調 査 Research 県内経済界トップアンケート「新年(2017年)の経済見通し」 県 内 経 済 界 トップアンケート「新年(2017年)の経済見通し」 ∼ 県内経済、回復傾向減速の見通し ∼ 【質問事項】 1.国内経済の見通し ⑶ 採算状況の見通し 2.県内経済の見通し ⑷ 経営上の問題点とその対応策 3.各企業・団体の見通し ①経営上の問題点 ⑴ 業績の見通し ②対応策 ⑵ 売上げ・生産動向の見通し 4.本県経済の活性化策 当研究所では、毎年12月、県内の主要企業と業界団体のトップの皆様に、新年の経済見通しに ついてアンケートをお願いしております。今回は100名の皆様にご協力いただき、その結果を以 下の通り、取りまとめました。 ご多用のなか、ご回答いただきました皆様に厚くお礼申し上げます。 注:図表内の【N】=回答数を示す。 1.国内経済の見通し 新年(2017年)の国内経済については、欧 米経済の不透明さなどから慎重な見方も一部 みられるものの、円安・株高などもあって、 「(やや)悪化する」との回答は5.0%(昨年 4.9%)と引き続き少数にとどまった。 また、「(やや)回復する」との回答割合か 図表1 新年の国内経済の見通し (%) 100 1.9 引き続き回復期待が多い。 国内経済見通しの回答結果をみると、「(や や ) 回 復 す る 」 と の 回 答 が44.0 % と 昨 年 80 46.6 44.0 やや回復 する 60 (48.5%)をやや下回ったものの半数近くを 占めた。また「横ばい」も51.0%(同46.6%) 横這い 40 となっており、合わせると95%が「横ばい」 乃至「(やや)回復する」との回答であり、 勢いはやや弱まるものの、4年連続して回復 傾向を期待する見立てとなっている。なお、 回復する 46.6 51.0 20 0 やや悪化 する 悪化する 3.9 1.0 前回調査 (N=103) 5.0 今回調査 (N=100) ながさき経済 2017. 新年号 9 ら「(やや)悪化する」との割合を差し引い このように、昨年に比べると、慎重な見方 た国内経済DIをみると、プラス39.0と昨年(プ や先行きを懸念する見方が増え、回復期待は ラス43.6)をやや下回り2期連続の低下なが 後退しているものの、 「横ばい」乃至「(やや) ら、4年連続の大幅なプラス水準となってい 回復する」との回答割合が86%に達するなど、 る(図表2)。 引き続き回復傾向との見方とみられる。 寄せられたコメントのなかでは、景気への 寄せられたコメントでは、プラス要因とし プラス要因として、「円安・株高」、「設備投 て「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺 資増」などが挙げられており、マイナス面に 産の世界遺産登録への期待」、「クルーズ船の ついては「米国新政権発足の影響」、「原油 寄港増による観光客増」、「熊本地震の影響の 高」、「個人消費の弱さ」などを懸念する声が 一巡」などが挙げられ、マイナス面として「造 目立った。 船業の今後の動向」、「厳しい受注環境(製造 図表2 最近の国内・県内経済の見通しDIの推移 業)」、「消費低迷」、さらに「人口減少」など 100 を懸念する意見が多かった。 80 60 国内経済 58.7 県内経済 45.1 40 20 0 -20 -40 -100 39.0 43.6 38.4 30.1 2.9 -8.9 -4.8 -15.4 -24.9 -32.7 -49.5 -13.0 図表3 新年の県内経済の見通し (%) 100 1.9 16.0 30.0 80 回復する 47.6 -29.8 -53.0 -60 -80 46.1 47.5 -89.9 -66.4 -97.0 やや回復 する 60 横這い 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 (年) 56.0 40 やや悪化 する 2.県内経済の見通し 48.5 20 悪化する 13.0 新年の県内経済については、観光面の追い 風などから回復傾向を期待する一方、製造業 の先行きについて懸念する見方もある。 県内経済見通しの回答結果をみると、「(や 10 0 1.0 1.0 前回調査 (N=103) 1.0 今回調査 (N=100) 3.各企業・団体の見通し や)回復する」が30.0%と昨年(49.5%)よ ⑴ 業績の見通し り20ポイント近く低下した一方、「横ばい」 以下では、各企業・団体の業績について、 が昨年の48.5%から56.0%に、さらに「(やや) 今年(2017年)の見通しを昨年(2016年)実績 悪化する」が昨年の2.0%から14.0%に上昇し の評価を交えて、業種毎にまとめた(図表4)。 た。