平成 28 年度全国高校総体 「審判員報告書」

平成 28 年度全国高校総体
「審判員報告書」
女子新体操
審判長
鈴木あおい
C4
1.採点上打ち合わせた事項
個人 D クラブ
・手具操作と身体難度の関わりで注意が必要だと思われる状況の確認
(小さい投げをフェッテピヴォットのはじめのプリエで投げたものはノーカウント、振りや非対称の操作が
ジャンプ中にあった場合踏切から着地までの基準を満たせばカウントする)
・DER の軌道の変更は回転の論理性を欠かなければカウントする
・DER で3歩の移動(2ステップ)、音楽終了後の受け、二回転目に回転不足(おしり回り等で見かける)はノー
カウントで確認
・ダンスステップコンビネーションは8秒間の中に基礎手具操作があり、音楽のテンポを最低限はずしていな
いものは D ではカウントで統一(0.1 までの実施ミスも中断がなければカウント)
・M については内容でも判断するがカウントに迷ったときは M の為に長い準備動作をして行っているものか、
ステップ中や流れの中で論理性を欠かずに行っているものかで判断することを確認
個人 D リボン
今大会はこのルールでの最後の大会となるが、1月の講習会で関田先生より芸術のお話を頂いてたように、選
手の実施力や作品の質を見極めながら、カウント、ノーカウントだけではなく、つなぎの要素も見ながらの「D
の観点から見る作品の質の見極め」を心がけて点数をつけて行くことを打ち合わせをした。
フェッテピヴォットや DER は回転数を正確にカウントすることを統一。ダンスステップコンビネーションと
マステリーは実施力を見ながらカウントをするかどうかを判断することも、確認しながら進めた。
また、点数の差がつきやすいジャンプの基礎的特徴は映像研修で目線を揃えるよう審判長からご指導いただい
た。
個人Eクラブ
・高体連適用ルールについて
・選手の資質・作品構成と実施の確認
・映像による芸術的欠点と技術的欠点の採点の確認
個人Eリボン
本大会審判研修において、全員で確認しあった事項に即して、E 審判として評価すべき項目・役割について話
合った。主に、①基本的な身体の資質、②演技構成の内容(各難度・つなぎ・音楽との一致・空間の使用・身体の
動きと手具操作の多様性等)、そして③技術ミスこれらについて見極めること。D との合計得点で順位はつくけれ
ども、D の評価には表せない部分を見逃さず、E 審判としても順列がつけられることを打ち合わせた。難しい難
度への挑戦と、美しい身体の動きが理想であるが、そこにルール上の技術ミスがあれば減点をいれること、身体
の資質の減点と、演技構成上の減点は、それぞれ別個に見極め、技術的欠点が同じであっても、芸術の評価とし
てはどうであるのか、最終的な得点を出した時に、明確であるように打ち合わせた。
団体
D
申告書上の減点は 3 件。どれも、手具の基礎技術の不足の減点である。さらに、1 件はプラスして、交換にお
ける BM の記載が、投げにも受けにもあり、価値点の修正をした結果、価値間違いの減点 0.3 を入れた。
特に、交換の投げ受けの加点など 1 回 1 回をそれぞれ見極めること、身体難度については本大会においての基
準を明確すること、また、カウントしないことで差をつけるのでなく、ルールに則りカウントすることで D とし
ての順列をきちんと付けることを、打ち合わせた。
団体
E
団体の実施では作品の質と選手の質が点数化されていないと落下や移動の有無だけの実施の得点の順位にな
ってしまうので D では点数化できない作品の差や5人の選手の姿勢欠点や各難度の欠点などの技術欠点に見落
としがないよう打ち合わせを行った。
2・採点上起こった事項とその処理
個人Dクラブ
・申告書ミスについて2件
① M の基準がベースにきている・・・これは各種大会で度々見受けられるので再度注意が必要と感じた。ノー
カウントにし、減点はなし。
② 価値間違い・・・今大会は全国大会の為 0.3 の減点を入れた。
・身体難度に追加できる回転と波動は身体難度に直結されていないものが多くみられた。
・パンシェバランスは上体が少しでも高ければ 0.5 の申告が必要だが、0.4 で申告されている、その逆もあり、
どちらにしても上体の高さが不明確であった。
個人Dリボン
申告用紙の減点については高体連ルールに則り、価値の計算間違いがあり、0.3 の減点を1件行った。又、ロ
ーテーションの数の過剰申告も目立った。
