56 爪白癬の最新の治療について 爪白癬は、治りにくいとの印象を持っていますが、最近よく効く薬剤が薬価収載されたと 聞きましたので、解説してください。 (F生) 爪白癬は真菌である白癬菌が足や手 濃度が高くなっています。 の爪に感染して生じる疾患です。爪が これで併存疾患のある場合や高齢者でも比較的 白濁して肥厚したり、先端から楔状に 安全に爪白癬の治療ができるようになりました。 白く変色したり、爪の表面が白くかさ 現在多くの症例で使用されています。ただし、爪 かさしたりします。 の患部からの検体を直接鏡検するか培養するかし 以前の2000年前後までは爪白癬に対して特化し て白癬菌を確認してから使用するように添付文書 た適応を持つ外用薬がなく、足白癬などに使用す に付記されていることに注意が必要です。この検 る外用薬を爪にも使用するか、内服薬としてグリ 査を行っていないと査定される場合があります。 セオフルビンを使用していた時代がありました。 なぜならば、爪白癬と似たような症状になる他 その後2000年より少し前にイトラコナゾール内服 の疾患があるからです。それには尋常性乾癬、掌 薬のパルス療法とテルビナフィン内服薬が爪白癬 蹠膿疱症、扁平苔癬、稽留性肢端皮膚炎、爪カン の適応を取得し、内服薬で治療することが主流に ジダ症、外傷による爪甲の肥厚変形などがありま なりました。そしてそれまでに使用していたグリ す。これらの疾患でも爪が白濁したり肥厚したり セオフルビンは肝障害、催奇形性、発癌性の可能 します。また足白癬や手白癬があっても爪は上記 性などの問題から本邦では製造販売が2008年いっ の鑑別するべき疾患であったり、それらの他の疾 ぱいで終了したため、正式に爪白癬の適応を持つ 患に爪白癬が合併する場合もあります。 薬剤はイトラコナゾールとテルビナフィンの2種 さらにこの両新規外用薬とも薬価が通常の足白 類の内服薬だけになりました。 癬の外用薬と比較してかなり高く設定されていま しかしイトラコナゾールは併用禁忌薬が多種類 す。これは内服薬のイトラコナゾールの高い薬価 に及び、一方のテルビナフィンは併用禁忌薬が少 を参照して薬価が設定されている背景がありま ないが肝障害や造血障害の副作用があるため、肝 す。クレナフィン爪外用液で1本(3.56g)が当 機能と血液検査が義務づけられました。そのため 初5,900.70円、ルコナック爪外用液は1本 3.5g で に高齢者や肝障害などの基礎疾患がある例では使 3,492.30円となっています。そのためもあり、ク 用しにくい状況でした。 レナフィンやルコナックの外用液とイトラコナ それに対して最近爪白癬に特化した適応をもつ ゾールやテルビナフィン内服薬の併用は保険診療 外用薬が使えるようになりました。2014年秋に、 上認められていません。また、ルコナックは薬価 爪白癬治療薬エフィナコナゾール外用液(商品名 収載から現在まだ1年を経過していないので2週 クレナフィン爪外用液)が発売されました。本剤 間処方のしばりがあります。 は新規トリアゾール系化合物であるエフィナコナ さらに感染面積が50%を超える例や爪の肥厚が ゾールを有効成分としています。さらに本年にな 重度の例には早期の効果は期待できないことにも り新たな爪白癬の適応を持つ外用薬であるルリコ 留意が必要です。いずれにせよ爪が伸びてこない ナゾール外用液(商品名ルコナック爪外用液)が うちは良い爪が出て来ないので長期の治療になる 発売されました。ルコナックは既存のルリコナ ことが多いのが現状です。 ゾールの外用薬と同じ有効成分を含有しますが、 また、両方の外用薬共に抗真菌薬としてはア 新潟県医師会報 H28.8 № 797 57 ゾール系に属します。したがって従来のアゾール 現実があります。 系の抗真菌外用薬でアレルギー性接触皮膚炎を生 以上、最近は新たな外用薬で比較的安全に治療 じた既往のある例ではクレナフィンやルコナック できるようになった爪白癬ですが、薬剤の使用上 で接触皮膚炎を生ずる恐れがあるため注意が必要 の注意に留意して使用することが重要であること です。この場合内服薬による治療ができない例で は以前と変わりはありません。 は他の系統の既存の外用薬を使用せざるを得ない (長岡市:伊藤皮膚科クリニック 伊藤 薫) 会員 寄稿 “原 稿 募 集” 下記要領で原稿を募集いたしますので、ご投稿をお待ちしております。 ○字 数 ① 750字以内(本誌1/2頁) *「緑陰随筆」 、 「炉辺閑話」に相当 ② 3,200字以内(本誌2頁以内) *「寄稿・随想」等に相当 ○題 材 医療に関するエッセイ、趣味、旅行、体験談、県医師会関係者の著書に関する書評、詩歌、 医療関係者による行事・会合等の報告、など医師会活動の情報提供、会員の親睦、といった 県医師会報の目的に沿った内容を募集いたします。 ○投 稿 原稿は年間通じて受け付けますが、1期(4~7月) 、2期(8~ 11月) 、3期(12 ~3月)に 分けて掲載いたします。 原稿数や紙面の都合等で掲載が遅れる場合がございますのでご了承ください。 ○掲載回数 同一会員の原稿掲載は各期ごとに1編のみとさせていただきます。 ○そ の 他 掲戴の採否、時期等については広報委員会において決定いたします。 新潟県医師会報 H28.8 № 797
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