否定的な意見が多 い中、99~100 円のサポートを前に下げ渋っている「米ドル/円」の反発の可能性に注目である。 ----------------------------------------------------------------------------------【執筆者:西原宏一氏プロフィール】 株式会社CKキャピタル代表取締役・CEO 青山学院大学卒業後、1985年大手米系銀行のシティバンク東京支店入行。1996年まで同行為替部 門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャ パンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラ ー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交 流が深い。 ------------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】 本レポートは株式会社CKキャピタルより発行されているレポートであり、情報提供のみを目的と しております。 本レポート中のコメントは独自の見解に基づいたものであり、株式会社CKキャピタル、およびワ イジェイFX株式会社共にレポート中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示 的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。 また、本レポート内のコンテンツ、データに関する著作権は株式会社CKキャピタルに帰属してお ります。 コンテンツ、データ等は私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピー等はおやめください。 さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、株式会社CKキャ ピタル、およびワイジェイFX株式会社は一切責任を負いません。 最終的な投資判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたします。
© Copyright 2024 ExpyDoc