校長室から「その4」をUPしました

「3年生は修学旅行、2年生はトライやる・ウイーク、1年生はわくわく
オーケストラと避難訓練。5月末から6月初旬は体験がキーワード」
播磨南中学校長 森 敏雄
5月7日の授業参観、PTA 総会には多くの保護者の方々に来ていただきました。特
に1年生の授業では多くの保護者が参観されていて、生徒も入学から1ヶ月たった落ち
着きを見せていました。
廊下から参観される保護者の方が多く、教室に入って見てくださればよいのに・・と
思いました。南小での参観授業風景とは違うな・・と思いました。
5月10日には学校評議委員に集まっていただき、今年度の学校教育方針をはじめと
して、学校運営に関するご意見をいただきました。本校のホームページにも掲載してお
りますので、
「校長室から」と併せて見ていただければと思います。
5月13日は生徒総会でした。生徒会のそれぞれの委員会活動について説明があり、
各クラスからは要望や質問が出ました。生徒会が中心となって生徒自治を進めていくこ
とは、中学生にとってなくてはならない活動になります。そして、このような活動が生
徒のキャリア発達を促すことになるのです。
キャリア教育では、キャリア発達に関わる「基礎的・汎用的能力」を次のように定め
ています。
1 人間関係形成・社会形成能力
多様な他者の考え方や立場を理解し、相手の意見を聞いて自分の考えを正確に伝えることが
できるとともに、自分の置かれている状況を受け止め、役割を果たしつつ他者と協力・協働し
て社会に参加し、今後の社会を積極的に形成することができる力。EX:他者の個性を理解す
る力、他者に働きかける力、コミュニケーション・スキル、チームワーク、リーダーシップ等
2 自己理解・自己管理能力
自分が「できること」
「意義を感じること」
「したいこと」について、社会との相互関係を保
ちつつ、今後の自分自身の可能性を含めた肯定的な理解に基づき主体的に行動すると同時に、
自らの思考や感情を律し、今後の成長のために進んで学ぼうとする力。EX:自分の役割の理
解、前向きに考える力、自己の動機づけ、忍耐力・ストレスマネジメント、主体的行動等
3 課題対応能力
仕事をする上での様々な課題を発見・分析し、適切な計画を立ててその課題を処理し、解決
することができる力。EX:情報の理解・選択・処理等、本質の理解、原因の追究、課題発見、
計画立案、実行力、評価・改善等
4 キャリアプランニング能力
「働くこと」の意義を理解し、自らが果たすべき様々な立場や役割との関連を踏まえて「働
くこと」を位置づけ、多様な生き方に関する様々な情報を適切に取捨選択・活用しながら、自
ら主体的に判断してキャリアを形成していく力。EX:学ぶこと・働くことの意義や役割の理
解、多様性の理解、将来設計、選択、行動と改善等
これら4つの力を、育てたい生徒の具体的な姿として挙げてみると、次の表のように
なります。
領域
具体的な生徒の姿
社
会
形
成
能
力
人
間
関
係
形
成
・
〇話し合いなどに積極的に参加し、
自分と異なる意見もよく聴いて理解しようとする
〇思いやりの気持ちを持ち、相手の立場に立って考え、行動しようとする
〇異年齢集団の活動に進んで参加し、役割と責任を果たそうとする(生徒会、委員会
活動、部活動)
〇困ったときは人に頼ることに躊躇しない(一人で抱え込まないで相談できる)
〇自分の長所や短所に気づき、自分らしさを発揮する
〇異文化交流等で、異国の文化に親しむとともに、我が国の文化と伝統を大切にする
○ボランティア活動に積極的に参加し、社会貢献しようとする
○立場や場に応じた適切な言葉遣いをしようとする
自
己
管
理
能
力
自
己
理
解
・
〇自分なりの根拠を持って、自己決定し、行動することができる(場面や状況に応じ
た適切な判断。自己指導能力)
〇係活動などで自分がやりたい係、やれそうな係を選ぶことができる
〇教師や保護者に自分の悩みや葛藤を話す
〇自分にとって価値あるものを選択する
課
題
対
応
能
力
〇将来のことを考える大切さが分かる
〇生活や学習上の課題を見つけ、自分の力で解決しようとする
〇将来の夢や希望を持ち、実現を目指して努力しようとする(オープンマインドで固
執せず)
〇必要な情報を適切な手段で探すことができる(選択して使う)
