オゾン/過酸化水素同時生成による ラジカル水製造技術の開発 新潟大学 自然科学系 材料生産系列 工学部 機能材料工学科 材料開発工学 講師 小野 恭史 研究背景 洗浄、漂白、消毒、殺菌、脱臭 一般家庭 洗濯・漂白 塩素系酸化剤 工業的分野 次亜塩素酸塩 化粧品 酸化処理後に塩化物等の有害残留物 遊離塩素ガスの発生 食品 製紙(パルプ漂白) 酸素系酸化剤 化学薬品 電子部品(半導体洗浄) 上水、下水処理 促進酸化処理法(手法と用途) オゾン/紫外線法 オゾン/過酸化水素法 オゾン/無機酸法 オゾン/有機酸法 オゾン/超音波法 オゾン/触媒法 オゾン/赤外線法 オゾン/マイクロ波法 • 水中有機物:ダイオキシン、油分、残留農薬、 し尿処理水、微生物殺滅等 • 気体中有機物:臭気、VOC、ダイオキシン等 • 固体表面洗浄:シリコンウエファ、金属、 セラミック、LED等 • 固体表面酸化物形成:半導体、機能性酸化膜、 ステンレス不動態膜等 • その他:有機物合成、ダイヤモンド微粉末精製、 ナノテクノロジー分野新物質合成、 接着部前処理 など 同じ酸素系酸化剤で構成される オゾン/過酸化水素法 従来技術とその問題点 アントラキノン法などに よる過酸化水素製造 O3供給 O2流量計 運搬(安定剤添加) O3発生器 貯蔵過酸化水素水 高圧酸素ボンベ オゾン発生・溶解 混 合 O3/H2O2促進酸化処理 課題 ○不純物混入 ○大型製造装置 ○危険物の貯蔵・運搬 ○個々に製造装置が必要 電解法による オゾン・過酸化水素同時生成 適当な触媒能を有する電極(陽極)の使用 水の電解酸化による 高濃度オゾン生成(~20%) 陰極では水素発生 + - 純水 陰極で過酸化水素生成 省エネルギー・省スペース 低コスト化・オンサイト製造 不純物 フリー 純水 イ オ ン 交 換 膜 過酸化水素の出発原料 水中での酸素の 電解還元 H2O2 O3 〔SPE電解法〕 電解法での問題点 過酸化水素生成用の好適な電極材料がない! 水は最良の電解液溶媒 →酸素の水に対する溶解度が低く、 溶媒である水の電解が進行する。 酸素還元に対する電流効率の低下→低濃度H2O2 オゾン発生に対する遅滞 大電流電解を高効率に! 現行法:ガス拡散電極・トリクルベッド電極 (アルカリ性水溶液中での炭素材料の耐久性に問題) 金属電極で高効率に酸素還元! ブレークスルーポイント 電気分解装置の構成要素である電極に 酸素を引き寄せる機能を持たせることにより、 低濃度基質の高効率大電流電解を達成する! 手段:疎水性相互作用を利用 電極表面の疎水化 →電極に酸素が集められ、 効率よく反応進行 O2分子 疎 水 性 電 極 水溶液 研究の目的 • 過酸化水素生成用の酸素還元陰極材料の開発 気体濃縮機能と気体保持機能とともに気体拡散機能を有する、陰極 に最適な酸素還元用電極を利用 • オゾンの溶解速度を向上させた水酸化用陽極材料 の開発 気泡脱離を促進させてより高濃度のオゾン水を得ることのできる新規 のオゾン発生用電極を使用 • SPE電解法を利用したラジカル水供給電解装置の 開発 純水と酸素のみを出発物質とし、添加剤フリーのオゾン/過酸化水素 同時生成電解装置 過酸化水素発生用酸素還元陰極材料 ー疎水性銀電極の作製と酸素還元能ー -12 電流密度 / mA cm-2 -10 -8 疎水性の向上 -6 酸素還元の高効率化 -4 -2 0 0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8 -1 -1.2 -1.4 電極電位 / V vs. Ag|AgCl 図 銀/PTFE複合めっき 表 複合めっき浴組成 AgCl : 32 g dm-3 NH4SCN : 300 g dm-3 H3BO4 : 20 g dm-3 dm-3 PTFE微粒子 : 0~100 g 界面活性剤 : 0.060 g (g – PTFE)-1 気体保持量 / 10-6 dm3(g-粒子)-1 