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核 理研研究報告
第 20 巻 第 2 号別刷
九州,出荷・ 鶴見火山群噴出物の 全 岩 化学組成
理学部地学
太田
畠 洋 ,吉田 武 義 ,青木謙一郎
東北大学理学部
原子核理学研究施設
第 20巻 第 2 号
核 理研研究報告
35
l982 年 12月
Ⅰ
九州,山市・ 鶴見火山群噴出物の 全老化学組成
理学部地学
太田居 洋 ・吉田武 義 ・青木謙一郎
l. はじめに
S
九州地方には , ほぼ東西に西南木
Ⅹ0
く
州から続く大山火山帯,および 南北方
A
向に 霧島火山帯に 属する第四紀火山
A
が 分布している。 面火山帯の間で ,
"4
それらの噴出物の 特徴が大ぎく 異な
ノ
Ⅱ
る とが知られているⅡ。
p
白布・鶴見火山群は ,九州北東部
㎡
ぐ
に 位置し, 大山火山帯に 属してい
るり
A
、
O 。
Yufu-Tsurumi
ト,
N
( 第 1 図 ) 。 そして,西南日本弧
の 火山フロント 上に存在する
四
。
ま
た, 白柿・鶴見火山群は ,東西来の
10
300km
▲ : Da
活断層に よ り形成される 地溝帯内に
A:
土
Vo
sen
K エ n 土 sh
土
ma
工
ca Ⅱ 土 c
Bel%
Vo
エc
工
can
Be 工た
位置するといわれている ,・。
)。
今回, 出荷・鶴見火山群噴出物に
第
因
由 布 鶴見火山群の 位色
ついて光量子放射化法その 他の方法による 金君化学組成を 得たので,本報告ではその地球化学
的 特徴について 述べ,若干の考察を行う。
S
2. 地質概説
白柿・鶴見火山群は ,高平山,伽藍
岳 ,鶴見岳 , 鬼 箕山,白柿岳 ,などの山体からなる。水
火山群の地質についての 報告としては 小林 7)等があ る。 水火山群の基盤は ,後期鮮新世から更
新世の火山岩 額 であ り,北部の雛豆山火山岩類 は ついては・
2.4Ma の K
一 Ar
年代 値 がもとめ
られている 8)0
水火山群の地質概略図を 第 2 図に示す。 水火山群の噴出物は ,その分布範囲と岩石学的特徴
などにより,高平 CTK)
グループ,鶴見(TR)
グループ,白柿CYU) グループ, および 鬼箕
CON) グループの 4 グループに分けることができる。
これら各バループの 形成順序は・
高平 グ
352
ロ%㎜口鰯済
第2図
白布・鶴見火山群の 地質概略図。
ループの活動の 後に鶴見グループが 形成され,白布バループ, 鬼箕 グループはそれぞれ 独立し
て ,ほぼ鶴見グループと同時期に活動したと 思われる。
高平グループは 溶岩流や火砕岩よりなる。 鶴見グループの 噴出物は,双期,中期,後期に
分
げられ,前期噴出物は火砕岩および 溶岩流.中期噴出物は円頂丘 状 溶岩,後期噴出物は溶岩流
よ りそれぞれ構成される。 白布バループは 火砕岩,溶岩流および円頂丘 状 溶岩ょ
り
なる。 鬼箕
グループはスコリア 丘 および溶岩流よりなる。
S
3. 岩石記載
白柿・鶴見火山群噴出物は , 多くは角閃石安山岩∼デイサイトであ
り・その他少量のかんら
ん 万両輝石安山岩とかんらん 石 普通輝石玄武岩質安山岩が 認められる。 これら全ての 岩石にっ
いて,石基輝石は普通輝石 十 斜方輝石であ る。
角閃石安山岩およびデ
イ
サイトは, 鬼箕 グループ以覚の 全てのグループの 噴出物の大部分を
占めており。 複雑な斑晶鉱物組合せが 多く,かんらん石と石英の斑晶が 共存する非平衡斑晶 鉱
物 組合せが一般的であ る。 更に, basaltjc jnclusion,鹿杖包有物の 認められる斜長石斑晶が
普遍的に含まれている。
かんらん五面輝石安山岩は ,鶴見グループ後期噴出物にのみ 認められる。 かんらん 石 普通輝
石玄武岩質安山岩は。 鬼箕 グループ噴出物にのみ 認められ,かんらん石 斑晶は自形を 呈する。
353
また,角閃石安山岩∼デ
サイト中には ,角閃石および 斜長石が卓越した 捕獲 岩片 が多数
イ
含まれており ,これらは等粒状に近 い 組織を有する。
以下,本報告では,角閃石安山岩∼デイサイトを角閃石安山岩 類 ,かんらん万両輝石安山岩
を輝石安山岩,かんらん石 普通輝石玄武岩質安山岩をかんらん
石 普通輝石安山岩として 議論を
進める。
4. 試料の分析方法
S
, 15個の代表的な 試料を選び金君化学分析を 行った。 主成分組
白布・鶴見火山群噴出物から
Na2o と K20 については,
成については 蛍光 X 線 法 により分析を 行った。 主成分元素のうち ,
Feo は 過 マンガ ソ酸 カリ滴定法, H,0 土については 重量法を用いた。 また, 徴
炎光 光度 法 ,
Ce, Co, Cr, Cs. Nb. Ni, Rb, Sc.