県内経済DIでは、昨年の47.5から今年は 【製造業・30先】 16.0へと大きく低下した(図表3)。 今年の見通しは、 「快晴」 (4先)、 「薄日」 (11 ながさき経済 2017. 新年号 調 査 Research 県内経済界トップアンケート「新年(2017年)の経済見通し」 先)を合わせると半数を占め、これに「曇り」 【建設業・8先】 が13先、「小雨」、 「本降り」が各1先となっ 今年の見通しは「曇り」が5先と過半を占 ており、昨年実績と比べると、 「曇り」が5 め、「快晴」、「薄日」、「本降り」がそれぞれ 先増、「快晴」が2先増、「本降り」が1先増、 1先となっている。実績と比べると「曇り」 「薄日」 、「小雨」が4先減。厳しい受注環境 が4先増、「快晴」が1先増、 「薄日」が5先 が続くなか、円安による輸出環境の改善、熊 減。営業努力による受注増や手持工事増の一 本地震の影響からの回復がみられるほか、新 方、受注競争激化や人手不足を懸念。 規市場の開拓や新製品の開発、競争力向上な 【卸売業・9先】 どの経営努力の効果に期待。 今年の見通しは「薄日」が6先と2/3を 【運輸業・12先】 占め、 「曇り」が2先、 「本降り」が1先となっ 今年の見通しは「快晴」 (1先) 「薄日」 、 (5 ている。実績と比べると「薄日」が2先増、 「本 先)を合わせると半数を占め、これに「曇り」 降り」が1先増、 「小雨」が2先減、 「曇り」 が4先、 「小雨」が2先となっており、実績 が1先減。熊本地震からの持ち直し、円安の に比べ「曇り」が2先増、「小雨」、「本降り」 好影響のほか、利益重視への転換、社員のモ がそれぞれ1先減。観光客の増加による人の チベーションアップなどの経営改革、企業努 動きの活発化を見込む一方、燃料価格の上昇 力の奏功を見込む先がみられる。 や乗務員等の不足から厳しいとの見方。 【小売業・9先】 今年の見通しは「快晴」 (1先)、「薄日」 図表4 各業界の実績と見通し(SA) (先、%) 合計 全 体 製 造 業 運 輸 業 水 産 業 建 設 業 卸 売 業 小 売 業 電力・ガス・通信 サ ー ビ ス 業 そ の 他 実 績 見通し 実 績 見通し 実 績 見通し 実 績 見通し 実 績 見通し 実 績 見通し 実 績 見通し 実 績 見通し 実 績 見通し 実 績 見通し 快晴 5 7 2 4 1 1 1 0 0 1 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 5.0 7.0 6.7 13.3 8.3 8.3 50.0 0.0 0.0 12.5 0.0 0.0 11.1 11.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 薄日 43 40 15 11 5 5 0 1 6 1 4 6 4 5 2 0 3 6 4 5 43.0 40.0 50.0 36.7 41.7 41.7 0.0 50.0 75.0 12.5 44.4 66.7 44.4 55.6 66.7 0.0 20.0 40.0 33.3 41.7 曇り 28 41 8 13 2 4 1 1 1 5 3 2 2 2 0 2 6 6 5 6 28.0 41.0 26.7 43.3 16.7 33.3 50.0 50.0 12.5 62.5 33.3 22.2 22.2 22.2 0.0 66.7 40.0 40.0 41.7 50.0 小雨 22 9 5 1 3 2 0 0 0 0 2 0 2 1 1 1 6 3 3 1 22.0 9.0 16.7 3.3 25.0 16.7 0.0 0.0 0.0 0.0 22.2 0.0 22.2 11.1 33.3 33.3 40.0 20.0 25.0 8.3 本降り 2 2.0 3 3.0 0 0.0 1 3.3 1 8.3 0 0.0 0 0.0 0 0.0 1 12.5 1 12.5 0 0.0 1 11.1 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 100 100 30 30 12 12 2 2 8 8 9 9 9 9 3 3 15 15 12 12 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 (注)「その他」は商工会議所ほか各団体・組合など(ただし業種別の組合等は当該業種に算入) ながさき経済 2017. 新年号 11 (5先)を合わせると6先となり2/3を占 め、ほかは「曇り」が2先、「小雨」が1先。 回(11.8%)を上回ったが、依然少数にとど まっている(図表5)。 実績と比べ「薄日」が1先増、 「小雨」が1 先減。