TDM対象薬(特定薬剤治療管理料(ハイリスク薬加算)の算定できる薬物)

TDM対象薬(特定薬剤治療管理料(ハイリスク薬加算)の算定できる薬物)
TDM対象薬(特定薬剤治療管理料の算定できる薬物)の有効治療濃度は基本的に単位はμg/mLであると覚えましょう。その例外は赤字で書いているもののみです。そして採血時間は次回投与直前、つまりトラフ値が基本であると覚えましょう。それ以外の例外は赤字で示しています。TDM対象薬の条件は薬物血中濃度と治療
効果や副作用との間に関係が明らかになっている薬物と言われましたが、最近の新規抗てんかん薬のように必ずしも血中濃度と治療効果の間に相関性が認められないものもあります。しかし抗てんかん薬のTDMはコンプライアンスの確認という重要な役割があるからかもしれません。
体内動態
有効治療域
対象薬物
および中毒域
採⾎時間
(μg/mL)
t1/2β
CL
Vd
BA
fe
PBR
(hr)
(mL/min)
(L/kg)
(%)
(%)
(%)
TDMのポイント
下熱鎮痛薬
アセトアミノフェン**
抗リウマチ薬
サリチル酸
抗精神病薬
ハロペリドール
ブロムペリドール
抗躁薬
リチウム
抗てんかん薬
エトスクシミド
ガバペンチン
鎮痛5~20(10~17)、下熱2~6(5)
投与直前
2.0-2.5
250-350
1.0
85、坐薬は53
3-5
8-40
腎不全患者では抱合体が蓄積し、胆汁排泄され、脱抱合されて再吸収される腸肝循環により健常者の約3倍に血中トラフ濃度が上昇するが、トラフ値自体は低いた
め、AUCは大差ない。
100〜300
投与直前
2-30
450-650
0.14-0.2
68-100
2-80
76-90
代謝過程に飽和現象が認められるため大量投与によりt1/2βが延長する。尿のアルカリ化で尿中排泄率が増大する。
1.5〜15ng/mL(中毒20ng/mL以上)
1~12ng/mL
投与直前
投与直前
12-40
24
767
850
17-29
24
60-65
50
1
0
90-92
90-97
10ng/mLで最高の効果が得られ、17ng/mL以上で治療効果がプラトーに達する。
適正投与量・投与方法の決定、副作用発現の回避、服薬状況の把握、効果の指標として有用。
治療初期0.8〜1.2mEq/L
通常(安定期):0.4〜1.0mEq/L
高齢者:0.4~0.8mEq/L
急性双極性障害:最大1.2mEq/L
中毒域:1.5mEq/L以上
投与直前
8-45
27
0.5-0.8
85-100
95
0
40-60
10-12
0.62-0.67
5-8
116
0.7
100
41-70、用量依存
的に低下
投与初期8-36、
連続投与時10-20
18-70
0.8-2.1
40〜100
投与直前
2~20、ただし副作用発現率と血中濃度の直接的 投与直前、中毒時
はピーク濃度
な関係は認められない
12-20
0
ほぼ100
<3
70-90
3以下
75
効果発現には4~10日かかる。完全な腎排泄性で重篤な腎障害には禁忌で、利尿薬の投与や発汗、発熱、低食塩、嘔吐、下痢は体内Na量が低下するためリチウ
ムの血中濃度が上昇する。2相性の血中濃度推移を示すため、最終服薬後10〜12時間、または投与直前に採血する。中毒症状は嘔気、下痢などの消化器症状、
多飲・夜尿、口喝、体重減少、傾眠、錯乱、甲状腺機能低下症、筋肉のぴくつきや手指振顫戦、筋障害、ことばのもつれ、目のかすみ、めまい、発熱・発汗、脈拍異
常などで、このような症状が現れたら投与を中止しNaと水分負荷によって排泄を促す。薬物除去には血液透析も有効。
投与初期に副作用が起こりやすいため少量から開始し、1週間かけて20mg/kg日に徐々に増量する。
明らかな有効血中濃度、中毒域が確認できておらず、TDMは必要ないと考える識者が多い。ただし、腎障害患者、高齢者、コンプライアンスの確認では有用であ
る。消化管吸収は輸送担体を介しており、吸収に飽和が見られるため非線形の薬物動態を取る。
代謝酵素の自己誘導により繰り返し投与でCL上昇するため2〜3週間毎にTDMを実施し投与量を調節する。代謝物の毒性が強い。8 μg/mLを超えると、複視、眠