量 元素については 光量子放射化分析法 9)によって・
Sr, Zn. Zr および Y の 12 微量元素の定量を 行い,フレームレス原子 吸光 浅川により Ba の 分
析を行った。 分析結果を第 1 表に示す。
第 1表
No
SP NO ,
p
G" ㎝
SiozWt@@
・
Tioz
Alz03
Fegos
Feo
Mno
Mgo
Cao
Nazo
Kzo
Pzo.
Total
Ba
Ce
Co
Cr
Cs
Nb
Ni
Rb
Sc
S
て
3
080607@
TR
59.39@
4
102809@
TR
3.85@
2.01
0 .Ⅰ 0
2.32@
4.82
3.28
1.78@
0 .Ⅰ 2
99.99
453
35.3@
12.6
17.8
0.89@
9.8
4.O
S2.8@
5.8
385.2@
h1.1
60
120.9
3.88@
3.52
0 .Ⅰ 4
3.74@
7.j8
3.57
1.19@
0. 55
00.00
330
26.4@
16.9
2.@
0.70@
8.4
4.3
22.3@
21.4
418.2@
18.1
64
102.5
0.80@
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
4.24@
2.48
0 14
3.38@
6.78
3.37
1.80@
0. 16
100.00
465
30.6@
16.9
0 8
1.70@
8.7
2.9
50.0@
23.3
521.0@
20.6
92
l18.
Ⅰ
・
Ⅰ
5
102107@
TR
59.70@
6
060401@
TR
59.89@ 59.96@
0.73@
17.52@ 18.52@ 17.46@
Ⅰ
て
Y
Zn
Z
膵m
2
103005@ 060308@
TK
TR
63.47@ 57.28@
0.72@
0.83@
白布・鶴見火山群噴出物の 化学組成。
0.78@
0.73@
7
081501@
TR@
8
081002@
TR
9
10
102306@ 052405
TR
YU
61.03@ 62.44@ 63.86@ 57.75
0.82@
0.68@
0.63@
0.88
16.68@ 17.26@ 17.91@ 17.10@ 17.23@ 16.35@ 17.53
2.68@
3.75
0 .Ⅰ 5
4.41@
6.89
3.82
1.07@
0. 2
100.00
248
23.3@
i8.3
54.7
0.57@
5.6
39.9
26.3@
ⅠⅠ. 1
399.7@
23.9
92
108.8
Ⅰ
3.16@
3.34
0 . 15
3.30@
6.79
3.38
1.81@
0. 15
100.0
29.6@
5.7
3.66@
2.5
0 .Ⅰ 4
3.19@
6.21
3.76
1.80@
0. 3
100.00
395
30.3@
4.
6.2
13.@
10 7
2.22@
7.9
9
44.2@
5.1
493.9@
17.9
76
07.0
2.21@
7.7
8.1
44.4@
2 Ⅰ. 6
434.5@
16.8
63
105.@
2.11@
8.9
6.4
40.2@
22.3
421.7@
17.1
84
109.5
Ⅰ
3㏄
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ・
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
3.62@
2.8@
0 . 14
3.11@
6. 3
3.36
1.68@
0. 14
100.00
373
27.0@
13.6
Ⅰ
・
3.23@
2.60
0 . 14
2.63@
5.58
3.59
1.74@
0. Ⅰ. 5
400.01
392
32.8@
2.5
5.5
1.80@
10.4
3.4
52.1@
11.@
461.4@
18.2
81
119.9
Ⅰ
2.55@
2.45
0 .Ⅰ 3
2.45@
5.