リボンの操作が不正確なことにより、身体難度やマステリー、DER をカウントできない選手が多かった。
ステップについては始めのきっかけがわからず、8秒カウントできない選手、動きを通じて音楽が表現出来な
い(評価出来ない)選手が何人か見受けられた。
ルールの中で作品として魅せることの出来た選手は身体難度の精度も高く、難度のつなぎの流れも自然で D の
観点から見て7点代となった。
個人Eクラブ
特になし。
個人Eリボン
リボンという種目の特性上、リボンが床につく・身体に触れる・結ばるという、手具の減点も多々見られた。
足で投げたり、マステリーを行う等、手具操作の多様性を持たせる為の工夫が、操作の減点とならないよう、あ
と少し改善が見られると良いと感じた。また、身体難度を行う際にも、同様に注意が必要であると感じた。
身体の資質は全体に向上しつつあると思う。が、下肢の美しさの評価・身体のなめらかな動きの評価という点
においては、評価が分かれることもあった。
ダンスステップにおいて、脚でリズムをとるだけでなく、手具の動き・身体全体としての動きがプラスされる
と、さらに音楽との一致が、見ている側に伝わりやすいと感じた。
フロアの使用において、距離を必要とする場合、例えば手具を投げる・ジャンプ・ステップ等、行ったり来た
りしてしまう選手も多かった。音楽表現や作品構成上の意図的なものを除き、減点となるため注意が必要である。
団体
D
身体難度において、フォームはよいが、手具操作の不足によりカウントできないもの、 ダンスステップにつ
いては、連係(C)を伴うためにステップとして不足が見られカウントできないもの、CR と CRR の申告間違いと
思われるものがあった。
団体競技においては、作品構成によって、D のカウントは左右されると感じる。特に、インターハイは学校単
位で出場することもあり、5 名の選手の資質がそろう事は現実的に厳しいからこそ、個人競技と比べ、身体の資
質の差よりも、構成の差が D のカウントに関わるように思う。特に、連係において、どのように 5 名が関わりひ
とつの連係を行っているのか、次どのように展開されるのか、分かりやすければテンポよく採点でき、見やすく
感じ、そうでない場合は迷いが生じてしまうこともあった。審判員として、複雑な構成であっても、見極める力
をつけることもさらに必要である。
団体
E
今の手具の組み合わせになって2年目ではあるが、全体的にミスが多い試合となった。
作品についてはやはりまだ、交換の為に走って広がる、連係の為に後ろに後ずさり、連係中止まっている選手(手
具)がいたりなど移動の多様性の不足を感じた。また交換の前には止まる、交換を受けたらポーズをするなど構成
上、論理性の減点も多かった。
使用する音楽についても音楽そのものにコンセプトを感じない、強弱がなく2分半同じテンポのものも多くみ
られた。5人の選手の雰囲気に合わせ、美を競う新体操にふさわしい音楽の選択の必要性も感じた。音楽と動き
は相関関係になければいけないと思うので、音楽の変化に合わせて選手の動きや難度も音楽に合ったものでなけ
ればいけない。強いアクセントでジャンプや交換の投げ、柔らかい曲調でバランスや波動など。しかしここまで
音楽を考えて構成するのは難しいが、だからこそ実施の点数においての作品の評価の重要性の重みを感じた。次
年度ルールが変わる時だからこそ、もう一度作品作り、曲選びは見直していただければと感じた。
3・その他特記事項・意見・感想等
個人リボンE1審、団体競技D1審
藤綱
江津子
個人競技は 1 分 30 秒、団体競技は 2 分 30 秒、この時間のなかでどう作品が展開されるか、また選手が実施
ミスなくやりきれるか、そこが競技スポーツである新体操の醍醐味であることを感じました。
各都道府県、地域によって競技人口やレベルの差はあれど、各地トップの新体操愛好者の集まるこの全国高校
総体において、審判員として参加させていただき、心より感謝申し上げます。
開催された島根県の先生方・補助役員の皆様方には、準備から運営においてこまやかな ご配慮を頂き、集中
して審判業務につくことができました。心に残る大会となりました。ありがとうございました。
個人クラブE1審
松本
弘子
クラブの実施では落下ミスが多く、作品構成自体に影響を及ぼし、結果、芸術的欠点に影響してしまう場
合も多かった。選手の動きの質と作品構成を見ながらの芸術的欠点と技術的欠点の相互の評価が大変難しかった。
