頸動脈狭窄症の患者さん・ご家族のみなさんへ 頸動脈内膜剥離術を

頚動脈内膜剥離術を受けるにあたって
頚部内頚動脈狭窄症
の患者さん・ご家族のみなさんへ
監修
小倉記念病院 院長
永田 泉
医療機関名
頚部内頚動脈狭窄症は、頚動脈の内側に
によって、脳へ向か
できたプラーク
(粥腫)
じゅくしゅ
う血液の通り道が狭くなる病気です。
この冊子では、頚部内頚動脈狭窄症を治療
するための外科手術である頚動脈内膜剥
離術について解説します。
(2016年 7月作成)
(201607)
BAS -10.0
(5/オビ)
(PI/DI)
BAS-16-1003
L.JP.MKT.ET.06.2016.0234
あなたの病気の種類
頸部内頸動脈狭窄症
­頚
部内頚動脈狭窄症
動脈狭窄症は、血管の壁が内側に厚くなって、
血液の通り道が狭くなる病気です。
高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病
によって起こる動脈硬化が主な原因です。厚
くなった動脈の壁には、コレステロールなど
じゅくしゅ
を形成しています。
が溜まり、プラーク
(粥腫)
内頚動脈狭窄症が進むと、脳に送られる血液
が足りなくなります。また、プラークが破裂
(けいぶないけいどうみゃくきょうさくしょう)
けっせん
すると、血液の小さな固まり
(血栓)が形成さ
れ、それらが流れ、脳の細い血管に詰まって
血流を止めてしまいます。脳への血液が不足
すると、部位によって手足の麻痺や言語障害
などの神経症状が起こったり、場合によって
は命の危険にさらされることがあります
(脳
梗塞)
。狭窄の程度が高い場合は、すみやかに
治療する必要があります。
脳へ
外頚動脈
ダメージを
受けた脳細胞
脳塞栓
脳細胞
内頚動脈
プラーク
(粥腫)
総頚動脈
血液の流れ
心臓から
1
血栓
破裂した
プラーク
2
あなたの病巣の位置
頚部と頭部の主な動脈です。あなたの病巣はどこ
前
本邦では従来頭蓋内血管の狭窄や閉塞が多かったのです
が、最近では頭蓋外血管、すなわち頚部内頚動脈狭窄症
の割合が増加しています。
にあるのか、担当医におたずねください。
横
前大脳動脈
前交通動脈
中大脳動脈
後交通動脈
後交通動脈
上小脳動脈
後大脳動脈
中大脳動脈
脳底動脈
前大脳動脈
外頚動脈
後大脳動脈
上小脳動脈
脳底動脈
外頚動脈
内頚動脈
総頚動脈
腕頭動脈
椎骨動脈
内頚動脈
鎖骨下動脈
総頚動脈
動 脈 硬 化 が 非 常に
起こりやすい部位の
1つです。
椎骨動脈
鎖骨下動脈
大動脈
3
4
主な検査
頚動脈内膜剥離術の前後に行われる検査で
CT検査
X線を利用して、頭部の断面写真を撮影します。検査時
間が短いため、緊急の場合にも、すばやく検査できます。
脳血管造影検査
カテーテルを血管に入れ、造影剤を注入してX線撮影を
行い、血管の形や血液の流れ方を調べます。局所麻酔と
せ ん し
動脈の穿刺を必要とします。
す。必要に応じて選択されます。
MRI検査
強力な磁場を利用し、頭部や頚部(首)の写真を撮影し
ます。CTより時間がかかりますが、脳梗塞の有無や頚部
(首)の血管、プラークの状態等を詳しく調べることが
できます。
脳血流検査
ごく微量の放射線を出すお薬を注射し、脳の血流の状
態を調べます。血流の不足の程度から、手術の適応を判
断したり、手術後の合併症の有無や血流改善の状態を調
べます。
超音波検査
超音波を利用し、首や脳の血管の様子を比較的容易に
知ることができます。
5
6
治療の選択肢
頚部内頚動脈狭窄症の治療は、神経症状の有
内科療法
抗血小板剤の内服を中心に、高血
圧・糖尿病・脂質異常症などの内科
疾患の治療管理を行う方法です。
無、狭窄の程度、部位によって異なります。
脳血管内治療
頚 部 を 切 開 せ ず に、血 管 内 に カ
テーテルを入れて血管を内側から