4.04
2.30@
0.13
00.00
408
34.6@
10.0
5-0
3.46@
9.5
3.2
58.9@
16.1
425.6@
16.9
52
24.0
ⅠⅠ
Ⅰ
Ⅰ
4.66
2.71
0 . 13
3.80
7.56
3.35
1.51
0.12
359
26.5
6.6
13.3
1.91
6.j
9.8
35.6
26.7
585.7
16.3
Ⅰ
94.2
4
5
3
つ
︶
き
つ
表
第
lllll
1
072205
YU
59.04
0 . 82
17.55
2.79
3.73
2
072006
YU
61.44
0.71
17.05
3.03
2.83
3
052503
YU
62.48
0.66
16.52
2.97
2.78
Rb
Sc
3.69
7.07
3.53
1.52
0.1.3
100.00@
356
26.6
16.3
14.7
1.99
6.5
5.1
36.9
22.0
3.04
6.20
3.61
1-82
0.13
99.99@
396
31.2
14.4
9.1
2.58
8.O
6.7
47.5
22.1
2.95
5.80
3.61
1.99
0.12
100.01@
36
32.1
12.3
3.3
3.04
8.8
5.0
53.5
13.8
Sr
471.9
477.2
439.5
16.1
67
96.7
15.9
52
116.9
16.1
72
115.8
№
Sp.N0.
G""や
5ioZwt
膠
Tiog
Alz03
Fez@03
Feo
Mno
Mgo
Cao
Nago
Kzo
P20.
Total
坤m
Ba
Ce
Co
Cr
Cs
Nb
Ni
Y
Zn
Z
Ⅰ
8
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
4
060502
ON
54.33
1.76
16.26
2.77
6.l2
Ⅰ
5.79
7.22
3.66
1.54
0.41
100.01@
398
60.9
㌘. 0
82.5
1.05
23.
f58.0
37.3
20.4
619.2
19.6
116
149.5
Ⅰ
Ⅰ
15
080415
INC
52.43
1.01
18.92
4.70
1.かんらん五石英普通輝石含有斜方輝石角閃石
デイサイト
; 鶴見霊園入口
2. かんらん 石 石英含有普通輝石斜方輝石角閃石
安山岩 ; 鶴見岳東斜面林道
3. 斜方輝石含有普通輝石角閃石安山岩
;猪/ 瀬
戸林道
4. かんらん 石 斜方輝石普通輝石安山岩 ; 旗 / 台
3.82 5. かんらん 石 石英斜方輝石含有普通輝石角閃石
4.94
6. 黒雲母石英かんらん 石合有斜方輝石普通輝石
9.48
角閃石安山岩 ; 大平山
3.06
7. 石英かんらん 石合有斜方輝石普通輝石角閃石
1.27
安山岩 ; 伽藍 岳
0.19
8. 石英普通輝石斜方輝石含有角閃石安山岩
;春
99.99@
* l│
236 9. 黒雲母かんらん 石石英斜方輝石含有普通輝石
24.5
角閃石安山岩 ; 境川
22.9 10 .石英かんらん石 斜方輝石含有普通輝石角閃石
2%
0.92
5
⑤
安山岩 ; 白石畠山頂
11. 黒雲母石英かんらん 石 斜方輝石含有普通輝石
角閃石安山岩
; 白石 岳 北側の沢
4.3 12. 黒雲母石英斜方輝石含有普通輝石角閃石妾出
28.4
岩 ; 白石 岳 北北西の沢
37.4 13. 石英かんらん 石合有斜方輝石普通輝石角閃石
587.0
安山岩 ; いもり ケ城
21.7 14. 斜方輝石石英含有角閃石かんらん 石 普通輝石
75
玄武岩質安山岩
77.2 15. 捕獲 岩
; 鬼 箕山
; 滝谷
5. 白布・鶴見火山群噴出物の 全老化学組成の 特徴
5.1
主成分元素組成について
水火山群噴出物組成の 全体的な特徴を 示すために第 3 図に ハ 一カ一図を示した。 白布・鶴見
火山群噴出物のうち 角閃石安山岩類は ,ほば全ての元素で 非常にきれいな 直線性を示し , 大き
な 組成のギャップも
認められない。 角閃石安山岩類は 各バループ毎に 若干組成が異なり ,特に
Mgo が高平,鶴見そして白柿グループ
へ
とより高くなる 傾向がみられる。 それに対して Al203
は ,この順に低くなっている。また・山市・ 鶴見火山群噴出物中に 産する捕獲 岩 類の化学組成