気、知覚障害、眼振、運動失調、嘔気・嘔吐などの副作用の発現頻度が高まる。他の抗てんかん薬を併用している患者では、カルバマゼピンの副作用が生じやす
いため、治療域はやや低めの4-8 μg/mLを推奨する報告(Lee, 2009)もある。血清分離剤入りの採血管を用いると吸着するため要注意。
ジアゼパム
4〜12
(ただし4以下でコントロール可能な12以上の濃度
が必要な患者もいる)
20〜70ng/mL
0.1~0.4
活性代謝物の濃度は8倍高値
0.6〜1.0
投与直前
20-70
30
1.1-2.0
100
1以下
98-99
ゾニサミド
10〜30
投与直前
50-68
15-25
0.9-1.9
97
29-48
40-60
トピラマート
5~20
投与直前
5-20
21-26
1.5
80
35-59
15-41
ニトラゼパム
0.03~0.18
投与直前
24-40
61-81
1.8-4.8
78
1
87
バルプロ酸(躁うつ病・躁病・偏
頭痛でも算定可能)
40〜125(A)
投与直前
8-21
8.3
0.14-0.23
90-100
1-3
90
フェニトイン/ホスフェニトイン
10〜20(A)
遊離型1~2
投与直前
7-60
変化する
0.65
90-98
1以下
90
フェノバルビタール
10~35
投与直前
50-150
44-62
0.6-1.0
90-100
25-67
45-59
プリミドン
10~35
投与直前
3-23
35-51
0.64-0.86
90-100
40以下
0-20
投与直前
7-60
親化合物0.3
変化する
0.65
90-98
1以下
90
3~15(単剤治療では24まで)
投与直前
31-38
16-24
1.2
98
10
55
12~46
投与直前
8
62
0.56
95-100
66
10未満
0.8〜2.0ng/mL(C)
(心不全患者の場合:0.5〜1.0ng/mL)
投与直前
36-48
181
4.0-8.0
70
75
25
ジゴキシン様免疫反応因子の存在によりCKD患者・妊娠時・小児では特に偽性高値になることがある(特にFPIA法)。内服後6時間以上経過して採血しないと組織
内濃度と平衡状態にならない。
0.01〜0.025
投与直前
120-216
3.3
0.5-0.6
90-95
8
90
t1/2βが長いため、作用時間も長いが中毒時には不利である。
0.25〜1.25
1.0〜2.5
2〜5 (中毒8-10以上)
投与直前
投与直前
投与直前
30-50
40-55日
5-12
217-1133
150
150-455
3.7
66-106
2.0-3.0
100
31-65
70-80
0
0
10-50
96
96-99
70-95
ジソピラミド
2〜5
投与直前
4-10
60-90
0.4-0.8
70-90
50-60
5-95
シベンゾリン
0.075〜0.4
(中毒0.8以上だが0.4以上で低血糖発症)
投与直前
5-8
700-900
5.0-7.0
83-92
55-62
50-60
カルバマゼピン(躁うつ病・躁病
でも算定可能)
クロナゼパム
クロバザム
ホスフェニトイン
ラモトリギン
レベチラセタム
強心配糖体
ジゴキシン
ジギトキシン
(製造中止)
抗不整脈薬
アプリンジン
アミオダロン
キニジン
10〜20(A)
遊離型1~2
投与直前
投与直前
18-60
100
1.5-4.4
90-100
1以下
85
t1/2βが長いため、定常状態に達するのに約1週間必要。40~70で中毒が見られるという報告もある。
投与直前
25-30
60
1.5
45
1-2
90
CYP3A4によって産生される活性代謝物N-デスメチルクロバザムはCYP2C19により水酸化されるため、CYP2C19のPMでは効果・副作用が現れやすい。
抗不安作用は低濃度0.3〜0.4µg/mLで発現する。
フェニトインとの併用によりt12βは27〜36時間に短縮する。高用量になると濃度が急上昇する非線形薬物動態を示す。30μg/mL以上で認知機能の低下、40μg/mL以
上で眠気/注意力低下の報告がある。血清分離剤入りの採血管を用いると吸着するため要注意。