拡張する治療です。
頚部内頚動脈狭窄症の場合は、主
にステント留置術が行われます。
一般に、局所麻酔で行われ、入院期
間は順調なら4〜5日です。
外科手術
●バイパス術
開頭して、頭皮の血管を脳表の
血管につなぐ手術です。脳への
血流を改善するのが目的です。
ただし、頚部内頚動脈狭窄症で
行われることは、それほど多く
ありません。
●頚動脈内膜剥離術
頚部を切開し、狭窄している部分
の動脈壁にたまっているプラー
ク(粥腫)を取り除く手術です。
いずれの手術も、全身麻酔で行わ
れ、入院期間は長くなります。
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次のページからは、
頚動脈内膜剥離術
についての説明です。
8
手術の方法
まず首から耳にかけて切開を行い、頚動脈を
露出させた後、クリップを用いて血流を一時
的に遮断します。
プラークを取り出した後は、血管が元のよう
に広がります。
術前
術後
これにより、
脳への血流も回復します。
頚動脈を切開し、血管の内側のプラークをは
がしてとりのぞきます。
一定時間の血流遮断に耐えられない場合は、
内シャントというチューブで血液を送りな
がら行うこともあります。
内シャント
手術の合併症
医師は合併症が起こらないように細心の注意を
払っておりますが、手術を行う以上は、合併症の
可能性を完全に否定できないことをご理解くだ
さい。
脳虚血合併症
●血流遮断に伴うもの
(血液不足に脳が耐えられ
なくなる)
●遠位塞栓
(手術部位にできた血栓が流れて脳の
血管を詰まらせる)
全身合併症
●心筋梗塞 等
出血性合併症
●過灌流症候群
(血管を広げたことにより、脳に
流れる血液が急に増加して、脳出血等が起こる)
●出血性梗塞
創部合併症
●縫合部出血
●脳神経麻痺
(神経に傷がつくことで声がかれた
り、食べものや飲みものが飲み込みにくくなる)
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あなたの病気の種類
­頸
手術のスケジュール
部内頸動脈狭窄症
スケジュールは施設や病状により多少異なり
入院前
ます。
●抗血小板薬を服用していない場合、
手術の約1週間前より服用を開始
します
●脳血流のモニターを継続します
手術当日
(術後)
● 手術についての説明
(医師)と入院
入院当日
生活についての説明
(看護師)
●頚部安静練習
●ベッド上安静、
絶飲絶食
●術後の説明
(医師)
※必要に応じて血圧のコントロールを行い
ます
※施設によっては、当日は期間の管を抜か
ないこともあります
●手術同意書などの書類作成
●採血、
創部の消毒など
●21時以降絶食
手術前日 (水分摂取は24時まで)
●医師の指示で服薬再開
手術翌日
●麻酔科の診察
(全身麻酔の準備)
●持続点滴
●朝より術後食
●必要に応じて、
CT、MRIなどの各種
検査
●薬の内服は医師の指示に従ってく
ださい
手術当日
(術前)
●朝から点滴を行います
●麻酔、尿の管、術中モニターなどの
装着後、手術となります
※術中モニターは、手術後も継続して装着
する場合があります
※術中モニターとしては、脳酸素飽和度モニ
ターや経頭蓋ドップラーなどがあります
手術
2~6
日後
●手術後の状態に応じて、尿の管、点
滴をはずし、歩行訓練を開始します
●症状により、
脳血流測定検査などが
行われます
手術
7~10
日後
11
●必要に応じて創部消毒
●退院指導、
退院
●退院後は医師の指示通りに薬を服
用し、定期的に検査を受けます
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memo
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