最新技術の応用 PET/MRI はじめに 小 林 靖 宏 査台をスライドして同一体位のCTを撮像し、 医学検査の一種である。そのなかでグルコース PECT︶と同様、放射性同位元素を用いる核 磁気共鳴医学会からも共同で同年に﹁FDG 場し、本邦でも2012年2月に薬事承認がさ 新たな画像診断装置であるPET/MRIが登 PETとCTの融合画像を作成し薬剤分布を評 PET検査とは positron emission tomography 価する︵PET/CT︶ 。近年、磁気共鳴画像 ︵陽電子放射断層法︶の略で、 99 mTc や 123な Iど の単一光子放射性核種を用いる核医学検査︵S ︵MRI︶とPETの画像を同時に撮影できる ︵FD ア ナ ロ グ で あ る 18 F-Fluorodeoxyglucose G︶を使用したFDG PETは、悪性疾患を PET/MRI診療ガイドライン2012 れ、日本核医学会・日本医学放射線学会・日本 中心とした診療に極めて有用な検査法として広 く普及している。 核医学検査の画像は解剖学的情報が不足する ため、通常はPET画像収集の前ないし後に検 る︵本邦では2016年6月時点でわれわれの ﹂が作成されている。大変高額な機械であり、 1.0 本邦はもとより世界的にみても普及は途上にあ Ver − 58 CLINICIAN Ê16 NO. 651 (864) − 会員権によって検査の進め方、内容に差違が 施設を含めて6台︶ 。しかも、そのほぼすべて あり、当院は複数の会員権のPET検査を担当 件近い検査を提供している。某海外研究施設で 月の開業から現在に至るまですでに3、 000 ET検診を開始した施設であり、2015年4 は世界で初めてPET/MRによるFDG P T、内視鏡などが行われる。 初日にPET/MR検査、2日目に超音波、C 施設となっている。検診は2日間体制であり、 ンター﹂として各々の会員権に柔軟に対応する することから﹁ハイメディック東京ベイ画像セ が研究施設に導入されている。われわれの施設 の年間稼働実績が200件弱と聞いており、当 機器説明 PET/MRはPETとMRの筐体が分離し ている分離型、PETとMRの検出器が1つの 筐体に収まる検出器一体型の2種類がある。当 なった﹁山中湖方式﹂で知られる会員制総合メ 導入は必然であったといえる。 クトにまとまった検出器一体型PET/MRの 社製 Biograph mMR を2台導入した。 る Siemens 東京の厳しい土地利用の状況下においてコンパ 院では世界初の検出器一体型PET/MRであ ディカルサポート倶楽部﹁グランドハイメディ という。本邦のFDG PET検診の先駆けと ック倶楽部﹂のPET/MR検診部門を受託す 当院の正式名称は﹁医療法人社団ミッドタウ ンクリニック ミッドタウンクリニック東京ベイ﹂ 施設概要 度にして膨大な検査数をこなしたことになる。 院では︵使用薬剤はFDGのみとはいえ︶初年 − る施設である︵ 骨の写らないMRIで吸収補正を行うことは http://www.himedic.jp/facility/tbc. 法と呼 直感的ではないかもしれないが、 Dixon ︶ 。 html (865) CLINICIAN Ê16 NO. 651 59 − ①検出器一体型 PET/MR の利点 1.検査スループットの向上・被験者身体負担の軽減 2.PET、MRの同時画像収集による融合画像の精度向上 3.時間当たりの情報量増加・PET収集延長を組み合わせてFDG投与量軽減 ばれるMRI画像を用いて吸収補正 map を作 成することで、日常診療には十分耐えうるPE T画像を作成することが可能である。 当然PET/CTのCT分の被曝がなくなり、 被曝は低減する。当院では収集時間をわずかに 延ばし、2∼3 の極低被曝PET検査を提供 している。 撮像内容 筐体内ではPETの検出器とMRの検出器が 同心円状に配列されており、頭、首、胸部、上 腹部、骨盤とベッドポジション毎にPETとM Rの画像が同時に収集され、それらを後処理で 結合する︵図①︶ 。撮像が同時に行われるため に極めて高い融合画像精度が得られる︵図②︶ 。 