用量の増加に伴い尿中排泄率が上昇する。効果とSEが血中濃度に依存しないためTDMは必要ない。また、400mg/日で効果があるかないかがほぼ判断できる。コ
ンプライアンを確認する目的で、TDMができる。CCr<70mL/minでは半量にする。
0.2µg/mL以上で過剰鎮静が現れることがある。
高用量になるとPBRが低下しCLが上昇するため非線形の薬物動態を示す。副作用は肝障害と肥満。部分発作患者ではしばしば100μg/mL以上のバルプロ酸濃度
を要し、難治性部分発作の患者では80-150μg/mLでコントロールが得られることがある。低濃度域でも嘔気・嘔吐、傾眠、めまい、運動失調などの副作用が発現し、
100µg/mL以上で昏睡、せん妄が現れやすくなる。
代謝酵素が飽和し非線形薬物動態を示すため、少量ずつ用量を増減する。酵素誘導あり。血清分離剤入りの採血管を用いると吸着するため要注意。
CYP3A4を強く誘導する。ピーク濃度が50μg/mLを超えても眠気、歩行失調などの中毒症状を起こしうる。疾患および年齢によりクリアランスが変動する。血清分離剤
入りの採血管を用いると吸着するため要注意。35µg/mL以上で眠気、歩行失調などが出現する。
代謝され、活性を有するフェノバルビタールおよびPEMAになる。腎障害ではフェノバルビタールおよびPEMA濃度が上昇する。血清分離剤入りの採血管を用いると
吸着するため要注意。
750mgはフェニトインとして500mgに相当する。てんかん(けいれん)重責状態には22.5mg/kgを負荷投与するとフェニトインの有効治療域である10~20μg/mL内に入
る。投与後ホスフェニトインがフェニトインになるまで2時間を要し、その間に本剤を追加投与すると蛋白競合置換を起こすため、その間は追加投与しない。
血中濃度と薬効や副作用との関連性が明らかでない。有効治療域は1~4、また患者によっては20以上でも対訳性があるという報告がある。バルプロ酸などグルクロ
ン酸抱合を競合的に阻害する薬物との併用により半減期が延長する。
レベチラセタムの血漿中濃度と有効性及び安全明確な 相関は認められていため、現時点では定期的 TDM の必要性は低い。腎排泄性薬物である。
非線形の薬物動態を示すため増量により血中濃度が著明上昇することがある。副作用は幻覚、肝障害、催不整脈、無顆粒球症など。
t1/2βが非常に長いため、定常状態に達するのに2ヶ月必要。
CYP2D6、P糖蛋白質を阻害する。
代謝物MNDにも抗不整脈作用があり、かつ強力な抗コリン作用を持つtためMND濃度が1μg/mL以上で高コリン作用の副作用が発現しやすい。。蛋白結合の飽和
により非線形薬物動態を示す。α1-酸性糖蛋白質と結合するため、蛋白結合率が変動しやすい。
腎不全患者では意識障害を伴う低血糖を起こしやすい。透析患者には禁忌。
9% 1%未満と報
β受容体遮断作用(ClassⅡ作用)とカリウムチャネル遮断作用(ClassⅢ作用)を併せもつ不整脈治療剤
告により異なる
代謝にはUDP-グルグロン酸転移酸素が主に関与。他にCYP3A4、2D6,1A1などが関与する。クラスⅢの抗不整脈薬で他の抗不整脈薬が無効又は使用できない生
86.4~94.6
命に危険のある心室性不整脈(心室貧拍、心室細動)に有効性を示す。
27-35
腎障害患者には腎機能に応じた投与設計が必須。
78-87
主にα1-酸性糖蛋白質と結合するため、蛋白結合率はα1-酸性糖蛋白質濃度と相関する。
40-60
CYP2D6で代謝されるため、個体間変動が大きい。腎障害患者には腎機能に応じた投与設計が必要。
15-20
約25%が活性代謝物のNAPAになる。肝のアセチル化酵素に遺伝子多型あり、SLEはslow acetylatorで高頻度に発生。
11-15
親化合物プロカインアミドと活性比は等しく、親化合物濃度と加算して有効治療域5-30µg/mLとする。
77-97
肝代謝の飽和現象があり非線形の薬物動態を示す。水酸化代謝物には活性あり。
CYP2D6により代謝され、非線形性の薬物動態を示し、半減期が長く、定常状態に達するまで通常3週間かかるとされていること、 代謝酵素の影響などにより薬物体