は ,母岩である角閃石安山岩類の 示す組成変化トレ ソド の苦鉄質延長線上にほ ば のっている。
輝石安山岩は , 多くの元素では ,角閃石安山岩類 とほ ば 同じ組成変化トレンドを 描いている
が , Meo
と
K2C@ で 遠いが認められる。 すなわち,輝石安山岩は角閃石安山岩 類 に比較して
W2O が少なく, MgCW
に 富んでいる。
但し, K2O 一 Mgo 図 上では両者は 同一トレンド 上にプロ
ット され,これらを 区別することはできない ( 第 4 図 ) 。
かんらん 石 普通輝石安山岩は ,上記のいずれのタイプとも大 ぎく異なった 化学組成をもつ。
355
wt が。
X
Ⅹ
x
Alzoa
o
8
照
Sio;@wt%
SlCh2 Ⅱ な。
Ti02
Ⅹ
X
・
ム
ゆ醸 。あめ & 。
基盤火山岩 類
高平グルーフ。
0
鶴見グループ ( 角閃石安山岩 類 )
鶴見グループ ( 輝石安山岩 )
中 布 グループ
▼ 鬼箕 グループ
X 捕獲 岩類
・
●
口
Ⅱ
n0
せ
X ・。
辞卍密硝壷辞
。
0
05
P205
鯉
・
喘 % 至 堪% P 。
六
Si02 Ⅵ %。
第3図
南 布 ・鶴見火山群噴出物の 主成分組成変化 図。
356
wt%
Ⅰ 消 "
Ⅰ
弾
㎏O
K:20 wf% 。
第 4 図 K,0
一 Mg0
図。 記号は第 3 図参照。
すなわち,それに比べて AL2O, がかなり低く ,一万,
Mg.0 に富んでいる。 さらに N 鋤 O と㌔ 0
が若干多く, Tio2
5,2
と
P205 に極端に富んでいる。
微量元素組成について
主成分元素と 同様に, SD2 を横軸にとった 組成変化図を 第 5 図に示す。 Ba, Rb, Cs に
ついては,全ての 噴出物について SD, の増加に伴いほぼ 単調に増加する。 Ce, Nb, Zr に
ついては,かんらん石 普通輝石安山岩を 除くと, Sio, の増加に従って 単調に増加し ,かんら
ん百普通輝石安山岩については 他のタイプに 比較して明らかに 高い含有量をもつ。 Co, Sc, Sr
はおおむね Sia の増加に伴って 減少する。 また, Cr, Ni については,かんらん 石 普通輝石
安山岩と輝石安山岩が 角閃石安山岩頸に 比べて非常に 含有量が高い。 Y は,いずれの岩石でも
ほぼ一定の値をとるが ,高平グループに属する噴出物のみが 高い含有量を 示している。
5.3
中央海嶺玄武岩 ( MOR
日 ) 組成による規格化パターン
白布・鶴見火山群噴出物の 地球化学的性格を 更に検討するために MORB 組成による規格化
/" 。 タ
- ンを 作成した ( 第 6 図 ) 川 。 これに よ ると角閃石安山岩 類 に属する岩石はいずれもか
なり狭い組成範囲にあ り, HFS 元素に対して LTL 元素が濃 集し
Nb に負の組成異常が 認め
られる島弧のカルクアルカリ 岩に特徴的な 規格化パターン 12)を示している。 輝石安山岩の 規格
化 パターンは角閃石安山岩 類 のそれと重なる。 すなわち,微量元素の規格化パターンも 濃集度
もほとんど同じであ る。 また,捕獲着類の規格化パターンも 角閃石安山岩 類や ,輝石安山岩の
示すパターソ
と
同様であ る。 それに対して.かんらん 石 普通輝石安山岩は 他のグループに 比べ
て LIL 元素では同様の 濃 集 度を示すが, HFS 元素に関しては 明らかに高い 濃 集度 をもっため,
Nb の 負 異常をあ まり示さないアルカリ 玄武岩に近い MORR
る。
規格化パターン 研 , 14,を示してい
﹃
357
mp
ppm
㏄
C
▼
㏄
ム
0
Oの
田
Z
Ⅰ
150
o
l㏄
口
O0
0
口
Sl02
も
o
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ノリ。
00
口
SlCb二ノ
t
n a ao
0
。
つイ
口色
。
。
#
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㏄
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00
x
0
C
ム
O
Ⅰ
l5り
口
0no
OD
O
Sl02
(0
0口
00 。
o o Q
口
ム
成 。
量照
微参
の図
物 3
