代数学入門 2016 年度後期 工学部・未来科学部 1 年∼ 全学科 (月曜 5 限 / 2504 教室) 担当: 原 隆 (未来科学部数学系列・助教) 1 講義内容 (シラバスより抜粋) 整数 (0, ±1, ±2, . . . . . . ) は最も「素朴な」数の概念であり、あまりにも身近な数であるため、と もすれば実数などと比べて非常に単純な数の様にも考えられがちである。しかし、〈整数の世界〉が 〈実数の世界〉とはまた違った意味で非常に奥深く魅力的な構造を持っていることは古来より知られ ており、現代に至るまで数多の数学者達を魅了し、研究へと駆り立ててきた。さらに近年では、暗号 理論など我々の生活に密接に関わる分野にも整数の理論が応用されるようになってきている。 この講義では初等整数論の初歩について学習する。整数を割った「余り」の概念の復習から始め、 「余りの数の世界」に於ける様々な法則の金字塔たるフェルマーの小定理、オイラーの定理を理解す ることを目指して講義を進める。時間が許せば応用的なトピックス(RSA 公開鍵暗号、ガウスの整 数など)についても扱う予定である。 2 講義の進め方 基本的にシラバス (UNIPA 参照) に沿って講義を行いますが、おそらくシラバスの内容は 10 回く らいで終わってしまいますので、応用的な内容も扱う予定です (現時点では RSA 公開鍵暗号、ガウス 整数環の整数論を予定しています)。また、講義の最後に 小テストを実施 し、成績に反映させます。 本講義では、代数学の入門として 初等整数論 elementary number theory を扱います。高校の新 課程『数学 A』で初等整数論が扱われることになったため、教職科目としても重要な内容ではありま すが、整数論の世界は『数学 A』の教科書で扱われる程度の内容では捉えきれないほど深淵で魅力的 なものです。教職を目指す方こそ、教科書で扱われている内容の背景に広がる広大な整数論の世界の 一端に触れ、その面白さを生徒に伝えられるような教員を目指して欲しいと思います。また、教職課 程に進むつもりのない方の履修も歓迎します。GPA には関係しない自由科目ですので、あまり成績 を気にせずに整数論の世界をたっぷりと楽しんでいただければ幸いです。 3 評価について 毎週実施する小テストの点数と学期末考査の点数 に基づいて評価します。より具体的には 小テストの成績 (最大 30 点) + ( 学期末考査の点数 ) × 0.7 と 学期末考査の点数 100% のうち得点の高い方を本講義の評点とします (小テストについては後述します)。 ※ 出席点は基本的に 一切 考慮しません。 講義に出席する際には、カードリーダーにタッチをすることが一応推奨されていますが、 タッチのし忘れや認証ミスがあったとしてもあまり神経質になる必要はありません。 4 教科書及び参考書 教科書: 遠山啓著『数の不思議 —初等整数論への招待』 (SB クリエイティブ) 数学教育の大家で知られる遠山啓による初等整数論の入門書。予備知識は殆ど不要で、しかも数学 書らしい「堅苦しい」書き方がなされていないので、読み物のようにすらすらと読めると思います。 興味を持った方は、講義の進度は気にせずどんどんこの本を読み進めていってください。 講義はこの内容をもう少し厳密に (「数学の授業っぽい感じ」で) 扱います。また、不定方程式や RSA 公開鍵暗号等については扱われていないため、必要に応じて講義中で補足します。 参考書: ガウス整数のような「代数的整数」まで含めた整数論の入門書は色々とありますが、有理整 数のみに終始した初等整数論の教科書は実はあまり数がありません。また、最終的に設定され ている目標 (ゴール) が書籍毎に異なっているため、どの本も一長一短だと思います。講義を 受ける上では上記の遠山さんの教科書だけでも十分だと思いますが、それでは物足りない人、 遠山さんの本とはいまいち相性が悪い人用に、幾つか参考書を挙げておきます。どれも個性的 な本ですので、実際にお手にとって見比べてみると良いのではないでしょうか? - 楫元著『工科系のための初等整数論入門 —公開鍵暗号をめざして』 (培風館) タイトルの通り、RSA 公開鍵暗号の原理を理解することを最終目的に定めて書かれた教科書。 扱っている内容はほぼ本講義の内容に準拠している。こちらは、遠山さんの本と比較すると所 謂「数学の教科書」っぽい体裁で書かれているので、「教科書っぽい本じゃないと勉強した気 になれない!!」という人はこちらの本を用いるのも良いかも。ちなみに最終章で公開鍵暗号が 登場するが、その部分はわずか数ページで (!) 解説されてしまっている。ネット社会を生きる 我々が常にお世話になっている暗号も、実はその原理は結構単純、ということですね。 - 結城浩著『フェルマーの最終定理』(SB クリエイティブ) タイトルの通りフェルマーの最終定理をテーマとした数学の「読み物」 。「僕」 、妹のユーリ、テ トラちゃんと言ったキャラクター達の織りなす物語の体裁で書かれた書籍で、肩肘張らずに読 み物感覚で読めるのが嬉しい。