60 50 粒子化+疎水化 40 30 気体保持能の向上 20 10 0 0 20 40 60 80 PTFE分散量 / g dm-3 100 オゾンの溶解速度を向上させた 水酸化用陽極材料 ー「親水性」二酸化鉛電極ー 小さな泡(成長前)を脱離 バルクでの滞留(浮遊) →バルクでの気体溶解 複合電析法により PbO2/SiO2親水性電極を作製 微小気泡からの 溶解 撹拌なし 撹拌あり 2.88ppm 10.1ppm 複合電析 13.4ppm 平板 17.3ppm 二酸化鉛 平板 オゾン分子 (50mL硫酸水溶液、100 mA cm-2) 6倍 親水性表面 撹拌の併用 溶液全体へのオゾン溶解速度の向上 親水性二酸化鉛電極及び 撹拌はオゾン発生に有効 SPE電解法を利用した ラジカル水供給電解装置 陰極側 (過酸化水素発生極) 陽極側 (オゾン発生極) 電解液のORP(vs. Ag|AgCl) 電解前: 343mV 電解後:陽極液(オゾン水) 1065mV(91ppm) 陰極液(過酸化水素水) 90mV(52ppm) 混合液 140mV O3 + H2O2 → OH・ + HO2・ + O2 msオーダーで消滅(H2O2生成) 本新技術の特徴・従来技術との比較 • 陰極に最適な酸素還元用電極を利用 気体濃縮機能と気体保持機能とともに気体拡散機能を有 する金属電極を開発した。 • オゾン発生用電極を利用 気泡脱離を促進させてより高濃度のオゾン水を得ることの できる親水性二酸化鉛電極を開発した。 • SPE電解法によるオゾン・過酸化水素同時生成 純水と酸素のみを出発物質とし、添加剤フリーのラジカル 水を供給するコンパクトな電解装置を開発した。 想定される用途 • 塩などの不純物を含まない酸化処理が要求される 精密洗浄に適用が可能。 • オゾン水・過酸化水素水の濃度制御により、酸化力 を調整できるため、薬液の残留を避けたい生体関 連物質の洗浄・漂白・殺菌に好適。 • 高濃度化により、さらに強力な酸化力・処理速度が 達成できるため、金属や樹脂の表面酸化処理にも 適用可能。 • 不純物を含まない強力酸化剤として機能させること が可能であることから、低環境負荷型有機合成反 応にも適用可能。 過酸化水素水・オゾン水、それぞれ単独でも製造可能 →単独の用途も考えられる。 想定される業界 • • • • • • • • 排水・汚水処理等の水処理産業 製紙業 食品産業・酪農業 医療・薬品産業 介護産業 半導体産業 家電産業 金属加工業 など 実用化に向けた課題 • 各電極材料の作製条件が成分濃度に及ぼす影響 の傾向は把握した。今後、用途に応じた最適化が必 要となる。 • 電解装置の諸操業因子の最適化により、更なる高 効率化と高生産性を検討する必要がある。 • 毎分数リットル規模の酸化水を生産するためには、 大型化を検討する必要がある。 • オゾン水のさらなる高濃度化のためには、放散オゾ ンの再溶解装置(外部循環型)を付設することが必 要。 企業への期待 • (株)新潟TLOのコーディネートのもと、半導 体加工メーカーと半導体精密洗浄に関する 共同研究をすでに開始している。 その他の分野の企業との共同研究を希望。 • 低環境負荷型の酸化処理の導入を考えてい る企業には、特に本技術の導入が有意であ ると思われる。 本技術に関する知的財産権 • • • • 発明の名称 :オゾン発生用電極 出願番号 :特願2008-84628 出願人 :新潟大学 発明者 :小野恭史 • • • • 発明の名称:オゾン水と過酸化水素水の同時製造装置 出願番号 :特願2008-102573 出願人 :新潟大学 発明者 :小野恭史 お問い合わせ先 新潟大学 産学官連携コーディネーター 客員教授 後藤隆夫 TEL & FAX 025-262-7558 e-mail [email protected]
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