身体難度については形の不明確さ、大きさの不足で減点されることが大変多かった。特にバックルピボットや後
屈ジャンプである。また、ピボットの踵の上がりが低い選手が多く、フェッテの移動や終末の処理、動脚の揺れ
などで減点が発生した。DER の受けについては無駄なステップなく上手に受けられるようになってきたと思う。
芸術的欠点ではピボットのプレパレーションや転回からのバランスなどで途切れることが多くつなぎの減点
につながっていた。
ステップコンビネーションなどは曲のリズムに合わせて工夫は見られたものの、曲のイメージや特徴を捉えて
十分踊っている選手はまだ少なく、似たようなステップをしていた。演技の後半になると曲の変化も今一歩で、
単調な構成で終わってしまっているものも多く、さらにフロアの使い方など空間の多様性での減点も目立った。
しかし、全体としては身体の動きの質が際立って高い選手も増えてきて、高い難度や工夫された動きに挑戦し
ている姿に今後の期待を抱かされるものがあった。
応援マナーについて、男女ともに伴奏音楽が聞こえなくなるような大声での声援や奇声は慎んでほしいとのお
願いがあったが、今後も拍手とともに気持ちの良い応援が出来るようにしたい。
個人リボンD1審
小中亜紀子
今回は上手な選手がミスをしていて残念な場面もありましたが、昨年度よりも全体的に「作品のコンセプトが
みえる演技構成をめざしている選手」が増えてきたように思いました。リボンの操作が不十分で身体難度の精度
が低い選手も多かったのですが、各都道府県の代表選手達はこの大会で感じたことを持ち帰り、地元で目標を持
ち、後輩達の指導に当たってくれたらうれしいと思いました。
そして、地元の役員や高校生のおもてなしには心が洗われる気持ちになりました。本当にありがとうございま
した。また、鈴木審判長の下、審判団の方にもお世話になり心から感謝しています。高体連審判員として邁進し
て行く所存です。
個人クラブD1審・団体E1審
栗原
悠
このルール1年目のインターハイと4年目のインターハイに幸運にも審判員として参加させていただくこと
ができたが、高校生のレベルの向上は個人・団体(選手の資質も)ともに見られ、ルールに合わせていく選手・コ
ーチの力を感じた。また毎年開催県として多くの地元役員、地元高校生の力があって大会が成り立っているのを
感じ、感謝の気持ちでいっぱいになった。この素晴らしい大会に審判員として参加できたこと深く御礼申し上げ
ます。
審判長
鈴木あおい
昨年、一昨年に引き続き、高校総体審判長という立場を経験させていただきましたが、まずは高体連専門部
の皆様、島根県体操協会の皆様、実行委員会の皆様、その他関係の皆様より、準備より運営まで多大なるご協
力とご支援をいただき、無事終了できましたことを、はじめに御礼申し上げます。
高校生のレベルがまた更に上がり、美しい身体づくりを心がけて練習を積んできた選手たちが多くなったこと、
そしてこの試合に懸けてきた気持ちが強く伝わってきた選手、チームばかりであったことを感じ、また現ルール
4年目で最後の年であるということもあり、申告書のミスもだいぶ減り、ルールの浸透も感じられた。全体的に
は、審判員の皆様のおかげで分かりやすく妥当な順位がついていたのではないかと思っている。身体の美しさと
正しさ、作品構成、そして実施度、これらの全てを網羅することがやはり重要であるが、今回の試合でも、これ
らを網羅し、そしてやはり大きなミスなく力を出し切れた選手、チームが上位となっている。
オリンピックが終わり、ルールが改正されるが、それでも基本となる美しく正しい身体づくりと、その選手、
チームのキャラクターにあった曲選びと、曲を感じさせる作品構成の追究を、心がけていくことが何よりも重要
であろう。
また、今大会開催の島根県は、新体操専門の指導者も少なく、準備運営の面でも本当に大変であったことと思
う。それでも、地元の先生方を中心に、専門外の役員や先生方、そして高校生たちの、一生懸命で細やかな運営
や暖かい心遣いには本当に感銘を受けた。高校教育の一環であるこの高校総体が更にこれからも発展し、さらに
新体操を愛する選手、関係者が一人でも増えることを強く願い大会が終了した。
最後になりましたが、上田競技部長をはじめ地元島根県体操協会の皆様、実行委員会の皆様、高体連体操部の
皆様、本部派遣としてお手伝いいただいた先生方には、沢山支えていただきましたことを、心より御礼申し上げ
ます。本当にありがとうございました。