山男
噴は
群青
m 記
火 。
・変
見図
鶴化
分
Ⅵ ザ@
和成
白紐
図
5
第
S@2
切羽。
358
「㏄
0
ROCK/N
Ⅰ
・
m
MORB
角閃石安山岩
頗
0O
輝石安山岩
Ⅹ…・
/-@
l
0
,
・
グ,
モ
づヰ
捕緩岩
かんらん
石普通輝石
安山岩
Ⅰ
セ
0 .Ⅰ
Sr
K
第6 図
S
Rb 助
Nb
Ce
MORB
N 一 type
P
Zr
Ⅰ
Y
組成による規格化パターソ
図。
6. 角閃石安山岩 類と 輝石安山岩の 同源性ならびにこれらと 捕獲着類との 同源性に
ついて
白布・鶴見火山群噴出物相互の 同源性を検討するために ,最も液相に濃集 する元素の一 つで
あ る Rb を横軸にとり ,縦軸に他の液相摸 集 元素をとった 両 対数グラフを 作成した ( 第 7 図 ) 。
この図によると K, Ba, Ce, Cs および Nb については角閃石安山岩 類 ,輝石安山岩類 ,そし
て 捕獲 岩類が .すべてほぼ同一の直線上にプロットされることがわかる。
したがって,これら
各岩石バループを 形成した初生マグマが , 互いに密接な 成因的関連を 有していたことが 推定さ
れる。 また,これらの組成を MORB
規格化パターンで 比較した場合もすべて
ンと濃集 度を示す。 これらのことは 白柿・鶴見火山群噴出物のうち・
同じ様なパター
角閃石安山岩 類と 輝石安
山岩とは同一の 初生マグマに 由来している 可能性が考えられること ,ならびに捕獲岩 類は っ い
てもこれらの 安山岩 類 と同源ものであ る可能性が強いことを 示唆している。
S
7. かんらん
石 普通輝石安山岩の
特異性
既に述べたように ,かんらん石 普通輝石安山岩は 他の由 布 ・鶴見火山群噴出物とは ,かなり
異なった化学組成をもつ。 特に第 3 図,第5 図に示したように Ce, Nb, Zr, Ⅲ,そしてP な
どの濃度が他の 岩石グループに 比べて高い。 MORB
規格化パターンにおいても
他のグループ
とは明瞭に異なるパ々 一ソを 示しており,それらと同源とは考えにくい。 おそらく,かんらん
石 普通輝石安山岩は 他の噴出物とは 異なる初生マグマに 起因する噴出物であ ると推定される。
359
ppm
00
Ⅰ
Ce
v
50
40
のも勉
●X
口。
0
500
Ⅰ|
Z
「
T
百泊。
oも
00
Ⅰ
田
X
50
0O
Ⅰ
Y
50
v
X
、
。
雙 0 社宅。
0
0
印
市
O
1
0
0
0
5
0
Ⅱ
|
0ll
沖
"
p
参
3
図
やま
第
コし
三口
号
図。
素
万
一
ア
胆イ
bb
RR
7
図
第
360
本 岩の示す MORB
規格化パターンはアルカリ 岩, しかも東北本州 弧 のような典型的な 島弧
の背 弧 側に産するアルカリ 岩川ではなくイソタープレートに
産するアルカリ 火山岩,4)のそれに
近いという特徴を 示している。 白布・鶴見火山群は 九州北東部における 火山フロントに 位置す
る 火山であ る。 このような火山フロ ソト 上の火山において Nb 負 異常を示す通常のカルクアル
カリ岩と, Nb 負 異常をあ まり示さないイン々 一 プレートに産するアルカリ
を 持った岩石とが
要因としては・
玄武岩に近い 性格
共存することは 興味深い。 この位置においてこのような 特殊な岩石が 産する
1. この位置が
2
つの火山帯の 交差する付近にあ
2. この位置が第四紀
たる・
にはいってからずっと 引っ張り応力 場 に位置していた ,などを挙げることができる。特に後者
の 要因は地下深部におけるインタープレートアルカリ
岩に近いマグマの 発生に重要な 役割を果
たした可能性があ る。 また,おそらく ,西南日本弧が 本来・東北本州 弧に 比較してより 複雑な
地殻 一 マントル構造を 有することも 重要な要因のひとっであ ろう。
S
8. 白布・鶴見火山群噴出物の 分化機構
白柿・鶴見火山群噴出物の 分化作用を検討するために
Nb/Y
Rb Y 一 Zr/Y, K/Y
一 Zr/Y,
一
ノ
Zr/Y の 雨 対数グラフを 作成した ( 第 8 図 ) 。 これらの 図上で角閃石安山岩類はほぼ 45。 の右上
がりの直線上にプロットされる。
このような変化傾向は ,結晶分別作用ないしマバマの混合に