○トライやる・ウイークで学んだことを日々の生活に生かし、使ってみようとする
キ
ャ
リ
ア
プ
ラ
ン
ニ
ン
グ
能
力
〇身近な産業・職業の様子やその変化がわかる
〇気づいたことや分かったことを互いに発表する
〇あこがれとする職業を持ち、今、しなければならないことを考える(具体的に始め
る)施設・職場見学や体験等から、働くことの大切さや苦労がわかる
〇学んだり体験したりしたことと、生活や職業との関係を考える(オープンマインド
で固執せず)
〇社会生活にはいろいろな役割があることや、その大切さが分かる。仕事における役
割の関連に気づく。
○ライフキャリアだけでなくワークキャリアについての理解を深めようとする
〇学級みんなの生活向上に繋がり、自分も生かされ、みんなの役に立つ創造的な楽し
い係の仕事が、自主的、自治的、実践的に実行できる。
南中では、キャリア教育の全体計画、各学年の年間指導計画を作成し、校内研修も実施して、
生徒のキャリア発達を促す指導を継続します。生徒会活動は各学級での活動以上に、学校をあげ
ての活動になりますから、
「ねらい」を持ち、
「評価」ができるように体制を整えて実施していま
す。そして、年間指導計画に位置づけている修学旅行、トライやる、わくわくオーケストラや避
難訓練は、とくに学年全体が大きく動く取組ですから、キャリア発達を促す上でも重要な取組に
なります。これらの取組は、
「体験することによって学ぶ」取組になります。実施までに着々と準
備を重ねてきていますから、あとは、本番を待つばかりですが、
「意図を持って体験させる」こと
が大切になります。
5月24日に兵庫県播磨高等学校から講師を招いて、体育館で、
「形から入ることの大切さ」
「挨拶と返事」
「座り方、立ち方」
「お辞儀、礼のしかた」
「物の受け渡し」
「場に応じた言葉遣い」
など、生徒をステージに上げて実技の見本を見せながら体験させる「マナー講習会」を実施しま
した。2年生全員が対象で、トライやる・ウイークでの活動に、どうしても必要なマナーを身に
つける目的で実施しました。
トライやる・ウイークは非常に大きな行事で、1998年1月に、新聞発表されたときは学校
現場が大騒ぎになりました。これだけ大きな行事は県からのトップダウンで全県一斉でないとで
きません。教育課程の問題や予算の問題、受け入れ事業所の問題など、様々な問題を乗り越えて
実施してきた経緯がある事業です。
1998年6月、18の学校での先行実施では、郡部の小さい町や都市部の商店街などが積極
的に受け入れてくれています。中学生が「町おこし」の起爆剤になっていたことや、いわゆる不
登校生徒がトライやる・ウイークに参加し、参加した生徒の多くは欠席数が減り登校し始めたと
いう、思わぬプラスの結果を残しました。
この事業は、始まった当初から、学校、家庭、地域が分担を明確にして役割を重ね合わせなが
ら協働して実施する事業でした。その中で家庭や地域の教育力の向上、教職員の地域に対する意
識改革も求められていました。
マナー講習会の時に、2年生に「トライやる・ウイーク」はボランティア活動だと思いますか?
と問うと、
「自分たちのボランティア活動ではない」と答えました。そうなんです。これは、地域
の方々、事業所の方々のボランティア活動なのですね。無報酬です。5日間、毎日の事業所もあ
ります。受け入れ側には実利的なメリットはありません。でも、でも、
「子どもをなんとかしてや
ろう」という善意に基づいて受け入れてくれています。そのことを生徒に話をしました。だから
こそ、
「失礼」があってはなりません。
「礼」を尽くさなければなりません。
学校で1回、マナー講習会をしたから、明日にでもできるようになるだろう・・なん
て甘いことはありません。実際に仕事場で体験して、やってみないと身につかないこと
です。繰り返し、何度もやることで、普段からできるようになります。トライやる・ウ
イークがおわれば、またできなくなったでは困ります。
トライやる・ウイークの事業所選びは、
「しんどそうだな」
「めんどうやろうなあ」と
いう印象がある仕事ほど、実際にやってみての感動が大きいようです。おぼろげにでも
「あこがれ」を持つ職業と直接的、間接的に結びつく体験になればと願っています。
受け入れをしてくださる事業所の皆様、どうかよろしくお願い申し上げます。