個人消費は力強さに欠けるものの、ク ⑶ 採算状況の見通し ルーズ船寄港増、円安を背景としたインバウ 採算状況については、「(やや)好転する」 ンド増加などへの期待があり、新規出店や売 が30.9%と前回 (35.7%) をやや下回った。もっ 場活性化などの経営努力の成果を見込む先が とも、「横ばい」が42.3%となっており、「横 みられる。 ばい」乃至「(やや)好転する」との回答が 【サービス業・15先】 7割を超えている。一方、 「(やや)悪化する」 今年の見通しは「薄日」が6先と4割を占 が26.8%と前回(18.8%)を上回っており、 め、「曇り」 が6先、「小雨」が3先となって 採算状況は幾分悪化する見通し(図表6)。 いる。実績と比べると 「薄日」 が3先増、 「小 雨」が3先減。熊本地震の影響が沈静化し、 ⑷ 経営上の問題点とその対応策 観光関連を中心に持ち直しの見方。 ①経営上の問題点(複数回答) 今年も重要課題として最も多く挙げられた ⑵ 売上げ・生産動向の見通し のは「人材不足、従業員の高齢化」であり、 売上げ・生産動向については、「(やや)増 昨年(58.3%)並みの57.0%に達し、人手不 加する」が42.2%(前回48.0%)を占め、「横 足が制約要因となっている状況がうかがえる。 ばい」 (42.3%)を合わせると84.5%が「横ば 次いで、 「売上・受注の不振」が43.0%(前 い」乃至「(やや)増加する」との回答となっ 年38.8 %) 、「 設 備 の 老 朽 化 」 が31.0 %( 同 た。一方、「(やや)減少する」は15.5%と前 26.2%)となっており、いずれも昨年を上回っ 図表5 売上げ・生産動向の見通し 図表6 採算状況の見通し (%) 100 (%) 3.9 80 44.1 100 4.0 8.2 増加する 80 31.7 22.7 やや増加 する 60 11.3 60 変わらな い 40 40.2 42.3 20 0 12 ながさき経済 2017. 新年号 42.3 40 45.5 変わらな い やや悪化 する 20 悪化する 17.8 12.4 3.1 今回調査 (N=97) やや好転 する やや減少 する 減少する 9.8 2.0 前回調査 (N=102) 好転する 30.9 0 1.0 前回調査 (N=101) 24.7 2.1 今回調査 (N=97) 調 査 Research 県内経済界トップアンケート「新年(2017年)の経済見通し」 た(図表7)。 4.本県経済の活性化策(複数回答) ②対応策(自由意見) 課題への対応策をみると、 「人材不足、従 本県経済の活性化のために重要と考えられ 業員の高齢化」に対して、新卒の定期採用・ る対策を挙げてもらったところ、前回同様「地 中途採用の強化、人材の有効活用、社員教育 場産業の再生・振興支援」 (62.0%) 、「観光 の充実、人材の県外流出防止、働きやすい環 客の誘致促進」(61.0%)、 「人材の育成と定着」 (58.0%)の3つが6割前後で上位を占め、 境づくり、行政の支援などが挙げられている。 また、 「売上・受注の不振」には営業力や これに 「企業誘致の促進」(32.0%)が続い 製品競争力の強化が、「設備の老朽化」に対 た(図表8) 。 しては、計画的な更新投資の実行などが挙 がった。 図表7 経営上の問題点(3つ以内の複数回答) (%) 70 60 58.3 57.0 前回調査 50 38.8 40 43.0 26.2 30 31.0 29.1 29.0 22.3 28.0 33.0 28.0 20 12.6 11.0 4.9 3.0 8.7 10.0 その他 規制緩和による 競争激化 3.9 5.0 資金の調達難、 資金コストの上昇 経済のグローバル化 による競争激化 7.8 為替相場 経費の増大 ︵物流・物件費、 社会保険料等︶ 低価格化 仕入価格、原材料 価格の値上がり 設備の老朽化 売上・受注の不振 0 14.0 人材不足、 従業員の高齢化 10 今回調査 図表8 本県の活性化策(3つ以内の複数回答) (%) 59.2 62.0 60.2 61.0 前回調査 54.4 今回調査 58.0 25.2 32.0 15.5 18.0 20.4 18.0 14.6 14.0 10.7 11.0 3.9 5.0 6.8 7.8 3.0 その他 3.0 官から民への移行 資金供給の円滑化 地方への 税源や権限の移譲 経済特区の新設など 規制緩和 新産業やベンチャー 企業の育成・支援 公共投資の増額など 財政出動 企業誘致の促進 人材の育成と定着 観光客の誘致促進 地場産業の 再生・振興支援 80 70 60 50 40 30 20 10 0 (アンケート要約 以上) ながさき経済 2017. 新年号 13
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