99
内動態の個人差が大きい。中毒性副作用はQT延長や心室頻拍(torsades de pointesを含む)、間質性肺炎など。Ⅳ群だがⅠ群、Ⅲ群の作用を併せ持つ。
ソタロール
>2.55
投与直前
9~20
123.4
1.2~2.4
80以上
75~90
ニフェカラント
~0.5
投与直前
1.53
850
0.13
該当しない
28~37
0.2〜0.9
0.4~(1.0〜3.8)
0.2~1.0
4〜10
6〜20
0.05〜1.0
投与直前
投与直前
投与直前
投与直前
投与直前
投与直前
3.4-5.0
7.0-9.0
11-15
2.2-5.2
6-10
2-10
280
210
44-62
400-700
80-165
963
3.0
1.3
9-10
1.7-2.3
1.3
3.7
93以上
87
70-95
85
該当しない
5-25
75-86
30
40-50
50-60
81
0
ベプリジル
0.25~0.8
投与直前
24~48
300
8.0
60
0
メキシレチン
0.5〜2.0
投与直前
9-13
300-450
2.1-9.0
80-100
10
50-75
1.5〜5(中毒10以上)
投与直前
1.2-2.2
450-700
1.0-1.5
該当しない
10以下
10-80
血清濃度と効果、副作用の関係は十分には確立されていない。心不全によりCLが低下する。CYP1A2を競合阻害することによりテオフィリンCLを半減させる。副作
用は振戦、胃腸障害。
血清分離剤に吸着しやすいため、血漿分離剤入り採血管を用いない。α1-酸性糖蛋白質と結合するため、蛋白結合率が変動しやすい。
3-12
10-60
0.45-0.5
95-100
7-13
40-60
喫煙により酵素誘導を受ける。有効治療域上限で非線形薬物動態を示す。
ピルシカイニド
ピルメノール
フレカイニド
プロカインアミド
N-アセチルプロカインアミド
プロパフェノン
リドカイン
気管支拡張薬
テオフィリン
免疫抑制薬
5〜15*(効果を重視して10~20という意見もある) 投与直前
体内動態
有効治療域
対象薬物
および中毒域
採⾎時間
(μg/mL)
エベロリムス(全血)
シクロスポリン(全血)
シクロスポリンマイクロエマルジョ
ン(腎移植時の、術後3ヶ月間;
全血)
タクロリムス(全血)
ミコフェノール酸モフェチル
シクロスポリン併用時3~8ng/mL
シクロスポリン非併用時は明らかでない
投与直前
200ng/mL 以下 (300を超えない)
移植後0~1か月:150~250ng/mL
移植後1~3か月:100~150ng/mL
移植後3か月以降:<100ng/mL
投与直前
700ng/mL以上
移植後0~1か月C2:1000~1200ng/mL
移植後1~3か月C2:800~1000ng/mL
移植後3か月以降C2:<600~800ng/mL
投与
2時間後
5〜15ng/mL(MMF, ミゾリビン、ステロイド、バシリ
キシマブ併用時の腎移植0~1か月:8~12ng/mL、
1~3か月5~8ng/mL、3カ月以上:<5ng/mL)
MMF, ミゾリビン、ステロイド、バシリキシマブ併用 投与直前
時の肝移植0~4日:平均7以上または10ng/mL以
上、4~7日:10~15ng/mL, 7~14日:9~
12ng/mL、14~28日:8~10ng/mL、退院後:5~
8ng/mL
腎移植後1~2L、心移植後1~3
トラフ値(ただし
AUCが変動しやす
いためピーク値の
測定も必要な場合
がある)
t1/2β
CL
Vd
BA
fe
PBR
(hr)
(mL/min)
(L/kg)
(%)
(%)
(%)
23
CL/F:300mL/min
V1/F: 2.5-3.0
高脂肪食摂取後
は上昇
0
74
TDMのポイント
マクロライド免疫抑制剤でラパマイシン(Sirolimus)を改善したもの。腎移植後の免疫抑制薬として標準治療であるカルシニューリン阻害薬と同等の有効性および安
全性を維持しつつ、12ヵ月後の腎機能を有意に改善し、長期予後の改善をさらに促進する可能性があることがZEUS試験で示された。サイトメガロウイルス感染症の
