シリコンバレーにあるシンギュラリティ大学(SU)のエグゼクティブ・プログラム(EP)に参加して参りましたので, その概要をお伝えします。 ■ シンギュラリティ大学 来るべき「シンギュラリティ」(2045年ころに,コンピュータが人間の知能を超えたりすること)に備え,Google等 が出資して,最先端のテクノロジーや考えの進化を学ぶところです。 主にICT分野における「加速度的」(エクスポネンシャル)な進化により,各業界に「破壊的」(ディスラプティブ)な 変化が起きていることに着目しています。 ■ プログラム概要 105人の参加者が計35カ国から集まりました。このプログラムには,過去に2000人を超える卒業生がいるのに, 日本人は10人弱しかいないことを,非常に寂しく思いました。 ここSUでは,「10億ドル稼ぐのではなく,10億人に影響を与えること」に価値を見出しています。誠に気宇壮大です。 講義は,6日で26クラス。宇宙,AI,ロボ,自動運転車,ナノテクノロジー,バイオテック,医療,マイクロバイオーム, エネルギー,太陽光,脳,3Dプリンティング,サイバー犯罪,バーチャルリアリティー,経済,組織運営,会社変革, 起業,オープンソースなど。 1 ■ 科学技術の進歩 自動運転車による,Just on timeでの輸送が行われれば, 駐車場も要らなくなり,土地利用形態も,不動産の市場価値も変わります。 医療の世界にも,"uberization"(ウーバー化),つまり,ウーバーのように医師を配置するアイデアが広まっています。 Fitbitのようなウェアラブル機器などで,自己の健康も,すべてが「quantified」(数値化・計量化)される時代。 携帯・ウェアラブル端末の,movable(可動性) → carriable(携帯化)→ wearable(ウェアラブル) →insidable(身体へ組み込む) という流れはなるほどと思いました。 「石器時代は石がなくなったから終わったのではない」。 石油時代も,石油が枯渇してから終わるのではなく,太陽光時代はもう来ている? 「未来はもうここにある。ただ,不公平に分配されているだけだ(Future is already here - it is just unevenly distributed. )」,という表現は示唆的でした。 ドローンが簡単に国境を超えて違法薬物を輸入するとすれば,これは大きな問題… holoportation(会いたい人の前に3Dで現れる技術)はもうすぐ実用化されそう。現代の「どこでもドア」ですね。 家族との対話や,遠隔地でのセミナーに使えそうです。 今後,インドやアフリカなどで,数十億人がオンライン化します。これは大きなイノベーションを生む。数十億人のビッグデータの威力は,驚異的でしょう。 クラウドソーシングの威力。一部のエリートの叡智よりも,大衆の智慧の方が勝ることがほとんど。周知を集める「仕組み」「プラットフォーム」を作った者勝ち。 如何にスケールするか。 バーチャルリアリティの方があらゆる意味で現実よりも快適だったら,だれが現実世界に留まるでしょうか? 2 ■ 気になった言葉や概念 冒頭で,私が大好きな,ジョージ・バーナード・ショーの以下の有名なフレーズが引用されていました。 The reasonable man adapts himself to the world; the unreasonable one persists in trying to adapt the world to himself. Therefore all progress depends on the unreasonable man. (合理的な人は自分を世間に合わせようとするが,非合理な人間は,世間を自分に合わせようとする。 だから,すべての進歩は,非合理な人間のおかげである) また,あなたは「あなたが会う人の平均である」(you are the average of people you spend the time with)との指摘も, 私の信念と同じなので,嬉しかったです。今後も,優秀な人と交わり,自分を高めたいと思います。 視点を変えることは,聡明であることに勝る(Shifting your perspective is better than being smart. )。具体的には, サッカーではボールを追っかけていてもなんとかなるが,アイスホッケーでは,パックを追っかけていてはダメ。 パックの進む方向を予期して進まないと。今のエクスポネンシャルな時代もまさにそうです。 今後生き残る組織には,Massive Transformative Purpose (MTP,野心的な変革目標)が必要だと。 SUが「10億人の人生を向上させる」と謳っているように。 未来を予期する最善の方法は,それを創りだすことだ(The best to way to predict the future is to create it. )。 最終講義では,世界を変える「勇気」が強調されていました。無謀と思える挑戦(Moonshot)をせよと。 「みんなが世界を変えたいと思っているが,自ら変わろうとする人はいない (Everybody thinks of changing the world, but no one thinks of changing himself)」。 でも,世界を変えたいなら,自らがその先鋒とならなければなりません (You must be the change that you wish to see in the world)。 中山国際法律事務所でも,このガンジーの言葉から拝借し,「Be the Change」をロゴとしています。 3
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