とは言え数学的な内容は、簡単な整数のパズル的な問題から始 まって、ピタゴラス数の話題から背理法や無限降下法といった (苦手とする人が多い) 数学の 証明法の話に移ってゆき、最終的にはフェルマーの最終定理を考察する、というかなり本格的 なもの。じっくり読めば読むだけ収穫の大きい本であるとも言えるでしょう。なお、この本に は ワイルズによるフェルマーの最終定理の証明自体は、非常に大雑把なアウトラインしか書 かれていない ので注意。 - 高木貞治著『初等整数論講義』(共立出版) 「俺は!! とにかく!! 整数論をがっつり勉強したいんだ!!」という情熱的な貴方は、迷わずこの本 に挑戦しましょう。日本の整数論研究者の草分け的存在である類体論の祖・高木貞治による著 書。何分古い本なので、旧字体や古典的文体に慣れるまでは若干苦労するかもしれませんが、 初等整数論の魅力をあますところなく描ききった名著だと思います。特に第 2 章の連分数論の 部分は、他の著書にはあまり書かれていない特徴的な章ですが、「連分数と整数」という一見 あまり関係なさそうな両者がペル方程式などを通じて巧妙に絡みあっていく様は圧巻です。 5 小テストについて 本講義では 講義中に小テストを実施し、成績に反映させる ことにします。 - 基本的に 毎週実施します。また、小テストは原則として 講義の最後の 10–15 分程度 を利用 して実施します (前の時間に実験が入っている履修生がいるため)。 - 小テストでは ノート・参考書等の参照は一切認めません。 - (毎週実施する場合は) 1 回の小テストは (大体) 7 点満点とし、上位 5 回分の得点の合計点 を 小テストの点数とします (最大 30 点 / 30 点以上は切り捨て)。 - 原則として小テストの内容は、前の講義をきちんと聞いていたかを確認するチェック問題 と その前の回に実施した問題演習および参考資料の演習問題の類題 を出題するつもりです。 - 小テストの解答は、採点終了後に (なるべく講評を含めた形で) 講義ページ上で公開します。 6 受講に関する注意 - 必ず UNIPA 上で 指定期間内に 履修登録して下さい (履修登録しなかった場合、学期末の学 力考査を受験出来ない場合があります)。 - 小テストの得点整理の関係上、少しでも履修を検討している方は、なるべく 最初の履修登録期 間 (9 月 17 日 (土) — 9 月 23 日 (金)) の間に 履修登録を済ませていただけると助かります。 万一「肌に合わなかった」などの理由で履修を見合せたくなった場合でも、第 2 回の履修登録 期間に履修を取り消していただければ十分に間に合います。 -「板書が速くて追いつかない」との意見がしばしば出ますので、板書の記録用にデジタルカメ ラ、写メ等を用いることは許可しています。但し シャッター音を切るなど、周囲の受講者の 迷惑にならないよう十分に配慮すること。また、老婆心ながら忠告しておくと、写メを撮りっ ぱなしにしたまま、後程自分でノートに纏めるなどしなければほぼ 100% 記憶から抜け落ち ます。IT 社会の現今、「文明の利器」は大いに利用していただくに越したことはないですが、 それを使いこなせるかどうかは自分次第 であることを肝に命じましょう。 - 学期末試験終了後、試験の講評を UNIPA およびウェブページ上に掲載する予定です。また、 希望者には学期末試験の答案を返却します (詳細は後日追って連絡します)。 - わざわざ銘記するまでもないですが、他の受講者の迷惑となる行為(私語、携帯電話、徘徊 etc……)は厳に慎んでください。大学生ともなれば社会的には立派な「大人」です。周囲の利 益にも配慮しつつ、自らの行動には自ら責任を取れる様に心掛けましょう。 7 質問の受付、講義情報 Web: http://www.cck.dendai.ac.jp/math/~t-hara/Lectures/2016/algebra intro.html ※ UNIPA のシラバスにリンクを貼っていますが UNIPA のページではありません (!) メールアドレス: [email protected] オフィスアワー: 毎週 火曜日 16:30 – 17:30, 4 号館 40903A 室にて Web ページには講義メモ及び配布物のファイルをおいておきます。 質問は講義前後及びオフィスアワーにて受け付けます。上記オフィスアワーでは都合が悪い方は、 私の都合がつくときであれば対応しますのでメールでアポイントメントをとって下さい (メールでの 質問も歓迎します)。また、数学系列の他の先生のオフィスアワーを利用されても構いません。 メールを出す際は、タイトルに用件を銘記した上で、学科、学籍番号、名前等の送信者の情報が分 かるようにして出す様にして下さい。相手が分からないメールには返信しません。また、単位につい ての嘆願等 (「単位下さい」「試験日間違えたんでどうにかして!!」etc...) には 一切応じません。
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