発症を抑制する。副作用としてeGFRには影響しないが、蛋白尿が報告されている。ABO不適合移植にも用いられる。相互作用ではシクロスポリンがエベロリムスの
バイオアベイラビリティを増加させるため、シクロスポリンの血中濃度が大幅に低下すると、エベロリムスの血中濃度が低下し、シクロスポリン増量によりエベロリムスの
血中濃度が上昇する。
トラフ値高値による腎血流低下による虚血性腎障害に要注意。ただし夕食後服用やDM患者ではGER遅延による吸収遅延によってトラフ値が上昇してもAUCが上
昇しないことがある。脂溶性薬物であり約20%が白血球と、約40%が赤血球と結合し、残りの40%が血漿成分に存在し、リポタンパク質と結合している。これらの血液
成分との結合性は温度依存性があり、血液の保存には要注意。
5-20
100-700
1.5-13.3
5-70
0-1
90-99
4-41
45-63
0.9(全血)
5-65
0-1
98以上
15.8
177-193
3.6-4.0
94
0.7
98
再現性の高い吸収特性がある。移植後の急性期はCtのみ、またはCtとC2の両値、あるいはAUC0-4のモニタリングが必要。維持期はCtをモニタリングする。
投与2時間後の濃度を1300〜1800ng/mLに保つことによって腎移植後の拒絶反応が低下する。あるいはCtと投与後2時間値(C2)の両値(あるいは投与後4時間目ま
でのAUC(AUC0-4)を測定する。移植後0~1か月AUC0-4:3000~3500ng・hr/mL、移植後1~3か月AUC0-4:2000~3000ng・hr/mL、移植後3か月以降AUC0-4:
1500~ng・hr/mL)
吸収に個人差が大きい。高血糖、中枢毒性の副作用が発症しやすい。
アザチオプリン、ミゾリビンと類似の代謝拮抗薬だが、これらの薬物よりも腎移植による急性拒絶の予防には有効であるというエビデンスがあり、その目的でつかわれ
ることが多い。目標血中濃度はAUC0-12を30-60 μg・hr/mL、トラフ値として1.5-3.0 μg/mLを目安とする。
抗菌薬(アミノグリコシド系)
アミカシン
アルベカシン
イセパマイシン
カナマイシン
ゲンタマイシン
ジベカシン
ストレプトマイシン
トブラマイシン
41~60μg/ml
MDRPには60を目標に
<1
15〜20
<2
<30
<10
30〜35
<10
8~15、心内膜炎3~5
<1
5〜10
<2
40〜50
<5
8~15
<1
トラフ時
ピーク時
トラフ時
ピーク時
トラフ時
ピーク時
トラフ時
ピーク時
トラフ時
ピーク時
トラフ時
ピーク時
トラフ時
ピーク時
トラフ時
10〜30 (15~30)
ピーク時
抗菌薬TDMガイドラインにおいては、採血時間のバラツキの標準化を図るため、点滴開始1時間後をCpeakとすることが提案されている(点滴時間は通常30分)。ただ
しルーチンにCpeakの測定は不要。
有効性に対してはピーク濃度、腎毒性などの副作用に対してはトラフ濃度の測定が有意義。 腎障害患者には腎機能に応じた投与設計が必須。
健常者のVdは0.2L/kgであるが、感染症患者のVdは0.3L/kgに増大する。
溢水・低アルブミン血症によりVdが増大するため、初回投与量を増加する必要性あり。
アルベカシンはMICが8μg/mLの株が散見される。
グラム陽積菌にはゲンタマイシンのみ適応がある。緑膿菌に対してはアミカシン、セラチアや腸球菌にはゲンタマイシンがよく用いられる。
2-4
60-90
0.3
該当しない
70-90
0-10
トラフ時
28-56
18-19
0.9-1.1
該当しない
60
90
添付文書上では適正トラフ濃度5〜10µg/mLになっているが、蛋白結合率が高いため10〜30µg/mLに設定した方が効果が高い(専門家は15µg/mL以上、重症例で
は20µg/mLを推奨)。初回負荷投与は最初の3日間で2400mgの投与が推奨されている。トラフ28µg/mLで肝障害の報告ありSawchuk Zaske法を用いた3ポイント採血
による投与設計は消失相での採血が困難なため適応できないMICが8μg/mLの株が散見される。
点滴終了
2時間