60 CLINICIAN Ê16 NO. 651 (866) ⼥ྜ⏬ീ⏝ MR⏬ീ (筆者作成) 融合画像用MRIとしてはモーションアーチ ファクトに強く腸管視認性に勝るVIBE ︵ vol- ︶シ umetric interpolated breath-hold examination ークエンスによる脂肪抑制 強調画像を選択し、 T1 ㏣ຍ䝇䜻䝱䞁 PET⏬ീ㞟 ⼥ྜ⏬ീ⏝ MR⏬ീ PET䠋MR PET⏬ീ㞟 ୍యᆺ mSv ⼥ྜ⏬ീ⏝ MR⏬ീ PET⏬ീ㞟 ⼥ྜ⏬ീ⏝ MR⏬ീ PET⏬ീ㞟 PET䠋MR ⟶⌮༊ᇦእ㏥ฟ䜎䛷䛾ᚅᶵ PET⏬ീ㞟 ⼥ྜ⏬ീ⏝CT PET䠋CT ୍యᆺ䛷䛺䛔 PET䛸ྠ㞟䛷䚸䛛䛴⼥ྜ⏬ീ⏝MR⏬ീ䛸␗䛺䜛䝇䜻䝱䞁䛜 ㏣ຍྍ⬟䚹 ᙜ㝔䛷䛿⬚㒊䡚㦵┙䛻⮬⏤྾䛷ീ䛷䛝䜛㌟ᣑᩓᙉㄪ⏬ ീ䚸㢕㒊䛻T2ᙉㄪ⏬ീ▮≧᩿䜢㏣ຍ䛧䛶䛔䜛䚹 ②上行結腸癌(初発) 左:FDG PET/MR 融合画像 右上:脂肪抑制 T1強調画像 右中:FDG PET 右下:FDG PET/MR 融合画像 (筆者提供画像) これに全身拡散強調画像を加え た同時収集を行っている。 FDG PETが悪性腫瘍の 糖代謝活性亢進を可視化するの に対し、STIR︵ short TI in- ︶脂肪抑制を用 version recovery いた自由呼吸下全身拡散強調画 像は組織のブラウン運動の制限 を可視化し、細胞密度の高い悪 性腫瘍を検出することが可能で ある︵後者は無被曝全身癌検診 の手段として提供している施設 も増えてきている︶ 。FDG に検出するため、FDG PE 拡散強調画像はリンパ節を鋭敏 診断が可能となる。さらに全身 用することで、多角的悪性腫瘍 PETと全身拡散強調画像を併 − 1) Tの悪性腫瘍診断を行うにあた − (867) CLINICIAN Ê16 NO. 651 61 − にも寄与する。全身拡散強調画像は自由呼吸下 っては極めて読影効率がよく、見落としの減少 許容内に収め、かつ一体型PET/MRでしか ャンを制限時間内にこなし、会員の身体負荷を で行われるためFDG PET収集と できない価値を創造することが求められた。高 confl ict せず、長い撮像時間が短所とされるもPETと 速撮像法の使用や他のハイメディック検診項目 可能となっている。PETとMRの撮像時間の 同時収集を行うことで非常に効率のよい撮像が Rスキャンを約 分に収めることに成功した。 宜取捨選択するなどして、すべてのPETとM ︵超音波・肺CTなど︶で代替できるものを適 完結する点で、PET/CTと比較して﹁診療 これは管理区域内でPETとMR検査がすべて 50 巣の WIなど︶がすべて含まれる。MRの組 ど︶ 、骨盤MRI︵前立腺のDWI、子宮・卵 FLAIRなど︶ 、上腹部MRI︵MRCPな AやMRCPなど︶を2日目にあえて移行する 時に撮る必要のないMRIシークエンス︵MR イ﹂では発想を転換し、PETと関連が弱く同 スループット﹂も向上したことになる。昨年販 ハイメディック検診では前記以外にも通常の 検診施設で行われるような頭部MRI︵MRA、 売を開始した会員権﹁ハイメディック東京ベ MRのポイントと思われる。 差をいかに活用するかが検出器一体型PET/ − 設の立ちあげ時には法人の定めるルーチンスキ 一方で、総撮像時間の延長がネックとなる。施 い膵腫瘍などを広くカバーするメリットはある 部位である脳、尿路系、肝臓やFDG集積の低 織コントラストを生かしてFDGの生理的集積 PETを提供することも可能となった。 ることで、ガイドライン下限の低用量FDG かな時間的余裕をPET撮像時間の延長に当て 向上を果たしている。これにより得られたわず ことで、3D MRCPの追加や脳MRA画質 − − 62 CLINICIAN Ê16 NO. 651 (868) T2 最後に 検出器一体型PET/MRは検査スループッ トの向上、融合画像の精度向上と情報量増加に よるより高度な画像診断の提供、極低被曝PE T検査の提供が可能なモダリティである。 MR単体としての稼働も可能であり、施設の 事情に合わせたきめ細かい運用・高稼働率が実 現可能である。 ︵ ハイメディック東京ベイ 画像診断センター長 、 ミッドタウンクリニック東京ベイ 院長 、 日本医科大学 放射線医学 ︶ 文献 Takahara T, et al : Diffusion weighted whole body imaging with background body signal suppression (DWIBS) : technical improvement using free breathing, STIR and high resolution 3D display. Radiat Med, 22 (4), 275-282 (2004) (869) CLINICIAN Ê16 NO. 651 63 1)
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