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Sept.2016
衛生通信
ノロウイルス食中毒について<前編>
「食中毒の発生状況」
と「サルモネラ」
9
秋から冬にかけて増加するノロウイルス食中毒。
ひとりひとりが正しい知識を持ち、予防に努めることが大切です。
ノロウイルス食中毒の発生状況
下記は、
過去 5 年の月別食中毒要因別事件数
(図 1)
と、
平成 27 年度の食中毒事件患者数
(図 2)
です。
600
図 1. <過去5年の月別食中毒要因別事件数 平成 22 27 年>
図 2. <平成 27 年度食中毒事件患者数>
ウェルシュ菌
551
500
黄色ブドウ球菌
619 400
その他
2,665
ノロウイルス
300
サルモネラ属菌
1,918
カンピロバクター
2,089
200
H27
食中毒事件
患者数
22,718人
14,876
100
0
9月 10月 11月 12月 1月
ノロウイルス食中毒
2月
3月
4月
5月
6月
細菌性食中毒(カンピロバクター、ブドウ球菌など)
7月
8月
その他・不明
毎年 11 月頃からウイルス性食中毒の事件数が増加することが分かります。
このウイルス性食中毒のほとんどはノロウイルス食中毒で、毎年の年間食中毒
事件要因の 1 位か 2 位となっています。
平成 27 年度の患者数の内訳を見ると、ノロウイルス食中毒患者が全体の 65%
を占めています。これは、1 件当たりの人数が多いことによるものです。
グラフ:厚生労働省 食中毒発生状況より
<過去の大規模食中毒事件>
原因施設・食品
仕出屋・調理提供した弁当
患者数 / 喫食者数(発症率)
1,734 人 /4,137 人(41.9%)
感染経路など
調理従事者からの二次汚染が複合的かつ広範囲に起こった
・使い捨て手袋着用前の手洗いが不十分だった
・調理従事者の健康状態の把握が不十分だった …など
食品製造現場、仕出屋、飲食店などで発生するノロウイルス食中毒事件は、大規模・大人
数となる可能性が高く、万一、発生させた場合は信用失墜の大きなリスクが伴うことを認識
しましょう。
ノロウイルス食中毒の症状
【主な症状】24 ∼ 48 時間程度の潜伏期間を経て…
吐き気
嘔吐
下痢
腹痛
軽度の
発熱
(37 ~ 38℃)
これらの症状が数日続いた後、治癒し、後遺症は残りません。
下痢などの症状が治まっても、2週間から1ヶ月程度はウイルスを排出
します。回復して職場に復帰したときは、まだ食品を汚染するリスク
があります。
ポイント
回復患者が職場復帰して、少なくとも 2 週間程度は
・食品に直接触れる作業をしない
・上記が難しい場合は、
日頃以上に十分な手洗いを実施する
また、ノロウイルスに感染しても軽い症状で済んだり、症状の出ない
ふ けん せい
場合(不顕性感染)があります。
ふ けん せい
知らないうちに感染源となってしまう「不顕性感染」
不顕性感染者が、ノロウイルスに感染している自覚のないまま調理な
どに従事し、食品や環境を汚染してしまうことがあります。
汚染された食品や箇所に、別の調理従事者が触れ、その手指を介して
さらに汚染箇所、範囲を拡大してしまうリスクが潜んでいます。
調理従事者は、症状がなくてもウイルス保有を前提に
「食品を汚染する危険性が常にある」と考えて衛生
管理を行いましょう。
流行期には、ノロウイルス検便検査を定期的に実施することも
有効です。
ポイント
ほっ
ほっ
と一息
≪ ノロウイルス○× クイズ ≫
① ノロウイルス食中毒は、秋から冬にかけて多く発生する
② ノロウイルスに感染後、その症状が治まった日から、いつも通り調理に従事してよい
③ ノロウイルスに感染した人は、必ず下痢、発熱などの症状があらわれる
クイズの答え:①〇、②×、③×
次号は、ノロウイルス食中毒の予防と対処方法についてご紹介します。
出典・参考:公益社団法人日本食品衛生協会「ノロウイルス食中毒・感染症からまもる!!−その知識と対策ー」、厚生労働省 HP