より生じた可能性が 考えられる。 又 , これらの岩石に 赤平衡斑晶組合せが 認められるのは・
マ
ク マの混合による 生成を指示している。
また,捕獲着類は角閃石安山岩類の 組成変化トレンドの 延長上にプロットされており , この
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故辞
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一図参照
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361
ことは,捕獲着類を形成したマグマが 角閃石安山岩類を 形成したマグマと 同源であ る可能性を
示唆している。 捕獲 岩類 がより苦鉄質なマグマから 直接固結したものか ,あるいは角閃石安山
岩類を形成したマグマからの 集積 相 であ るのかの判断には 今後の検討が 必要であ る。
一方・輝石安山岩は 角閃石安山岩 類 とは異なる領域にプロットされている。 すなわち, Nb/Y,
Rb/Y, K/Y がともに低い。 仮に角閃石安山岩 類と 輝石安山岩とが 同じ初生マグマから 由来 l,
たとすると,角閃石安山岩類を形成したマグマでは 輝石安山岩を 形成したマグマに 対して K,
Rb, mb が漬葉したことになる。 このような両者の 組成差の原因としては ,角閃石安山岩類と
輝石安山岩の 間に地殻内での 結晶分化作用の 内容,従って,結晶分化時の物理化学的条件が 異
なっていたことが 予想される。
S
9. まとめ
九州北東部に 位置する,山市・ 鶴見火山群噴出物は 大きく角閃石女 m
んらん 石 普通輝石安山岩に 分類でき
る。
着類・輝石安山岩・
角閃石安山岩 類と 輝石安山岩とは 典型的な島弧に 産す
るカルクアルカリ 岩の地球化学的性格を 有する。 それに対してかんらん 石 普通輝石安山岩は
瞭に 異なる組成を 有し,よりイソタープレートに産するアルカリ 岩に近い組成をもち ,
負 異常をあ
か
明
Nh の
まり示さない。 これらの火山岩中には 捕獲着類が認められるが ,その組成は角閃石
安山岩類の組成変化トレンドの
た マグマと同源のマグマに
延長上に位置し・
これらの捕獲着類が 角閃石安山岩類を 形成し
由来する可能性を 示している。 白布・鶴見火山群は 九州北東部での
火山フロントに 位置する 人 m であ るが.そこでの性格の明瞭に 異なる 2 種のマグマの 共存は ,
水火山が火山帯の 交差する付近に 存在し
しかも九州を
横切る地溝帯内に 位置することと 関係
していると推定される。 いずれにしても 今回の結果は 西南日本弧を 構成するマントル 組成の下
均質性を示唆しているものと 思われる。
本研究にあ たり.東北大学理学部原子核理学研究施設の
にライナックマシンバループの
皆様,東北大学サイクロトロ
八木益男教授,掛木和義博士ならび
ソ Rr セ ソタ一の中村 尚 司教授,
山寺 亮 博士,ならびに宮田 孝 九民をはじめとする 職員の方々には 試料の放射化ならびに 測定に
あ たってお世話になった。
Ba の分析にあ たっては東北大学教養部の 蟹泥鴨 史 教授,石川賢一
博士に 御 指導頂いた。 同理学部岩石鉱物鉱床学教室の 大沼 晃 助教授,藤巻安 和博士には諸般に
わたって 御 指導頂いた。 なお,本研究の一部に文部省科学研究費補助金
た。 以上の方々ならびに 当局に深謝する。
(62103003)を使用し
362
文
考
参
献
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2)
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4) 加藤禎一 : 地質調査所月報
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5) 松木徒夫
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16C 1979)127
6) 松木征夫
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7) 小林哲夫
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