トラフ時
4-11
60-100
0.9-1.0
該当しない
80-95
30-55
腎障害患者には腎機能に応じた投与設計が必須。ピーク値のモニタリングは必要ないという考えもある。トラフ値10μg/mL以下ではヘテロVISAが発現しやすいとい
う報告あり。MICが2μg/mLの株が増加しつつあり、この場合、TEICを除く他剤の選択を考慮する。
抗菌薬(グリコペプチド系)
テイコプラニン
バンコマイシン
(成人)
バンコマイシン
(小児)
25〜40
10~20*
小児に負荷投与は必要ない。2~5歳ではトラフ値5~10µg/mLになってしまう。7日以内:15mg/kgを12hr毎、2~8歳: 20mg/kgで1日4回、9~13歳:15mg/kgで1日3
回。または1~6歳:70mg/kg/日、6歳以上:60mg/kgという報告もある。
5~10
トラフ時
2~4(1~5)
トラフ時
3.2-6.4
415-830
4.6
100
2
1000ng/mL以上
トラフ時
10.5-18 活性代
謝物40
246
7-9
0.983
5.4
該当しない
抗真菌薬
ボリコナゾール
58
肝機能障害が発生した症例で、かつ、血中濃度が測定されていた症例の血中濃度トラフ値はいずれも4.5μg/mL以上である。ただし有効性はトラフ値を2μg/mL以
上。非線形薬物動態を示す。
抗がん薬
イマチニブ
95% 主としてアル
有効治療濃度は1000ng/mL以上。クリアランスは欧米人14L/hrと日本人のクリアランス8.7L/hrと体格だけでは説明できない人種差があり、CYP3A4、OATP1A2、
ブミン及びα1-酸性
OATP1B3、MDR1、BCRPの影響を受ける。腎排泄性薬物ではないが、腎機能低下によって血中濃度の上昇するが、尿毒素の影響によると考えられている。
糖蛋白
投与24時間後
<5µM(中毒10µM)
3-15
100-200
0.4-1.0
65-70
80-95
50-95
毒性を回避するため十分な水分補給と尿のアルカリ化を保つ。必要に応じてロイコボリン救援療法の強化を行う。t1/2は高用量で延長する
投与48時間後
<0.5µM(中毒1µM)
投与72時間後
<0.05µM(中毒0.1µM)
(A)血清アルブミン濃度低下の時には有効域を低く設定する
(B)血清プリミドン濃度12µg/mLではフェノバルビタール濃度15µg/mLになるが、患者間で変動する
(C)うっ血性心不全には0.5〜0.8ng/mLの低めに、心房細動では1.0〜1.5ng/mL以上の高めに設定する。1.5ng/mL以上でも消化器症状などの中毒症状が起こることがある
*最近の報告による有効治療域(MRSA肺炎・心内膜炎・髄膜炎 に対してバンコマイシンのトラフ値は15~20ng/mL)
上記の有効治療域は単剤投与時のものであり、抗てんかん薬、免疫抑制薬などが多剤併用された場合には有効治療域以下の濃度で有効にコントロールされる場合が多い。有効治療域に入っていなくても低めの濃度で有効であれば、それがエンドポイントになる。
t1/2: 消失半減期、CL:クリアランス、Vd: 分布容積、BA: バイオアベイラビリティ、UER: 尿中排泄率、PBR: 蛋白結合率
**特定薬剤治療管理料ではないが、月1回の測定が算定できる。血清分離剤入り容器の使用は避けること。
特定薬剤は基本的に470点で、月に1回算定できる。ただし、ジギタリス製剤の急速飽和を行った場合又はてんかん重積状態の患者に対して、抗てんかん剤の注射等を行った場合は、所定点数にかかわらず、1回に限り740点を特定薬剤治療管理料として算定する。
免疫抑制薬は臓器移植を行った日の属する月を含め、最初の3カ月に限り2,740点を加算し、1回目の特定薬剤治療管理料を算定すべき月に限り、所定点数に280点を加算する。
アミノグリコシド系の有効治療域は報告によって異なるが、1日1回投与が推奨されている現在では高めにコントロールすることが推奨されている。
無断転載を禁じます(熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター・平田純生 2016年8月作成)
メトトレキサート