「問い」の役割 〔方向性を定める〕 生徒の思考や探究心を刺激し、単元の学習内 容について能動的に関わる構えを持たせる。 〔考察・追究・探究を促す〕 より確かな理解を促し、新しい見方や考え方を 抱かせるよりどころとなる。 〔評価につながる〕 単元の学習内容が「問い」の形で表現されて いれば、評価の観点が一層明確になる。 平成25年度 高等学校各教科等 教育課程研究協議会(11月) 〔地理歴史科〕 配布資料(村瀬正幸) 基軸となる「問い」 〔鍵となる概念をもつ「問い」〕 ●事象の理解を深める核となる学習内容を持つ。 歴史上頻繁に起こり何度も繰り返される事象、現代 世界の成り立ちに関わる事柄等を学習内容に持つ。 それは、歴史的・地理的事象の理解を深める鍵となる 概念を含む「問い」である。 〔学ぶ価値のある「問い」〕 ●深い思考や新しい理解を促し考察が持続する。 歴史上の論争や学問上の議論がある見方等に関連 する学習内容を持つ。生徒が資料を活用して自ら考察 (追究)し、教室内での多様な言語活動を可能にさせ、 多面的・多角的な見方や考え方を促す「問い」は、生 徒にとって学ぶ価値のある「問い」である。 〔転移を促す「問い」〕 ●特定の時代や地域を超えた比較や関連付けが可能 である。 単元を超えて他の時代や地域の歴史的・地理的事 象との比較や関連付けを可能にさせ、地域や文化の 多様性や人類共通の課題の考察(追究・探究)につな がる学習内容を持つ。それは、転移を促す「問い」であ る。 単元構想 〔世界史B〕の事例 ●単元「19世紀前半のヨーロッパ」のねらい 体制の意義を、ウィーン体制下とウィーン体制前後の地図、年 表による国際関係の様相の比較、独連邦の構成国と君主一覧等 の資料を活用して考察させる。 ●基軸となる「問い」:(提出事例)「ウィーン体制とは何か?」 (改善1)「ウィーン体制はなぜ破綻したか?」 (改善2)「紛争の立役者が去ってもなぜ平和は訪れない?」 ●「問い」が持つ意味 ①【鍵概念】「勢力均衡」「覇権」「国際安全保障」 ②【価値】国際平和、国際協調 ③【転移】歴史の中の安全保障、今日的課題との類似性 ●学習過程 展開(1)「メッテルニヒは何を重んじたか?」 〔復古にこだわらない合理性(代償主義)に気付く。〕 18C半ばとウィーン体制下の地図を比較し体制の特色の整理、 議定書の理解 展開(2)「独立・民族運動への対応がなぜ異なるか?」 〔独立・民族運動に対する英・露等の対応の意味を説明できる。〕 各国動向、革命・独立運動の理解、1840年代の不況等の理解 展開(3)「体制の理念と実態を評価しよう!」 〔体制で維持できたことと維持できなかったことを整理できる。〕 ナポレオン失脚・体制下・1848から70年頃までの時期に年表 を分け、各国国際関係の様相を整理、資料「独連邦の構成国 と君主一覧」の読み取り ●単元の評価規準<思考・判断・表現> 国際秩序を、勢力均衡(あるいは英露の覇権)や独連邦が平和 維持組織として機能したこと等に触れ、体制が国際平和に果た した役割を適切に表現し評価できる。 愛知県提案事例を参考 その他の事例〔世界史〕について 〔北海道〕「1848年はなぜ「19世紀の転換点」か?」 ○欧州19世紀を通観する「問い」・ねらいから「問い」抽出 (数時間からなる「単元」で構想し直すと?) 〔栃木県〕「ヒトラーは独裁者か?」 ○「歴史の中の民主主義」というテーマに転移する「問い」 (単元の評価を基軸となる「問い」とつなげると?) 〔福井県〕「統一とは何か?」(古代地中海) ○形成・交流再編・結合変容‥「帝国」につながる概念 (資料を活用してどのように考察を進めたら良いか?) 〔富山県〕「19C欧米はどう国民国家を形成したか?」 ○アメリカを事例に時間軸での民主主義の意味を考察 (「奴隷解放論者ではない彼はなぜ解放宣言を出したか」と問うと?) 〔長野県〕「一体化はどう進み、日本列島はどう関係したか?」 ○「近世」を「世界史の成り立ち」と定義し日本も視野に (「なぜ<今>世界はつながり始めたか」と問うと?) 〔奈良県〕「なぜアフリカは現在も低開発の状態か?」 ○現代的課題の要因を歴史的に考察(追究)することにつな がる (年間指導計画にどのように位置付ければよいか?) 〔岡山県〕「なぜイスラームはユーラシアに広まったか?」 ○現代的課題・科目間連携を求める「問い」 (各【ねらい】を「問い」で表現すると?) 〔宮崎県〕「植民地化の動きに対して、アジアの対応が異なる のはなぜか?」 ○近代化の意味、時間的・空間的・質的な違いに着目 (どんな資料を活用して追究させるのがよいか?) 振り返る 単元を貫く基軸となる「問い」は、 ○単一の「問い」だけで完結するもの ではなく、 ○いくつかの小さな「問い」の考察(追 究)を通して順次深めることができる ような学習内容を持ち、 ○単元構想全体で追究する「問い」で ある。 (「問い」と連動した学習過程や評価が準備さ れていなければ、授業の方向性を規定するこ ともなく、単なる言葉だけの投げかけになって しまう。) ★「単元計画の作成」については、文部科学 省「今、求められる力を高める総合的な学 習の時間の展開」(平成25年)の第3章が とても参考になります。 「どんな問いを発して」「どんな資料を活用して」「考察 (追究)させるのか」「単元の評価は、単元のねらいを評 価できるか」・・・「問い」の有効性をよく吟味して単元で 授業を構想することが、今求められる授業改善の方向 性ではないかと考えています。
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