【2016年8月24日公開】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ ~丸わかり! ロンドン発★欧州経済事情~ 「松崎美子」が注目テーマを一刀両断! 『8/26 の FRB 議長講演に注目! ハト派発言なら米ドル売りへ』 執 筆 者 : ( ロ ン ド ン 在 住 /元 為 替 デ ィ ー ラ ー ) ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 6 月下旬の英国民投票で EU 離脱(Brexit)が決定して以来、マーケットの主役は英ポンドであっ た。これをきっかけにして、昨年まではアメリカの次の「利上げ国」であった英国が、180 度方向を 変え、利下げに動いたことも、英ポンド下落に拍車をかけた。 しかし、最近は英ポンドを含む主要通貨の実効レートに面白い動きが出てきている。今回のコラム では、それについて考えてみたい。 ●米ドル実効レート『94 サポートが鍵』 最初は米ドルについて調べてみよう。 ・米ドル実効レート検証 週足チャートを見ると、水色の線で引いた上昇チャネル内での動きとなっており、先週の安値は水 色線のサポートで支えられた形となっている。 出典:Stockcharts http://stockcharts.com/h-sc/ui 次はドル・インデックス先物の日足チャートを見てみよう。こちらも週足同様、赤いサポート・ライン で安値が支えられ、そこからやや戻しかけている。今後は赤い星をつけた 94.00/10 台が下抜けし て終わると、米ドル安が進む可能性が出て くる。逆にここが抜けなければ、戻しレベルとして、 94.80/95 台、そして 96.60/70 台が意識される。 チャート: インターコンチネンタル取引所 https://www.theice.com/products/194/US-Dollar-Index-Futures/data ● ユーロ実効レート『上抜け確認が鍵』 次はユーロだ。 ・ユーロ実効レート検証 今年は 2 月に 96.1429 の高値をつけて以来、3 月から 8 月中旬までオレンジの点線枠内での動き となっていた。そして、8 月 19 日(金)にオレンジ点線枠の上限である 95.785 をわずかであるが上 抜けたが、まだはっきりと上昇トレンドを確認できる状況ではない。 チャート: ECB ホームページ http://www.ecb.europa.eu/stats/exchange/effective/html/index.en.html 次のチャートは過去 5 年間の値動きを表わしたものである。仮に最初のチャートのオレンジ枠の上 限を確実に抜けた場合、ターゲットは 96.30/50 台、そして 98 台を意識している。 チャート: ECB ホームページ http://www.ecb.europa.eu/stats/exchange/effective/html/index.en.html ・ユーロ実効レートと「ユーロ/米ドル」のチャート比較 これはザクッとしたイメージであるが、実効レートが 96.30/50 くらいまで上昇すれば、ユーロ/米ド ルは 1.14 ドルミドル辺りまではいくのではないかと考えている。 ●気になる「ジャクソンホール」経済シンポジウム 今週の最大イベントは、8 月 26 日(金)に行われる「ジャクソンホール」経済シンポジウムでのイ エレン FRB 議長の講演である。これに先がけ、先週から米連銀関係者の発言が相次いでいるが、 年内利上げに前向きなタカ派的発言内容が目立つ反面、金融政策の枠組みそのものの再考とい うややハト派的なものも出ている。 ■タカ派的発言内容 1)ダドリーNY 連銀総裁:タカ派 8 月 16 日(火)のテレビインタビューで、「9 月利上げも可能」と発言。 2)ウィリアムズ SF 連銀総裁:中立/ややタカ派 8 月 18 日(木)に行われた同総裁の講演で、「米経済の力強いモメンタムを考慮すると、遅すぎな いタイミングで穏やかな利上げを実施することが望ましい。」と発言。 出所:http://www.frbsf.org/our-district/press/news-releases/2016/feds-williams-advocates-rate-hike/ 3)フィッシャー副議長: 中立 8 月 21 日(日)の講演で、短期的な動向として、雇用に大幅な減速は見られず、コア・インフレ率は FRB の 2%インフレ・ターゲットにもうすぐ届く距離にあるため、年内もう一回の利上げに前向きな姿 勢を示した。 ■ハト派的発言内容 1)ウィリアムズ SF 連銀総裁: 中立/ややハト派 8 月 15 日(月)に総裁本人が書かれた経済リサーチノートが SF 連銀のホームページに掲載され た。そこで、同総裁は、中銀にとって 「ニュートラルな金利水準」 は年々下がってきているため、 中銀のアプローチそのものを見直す必要性について触れている。ちなみに同総裁が考える「ニュ ートラルな金利水準」 は、下記チャートに示されている(水色の星部分)が、だいたい+0.5%となっ ていた。もし、この 0.5%という金利水準が正当化された場合、FOMC のこれ以上の利上げの必然 性が消えてしまう。 チャート: サンフランシスコ連銀ホームページ 経済リサーチレポート http://www.frbsf.org/economic-research/publications/economic-letter/2016/august/monetary-policy-and-lowr-star-natural-rate-of-interest/ ウィリアムズ SF 連銀総はこのレポートの中で、「ニュートラルな金利水準」 のことを『R スター』と 呼んでいる。イエレン議長は元サンフランシスコ連銀総裁であり、その当時の経済アドバイザーの トップは、ウィリアムズ総裁であった。そう考え ると、この二人の考え 方は非常に似て いる可能性 がある。もし、ジャクソンホールでのイエレン議長の講演で、『R スター』という言葉が出てきた場合、 マーケットはとっさに米ドル売りに傾く可能性は排除できないだろう。 2)フィッシャー副議長: 中立 8 月 21 日(日)の講演で、長期見通しとして、生産性の伸びの鈍化を懸念材料として挙げている。 具体的な発言としては、「時間当たりの生産性を見ると、1949 年~2005 年は、平均 2.5%だった。し かし、2006 年~2015 年になると、それが 1.25%まで落ち込んでいる。生産性が半分のレベルに落 ち込むということは、重大な変化であり、この傾向が継続した場合、雇用市場や経済政策へ広範 な影響を及ぼすことになりかねない。」と警鐘を鳴らした。 ●ここからのマーケット 先週のマーケットの動きの中で一番興味を抱いたのが、他ならぬ「英ポンド/米ドル」の週足チャ ートであった。 先々週と先週の 2 本のローソク足のパターンを見ると、不完全ではあるが抱き線に近い形に見え て仕方がない。もし、イエレン議長がハト派的内容の発言をすれば、「ユーロ/米ドル」の 1.14 ドル ミドル、「英ポンド/米ドル」は 1.34 ドルミドル(チャート上のピンクの星)くらいまでの戻しを期待して いる。 -------------------------------------------------------------------------------【執筆者:松崎美子氏( ロンドン在住/元為替ディーラー)プロフィール】 東京でスイス系銀行 Dealing Room で見習いトレイダーとしてスタート。18 カ月後に渡英決 定。1989 年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店 Dealing Room に就職。1991 年に出産。1997 年シティーにある米系投資銀行に転職。 その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、 証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。 -------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】 本レポートは松崎美子氏より発行されているレポートであり、情報提供のみを目的として おります。 本レポート中のコメントは独自の見解に基づいたものであり、松崎美子氏、およびワイジ ェイFX株式会社共にレポート中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明 示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。 また、本レポート内のコンテンツ、データに関する著作権はワイジェイFX株式会社に帰属 しております。 コンテンツ、データ等は私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピー等はおやめく ださい。 さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、松崎美子 氏、およびワイジェイFX株式会社は一切責任を負いません。 最終的な投資判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。
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